広告の管理画面で「CV数」だけを見ている限り、すべてのコンバージョンが同じ価値として扱われます。資料請求も、見積依頼も、電話問い合わせも、1件は1件です。
しかし実際には、成約率も単価もまったく違います。この違いを入力しないまま自動入札に任せると、最も取りやすく最も成約しないCVを大量に集める運用になります。
この記事では、コンバージョン値の設定方法と、値を決めるための計算手順を解説します。
この記事でわかること
・CV数だけで運用すると起きる問題
・コンバージョン値の計算方法(3ステップ)
・成約データがない場合の暫定値の決め方
・設定後に見る指標の変化
・値の見直し頻度
CV数だけで運用すると起きること
次の3つのCVがあるとします。数字は説明のための例です。
| CV種別 | 取りやすさ | 成約率の傾向 | 1件の事業価値 |
|---|---|---|---|
| 資料ダウンロード | 取りやすい | 低い | 小さい |
| メール問い合わせ | 中間 | 中間 | 中間 |
| 電話問い合わせ | 取りにくい | 高い | 大きい |
すべてを「CV 1件」として計上すると、自動入札は最も安く多く取れる資料ダウンロードに予算を寄せます。管理画面のCV数は増え、CPAは下がります。しかし売上は増えません。
これは運用の失敗ではなく、入力した目標を正しく達成した結果です。目標の設定が事業と一致していないことが原因です。
自動入札は、与えた目標を正確に最適化します。
目標が「CV数」であれば、価値の低いCVを大量に集めるのが正解になります。
コンバージョン値の計算
コンバージョン値とは、そのCV 1件が平均していくらの売上(または粗利)を生むかという金額です。
ステップ1:CVから成約までの率を出す
| 項目 | 確認元 |
|---|---|
| CV件数 | 広告管理画面、GA4 |
| そのうち商談・来店に至った件数 | 営業の記録、店舗の記録 |
| そのうち成約した件数 | 受注記録、売上データ |
ここで必要なのは、広告管理画面の外にあるデータです。営業側や店舗側の記録と突き合わせる必要があります。この作業を省くと、コンバージョン値は設定できません。
ステップ2:平均単価を出す
成約1件あたりの平均売上、または平均粗利を出します。推奨するのは粗利です。売上で設定すると、原価率の高い商材に予算が寄る可能性があります。
ステップ3:掛け合わせる
計算式は次のとおりです。
| 計算 | 内容 |
|---|---|
| コンバージョン値 | = 成約率 × 平均粗利 |
| 例:資料DL | 成約率2% × 平均粗利30万円 = 6,000円 |
| 例:メール問い合わせ | 成約率10% × 平均粗利30万円 = 30,000円 |
| 例:電話問い合わせ | 成約率25% × 平均粗利30万円 = 75,000円 |
※上記の数値は計算方法を示すための例であり、業種や商材によって大きく変わります。必ず自社のデータで算出してください。
この設定を入れると、自動入札は電話問い合わせを最も高く評価します。同じ予算でも、成約に近いCVを優先して取りにいく動きに変わります。
成約データがない場合
「営業側の記録と突き合わせられない」という状態は珍しくありません。その場合でも、次の順序で暫定値を置けます。
- 相対的な比率だけ決める:金額が分からなくても、電話は資料DLの10倍、といった比率は経験から出せる
- 比率に任意の基準値を掛ける:資料DLを1,000円とすれば、電話は10,000円
- まず運用を始め、データを貯める:完璧な値を待たない
- 3か月後に実データで補正する
比率だけでも設定する価値があります。CV数で運用している状態(すべて同じ価値)よりは、必ず事業に近づきます。正確な金額が出るまで待つ必要はありません。
ただし、記録の仕組み自体は作ってください。問い合わせ経路と成約の紐付けができていなければ、いつまでも補正できません。計測環境の作り方は店舗ビジネスのためのGA4×GTM計測設定ガイドを参照してください。
設定後に見る指標が変わる
コンバージョン値を設定すると、評価に使う指標が変わります。
| 設定前 | 設定後 | |
|---|---|---|
| 主指標 | CV数、CPA | コンバージョン値の合計、ROAS |
| 入札戦略 | CPA目標 | ROAS目標、またはコンバージョン値の最大化 |
| 見るべき変化 | CV数が増えたか | 価値の合計が増えたか |
| 起こりうる見え方 | CPAが良く見える | CV数が減り、CPAが悪化して見える |
最後の行に注意してください。価値の高いCVを優先すると、取りにくいCVを狙うためCV数は減り、CPAは上がります。これは悪化ではありません。
にもかかわらず、社内報告でCV数とCPAだけを出していると、「運用が悪化した」と評価されます。設定を変える前に、見る指標を変えることを社内で合意しておいてください。
報告の指標を切り替える
- コンバージョン値の合計:広告が生んだ事業価値の総量
- ROAS(広告費用対効果):投じた広告費に対する価値の比率
- 実際の成約件数:営業側の記録と突き合わせる
- 実際の売上・粗利:最終的な確認
- (参考)CV数、CPA:主指標にはしない
値の見直し頻度
| タイミング | 理由 |
|---|---|
| 3か月ごと | 成約率のデータが一定量貯まる |
| 価格改定時 | 平均粗利が変わる |
| 商材構成が変わったとき | 単価の前提が変わる |
| 成約率が明確に変化したとき | 営業体制の変更、競合状況の変化 |
| 新しいCV種別を追加したとき | その種別の値を決める必要がある |
毎月変える必要はありません。値を頻繁に変えると、自動入札の学習が安定しません。3か月程度の間隔が実務的です。
実施すべきでないケース
| 状況 | 理由 | 先にやること |
|---|---|---|
| CVが1種類しかない | 値を分ける意味がない | 中間CVの設計から |
| CV数が極端に少ない | データが貯まらず学習が進まない | CV数を増やす |
| 成約データを取る仕組みがない | 値の根拠が作れない | 記録の仕組み作り |
| 計測自体が不正確 | 誤った値で最適化される | 計測の修正 |
4番目が最も危険です。重複計測やタグの誤設置があると、実態と違う値で最適化が進みます。設定前に計測の正確性を確認してください。確認方法はGA4のコンバージョンが計測されない時に確認すべき5つのポイントで解説しています。
よくある失敗
失敗1:すべてのCVを同じ価値として扱い続ける
最も取りやすく最も成約しないCVに予算が寄ります。
失敗2:売上ベースで値を設定する
原価率の高い商材に予算が寄る可能性があります。粗利を推奨します。
失敗3:正確な数字が出るまで設定しない
比率だけでも、CV数運用より事業に近づきます。まず始めてください。
失敗4:設定後もCV数・CPAで報告する
「悪化した」と評価されます。指標の切り替えを事前に合意してください。
失敗5:値を毎月変える
自動入札の学習が安定しません。3か月程度の間隔にしてください。
よくある質問
Q. 具体的にどこで設定しますか?
広告媒体のコンバージョン設定画面で、コンバージョンアクションごとに値を指定します。設定項目名や手順は変更されることがあるため、各媒体の公式ヘルプで最新の情報を確認してください。
Q. 売上と粗利のどちらを使うべきですか?
粗利を推奨します。売上で設定すると、原価率が高く利益の薄い商材に予算が寄る可能性があります。ただし粗利の算出が難しい場合は、まず売上ベースで始めて構いません。
Q. CV数が減っても問題ないのですか?
価値の高いCVを優先した結果であれば問題ありません。確認すべきは、実際の成約件数と粗利が増えているかです。3か月程度の期間で、営業側の記録と突き合わせてください。
Q. 電話問い合わせも計測できますか?
電話番号のタップや、転送電話番号を使った計測が可能です。実装方法は電話問い合わせをコンバージョンとして計測する方法を参照してください。店舗ビジネスでは、電話が最も価値の高いCVになることが多くあります。
Q. 業種によって推奨値はありますか?
ありません。成約率も平均粗利も自社固有の数字です。他社の平均値を使うと、自社の実態と乖離した最適化が進みます。必ず自社のデータで算出してください。
まとめ
CV数だけで運用すると、自動入札は最も安く多く取れるCVに予算を寄せます。管理画面の数字は改善しますが、売上は増えません。これは運用の失敗ではなく、与えた目標を正確に達成した結果です。
コンバージョン値は「成約率 × 平均粗利」で算出します。必要なデータは広告管理画面の外——営業側や店舗側の記録——にあります。この突き合わせを省くと設定できません。
データが揃っていない場合でも、相対的な比率だけ決めて始めてください。すべて同じ価値として扱う状態よりは、必ず事業に近づきます。
設定後は、CV数とCPAではなく、コンバージョン値の合計とROASで評価してください。価値の高いCVを優先するとCV数は減りCPAは上がりますが、これは悪化ではありません。指標の切り替えを、設定前に社内で合意しておくことが重要です。
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