競合サイトを見ること自体は誰でもできます。しかし多くの場合、「競合はこうしている」という観察で終わり、自社の判断に変わりません。
原因は、見る目的が定まっていないことです。何を決めるために見るのかが決まっていなければ、情報は集まっても結論は出ません。
この記事では、目的別に「何を見るか」を分け、観察を自社の意思決定につなげる手順を解説します。
この記事でわかること
・競合を3種類に分けて考える理由
・目的別に見るべき項目
・真似すべきものと、真似すべきでないもの
・調査結果を判断に変える手順
・調査で陥りやすい落とし穴
競合を3種類に分ける
「競合」と一括りにすると、見るべき対象がぼやけます。
| 種類 | 定義 | 見る目的 |
|---|---|---|
| 事業競合 | 同じ商圏で同じ顧客を取り合っている | 提供内容、価格帯、強みの打ち出し |
| 検索競合 | 狙うキーワードで上位にいる | コンテンツの構成、情報量、検索意図への答え方 |
| 参考企業 | 商圏・業種は違うが優れている | 表現、体験設計、伝え方 |
この3つは重なりません。検索で上位にいるのが、大手ポータルサイトや他地域の企業であることは珍しくありません。それらは事業上の競合ではありませんが、検索結果では競合します。
逆に、事業競合がWebに力を入れていない場合、検索の観点では参考になりません。目的によって見る相手を変えてください。
「競合サイトを見る」ではなく、「何を決めるために、誰を見るか」を先に決めてください。
目的が定まっていない調査は、情報が集まるだけで終わります。
目的別に見る項目
目的1:自社の打ち出しを決める(事業競合を見る)
| 見る項目 | 何が分かるか |
|---|---|
| トップページの見出し | 何を強みとして打ち出しているか |
| 価格の提示方法 | 明示/要問い合わせ/目安のみ |
| 対応エリアの記載 | 商圏の重なり |
| 実績の見せ方 | 点数、内容、具体性 |
| 問い合わせ手段 | 電話/フォーム/LINE/来店予約 |
| 更新頻度 | 運用にどれだけ力を入れているか |
複数社を並べたときに「全社が同じことを言っている」項目は、差別化に使えません。「丁寧な対応」「地域密着」「安心の実績」が全社に並んでいれば、そこで差はつきません。
探すのは、「どこも言っていないが、自社が言えること」です。ブランドの軸の作り方はブランドコンセプトの作り方|すべてのデザインの軸になる考え方を参照してください。
目的2:コンテンツを作る(検索競合を見る)
| 見る項目 | 何が分かるか |
|---|---|
| 上位10件の記事の種類 | 検索意図(比較/手順/定義/事例) |
| 見出し構成 | 読者が知りたい順序 |
| 情報量 | どこまで書けば足りるか |
| 独自情報の有無 | データ、事例、図表 |
| 更新日 | 情報の鮮度が求められるテーマか |
| 書き手 | 専門性が求められるテーマか |
上位記事の構成をなぞるだけでは、上位にはなりません。同じ内容の記事が増えるだけで、新たに読む理由がないためです。
調査の本来の目的は、「上位記事に書かれていないが、読者の判断に必要な情報」を見つけることです。判断基準、失敗例、やらないほうがよい条件、計算方法などが該当します。
目的3:表現を検討する(参考企業を見る)
- ファーストビューで何を伝えているか
- 写真の使い方:実写か素材か、点数、質
- 文章の長さと語り口
- CTAの位置と文言
- スマートフォンでの見え方
- 読み終わった後に何を感じたか
最後の項目が最も重要です。「何が良かったか」を言語化できなければ、自社に転用できません。「なんとなく良い」で止めず、どの要素がその印象を作っているかまで分解してください。
真似すべきもの・すべきでないもの
| 真似してよい | 真似すべきでない | 理由 |
|---|---|---|
| 情報の網羅範囲 | デザインの見た目 | ブランドの軸が違う |
| 見出しの構成順序 | キャッチコピー | そのまま使えば模倣になる |
| 掲載している項目の種類 | 価格設定 | 原価構造が違う |
| 問い合わせ手段の選択肢 | 広告の出稿量 | 予算規模が違う |
| スマートフォンでの操作性 | ターゲット設定 | 自社の顧客と一致しない |
価格の追随が最も危険です。競合が安いからという理由で価格を下げると、原価構造が違う場合は利益が消えます。価格は競合ではなく、自社の原価と提供価値から決めてください。
また、キャッチコピーやデザインをそのまま模倣することは、法的な問題を生じる可能性があります。構成の考え方を参考にすることと、表現を複製することは別です。
調査を判断に変える手順
観察で終わらせないための手順です。
- 決めたいことを1つ書く:「トップの見出しを何にするか」など
- その判断に必要な項目だけを、5社分並べる:表にする
- 共通点を線で消す:全社が言っていることは差別化に使えない
- 残った空白を探す:どこも言っていない領域
- 自社が事実として言えるかを確認する:言えないことは書けない
- 決めて、実行し、数字で確認する
3番目の「共通点を消す」作業が、この手順の核心です。競合調査の結果は、共通点を見つけて安心する方向に働きがちですが、判断に使えるのは差分のほうです。
5番目の確認を省かない
空白を見つけても、自社が事実として言えなければ使えません。「業界唯一」「地域No.1」といった表現は、根拠がなければ書けません。景品表示法上の問題にもなり得ます。
言えることの範囲で、他社が言っていない領域を探してください。
陥りやすい落とし穴
| 落とし穴 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| 大手を競合として見る | 予算規模が違い、再現できない | 同規模・同商圏で選ぶ |
| 見る社数が多すぎる | 情報が増えるだけで判断できない | 5社程度に絞る |
| 一度調べて終わる | 状況は変わる | 半年〜1年ごとに見直す |
| 自社を客観的に見ていない | 競合だけを分析している | 同じ項目で自社も並べる |
| 流入経路を推測で判断する | 数字の根拠がない | 推測は推測として扱う |
4番目が抜けているケースが多くあります。競合5社を並べた表に、自社も同じ形式で入れてください。並べて初めて、自社がどう見えているかが分かります。
5番目については、外部から見える情報には限界があります。他社の広告費、CV数、成約率は分かりません。推測を前提に判断を組み立てないでください。
調査結果の記録
調査は繰り返し行うものです。記録を残さないと、毎回ゼロからになります。
- 調査日を記入する:情報がいつ時点のものか
- 同じ項目・同じ形式で記録する:次回と比較できる
- スクリーンショットを保存する:変更前後が分かる
- そのとき下した判断も書く:なぜそう決めたかを残す
- 結果を後から追記する:判断が正しかったか
4番目と5番目を残すと、調査が知見として蓄積されます。判断の記録がなければ、同じ検討を繰り返すことになります。
よくある失敗
失敗1:目的を決めずに見始める
情報は集まりますが、判断には変わりません。決めたいことを先に書いてください。
失敗2:上位記事の構成をなぞる
同じ内容の記事が増えるだけです。書かれていない情報を探してください。
失敗3:大手を競合として見る
予算規模が違い、再現できません。同規模・同商圏で選んでください。
失敗4:競合の価格に合わせる
原価構造が違えば、利益が消えます。価格は自社の構造から決めてください。
失敗5:自社を同じ表に入れない
並べて初めて、自社がどう見えているかが分かります。
よくある質問
Q. 何社くらい見るべきですか?
5社程度が実務的です。目的別に選び、事業競合・検索競合・参考企業を混ぜないでください。社数を増やすほど、判断は遅くなります。
Q. どのくらいの頻度で行うべきですか?
半年から1年に一度が目安です。ただし、検索順位が明確に落ちた、問い合わせが減ったといった変化があれば、そのタイミングで確認してください。
Q. 競合の広告出稿は調べられますか?
各媒体が提供する広告の透明性に関する機能で、掲載中の広告を確認できる場合があります。ただし提供範囲や仕様は変更されるため、最新の公式情報を確認してください。出稿金額や成果は分かりません。
Q. 競合のアクセス数は分かりますか?
推定値を提供するツールはありますが、実測値ではありません。傾向を見る参考にはなっても、これを根拠に判断を組み立てないでください。
Q. 競合が真似してきた場合はどうしますか?
表現の模倣であれば内容によって対応を検討することになりますが、方向性が似てきただけであれば、次の差分を作るほうが建設的です。競合が真似できないものは、提供の実態そのものです。
まとめ
競合サイト分析は、見ること自体が目的になりやすい作業です。決めたいことを1つ先に書いてから始めてください。
競合は3種類——事業競合、検索競合、参考企業——に分かれ、それぞれ見る目的が違います。検索で上位にいる相手が事業上の競合とは限りません。
調査で探すのは共通点ではなく差分です。全社が同じことを言っている項目は差別化に使えません。どこも言っていない領域を見つけ、それを自社が事実として言えるかを確認してください。
そして、必ず自社も同じ表に並べてください。競合だけを分析しても、自社がどう見えているかは分かりません。判断とその理由を記録に残せば、調査が知見として蓄積されます。
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