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KPIツリーの作り方|掛け算の段はどこを動かしても効き方は同じで、選ぶ基準は動かす費用と上限、月30件を切る段より下は分解しない

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KPIツリーは、最終目標であるKGIを頂点に置き、そこへつながる指標を四則演算の関係で枝分かれさせた図です。作り方の解説は多く、「KGIを決める、掛け算か足し算で分解する、単位を揃える」という手順はどの記事も同じです。ところが、作った後に何をするかは書かれていません。ツリーは作ることが目的ではなく、どの段を動かすかを決めるための道具です。

掛け算でつないだツリーには、見落とされている性質があります。訪問数、問い合わせ率、商談化率、受注率、受注単価、粗利率のどの段を1割動かしても、頂点の粗利は同じ1割しか動きません。「効く段」はどこにもなく、差が出るのは、その1割を動かすのにいくらかかるかと、その段にどれだけ上限の余地が残っているかです。

もう1つ、中小企業のツリーに固有の問題があります。式は紙の上で閉じても、各段の数字がGA4、広告の管理画面、営業の記録、請求と別の場所にあり、つながっていないと数字が入りません。入ったとしても、月に10件や15件しかない段では、比率の揺れが偶然だけで2割から3割あり、1割の変化は読めません。

この記事では、KGIとKPIの定義、Web集客のツリーの基本形と単位の確認、仮の数字で作った感度の表、段ごとの上限の見方、数字の所在とつなぐ鍵、件数と揺れ幅の目安、問い合わせ数で止めるツリーが招くこと、作り直したほうがよい会社とそのままでよい会社、作る順序を整理します。

この記事でわかること

・KPIツリーは、KGIを頂点に置き、四則演算でつながる指標へ分解した図。作った後に決めるのは「どの段を動かすか」で、ツリーはそのための道具

・掛け算でつないだ段は、どこを1割動かしても頂点は同じ1割動く。仮の数字では、訪問数を3,000から3,300にしても、問い合わせ率を1.0%から1.1%にしても、粗利の増分は同じ12万円

・段を選ぶ基準は、効き方ではなく、1割を動かすのにかかる費用と、その段の上限の余地。広告の訪問数は月ごとに費用が出続け、問い合わせ率や商談化率は一時費用か人の運用で動く

・中小企業のKGIは売上や問い合わせ数ではなく粗利で置く。問い合わせ数で止めたツリーは、単価の低い問い合わせを増やす方向に最適化される

・各段の数字はGA4、広告の管理画面、営業の記録、請求と4か所に分かれている。流入元と問い合わせIDを鍵にしてつながないと、式に数字が入らない

月30件を切る段では、比率の月ごとの揺れが2割前後あり、1割の変化は偶然と区別できない。その段より下は分解せず、3か月まとめて見る

・作る順序は、粗利でKGIを置く、掛け算で分解して単位を確かめる、数字が入るかを見る、件数で切る、費用と上限で動かす段を選ぶ。効き方を比べる工程は無い

KPIツリーは、この順で作る
KPIツリーは、この順で作る

KPIツリーで決めるのは「どの段を動かすか」で、掛け算の段はどこを動かしても効き方は同じ

最初に結論を示します。KPIツリーは、KGIを分解して終わるものではなく、分解した段のうちどこを動かすかを決めるための道具です。そして掛け算でつないだ段は、どこを1割動かしても頂点は同じ1割しか動きません。粗利=訪問数×問い合わせ率×商談化率×受注率×受注単価×粗利率という式で、どの1つを1.1倍にしても、結果は1.1倍です。数学的に当然のことですが、ツリーを見ながら「問い合わせ率が一番効きそうだ」と話す会議は珍しくありません。

では何で選ぶか。その段を1割動かすのにいくらかかるか、その費用は毎月出続けるのか一度で済むのか、そしてその段には上限までどれだけ余地があるか、の3つです。広告で訪問数を1割増やす費用は毎月かかり、上限は商圏の検索需要で決まっています。問い合わせ率を1割上げる費用は一度きりのページ改修ですが、業種ごとの幅の上限に近づくほど動かしにくくなります。商談化率は費用がほとんどかからず、初回対応の速さで動きます。

この基準で段を選ぶ前に、確認が2つあります。各段に数字が入るか、そして入った数字の件数が判断に足りるかです。数字が入らない段は式に置けても評価できず、月30件を切る段は比率の揺れが大きすぎて月次では読めません。

なお、問い合わせが来ない原因をどの段階で詰まっているかから切り分ける手順は、ホームページから問い合わせが来ない原因の切り分け方|5段階で診断するで扱っています。あちらは「どこで詰まっているか」の診断、この記事は「目標をどう分解し、どの段を動かすと決めるか」の設計です。

KGIとKPIの定義|中小企業のKGIは売上ではなく粗利で置く

KGI(重要目標達成指標)は、事業として最終的に達成したい結果を数値にしたものです。KPI(重要業績評価指標)は、KGIに至る途中の段ごとに置く指標で、KPIが動けばKGIが動く関係になっている必要があります。KPIツリーは、この2つの関係を図にしたものです。頂点にKGI、その下に四則演算でつながるKPIが並び、末端に自社が直接動かせる指標が来ます。

KGIを何にするかで、ツリー全体の向きが決まります。多くの解説はKGIを「売上」と置きますが、広告費や制作費は粗利からしか払えないため、Web集客のツリーの頂点は粗利にします。売上を頂点にすると、粗利率の低い商品の受注を増やす方向にも「達成」と出てしまいます。問い合わせ数を頂点に置くのも同じ問題を起こします。単価の低い問い合わせ、商談にならない問い合わせを増やしても達成になるためです。

置き方 何が起きるか 向く場面
KGI=粗利 単価と粗利率まで含めて評価される。広告費との比較が直接できる Web集客の標準。この記事の前提
KGI=売上 粗利率の低い受注でも達成になる。広告費の妥当性が分からない 粗利率が全商品で同じ会社
KGI=問い合わせ数 単価が低い、商談にならない問い合わせを増やす方向に最適化される 問い合わせより下の段の記録が無く、他に選べない場合の暫定

「問い合わせ数ではなく、その先で置く」という判断は、業種ごとに書き方が変わります。製造業なら取りたい引き合いの条件、卸売なら口座と粗利、人材なら稼働と決定です。製造業での置き方は製造業のWebマーケティングは何を増やすべきか|問い合わせ数より先に決める、取りたい引き合いの条件で扱っています。

Web集客のKPIツリーの基本形|掛け算で6段、単位が円で閉じるかを確かめる

問い合わせを経て受注する事業のツリーは、次の6段の掛け算が基本形です。数値はすべて仮のもので、自社の数字に置き換えて使ってください。

指標 仮の数字 単位 ここまでの結果
1 訪問数(セッション) 3,000 回/月 3,000回
2 問い合わせ率 1.0% 件/回 30件
3 商談化率 50% 件/件 15件
4 受注率 40% 件/件 6件
5 受注単価 50万円 円/件 売上300万円
6 粗利率 40% 円/円 粗利120万円

単位を右端まで追うと、回×(件/回)×(件/件)×(件/件)×(円/件)×(円/円)=円になり、式が閉じています。単位が閉じない式は、どこかの段で別のものを掛けています。「PV数×クリック率」を訪問数の下に置いた場合、PVはページの表示回数でセッションではないため、掛けても訪問数になりません。単位を書いて確かめる手順は、多くの解説が挙げているとおり必須です。

掛け算と足し算の使い分け

掛け算は「行動の連鎖」を表し、足し算は「集団の分割」を表します。訪問数を検索広告経由、自然検索経由、SNS経由、指名検索経由に分けるのは足し算です。足し算で分ける意味があるのは、分けた集団ごとに下の段の比率が違うときだけです。検索広告経由の問い合わせ率が1.5%、SNS経由が0.3%と違うなら、訪問数を媒体別に分けたツリーが必要です。差が無いなら分ける意味は無く、段が増えて見にくくなるだけです。

媒体別に分けるには、流入元が問い合わせまで残っている必要があります。パラメータの設計はUTMパラメータの設計と命名規則|流入元を正しく計測する方法で扱っています。

掛け算の段はどこを1割動かしても結果は同じ1割|差が出るのは動かす費用と上限

上の仮の数字で、各段をそれぞれ1割だけ良くしたときの粗利を並べます。

1割動かす段 動かした後の値 粗利 増分 1割動かす手段(例) 費用の性質
訪問数 3,000→3,300回 132万円 +12万円 広告予算を増やす、記事を増やす 広告なら毎月出続ける。SEOなら先行して数か月後に効く
問い合わせ率 1.0%→1.1% 132万円 +12万円 ファーストビュー、フォーム、CTAの改修 一時費用。効けば翌月以降も残る
商談化率 50%→55% 132万円 +12万円 初回対応を当日中にする、対応の型を決める 費用はほぼゼロ。人の運用で動く
受注率 40%→44% 132万円 +12万円 見積の出し方、提案の範囲、比較される条件の整理 費用はほぼゼロ。営業の設計で動く
受注単価 50万円→55万円 132万円 +12万円 商品構成、提案の範囲、値付け 費用はゼロだが、問い合わせ率や受注率が下がる副作用がある
粗利率 40%→44% 132万円 +12万円 原価、外注費、工数の見直し Web施策の外。だが同じ12万円

6行すべてで、粗利は132万円、増分は12万円です。これが掛け算のツリーの性質で、どの段を選んでも「効き方」に差はありません。この表を見て初めて、段を選ぶ基準が効き方ではないことが共有できます。

差が出るのは右の2列です。訪問数を広告で1割増やすには、仮にクリック単価300円なら300回分で月9万円が毎月かかり、12万円の増分に対して純増は3万円です。問い合わせ率をページの改修で1割上げるなら費用は一度で済み、翌月以降も12万円が残ります。商談化率と受注率は費用がほとんどかからず、初回対応の速さと提案の型で動きます。この費用の差こそが、段を選ぶ基準です。

同じ12万円を得るのに、毎月9万円払うか、一度だけ払うか、ゼロで済むか。この比較は、ツリーの図には書かれていません。ツリーの横に「1割動かす費用」の列を足すことが、作った後の最初の作業です。

段は独立していない

表は各段を単独で動かした場合ですが、実際には段どうしが影響します。受注単価を上げると問い合わせ率と受注率が下がる、広告で訪問数を増やすと問い合わせの質が下がって商談化率が落ちる、といった動きです。1つの段を動かしたら、隣の段が下がっていないかを同時に見ます。ツリーの下段だけを見て「改善した」と判断し、上段の落ち込みに気づかないのが、ツリー運用の典型的な失敗です。

上限はどこにあるか|訪問数はインプレッションシェア、比率は業種の幅、単価は商品構成

費用と並ぶもう1つの基準が、その段にどれだけ余地が残っているかです。上限に近い段は、費用をかけても1割動きません。

上限を決めるもの どこで確認するか
訪問数(広告経由) 商圏内で、その語句が検索される回数。それ以上は予算を増やしても表示する機会が無い Google広告の「検索広告のインプレッション シェア」と「損失率(予算)」「損失率(ランク)」
訪問数(自然検索経由) 対策している語句の検索回数と、取れている順位 Search Consoleの表示回数と平均掲載順位
問い合わせ率 業種と商材で決まる幅。高単価の受注型で数%が上限になることが多い 自社の過去の最高値と、業種の幅
商談化率・受注率 100%が理論上の上限だが、実際は競合と比較される条件で決まる 失注理由の記録
受注単価 商品構成と、買い手の予算の分布 受注の単価分布

広告経由の訪問数の上限は、Google広告の管理画面で確認できます。ヘルプによると、検索広告のインプレッション シェアは「検索ネットワークで獲得したインプレッション数を、獲得可能だったと推定されるインプレッション数で割った値」で、損失率(予算)は「予算不足が原因で、検索ネットワークに広告が表示されなかった回数の割合」、損失率(ランク)は「オークションでの広告ランクの低さが原因で、検索ネットワークに広告が表示されなかった回数の割合」です。損失率(予算)が大きければ予算で訪問数が増え、両方の損失率が小さければ、予算を足しても訪問数は増えません。予算の適正を判定する指標としての使い方は店舗集客のGoogle広告費用相場は?月額予算の決め方を計算式で解説で扱っています。

問い合わせ率の上限は、業種と商材でおおよその幅が決まっており、幅の上端に近い会社が費用をかけて1割上げるのは難しくなります。目安の考え方はLPのCVR目安で扱っています。上限に近い段を捨て、余地がある段へ費用を移すのが、ツリーの2つ目の使い方です。

各段に数字が入るか|数字の所在は4か所に分かれ、鍵でつながないと式が使えない

ここまでは、数字が揃っている前提で書きました。実際の中小企業では、6段の数字が4つの別の場所にあり、そのままでは式に入りません。

数字がある場所 隣の段とつなぐ鍵
訪問数 GA4(セッション数) 流入元(UTMパラメータ)
問い合わせ数 GA4のキーイベント、広告の管理画面、フォームの受信箱。3つの数字は一致しない 実件数の正を1つに決める(フォームの受信数)
商談化率・受注率 営業の記録。無い会社が多い。スプレッドシートで足りる 問い合わせ1件ごとのIDと流入元
受注単価・粗利率 請求、会計 案件のID

問い合わせ数は、GA4のキーイベント、広告の管理画面のコンバージョン、フォームの受信箱の3つで数字が違います。媒体ごとに計測期間と接点の数え方が違うためで、どれか1つが正しいわけではありません。ツリーに入れる実件数は、フォームの受信数を正として1つに決めます。この決め方は複数媒体で同じサンクスページを使うときのCV計測|重複と水増しを防ぐ設定で扱っています。

商談化率と受注率は、問い合わせ1件ごとに「商談になったか、見積を出したか、受注したか、金額はいくらか、失注の理由は何か」を残していないと出ません。この記録が無い会社では、ツリーは問い合わせ数の段で止まり、粗利まで届きません。記録の最低限の項目は問い合わせ後の歩留まりを改善する|リード管理の始め方で扱っています。問い合わせの記録に流入元を残しておけば、媒体別の足し算のツリーも同じ表から作れます。

受注と粗利まで残った数字を広告の管理画面に戻すと、広告側の自動入札が問い合わせ数ではなく受注に向かいます。手順はオフラインコンバージョンとは?来店・成約データを広告に反映する方法で扱っています。これはツリーを運用に接続する方法で、ツリーを作る前に必要なものではありません。

件数が足りない段より下は分解しない|月30件の目安

数字が入ったとしても、件数が少ない段の比率は月ごとに大きく揺れます。件数が少ないときに偶然だけで動く幅は、件数の平方根に比例して小さくなります。件数が4倍になると、揺れの幅は半分になる関係です。

月の件数 偶然だけで動く幅の目安 1割の変化は読めるか
10件 ±約3割 読めない。3割動いても偶然の範囲
30件 ±約2割 読めない。1割の改善は揺れの中に入る
100件 ±約1割 境目。2〜3か月続けば判断できる
300件 ±約6% 1割の変化を月次で読める

この表は、件数が偶然で散らばる幅を平方根で見積もった簡略の目安です。季節や広告の配信量の変化は別に乗ります。それでも、上の仮の数字で商談15件、受注6件の段を月次のKPIにして「商談化率が50%から43%に落ちた」と評価しても、それは15件が13件になっただけで、偶然の範囲です。

だから、月30件を切る段より下は分解せず、比率の判定は3か月分をまとめて行います。月15件なら3か月で45件、揺れの幅は約15%まで縮みます。月次では件数と金額を記録するだけにし、比率の目標は四半期で置きます。問い合わせが月30件の会社なら、月次で比率を判定できるのは問い合わせ率までで、商談化率と受注率は四半期の指標です。

同じ理由で、月間の問い合わせが1桁のサイトでABテストを行っても差は偶然に収まります。件数が足りない場合の代わりの手段はABテストの始め方|やるべき条件と、できない場合の代替手段で扱っています。件数の少ない段では、比率で判定するのをやめ、明らかな問題を直す、対応の速さを変える、といった施策を先に打ちます。

問い合わせ数で止めるツリーが招くこと

Web集客のKPIツリーは、問い合わせ数を頂点に置いて止めたものが多く見られます。支援会社にとって問い合わせ数の増加はそのまま成果報告になり、その先の商談と受注は自社の管轄ではないためです。問い合わせ数で止めたツリーは、単価の低い問い合わせ、商談にならない問い合わせを増やす方向に、広告の自動入札も制作の改修も向かいます。

受注まで含めたツリーで見ると、問い合わせ数が2割増えて商談化率が3割下がった月は、粗利では減っています。問い合わせ数のツリーではこの月は「達成」で、粗利のツリーでは「未達」です。どちらを見て翌月の予算を決めるかで、広告費の向きが逆になります。

問い合わせ1件の許容費用を粗利から逆算する手順は広告のCPA目安はどう決めるか|業種別平均が使えない理由で扱っています。リピートがある事業で、初回の粗利ではなく回収に何か月かかるかで判断する場合はLTVとCACから広告費を決めるには|「3倍」の目安はSaaS由来で、比率は継続年数の置き方で動き、先に見るのは回収に何か月かかるかで扱っています。どちらも、ツリーの頂点を粗利に置いたときに初めて使える計算です。

運用|月に1回、変えたものと動いた段を並べる

ツリーの運用は、月に1回、「先月何を変えたか」と「どの段が動いたか」を1枚に並べることです。変えたものが無いのに段が動いた月は、偶然か外部要因です。変えたものがあって隣の段が下がった月は、副作用です。この2つを区別するために、ツリーの各段には、数値と並べて「その月に変えたこと」を書く欄を置きます。

広告代理店の報告を受ける立場なら、最初に確認するのは数字ではなく「先月、何を変えたか」です。その確認の仕方は広告レポートの見方|代理店の報告で最低限確認すべき項目で扱っています。ツリーがあれば、報告のどの数字がどの段に対応するかがすぐに分かり、報告に載っていない段(商談化率以降)を自社で埋める形になります。

訪問数や問い合わせ数の計測そのものの設定は、店舗ビジネスのためのGA4×GTM計測設定ガイドで扱っています。ツリーの上2段は、この設定が済んでいれば数字が入ります。

KPIツリーを作り直したほうがよい会社と、そのままでよい会社

作り直したほうがよい会社

  • 頂点が問い合わせ数か売上になっている。粗利に置き換え、受注単価と粗利率の段を足す。単価の低い問い合わせを増やす方向への最適化を止められる
  • 「どの段が効くか」を会議で議論している。掛け算の段の効き方は同じ。議論を「1割動かす費用」と「上限の余地」に置き換える
  • 商談化率や受注率を月次のKPIにしていて、件数が月30件を切っている。比率の判定を四半期に移し、月次は件数と金額の記録だけにする
  • 訪問数の下がPV数やクリック率で分解されている。単位が閉じていない。セッションを起点に、率は「件/回」で揃え直す
  • 媒体別に足し算で分けているが、媒体ごとの問い合わせ率に差が無い。分ける意味が無い。段を減らす

そのままでよい会社

  • 問い合わせより下の記録が無い。ツリーを作り直す前に、問い合わせ1件ごとの記録を始める。記録が3か月分たまってから、商談化率以降の段を足す
  • 問い合わせが月に数件。比率のツリーは機能しない。ツリーは訪問数と問い合わせ数の2段で止め、件数と金額を記録する。分解は件数が増えてから
  • すでに粗利を頂点にし、費用の列を持っている。作り直す必要は無い。月に1回、変えたものと動いた段を並べる運用を続ける

作る順序|粗利、分解、数字の所在、件数、費用と上限

順序を守る理由は、「効き方」を比べる工程を最初から外し、費用と上限の比較に時間を使うためです。数字が入らない段、件数が足りない段を先に切っておくと、比較の対象が2つか3つに絞られます。

1. KGIを粗利で置く

売上でも問い合わせ数でもなく、粗利にします。粗利率が商品で違わない会社だけ、売上で置いてもずれません。

2. 掛け算で分解し、単位が円で閉じるかを確かめる

訪問数×問い合わせ率×商談化率×受注率×受注単価×粗利率を基本形に、自社の取引の形(来店、体験、見積)に合わせて段の名前を変えます。各段に単位を書き、右端が円になるかを確かめます。足し算で分けるのは、分けた集団で下の段の比率が違うときだけです。

3. 各段に数字が入るかを見る

訪問数と問い合わせ数はGA4とフォームの受信箱、商談化率以降は営業の記録、単価と粗利率は請求です。問い合わせ1件ごとの記録が無い段は、式に置いても数字が入りません。記録を始めるのが先です。

4. 月30件を切る段より下は分解しない

月の件数が30件を切る段は、比率の判定を四半期に移します。月次は件数と金額を記録するだけにします。

5. 残った段に「1割動かす費用」と「上限の余地」を書き、動かす段を選ぶ

費用が一度で済むか毎月かかるか、上限までどれだけ余地があるかを並べ、安く動いて余地のある段から着手します。効き方は比べません。同じです。

よくある失敗

「問い合わせ率が一番効く」と決めて改修を始める

掛け算の段の効き方は同じです。1割動かす費用と上限の余地で選び直します。効くと感じるのは、その段の数字が小さく見えるからで、結果への寄与は他の段と変わりません。

KGIを問い合わせ数で止める

単価の低い問い合わせ、商談にならない問い合わせを増やす方向に、広告と制作の両方が向かいます。受注単価と粗利率の段を足し、頂点を粗利にします。

月15件の商談化率を月次で評価する

偶然だけで2割前後動く段です。15件が13件になっただけで「悪化」と判断し、対応を変えてしまいます。3か月まとめて判定します。

PV数やクリック率を訪問数の下に置く

PVはページの表示回数で、セッションではありません。単位が閉じない式は、どこかで別のものを掛けています。段の単位を書き直します。

数字が入らない段を式に残す

商談化率の記録が無いのに式に置くと、その段は空欄のまま、あるいは感覚の数字が入ります。記録を始めるまでは式から外し、問い合わせ数で止めた暫定のツリーだと明記します。

1つの段を動かして、隣の段の下落を見ない

受注単価を上げれば問い合わせ率と受注率は下がり、広告で訪問数を増やせば商談化率は下がりがちです。動かした段の隣を、同じ月に必ず見ます。

媒体別に細かく分けて、段が20個を超える

媒体ごとの問い合わせ率に差が無ければ、分ける意味はありません。差がある媒体だけを分け、残りはまとめます。段が多いツリーは、誰も毎月更新しません。

よくある質問

KPIツリーは何段まで分解すればよいですか

段数ではなく、数字が入って、月の件数が30件以上ある段までです。問い合わせが月30件の会社なら、月次で比率を判定できるのは問い合わせ率までで、商談化率と受注率は四半期の指標にします。

どのKPIから改善すべきですか

掛け算の段はどこを1割動かしても結果は同じ1割なので、効き方では選べません。1割動かす費用が一度で済むか毎月かかるか、その段に上限まで余地があるか、の2つで選びます。多くの会社では、費用がほとんどかからない商談化率(初回対応の速さ)が最初の候補になります。

KGIは売上でよいですか

粗利率が商品で違わないなら売上でもずれません。違うなら粗利にします。広告費は粗利からしか払えないため、広告費との比較には粗利が必要です。

足し算と掛け算はどう使い分けますか

掛け算は行動の連鎖(訪問して、問い合わせて、商談して、受注する)、足し算は集団の分割(媒体別、新規とリピート)です。足し算で分けるのは、分けた集団ごとに下の段の比率が違うときだけです。

商談化率や受注率の記録がありません

問い合わせ1件ごとに、日時、流入元、商談の有無、見積の有無、受注の有無、金額、失注理由を残す表を作ります。スプレッドシートで足ります。3か月分たまったら、ツリーに段を足します。

広告代理店のレポートとKPIツリーはどう対応させますか

レポートの表示回数、クリック数、コンバージョン数は、ツリーの訪問数と問い合わせ数に対応します。商談化率以降はレポートに載らないため、自社で埋めます。レポートを見るときは数字より先に「先月、何を変えたか」を確認します。

ツールは必要ですか

必要ありません。段が6個から10個で、月に1回更新するだけなら、スプレッドシートの1枚で足ります。ツールが必要になるのは、媒体別の足し算で段が増え、複数人が毎週更新する段階です。

まとめ

KPIツリーは、KGIを頂点に置き、四則演算でつながる指標に分解した図で、作ることではなく「どの段を動かすか」を決めるための道具です。掛け算でつないだ段は、どこを1割動かしても頂点は同じ1割しか動きません。仮の数字では、訪問数を3,000から3,300にしても、問い合わせ率を1.0%から1.1%にしても、粗利の増分は同じ12万円でした。

段を選ぶ基準は、効き方ではなく、1割動かす費用が一度で済むか毎月かかるかと、その段に上限まで余地があるかです。広告経由の訪問数の上限はインプレッション シェアの損失率で確認でき、問い合わせ率の上限は業種の幅で、商談化率と受注率は費用をかけずに動かせる段です。

中小企業のツリーは、頂点を粗利に置き、各段の数字がGA4、広告の管理画面、営業の記録、請求と4か所に分かれている点を先に解消します。問い合わせ1件ごとの記録が無い段には数字が入りません。月30件を切る段では比率の揺れが2割前後あり、月次では読めないため、その段より下は分解せず、四半期でまとめて判定します。作る順序は、粗利で置く、掛け算で分解して単位を確かめる、数字が入るかを見る、件数で切る、費用と上限で選ぶ、です。

粗利を頂点にしたKPIツリーの設計から、問い合わせ以降の記録を含めた計測の実装、費用と上限に基づく施策の配分までの設計はWEBマーケティング・広告運用で承っています。会社紹介資料は資料ダウンロードから、ご相談はお問い合わせからご連絡ください。

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