Google広告、Meta広告、LINE広告のタグを1枚のサンクスページに並べる。よくある構成ですが、この状態で媒体別のコンバージョン数を足すと、ほぼ確実に実際の問い合わせ件数を超えます。3件の問い合わせに対して、レポート上は5件になっていることがあります。
これは設定ミスではなく、各媒体が自分の接点しか見ていないことによる正常な挙動です。問題になるのは、この数字をそのまま合算して費用対効果を判断したときです。実態より良く見えるため、止めるべき配信を止められなくなります。
この記事では、合計が実件数を超える3つの原因を分けて整理し、実件数を確定させる基準の置き方、そのうえで媒体別の貢献を見るための設定手順を解説します。
この記事でわかること
・媒体別CVの合計が実件数を超える3つの原因
・実件数を確定させる基準の置き方(何を正とするか)
・コンバージョンのカウント方法の設定と、既定値の違い
・リロードと直接アクセスによる水増しを止める方法
・サンクスページを媒体別に分けるべきかの判断
・月初に行う突き合わせの手順
合計が実件数を超える3つの原因
原因を分けずに「数字が合わない」と扱うと解決しません。次の3つは対処法がまったく違います。
| 原因 | 何が起きているか | 対処 |
|---|---|---|
| 媒体間の重複 | 同じ1件を複数の媒体が自分の成果として計上する | 合算しない。基準を1つ決める |
| リロード・直接アクセス | サンクスページが再読み込みされ、タグが再発火する | 発火条件を1回に限定する |
| カウント方法の設定 | 同一ユーザーの複数回の行動をすべて数えている | 媒体側の設定を用途に合わせる |
1行目は設定では解決できません。広告に接触した経路が複数ある以上、各媒体が自分の貢献を計上するのは仕様どおりです。解決策は、媒体別の数字を足さないことです。
2行目と3行目は設定で解決できます。以下で順に扱います。
媒体をまたいだCVの合算は、設定では直らない。合算をやめるのが解。
リロードとカウント方法は設定で直る。まずこの2つを潰す。
実件数を確定させる基準を1つ決める
最初にやるのは、何をもって1件とするかを決めることです。ここが決まっていないと、どの数字も正しく見えてしまいます。
| 基準の候補 | 長所 | 短所 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| フォームの受信数(メールやCRM) | 実件数として最も確実 | 媒体別の内訳が分からない | 全社の基準として使う |
| GA4のイベント数 | 媒体別の内訳が見える | 計測漏れが起きうる | 内訳の把握に使う |
| 媒体のコンバージョン数 | 各媒体の最適化に必要 | 合算できない | 媒体内の判断に使う |
| 商談・来店の記録 | 事業成果に最も近い | 記録の運用が必要 | 最終的な評価に使う |
実務では、1行目を実件数の正とし、2行目で内訳を見て、3行目は媒体内の判断にだけ使うという配分が機能します。3行目を足し算に使わないことが要点です。
レポートを組むときも同じ設計にします。合算する列にはフォームの受信数を置き、媒体別の数値は媒体ごとの列に留めてください。ツールに自動で合計させないという判断は広告レポート作成を自動化する方法|任せられる作業と、人が残すべき判断でも扱っています。
カウント方法の設定を用途に合わせる
Google広告では、コンバージョンアクションごとにカウント方法を選べます。「全件」は広告接触後に発生したコンバージョンをすべて数え、「初回のみ」はクリック後のコンバージョンを1回だけ数えます(Google広告ヘルプ「コンバージョンのカウント方法について」)。
| カウント方法 | 数え方 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 全件 | 同一ユーザーの複数回の行動をすべて数える | 購入など、繰り返し発生する行動の価値を測る |
| 初回のみ | クリック後のコンバージョンを1回だけ数える | 問い合わせや資料請求など、見込み客1人分の価値を測る |
問い合わせを成果にしている場合、「初回のみ」が適切です。同じ人が確認のために2回送信したケースを2件として数えると、CPAが実態より良く見えます。
同ヘルプによれば、広告経由の電話問い合わせ、アナリティクスの目標、ウェブサイト上の電話番号への問い合わせ、アプリインストールについては、既定で1回のみのカウントが使われます。つまり、既定値は成果の種類によって違います。自社が使っているコンバージョンアクションを一覧で開き、種類ごとに設定を確認してください。
他の媒体にも同種の設定があります。名称と既定値が媒体ごとに異なるため、使っている媒体すべてで一度確認する価値があります。
リロードと直接アクセスによる水増しを止める
サンクスページのURLが分かる状態だと、次の経路で件数が増えます。いずれも実際の問い合わせではありません。
- 送信後にブラウザを更新した(タグが再発火する)
- 戻るボタンで送信し直した
- サンクスページがブックマークされている
- 社内の担当者が動作確認のために開いた
- サンクスページが検索結果に出て、外部から直接アクセスされた
対処は次の4つです。上から順に効果が大きく、実装の手間も小さい順に並んでいます。
- 直前のページを条件にする:フォームのページを経由した場合だけ発火させる
- 1回だけ発火させる:同一の訪問内で重複して送信しない設定にする
- サンクスページを検索対象から外す:インデックスさせない指定を入れる
- 社内アクセスを除外する:確認作業が数値に混ざらないようにする
3番目は忘れられがちです。サンクスページが検索結果に出ていると、無関係な流入がコンバージョンとして計上され続けます。自社サイトで「ありがとうございました」を検索して出てこないか、一度確認してください。
設定を変えたあとは、必ずテスト送信をして1件だけ計上されることを確かめます。計測されない場合の切り分けはGA4のコンバージョンが計測されない時に確認すべき5つのポイントにまとめています。
サンクスページのURLが検索結果に出ていないか、まず確認する。
設定変更のあとは必ずテスト送信し、1件だけ計上されることを確かめる。
サンクスページを分けるべきか
媒体ごとにサンクスページを分ければ重複は解決する、と考えたくなりますが、多くの場合は不要です。判断は次のとおりです。
| 状況 | 分けるか | 理由 |
|---|---|---|
| 媒体別の内訳を知りたい | 分けない | パラメータとGA4のイベントで判別できる |
| 問い合わせの種類が違う(資料請求と見積依頼) | 分ける | 成果の価値が違うため、別のCVとして扱う |
| 商材やブランドが複数ある | 分ける | 成果の帰属先が異なる |
| キャンペーンごとに文言を変えたい | 分けない | 1枚で内容を出し分けるほうが保守が楽 |
| 電話とフォームの両方がある | 分ける | 計測の仕組みそのものが違う |
1行目が最も多い誤解です。媒体を判別するためにページを増やす必要はありません。流入時のパラメータを引き継げば、1枚のページで内訳が分かります。パラメータの設計はUTMパラメータの設計と命名規則|流入元を正しく計測する方法を参照してください。
ページを増やすと、タグの更新漏れが起きる箇所も増えます。分けるのは、成果の価値が違うときだけにしてください。
媒体別の貢献を見るための設定
実件数を1つに確定させたうえで、内訳を見るための設定を整えます。順序が重要です。
- フォームの送信を1つのイベントとして計測する:まずここを確実にする
- 流入元の情報を引き継ぐ:フォームの隠し項目に流入元を保持し、送信内容に含める
- 問い合わせ内容に流入元を記録する:受信メールやCRMで、どの経路から来たかが分かる状態にする
- 媒体のタグは最適化のために残す:数字を足すためではなく、配信の学習に使う
- 電話は別の仕組みで数える:フォームと同じ経路では計測できない
2番目と3番目を実装しておくと、後から「どの媒体からの問い合わせが成約したか」を確認できます。媒体のレポートだけでは、成約したかどうかは分かりません。ここをつなぐと、CPAではなく受注ベースで媒体を評価できるようになります。
5番目については、TikTok広告など媒体ごとに実装の手順が異なります。手順はTikTok広告のコンバージョン計測設定|GTMでの実装手順で解説しています。
月初に行う突き合わせ
設定は一度組んだら終わりではありません。月に一度、次の3つを比べてください。5分で終わります。
| 比べるもの | 確認すること | ずれていた場合 |
|---|---|---|
| フォームの受信数 と GA4のイベント数 | GA4側が少なくないか | 計測漏れ。タグの発火条件を確認 |
| フォームの受信数 と 媒体CVの合計 | 合計が実件数を大きく超えていないか | 重複計上。合算をやめる |
| 先月と今月のイベント数 | 急に0や倍になっていないか | サイト更新でタグが外れた可能性 |
3行目が最も見落とされます。サイトを更新した月にタグが外れる事故は頻繁に起きます。エラーは表示されず、数字が静かに減るだけなので、比較しないと気づけません。
計測全体の設定
個別の計測は、全体の実装が動いていることが前提になります。設定の全体像は店舗ビジネスのためのGA4×GTM計測設定ガイドを参照してください。
よくある失敗
媒体別CVを足して全体のCPAを出す
実態より良い数字が出ます。合算にはフォームの受信数を使い、媒体別は媒体ごとに見てください。
サンクスページが検索結果に出ている
無関係な流入がコンバージョンとして計上され続けます。インデックスさせない指定を入れてください。
カウント方法を確認しないまま運用する
既定値は成果の種類によって異なります。問い合わせを成果にしているなら、1回のみのカウントになっているかを確認してください。
テスト送信の分を除外しない
動作確認のたびに件数が増えます。社内からのアクセスを除外する設定を先に入れてください。
媒体を判別するためにページを増やす
保守する箇所が増え、更新漏れの原因になります。パラメータの引き継ぎで足ります。
よくある質問
媒体別CVの合計と実件数、どちらを社内に報告すべきですか
実件数です。媒体別の数値は、その媒体の配信を判断するための材料として別に示してください。1つの表に混ぜると、合計を足したくなります。
重複はどのくらい出るものですか
媒体数と、検討期間の長さで変わります。複数媒体を並行して配信し、検討に日数がかかる商材ほど大きくなります。自社の重複幅は、フォーム受信数と媒体CV合計を数か月比べれば分かります。
媒体のタグを減らせば解決しますか
重複は減りますが、各媒体の配信の学習に使うデータも減ります。タグは残したうえで、合算をやめるほうが成果は落ちません。
フォームを外部サービスで作っています
送信後に自社ドメインのサンクスページへ戻す構成であれば、同じ考え方で計測できます。外部サービス上で完結する場合は、そのサービス側の計測機能とタグの設置可否を確認してください。
電話の問い合わせはどう扱えばよいですか
フォームとは別のコンバージョンとして扱ってください。同じ1件として合算すると、どちらの導線を改善すべきかが分からなくなります。
まとめ
複数媒体で同じサンクスページを使う場合、媒体別コンバージョンの合計が実件数を超えるのは正常な挙動です。各媒体が自分の接点しか見ていないためで、設定では解決できません。解決策は、合算をやめて基準を1つ決めることです。
設定で直せるのは残り2つです。1つはリロードや直接アクセスによる再発火で、直前のページを条件にすること、1回だけ発火させること、サンクスページを検索対象から外すことで止まります。もう1つはカウント方法で、問い合わせを成果にしているなら1回のみのカウントが適切です。既定値は成果の種類によって異なるため、一覧で確認してください。
そのうえで、フォームの隠し項目に流入元を保持し、受信内容に記録しておくと、後から成約ベースで媒体を評価できます。媒体のレポートだけでは成約したかどうかは分からないため、ここをつなぐ価値は大きくなります。月初にフォーム受信数と比べる習慣を作れば、タグが外れる事故も早く見つかります。
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