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複数媒体への広告予算配分の考え方|テスト予算と本予算の分け方

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「Google広告に5割、Meta広告に3割、TikTok広告に2割」。このような配分表を見かけますが、この比率に根拠はありません。最適な配分は、商材の検索需要、認知度、単価、検討期間によって変わるためです。

配分を決めるうえで先に必要なのは、媒体ではなく「役割」で予算を区切ることです。同じ10万円でも、既存需要を刈り取るための10万円と、需要を作るための10万円では、評価すべき指標も評価にかかる期間も違います。これを同じCPAで比べると、必ず刈り取り施策が勝ち、それ以外が止まります。

この記事では、役割別の予算区分、テスト予算と本予算の分け方、配分を決める4ステップ、媒体を増やすべきかの判断基準、そして媒体別CPAを単純比較してはいけない理由までを解説します。

この記事でわかること

・固定比率で配分してはいけない理由と、代わりに使う4つの役割区分

・テスト予算の金額を、判断に必要なCV数から逆算する方法

・配分を決める4ステップと、計算例

・媒体を増やすべきケースと、増やすべきでないケース

・媒体別CPAを単純比較してはいけない理由と、増分の簡易確認方法

・見直しのタイミングと、増減を判断する基準表

結論:配分は「媒体」ではなく「役割」で決める

予算を媒体名で分ける前に、次の4区分に分けます。

役割 目的 代表的な媒体・施策 主な指標 評価期間
①刈り取り 今すぐ客の獲得 検索広告、MEO、指名キーワード CPA、CV数 1〜2か月
②掘り起こし 検討層・潜在層への接触 SNS広告、ディスプレイ、比較検討キーワード CPA(別基準)、アシストCV、指名検索の増加 3〜6か月
③再訪・指名 既存接触者の引き戻し リターゲティング、LINE、メール 再訪率、リピート率 1〜3か月
④実験 新媒体・新訴求の検証 新規媒体、新クリエイティブ 学習の有無(成否ではない) 固定期間で区切る

この分け方の実務的な価値は、評価期間が違うものを同じ会議で比べなくなる点にあります。②の掘り起こしを1か月のCPAで判断すると、ほぼ確実に「効果がない」という結論になります。効果が出る前に止めているだけです。

配分は媒体名ではなく役割で区切ります。役割ごとに指標と評価期間を変えてください。

同じCPAで比べると、必ず刈り取りが勝ち、半年後に伸びしろが尽きます。

固定比率が機能しない理由

「Google何割、Meta何割」という配分が使えないのは、最適解が事業条件で変わるためです。

条件 配分への影響
既存の検索需要が大きい 検索広告の比率を高くできる。天井まで刈り取るのが先
検索需要が小さい/認知が低い 検索広告に積んでも消化できない。需要創出型へ配分する
顧客単価・粗利が高い 許容CPAが上がるため、掘り起こしにも予算を回せる
検討期間が長い 比較検討層への接触と再訪施策の比重が上がる
商圏が狭い(店舗) 検索広告に需要天井があるため、上限を先に確認する
クリエイティブを供給できない SNS広告の効果が持続しない。制作体制と併せて判断する

特に店舗ビジネスでは、検索広告に商圏由来の需要天井があります。天井を超えて積んでも消化されないため、配分を考える前に上限を確認してください。計算方法は店舗集客のGoogle広告費用相場は?月額予算の決め方を計算式で解説で解説しています。

テスト予算と本予算を分ける

テスト予算は「判断に必要なCV数」から逆算する

新しい媒体を試すとき、金額を先に決めてはいけません。判断できるかどうかで決めます。

必要なテスト予算 = 判断に必要なCV数 × 想定CPA

判断に必要なCV数の目安は次のとおりです。

判断したいこと 必要なCV数の目安
そもそもCVが発生するか 5〜10件
CPAが許容範囲に入るか 20〜30件
クリエイティブ間の優劣を判断する 各パターン20件以上
自動入札に学習させる 30件以上(媒体の推奨に従う)

想定CPAが1万円で、CPAの妥当性まで判断したいなら、テスト予算は20〜30万円必要という計算になります。ここで「まず5万円で試す」と決めると、CVが5件しか出ず、良し悪しを判断できないままテストが終わります。

判断できない金額でテストするくらいなら、テストしないほうがよいというのが実務的な結論です。予算が足りない場合は、対象を絞って(1媒体・1訴求・1エリア)必要CV数を確保してください。

テスト期間の決め方

期間は、次の2つの長いほうに合わせます。

  • 自動入札の学習が安定するまでの期間(媒体により1〜2週間程度)
  • 商材の検討期間の2倍(検討に2週間かかる商材なら1か月)

検討期間を無視して1週間で打ち切ると、遅れて発生するCVを取りこぼした状態で判断することになります。特にBtoBや高単価商材では、この差が大きくなります。

テスト枠は全体の10〜20%に固定する

月間広告予算 本予算(①〜③) 実験枠(④) 実験枠でできること
10万円 10万円 0円 実験枠を取らない。主軸に集中する
30万円 27万円 3万円 クリエイティブ検証。新媒体は難しい
50万円 42〜45万円 5〜8万円 1媒体を絞った条件で試せる
100万円 80〜90万円 10〜20万円 新媒体の本格テストが可能

月10万円以下の規模では、実験枠を取ると本予算が判断できる量に届かなくなります。この段階では媒体を増やさず、1媒体を磨くほうが成果が出ます。

配分を決める4ステップ

  1. 目標CV数と許容CPAを出す:粗利から逆算する。ここが決まらないと配分の議論は成立しない
  2. 主軸(刈り取り)の需要天井を確認する:キーワードプランナーで商圏・対象を指定して上限を出す
  3. 天井までを主軸に充てる:余った分を②掘り起こしと③再訪へ配分する
  4. 実験枠を固定で確保する:残りから10〜20%。使わなかった月も他へ流用しない

計算例(すべて仮の数値です)

項目 数値 根拠
月間広告予算 50万円
許容CPA 1万円 粗利からの逆算
目標CV数 50件 50万円 ÷ 1万円
検索広告の需要天井 25万円 商圏内の検索数 × 想定CTR × 想定CPC
①刈り取り 25万円 天井まで
②掘り起こし 13万円 残りの過半。CPAは別基準(許容CPAの1.5倍まで許容)
③再訪・指名 7万円 サイト訪問者・既存顧客へのリターゲティング
④実験 5万円 固定枠。今月はTikTokの縦型静止画を検証

ここで重要なのは、②の掘り起こしに別のCPA基準を設定している点です。同じ1万円で評価すると、掘り起こしは必ず不合格になります。掘り起こしの役割は「後で刈り取れる需要を作ること」であり、その場でのCPAは高くて当然です。

別基準の置き方としては、許容CPAの1.5〜2倍を上限とし、あわせて指名検索数とサイトへの直接流入の推移を見ます。これらが増えていれば、掘り起こしは機能しています。

媒体を増やすべきか、増やすべきでないか

状況 判断 理由
主軸媒体でインプレッションシェア損失率(予算)が高い 増やさない まだ主軸に伸びしろがある。増額のほうが効率的
主軸の損失率がほぼゼロで、CPAも許容内 増やす 天井に達している。他の需要を取りにいく段階
月間CV数が10件未満 増やさない 分散させると各媒体で判断できなくなる
クリエイティブを作れる体制がない 増やさない SNS系は素材の供給が止まると成果も止まる
特定媒体への依存が事業リスクになっている 増やす アカウント停止時に売上がゼロになる状態は避ける
担当者が1人で運用している 慎重に 媒体が増えるほど確認工数が増え、どれも中途半端になる

最後の観点は軽視されがちです。媒体を1つ増やすと、入稿、審査対応、レポート、改善の工数がそれぞれ発生します。運用工数を計算に入れずに媒体を増やすと、全媒体の精度が下がります

なお、特定媒体への依存リスクは実際に起こります。停止時の影響と対応は広告アカウントが停止された時の原因と復旧方法で解説しています。

媒体別CPAを単純比較しない

配分の見直しで最もよくある誤りが、媒体別CPAの単純比較です。次の3つの理由で、数字がそのまま実力を表していません。

要因 何が起きるか 対処
ラストクリックの偏り 最後に触れた媒体にCVが計上される。検索広告が有利に出る アシストコンバージョンも併せて確認する
指名検索の取り込み 他媒体で認知した人が、指名検索の広告でCVする 指名キーワードのCVを分けて集計する
増分の不明 広告がなくても発生していたCVが含まれる 停止テストで増分を確認する

増分を簡易に確認する方法

厳密な検証は難しくても、次の方法で傾向はつかめます。

  • 停止テスト:1媒体を2週間止め、全体のCV数がどれだけ落ちるかを見る。落ちない場合、その媒体の増分は小さい
  • 指名検索の除外:指名キーワードのCVを別集計にし、非指名のみでCPAを比較する
  • MERで見る:媒体別ではなく、広告費の合計 ÷ 売上(または粗利)で全体効率を見る

停止テストは売上への影響があるため、繁忙期を避け、期間を区切って実施してください。それでも、「止めても変わらない媒体」を見つけられる価値は大きいです。

見直しのタイミングと判断表

配分は毎月動かすものではありません。学習が安定する期間を確保したうえで、月次で次を確認します。

状況 とるべき行動
主軸のCPAが許容内/予算による損失が大きい 主軸を増額する。他媒体の追加はまだ不要
主軸のCPAが許容内/損失がほぼゼロ 天井。掘り起こしまたは新媒体へ配分を移す
主軸のCPAが許容超過 配分ではなく設定を見直す。除外キーワードとLPが先
掘り起こしのCPAが高いが、指名検索が増えている 継続する。役割どおり機能している
掘り起こしのCPAが高く、指名検索も横ばい 訴求かクリエイティブを変える。それでも動かなければ縮小
実験枠で学習が得られなかった 金額ではなく条件を見直す(対象を絞る)
全体のCV数が月10件未満 媒体を絞る。分散をやめる

変更は一度に1つにしてください。複数の媒体の予算を同時に動かすと、何が効いたか分からなくなります。

よくある失敗

失敗1:媒体を増やしてから予算を分ける

順序が逆です。まず主軸の天井を確認し、余った分をどこへ回すかを決めます。媒体ありきで分けると、どの媒体も判断できる量に届きません。

失敗2:成果が出ない媒体をすぐ止める

掘り起こし系は、評価期間が3〜6か月です。1か月のCPAで判断すると、効果が出る前に止めることになります。役割ごとに評価期間を決めてから開始してください。

失敗3:実験枠を本予算に流用する

短期の数字が悪い月ほど、実験枠を主軸に回したくなります。しかしこれを続けると、新しい獲得手段が永久に見つかりません。実験枠は固定費として扱ってください。

失敗4:指名検索を成果に含めたまま比較する

指名キーワードのCPAは低く出ます。これを含めた媒体別CPAで配分を決めると、実際には他媒体が作った需要を、検索広告の成果として評価することになります。

失敗5:運用工数を計算に入れない

媒体が増えるほど、入稿・審査対応・レポート・改善の工数が増えます。人員が変わらないまま媒体だけ増やすと、全体の精度が下がります。

よくある質問

Q. 月10万円の予算で複数媒体に分けるべきですか?

分けないほうが結果は安定します。月10万円を2媒体に分けると、各5万円となり、CVが数件しか発生しません。この規模では良し悪しの判断ができないため、1媒体に集中してキーワードとLPの精度を上げるほうが効率的です。

Q. 予算配分の黄金比のようなものはありますか?

ありません。検索需要の大きさ、認知度、顧客単価、検討期間で最適解が変わるためです。使えるのは比率ではなく手順です。許容CPAを出す、主軸の天井を確認する、残りを役割別に振る、実験枠を固定する。この順序はどの事業でも共通します。

Q. 新しい媒体はいくらから試せますか?

判断に必要なCV数 × 想定CPAで計算してください。CPAの妥当性まで判断したいなら20〜30件分が必要です。金額が用意できない場合は、対象を1訴求・1エリアに絞ってCV単価を下げ、必要CV数を確保する方法があります。

Q. 配分はどのくらいの頻度で見直すべきですか?

月次で確認し、変更は必要なときだけ行います。学習を伴う自動入札を使っている場合、頻繁な変更は配信を不安定にします。変更する場合も、20〜30%ずつの調整にとどめてください。

Q. media mix modeling(MMM)のような手法は必要ですか?

広告費が月数百万円規模になり、複数媒体・複数施策が同時に動いている場合には検討の価値があります。中小規模では、停止テストと指名検索の分離集計で十分に判断できます。手法の高度さより、役割区分と評価期間の設計のほうが先です。

まとめ

広告予算の配分は、媒体名ではなく役割で区切ってください。刈り取り、掘り起こし、再訪・指名、実験。この4区分に分け、それぞれに別の指標と評価期間を設定します。同じCPAで比べると、必ず刈り取りが勝ち、半年後に伸びしろが尽きます。

手順は、許容CPAを出す、主軸の需要天井を確認する、天井までを主軸に充てて残りを役割別に振る、実験枠を固定で確保する、の4ステップです。テスト予算は金額から決めるのではなく、判断に必要なCV数から逆算してください。

そして、媒体別CPAの単純比較は避けてください。ラストクリックの偏り、指名検索の取り込み、増分の不明という3つの要因で、数字がそのまま実力を表していません。停止テストと指名キーワードの分離集計で、実態に近づけられます。

「媒体を増やしたが、どこに配分すべきか判断できない」「新しい媒体を試したが良し悪しが分からなかった」「媒体別のCPAは見ているが、全体として効率が上がっているか自信がない」といった状態にある場合は、配分比率だけでなく、役割区分・評価期間・計測設計を合わせて見直す必要があります。

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