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フリーランスと制作会社、依頼するならどちらか|費用差の正体と発注側に生じる義務

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同じ制作物でも、フリーランスと制作会社では見積額が2倍以上違うことがあります。この差を「単価の差」と読むと判断を誤ります。差の大半は、見積に含まれている工程の数です。安いほうは工程が少なく、その分は自社が引き受けることになります。

もう1つ、比較記事でほとんど触れられない差があります。フリーランスへ直接業務委託すると、発注する側にも法律上の義務が生じます。2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法によるもので、取引条件の明示は発注者の規模を問わず求められます。制作会社に依頼する場合、この義務は自社ではなく制作会社の側に移ります。

この記事では、工程別に費用差の中身を分解し、自社に乗る工数と義務を金額に直したうえで、条件別にどちらを選ぶかを整理します。

この記事でわかること

・見積額の差を工程別に分解した比較表

・フリーランスへ直接発注したときに自社へ生じる義務の範囲

・見積に出てこない社内工数を金額に直す計算式

・条件別にどちらが向くかの判断表

・併用する場合の切り分け方

・契約前に確認する項目(記入欄つき)

費用差の大半は、工程が含まれているかどうか

制作の工程を分けると、見積の差がどこから出ているかが見えます。フリーランスへの依頼が安いのは、中央の3工程だけを買っているからであることが多くあります。

工程 フリーランスへ直接 制作会社へ依頼 外れた場合に引き受けるのは
要件の整理 含まれないことが多い 含まれる 自社
情報設計・構成 個人差が大きい 含まれる 自社
原稿の作成 原則として含まれない 見積次第 自社
デザイン 含まれる 含まれる -
実装 含まれる 含まれる -
修正対応 回数の取り決めによる 回数が明記される 自社の調整工数
進行管理 含まれない 含まれる 自社
検収・品質確認 含まれない 含まれる 自社
公開後の不具合対応 契約外のことが多い 保証期間が定められる 自社または別発注

見積を比べるときは、金額の前にこの表を埋めてください。同じ金額でも、含まれる工程が違えば別の買い物です。比較の観点はWeb制作の見積書の読み方|同じ金額が別の買い物になる理由で詳しく整理しています。

特に見落とされるのが「原稿の作成」です。デザインは決まったのに文章が出てこず、公開が2か月遅れるという事態は、制作費の安さでは取り返せません。

安いほうが得とは限らない。外れた工程は消えるのではなく、自社に移る。

比較は金額ではなく、含まれる工程を揃えてから行う。

直接発注すると、自社にも義務が生じる

フリーランスへ直接業務委託する場合、発注する側はフリーランス・事業者間取引適正化等法(2024年11月1日施行)の対象になります。義務の範囲は、自社が従業員を使用しているかと、委託期間の長さで変わります。

条件 発注側に求められること
すべての発注事業者 業務委託をしたら直ちに、書面または電磁的方法で取引条件を明示する(給付の内容、報酬額、支払期日など)
従業員を使用する発注事業者 報酬の支払期日を、物品等を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内に定め、その期日までに支払う
同上で、1か月以上の継続的な委託 受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入や利用の強制、不当な経済上の利益提供の要請、不当な変更ややり直しをしない。募集情報を的確に表示する
同上で、6か月以上の継続的な委託 育児や介護と業務の両立への配慮、ハラスメント対策の体制整備、中途解除や不更新の場合は原則30日前までに予告する

実務への影響は3点です。1つ目は発注のたびに条件を書面で出す運用が必要になること。口頭やチャットでの依頼を積み上げる進め方は成り立ちません。2つ目は支払サイトの設計で、月末締めの翌々月払いといった条件は見直しが必要になる場合があります。3つ目は継続的に依頼するほど義務が増えることです。

制作会社へ依頼する場合、これらの義務は自社ではなく制作会社の側に移ります。金額の差には、この管理負担の差が含まれていると考えてください。

法の対象範囲や具体的な運用は公正取引委員会の特設サイトに整理されています。実際の契約書や発注書の様式を作る際は、必ずそちらを直接確認してください。

見積に出てこない社内工数を金額に直す

直接発注では、要件整理、原稿、進行管理、検収を自社が担います。この時間を金額に直すと、見積の差が実際にはどのくらいなのかが分かります。

項目 計算 記入欄
要件整理と説明にかかる時間 打ち合わせ+資料作成 (   )時間
原稿の作成と確認 文章を書く時間+社内確認 (   )時間
進行管理 催促、調整、日程の再設定 (   )時間
検収と修正指示 確認と差し戻しの往復 (   )時間
合計時間 上の4つの合計 (   )時間
時間単価 担当者の人件費 ÷ 稼働時間 (   )円
社内コスト 合計時間 × 時間単価 (   )円
実質の総額 見積額 + 社内コスト (   )円

この計算をすると、見積の差が思ったより小さいケースと、想定以上に大きいケースの両方が出ます。判断が分かれるのは、社内に進行管理できる人がいるかどうかです。いる場合は直接発注が有利になり、いない場合は差が逆転します。

条件別に、どちらが向くか

自社の状況 向いている依頼先 理由
作るものと仕様が明確に決まっている フリーランス 要件整理の工程が不要で、差額がそのまま得になる
社内に制作経験者がいて指示が出せる フリーランス 進行管理を自社で担える
単発の制作物(バナー、資料、図版) フリーランス 工程が少なく、期間も短い
何を作るべきかから決めたい 制作会社 要件整理と設計が見積に含まれる
複数の職能が必要(設計、デザイン、実装、原稿) 制作会社 個人への同時発注は自社が統合役になる
公開後も継続して更新する 制作会社 属人化した場合の停止リスクを避けられる
納期が事業計画に紐づいている 制作会社 体制の代替が効く
社内に発注管理の体制がない 制作会社 取引条件の明示や支払期日の管理を自社で負わずに済む

「安く済ませたい」だけを理由にフリーランスを選ぶと、上の表の後半に該当した場合に破綻します。逆に、仕様が固まっていて社内に指示できる人がいるなら、制作会社に頼む合理性は小さくなります。制作会社を選ぶ場合の確認項目はデザイン制作会社の選び方|見積り比較で確認すべきポイントにまとめています。

併用する場合の切り分け方

どちらか一方に決める必要はありません。実際に機能しやすいのは、設計と判断を1か所に集約し、手を動かす部分を分散させる形です。

  1. 設計と品質の基準:1か所に集約する(社内でも制作会社でもよい)
  2. 初回の制作物:基準を作る役割なので、集約先が担当する
  3. 横展開の量産:基準ができた後なので、フリーランスへ分散できる
  4. 継続的な更新:頻度と量で判断する。月に一定量あるなら定額契約も選択肢

3番目が成立する条件は、基準が文書になっていることです。口頭で共有した基準は、依頼先が増えるほど崩れます。配色、書体、余白、ロゴの使い方。この4つだけでも文書にしておけば、量産を分散できます。

4番目について、依頼量が読めない場合は都度発注のほうが割安です。損益分岐の考え方はデザイン業務を定額で外注するメリットとは?損益分岐点と契約前の確認項目で解説しています。

設計と基準づくりは集約し、量産は分散させる。

分散できるのは、基準が文書になっている場合に限る。

契約前に確認する項目

依頼先の形態にかかわらず、次を書面で確定させてください。空欄が残っている項目が、後のトラブルになります。

確認項目 決めておくこと 記入欄
成果物の範囲 何を、いくつ、どの形式で納品するか (    )
修正回数 何回まで無償か、超えた場合の単価 (    )
原稿の担当 誰が書くか。写真は誰が用意するか (    )
著作権と利用範囲 譲渡か使用許諾か。二次利用の可否 (    )
元データの引き渡し 編集可能な形式を受け取れるか (    )
支払期日 受領日から起算して何日以内か (    )
公開後の対応 不具合対応の期間と範囲 (    )
連絡が取れない場合 何日で連絡不能とみなし、どう進めるか (    )

4行目と5行目は、フリーランスへの直接発注で特に確認が必要です。元データを受け取れないと、次の依頼先で作り直しになります。ロゴや基幹の制作物では、この差が数年後の費用に効いてきます。ロゴの費用と権利の考え方はロゴデザインの費用を参照してください。

8行目は不吉に見えますが、実務では最も起きます。個人への依頼では体調や他案件の影響で連絡が滞ることがあり、事前に取り決めがないと納期の判断ができません。

どちらに頼む場合も、権利と名義は書面で決める

発注先の形態にかかわらず、成果物の権利とアカウントの名義は契約の段階で決まります。写真やフォントなどの素材は、制作した側にも譲渡する権利がありません。契約が終わった後も同じ素材を使い続けたいなら、自社名義で取り直す必要があります。

確認すること 判断の基準 詳しくは
成果物と素材の扱いをどこまで決めるか 著作権の譲渡範囲、著作者人格権の不行使、素材ライセンスの名義、ドメインとサーバーの契約名義の4点を書面にする ホームページの著作権は誰のものか|譲渡しても直せない場合と、ドメインで手が止まる理由

金額差の裏にあるリスクの差

個人と会社の見積り差は、制作の質の差ではなく、体制の差の値段です。安いほうを選ぶ前に、次の違いを確認してください。

確認する点 個人に多い状態 会社に多い状態
連絡が取れなくなるリスク 本人の事情で止まる。代替がいない 担当交代で継続する
公開後の保守 受けない・別料金のことが多い 保守契約が前提にある
著作権・データの引き渡し 契約書がないまま進みがち 契約で定めるのが通常
繁忙期の対応速度 他案件次第で待たされる 体制次第で吸収できる
得意領域の深さ 一点特化で高いことがある 分業で平均的になりがち

個人が劣るという話ではありません。最後の行のとおり、特定領域では個人のほうが上のことも多い。重要なのは、止まったとき・揉めたときに何が起きるかを契約前に決めておくことです。特に著作権とデータの扱いはホームページの著作権は誰のものか|譲渡しても直せない場合と、契約前の確認で詳しく整理しています。

金額差は体制の差の値段。止まったときに何が起きるかで比べる。

著作権とデータの引き渡しは、契約前に文面で決める。

よくある失敗

相見積もりの金額だけを比べる

含まれる工程が違えば、比較になりません。先に工程の一覧を送り、同じ範囲で見積を出してもらってください。

複数のフリーランスへ同時に発注する

設計、デザイン、実装をそれぞれ別の個人に頼むと、統合と調整の役割が自社に残ります。この工数は見積のどこにも現れません。

取引条件を口頭やチャットだけで済ませる

フリーランスへの業務委託では、取引条件の明示が求められます。加えて、範囲の認識違いによる追加費用の争点もここで生まれます。

元データを受け取らない

納品がPDFや画像だけだと、次の担当者が編集できません。契約時に編集可能な形式の引き渡しを条件に入れてください。

安さを理由に、要件が固まっていない状態で発注する

要件整理は誰かがやらなければ進みません。見積に含まれていなければ自社が担うことになり、その時間が最も高くつきます。

よくある質問

フリーランスのほうが品質は低いのですか

制作物そのものの品質に、依頼先の形態による優劣はありません。差が出るのは、担当者が動けなくなったときの代替と、複数の職能をまたぐ案件の統合です。単発で仕様が明確な制作物では、差はほとんど生じません。

フリーランス法の対象になるのは大企業だけですか

いいえ。取引条件の明示は発注者の規模を問いません。従業員を使用しているかどうかで、支払期日や禁止行為などの義務が追加されます。詳細は公正取引委員会の特設サイトを確認してください。

制作会社経由でフリーランスが作業する場合はどうなりますか

自社の契約相手は制作会社であり、そのフリーランスへの発注責任は制作会社側にあります。ただし、実際に誰が作業するかは提案時に確認しておくほうが、進行と品質の見通しは立ちます。

見積を安くしてもらう交渉は可能ですか

単価を下げる交渉より、範囲を調整するほうが実質的です。原稿は自社で用意する、修正回数を減らす、写真は既存素材を使う。どの工程を自社に戻すかを提示すれば、金額は下がります。

最初はフリーランス、あとから制作会社に変えられますか

できます。条件は、元データを受け取っていることと、基準が文書になっていることの2つです。この2つがない場合、実質的に作り直しになります。

まとめ

フリーランスと制作会社の見積額の差は、単価の差ではなく、含まれる工程の差です。要件整理、原稿、進行管理、検収。これらが見積から外れている場合、その工程は消えるのではなく自社に移ります。したがって比較は、工程の一覧を揃えてから行ってください。

加えて、フリーランスへ直接業務委託する場合は、発注する側にも義務が生じます。取引条件の明示は規模を問わず求められ、従業員を使用している場合は支払期日の設定、1か月以上の継続的な委託ではさらに禁止行為の遵守が加わります。この管理負担も、金額差の一部と考えるのが実態に合います。

判断の分かれ目は、仕様が固まっているかと、社内に進行管理できる人がいるかの2点です。両方を満たすならフリーランスへの直接発注が有利になり、どちらかが欠けるなら制作会社のほうが総額は下がります。設計と基準づくりを集約し、基準ができた後の量産を分散させる併用も現実的な選択肢です。

当社ではデザイン制作において、設計から運用までを含めた体制のご相談を承っています。発注範囲の整理を進めたい場合は、資料をダウンロードのうえご活用ください。

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