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広告代理店を乗り換えるべきタイミング|見直しのサインと引き継ぎで失うもの

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広告代理店を変えるべきかという相談は、多くの場合「成果が上がらない」という理由で持ち込まれます。ただし成果不振は、乗り換えの理由としては弱い材料です。配信の問題なのか、遷移先の問題なのか、そもそも需要の問題なのかを切り分けないまま代理店だけを変えても、同じ結果になります。

乗り換えを判断すべき本当のサインは、成果の水準ではなく「何が行われているか判断できない状態が続いていること」です。判断できない状態では、良くする手も打てません。

そしてもうひとつ、検討段階で必ず確認すべきことがあります。乗り換えるときに何を持って出られて、何が消えるのかです。ここを確認せずに解約通知を出すと、配信の停止、計測の断絶、蓄積した学習データの喪失が同時に起こります。この記事では、見直しのサイン、切り分けの手順、引き継ぎで実際に起きること、移行の進め方を整理します。

この記事でわかること

・成果不振を乗り換えの理由にしてはいけない理由

・見直しを検討すべき7つのサインと、その確認方法

・代理店の問題か、それ以外の問題かを切り分ける手順

・アカウントの名義とオーナー権限の違い(Google広告の仕様)

・管理アカウントのリンクを解除したときに実際に起きること

・解約前に確認する引き継ぎチェックリスト

・乗り換えても状況が変わらないケース

乗り換えを判断する材料は、成果の水準ではない

広告の成果は、代理店の運用だけで決まりません。商圏の需要、商材の競争力、遷移先のページ、価格、電話対応の品質。これらのうち代理店が動かせるのは配信設定と広告文、そして提案までです。

したがって「CPAが目標に届かない」だけでは、乗り換えるべきかどうかは決まりません。判断すべきは「成果が出ていない理由を、代理店が説明できているか」です。説明ができていれば、次の打ち手が共有されます。説明がなければ、成果が出ている月であっても、それが再現できるかどうか分かりません。

乗り換えの判断材料は「成果が悪いこと」ではなく「何をしたか、なぜそうしたかが分からないこと」。

成果が良い月であっても、理由が説明されていなければ再現できないため、状態としては同じ。

見直しを検討すべき7つのサイン

次の項目は、いずれも確認方法とセットで判断できます。3つ以上該当する場合は、契約内容の見直しか乗り換えの検討に入るタイミングです。

サイン 確認方法 それが示していること
レポートに変更履歴がない 直近3か月のレポートに、実施した変更の一覧があるか 運用の手が入ったかどうかを検証できない
検索語句レポートが共有されない 依頼して1週間以内に出てくるか 無駄なクリックと拾えていない需要が見えない
指名検索が分離されていない 自社名を含む語句のCVを別集計しているか 新規獲得のCPAが実態より良く見えている
提案が「予算を増やす」に偏る 過去半年の提案内容を並べる 手数料の体系と提案が連動している可能性
担当者が短期間で何度も交代する 過去1年の担当者数 引き継ぎのたびに運用の意図が失われる
遷移先やクリエイティブの話が出ない LPやバナーへの改善提案があったか 配信設定だけで改善しようとしている
質問への回答が抽象的 「先月の変更は何か」と聞いて具体名が返るか 運用の実態を把握していない

この7項目のうち、最も重い意味を持つのは1つ目です。変更履歴がなければ、数字が動いた理由を誰も説明できません。レポートで確認すべき項目は広告レポートの見方|代理店の報告で最低限確認すべき項目に整理しています。

代理店の問題か、それ以外の問題かを切り分ける

乗り換えを決める前に、成果が出ていない原因がどこにあるかを確認します。ここを飛ばすと、乗り換え後も同じ数字が続きます。

確認すること 確認方法 代理店を変えて改善するか
そもそも検索需要があるか キーワードプランナーで商圏の月間検索数を確認 しない。需要が無ければ媒体か訴求を変える
クリックは来ているか 表示回数とクリック率 する。訴求文と入札の問題
遷移先で離脱していないか LPの直帰率、スクロール到達、フォーム到達率 限定的。ページ改修が必要
フォームで落ちていないか フォーム到達数と送信数の比率 しない。フォーム設計の問題
問い合わせ後に失注していないか 問い合わせ数と商談・来店数 しない。獲得後の対応の問題
価格や条件で負けていないか 競合の掲載条件と自社の条件 しない。事業側の判断

クリックは来ているのにCVが増えていない場合、代理店を変えても数字は動きません。段階ごとの切り分け手順は問い合わせが来ない原因の切り分け方を参照してください。

逆に、表示回数が伸びていない、検索語句が放置されている、変更履歴が存在しないといった状態であれば、運用そのものが機能していません。この場合は乗り換えか、契約範囲の見直しが有効です。

乗り換えで失うものと、残るもの

検討段階で最も重要な確認事項が、広告アカウントの名義です。自社の名義で開設されたアカウントに代理店が招待されている形なら、代理店を変えても配信履歴・学習データ・除外キーワードはすべて残ります。代理店が自社の管理アカウント配下で開設したアカウントの場合は、扱いが変わります。

資産 自社名義の場合 代理店が開設した場合
配信履歴・学習データ 残る アカウントごと移管できれば残る
除外キーワード・オーディエンス 残る 同上
コンバージョンタグ 残る(自社のタグ) 代理店の管理アカウント共通タグだと失う
共有リマーケティングリスト 残る リンク解除で使用できなくなる
GA4・GTMの設定 残る 権限が代理店のみだと引き継げない
バナー・動画の元データ 契約による 契約による。納品形式を確認
LPのソースとドメイン 契約による 代理店保有だと移設が必要

オーナー権限は、クライアント側から譲渡できない

Google広告では、管理アカウント(MCC)がクライアントアカウントに対してオーナー権限を持つ場合があります。Google広告ヘルプによれば、オーナー権限を別の管理アカウントへ譲渡できるのは、オーナー権限を持つ管理アカウント側の管理者のみで、クライアントアカウント側のユーザーには譲渡も無効化もできません。

クライアント側にできるのは、オーナー権限を持つ管理アカウントとのリンクを解除することです。リンクを解除すれば、その管理アカウントからのデータアクセス権が外れ、別の管理アカウントがオーナー権限を有効化できる状態になります。データそのものは引き続きクライアントアカウントが所有します。

リンクを解除したときに実際に起きること

解約の連絡より先に、次の4点を把握しておく必要があります。Google広告ヘルプに記載されている内容です。

  1. アカウント履歴は失われない。リンクを解除しても過去のデータは残り、広告の機能は継続して利用できます
  2. 共有リマーケティングリストが使えなくなる。管理アカウントで共有されていたリストを使っている広告グループやキャンペーンは、広告の掲載が止まります
  3. コンバージョン計測が途切れる場合がある。管理アカウント側で作成されたタグを使っていた場合、リンク解除後のクリックは新しいタグで追跡されません。計測期間内は旧タグが解除前のクリックを記録し続けます
  4. 支払い情報の変更が先。リンク解除前に支払い情報を変更しておかないと、広告の掲載が停止します

2つ目と3つ目は、切り替え当日に配信が止まる、あるいは数字が取れなくなる形で表面化します。解約日を決める前に、リマーケティングリストの依存関係とタグの発行元を確認してください。仕様は変更されることがあるため、実行前にGoogle広告ヘルプの最新の記載を確認することをおすすめします。

解約前の引き継ぎチェックリスト

そのまま社内で埋められる形にしています。空欄が残っている状態で解約通知を出さないでください。

確認項目 記入欄 解約前にやること
Google広告アカウントID (    ) 自社のGoogleアカウントに管理者権限を付与してもらう
アカウントのオーナー権限の所在 自社 / 代理店 代理店側なら、リンク解除の手順と時期を合意する
コンバージョンタグの発行元 自社 / 代理店 代理店発行なら、自社タグへの張り替えを先に実施
共有リマーケティングリストの使用 有 / 無 使用中の広告グループを洗い出す
GA4プロパティの管理者 (    ) 自社アカウントに管理者権限を追加
GTMコンテナの管理者 (    ) 同上。公開権限まで確認
Search Consoleの権限 (    ) 所有者確認の方法を把握しておく
Googleビジネスプロフィールのオーナー (    ) オーナー権限が自社にあるか確認
Meta・TikTok等のビジネスアカウント (    ) 資産の所有をビジネスポータル上で確認
支払い方法の名義 自社 / 代理店 自社カードへ変更する日を決める
LPのドメイン・サーバー・ソース 自社 / 代理店 移設が必要かを確認
クリエイティブの元データ 受領済 / 未 納品形式と著作権の扱いを契約書で確認
契約の解約通知期間 (  日前) 通知日から逆算して切替日を決める

特に見落とされやすいのが、下から3行です。LPを代理店のドメイン配下で運用していた場合、解約と同時にページが消えます。制作物の権利と納品形式は、解約時になって初めて問題になることが多いため、契約書の該当条項を先に確認してください。

乗り換えの進め方

配信を止めずに移行するには、順序が決まっています。逆にすると空白期間ができます。

  1. 契約書で解約通知期間を確認する(1か月前通知が多い)。ここから逆算して全体の日程を決めます
  2. 権限と資産の棚卸しを行う。前項のチェックリストを埋め、自社名義に移せるものを先に移します
  3. 次の依頼先を決める。この段階では現行代理店に伝えません。比較の観点は失敗しない広告代理店の選び方を参照してください
  4. 計測を先に自社側へ移す。コンバージョンタグとGA4を自社管理にしてから解約日を設定します
  5. 解約を通知し、切替日を共有する。共有リマーケティングリストを使っているキャンペーンは、切替前に代替のリストへ差し替えます
  6. 切替後2週間から4週間は数字が動く前提で見る。自動入札はデータをもとに動くため、設定変更の直後は挙動が安定しません

移行直後にCPAが悪化しても、それだけで新しい代理店を評価しないでください。判断できるようになるのは、CV数がある程度たまってからです。月間のCV数が10件を下回る規模であれば、単月ではなく3か月の移動平均で見てください。

乗り換えても状況が変わらないケース

次のいずれかに該当する場合、代理店を変えても結果はほぼ同じになります。乗り換えの前に、こちらを解消するほうが効果があります。

状況 起きること 先にやること
広告費が月10万円前後 どの代理店でも運用工数を確保できない 媒体を絞る。または内製を検討する
社内に判断できる人がいない 提案の良し悪しを評価できず、同じ状態が続く 誰が判断するかを決める
遷移先を改修する予算がない 配信設定だけでは頭打ちになる ページ改修の予算を確保する
CVの定義が曖昧 何を増やすべきかが共有できない 商談・来店につながるCVを定義する
目標が「CPAを下げる」だけ 指名検索に寄せる運用が最適解になる 新規獲得数の目標を併記する

1つ目に該当する場合は、委託そのものを見直す選択肢もあります。判断の材料は広告運用は内製化すべきか|代理店委託とのコスト構造と判断基準で整理しています。

よくある失敗

解約を先に通知してしまう

通知後は協力を得にくくなります。権限の移管、タグの張り替え、リストの確認を済ませてから通知してください。順序を逆にすると、切替日に配信が止まります。

アカウントを引き継がず、新規で作り直す

新しい代理店から「新規アカウントで作り直します」と提案されることがあります。学習データと除外キーワードを失うため、既存アカウントを引き継げるなら引き継ぐほうが有利です。作り直しを提案された場合は、その理由を確認してください。

手数料の安さだけで次を決める

手数料が下がっても、含まれる作業範囲が狭ければ実質の負担は増えます。クリエイティブ制作とLP改修が別料金になっていないか、レポートの作成範囲はどこまでかを、料率と同じ精度で確認してください。

切替直後の数字で判断する

移行後2週間から4週間は、入札の学習が影響します。この期間の悪化を根拠に再度乗り換えると、学習が積み上がらない状態を繰り返すことになります。

同じ選び方で次を選ぶ

前回と同じ基準で選べば、同じ問題が起こります。今回の不満を「契約時に確認すべきだった項目」に変換してから選定に入ってください。

よくある質問

契約期間の途中でも乗り換えられますか

契約書の解約条項によります。多くは1か月前などの通知期間が定められています。最低契約期間が設定されている場合もあるため、通知前に必ず契約書を確認してください。

代理店名義のアカウントは取り戻せますか

Google広告では、オーナー権限を持つ管理アカウント側の管理者だけが権限を譲渡できます。クライアント側からはリンクの解除が可能で、解除後は別の管理アカウントがオーナー権限を有効化できる状態になります。データそのものはクライアントアカウントが所有します。実際の手順は媒体ごとに異なるため、事前に確認してください。

複数媒体を別々の代理店に出しています。まとめるべきですか

媒体をまたいだ予算配分の判断を誰が持つかで決まります。分散したままにする場合は、媒体間の配分を決める役割を自社側に置いてください。どの代理店も自社が担当する媒体の予算を減らす提案はしにくいため、配分の判断が誰にもない状態になりがちです。

並行期間を設けて2社に運用させるべきですか

同じアカウントを2社が同時に触ると、変更の責任が不明確になります。並行させるなら媒体を分けるか、期間を区切って完全に切り替えてください。

セカンドオピニオンだけ依頼できますか

アカウントの閲覧権限を付与すれば、運用状況の確認だけを依頼することは可能です。乗り換えを決める前に、現状の評価だけを第三者に依頼する進め方は現実的な選択肢になります。

まとめ

代理店の乗り換えを判断する材料は、成果の水準ではありません。何を実施したか、なぜそうしたかが説明されているかどうかです。説明がなければ、良い月も悪い月も再現性がありません。

そして、乗り換えを決めたあとに最も影響が大きいのは、引き継ぎの設計です。アカウントの名義、オーナー権限の所在、コンバージョンタグの発行元、共有リマーケティングリストの依存。この4点を確認しないまま解約日を決めると、切替当日に配信が止まるか、計測が途切れます。

順序は、権限と計測の移管が先、解約通知が後です。逆にした場合の損失は、手数料の差額よりも大きくなります。

当社では広告運用代行において、アカウントは自社名義でのご契約を前提とし、変更内容と次の打ち手を明示したレポートを標準としています。現在の運用状況を第三者の目で確認したい場合は、資料をダウンロードのうえ、確認項目の整理にご活用ください。

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