業種ごとに、よく使われる配色があります。この慣例に従うと、何の業種か直感的に伝わります。一方で、同業と似た印象になり、記憶に残りにくくなります。
外せば目立ちますが、何をしている会社か伝わるまでに時間がかかります。どちらが正解というものではなく、自社の認知の段階と、獲得したい顧客層によって判断が変わります。
この記事では、慣例が生まれる理由、従う場合と外す場合の判断基準、外すときの条件、そして配色以外で差をつける方法を整理します。
この記事でわかること
・慣例は認識の速さのために存在する
・認知がない段階では、慣例に従うほうが伝わる
・外す場合は、他の要素で業種を伝える必要がある
・配色より先に決めるべきことがある
・同業と似ることは、必ずしも不利ではない
・評価は印象ではなく行動で行う
慣例は認識の速さのために存在する
業種と配色の結びつきは、偶然ではなく認識の速さから生まれています。
| 慣例の由来 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 対象物の色 | 実物や素材の色に由来 | 直感的に連想される |
| 安全や衛生の表現 | 清潔さを示す配色 | 業界の要請から定着 |
| 先行企業の影響 | 大手が使った色が基準になる | 業種の記号になる |
| 規制や慣行 | 識別のための取り決め | 外すと混乱を招く |
慣例に従うと、訪問者は数秒で業種を把握できます。この速さは、特に比較検討の段階で意味を持ちます。複数のサイトを短時間で見る人に対して、判断の手間を減らせるためです。
慣例は認識を速くするために定着している。
比較検討の段階では、判断の手間を減らす効果がある。
認知がない段階では慣例に従うほうが伝わる
判断の軸は自社がどれだけ知られているかです。
| 認知の段階 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| ほぼ知られていない | 慣例に従う | まず業種を伝える必要がある |
| 地域で知られている | 一部外す | 差別化の余地がある |
| 業界で知られている | 外してよい | 名前で判断される |
| 指名検索が主流 | 自由 | 配色で業種を伝える必要がない |
知られていない段階で慣例を外すと、何の会社か分からないまま離脱されます。目立つことと、伝わることは別です。まず伝わる状態を作り、認知が進んでから差別化を図る順序が現実的です。
知られていない段階では、まず伝わることを優先する。
目立つことと、伝わることは別。
外す場合は他の要素で業種を伝える
配色で業種を示さないなら、他の要素がその役割を担う必要があります。
- ファーストビューで、事業内容を言葉で明示する
- 写真で、提供しているものを示す
- 見出しで、対象と提供内容を書く
- 会社名だけを大きく出す構成にしない
配色を外したうえで、事業内容も抽象的な表現にすると、何をしている会社か分からないサイトになります。どちらか一方は具体的にしてください。
ファーストビューの設計はファーストビュー設計の重要性|離脱を防ぐ最初の3秒の作り方を参照してください。
配色で業種を示さないなら、言葉や写真で示す。
配色も表現も抽象的にすると、何の会社か分からなくなる。
配色より先に決めるべきこと
配色の検討に入る前に、次の項目を固めてください。これらが決まっていないと、配色の良し悪しを判断できません。
- 誰に向けたサイトか
- その人に最初に伝えたいことは何か
- どのような印象を持ってほしいか(言葉で)
- 既存のブランド規定はあるか
- 印刷物や店舗など、他の接点との整合は必要か
3つ目を言葉にしていないと、配色の議論が好みの話になります。「落ち着いた」「信頼できる」といった言葉があれば、その方向に合っているかで判断できます。
ブランドの規定はブランドガイドラインの作り方|どこまで決めれば運用が回るかを参照してください。
望む印象を言葉にしていないと、配色の議論が好みの話になる。
他の接点との整合も先に確認する。
同業と似ることは必ずしも不利ではない
配色が似ていても、選ばれる理由は別の場所にあります。
| 判断される要素 | 配色の影響 | 実際の決め手 |
|---|---|---|
| 何の会社か | 大きい | 配色と事業内容の記載 |
| 信頼できるか | 小さい | 実績、所在地、代表者情報 |
| 自社に合うか | 小さい | 対応範囲、事例 |
| 費用が合うか | なし | 料金の記載 |
| 問い合わせるか | 小さい | 導線の分かりやすさ |
配色が影響するのは主に最初の認識であり、選択の決め手ではありません。差別化に工数をかけるなら、対応範囲や実績の見せ方に投資するほうが成果につながります。
信頼の示し方は会社案内サイトで信頼感を作る方法|見た目より先に埋めるべき情報を参照してください。
配色が影響するのは最初の認識であり、決め手ではない。
差別化の工数は、対応範囲や実績の見せ方に使うほうが効く。
慣例を外すことが有効な場合
次の条件が揃っている場合、外す判断に合理性があります。
- 業種の中で明確に異なる提供価値がある
- その違いを、配色以外でも一貫して表現できる
- 対象とする顧客層が、既存の慣例に反応していない
- 認知を作るための予算と時間を確保できる
- 社内で長期的に維持する合意がある
特に最後の条件が重要です。担当者が変わると元に戻されることがあります。外す判断をするなら、その理由を文書として残してください。
外すなら、配色以外でも一貫して表現できることが条件。
判断の理由を文書として残さないと、元に戻される。
評価は印象ではなく行動で行う
配色の効果は好みの調査では判断できません。
| 見る指標 | 分かること | 注意 |
|---|---|---|
| 直帰率 | 最初の数秒で離脱しているか | 他の要因も影響する |
| 問い合わせ数 | 最終的な成果 | 配色以外の影響が大きい |
| 会社名での検索数 | 記憶に残っているか | 他施策の影響を受ける |
| 社内の好み | 印象 | 成果とは別 |
配色を変えても成果が変わらないことは頻繁にあります。その場合、課題は配色以外の箇所にあります。色の使い方全般は色彩心理をデザインに使うときの前提|色だけで印象は決まらないを参照してください。
配色を変えても成果が変わらないことは頻繁にある。
その場合、課題は別の箇所にある。
他の要素との順序
デザインの各要素には依存関係があり、決める順序が結果を左右します。この要素が全体のどこに位置するかはWebデザインの構成要素はどの順で決めるかを参照してください。
よくある失敗
認知がない段階で慣例を外す
何の会社か分からないまま離脱されます。まず伝わる状態を作ってください。
配色も事業内容の記載も抽象的にする
何をしている会社か分からなくなります。どちらか一方は具体的にしてください。
望む印象を言葉にせず配色を議論する
好みの話になり、結論が出ません。先に言葉で定義してください。
配色で差別化しようとする
配色は最初の認識に影響しますが、選択の決め手ではありません。
外した理由を残さない
担当者が変わると元に戻されます。判断の理由を文書化してください。
よくある質問
業種の定番配色はどう調べればよいですか
同じ地域の同業サイトを10社程度並べて確認してください。共通して使われている色相と、明度の傾向が見えます。全国規模の大手だけでなく、実際に競合する規模の企業を含めてください。
BtoBでも慣例に従うべきですか
BtoBは検討期間が長く、複数回訪問されるため、初回の認識だけで判断されるわけではありません。ただし比較検討の初期段階で候補から外れないよう、業種が伝わる状態は必要です。配色以外で示せていれば、慣例に従う必要性は下がります。
複数の事業を持つ場合はどうすべきですか
事業ごとに配色を分けるか、企業として統一するかを決めてください。対象顧客が異なるなら分ける選択肢があります。ただし管理が複雑になるため、規定として整理しておく必要があります。
ロゴの色に合わせるべきですか
基調としては合わせるほうが一貫します。ただしロゴの色をそのまま行動を促す色に使うと、他の箇所でも使われるため目立たなくなります。基調と強調は分けて設計してください。
リニューアルで配色を変えると混乱しますか
既存顧客が多い場合、急に変えると認識されにくくなることがあります。段階的に変える、あるいはロゴなど核となる要素は維持するという方法があります。判断はリブランディングの進め方|既存顧客を離さないための手順を参照してください。
まとめ
業種ごとの定番配色は、認識の速さのために定着しています。慣例に従うと訪問者は数秒で業種を把握でき、複数のサイトを短時間で見る比較検討の段階では判断の手間を減らせます。一方で同業と似た印象になり、記憶には残りにくくなります。
判断の軸になるのは、自社がどれだけ知られているかです。ほぼ知られていない段階で慣例を外すと、何の会社か分からないまま離脱されます。目立つことと伝わることは別であり、まず伝わる状態を作ってから、認知が進んだ段階で差別化を図る順序が現実的です。外す場合は、事業内容を言葉で明示する、写真で提供物を示すなど、配色以外の要素がその役割を担う必要があります。
ただし配色が影響するのは主に最初の認識であり、選択の決め手ではありません。信頼できるか、自社に合うか、費用が合うかは、実績や対応範囲や料金の記載で判断されます。差別化に工数をかけるなら、配色より対応範囲や実績の見せ方に投資するほうが成果につながります。配色を変えても成果が変わらない場合、課題は別の箇所にあります。
当社ではデザイン制作において、対象と目的に応じた配色設計をご相談いただけます。ブランド全体の整理はお問い合わせよりご連絡ください。