ミニマルなデザインは洗練された印象を与えます。しかし要素を減らすこと自体を目的にすると、購入や問い合わせの判断に必要な情報まで削ることになります。
見た目が整っているのに問い合わせが減った、という事例はここから生まれます。ミニマルが機能するのは、削ってもなお判断できる状態が保たれている場合に限られます。
この記事では、ミニマルが成立する条件、削ってよい要素とそうでない要素、商材の性質による向き不向き、そして減らす代わりに必要になる工夫を整理します。
この記事でわかること
・削るべきは装飾であって、判断材料ではない
・成立するのは、判断に必要な情報が少ない商材
・検討期間が長い商材では不利になりやすい
・減らすほど、残した要素の質が問われる
・余白は削減ではなく設計の結果
・評価は印象ではなく行動で行う
削るべきは装飾であって判断材料ではない
ミニマルという言葉が指すのは、要素の数を減らすことではなく、目的に不要なものを置かないことです。
| 要素 | 削ってよいか | 理由 |
|---|---|---|
| 装飾的な図形、影、罫線 | 削ってよい | 情報を持たない |
| 重複した説明 | 削ってよい | 同じ内容が複数箇所にある |
| 料金の情報 | 削らない | 判断に必要 |
| 実績や事例 | 削らない | 信頼の根拠になる |
| 問い合わせ方法 | 削らない | 行動の手段 |
| よくある質問 | 削らない | 不安の解消 |
迷ったら、その要素がないと判断できないかを問うてください。判断に使われる情報は、見た目が整うという理由で削るべきではありません。
削るのは情報を持たない装飾。判断材料ではない。
その要素がないと判断できないかを基準にする。
成立するのは判断に必要な情報が少ない商材
商材によって、購入や問い合わせの判断に必要な情報量は違います。この量を下回ってミニマルにすると、決められません。
| 商材の性質 | 必要な情報量 | ミニマルとの相性 |
|---|---|---|
| 単価が低く、すぐ試せる | 少ない | 良い |
| すでに知られている | 少ない | 良い |
| 単価が高く、比較される | 多い | 悪い |
| 説明が必要な新しい概念 | 多い | 悪い |
| 失敗を避けたい | 多い | 悪い |
ブランドとして知られている企業のミニマルなサイトを参考にする場合、注意が必要です。すでに認知があるため説明が少なくて済んでいるだけで、認知のない企業が同じ構成にすると判断できないサイトになります。
必要な情報量は商材で決まる。下回ると判断できない。
有名企業の構成は、認知があるから成立している。
検討期間が長い商材では不利になりやすい
検討期間が長い商材では、訪問者が複数回訪れ、そのたびに違う情報を求めます。
- 1回目:何を提供している会社かを知る
- 2回目:自社の課題に合うかを確認する
- 3回目:費用と進め方を確認する
- 4回目:他社と比較する材料を探す
- 5回目:問い合わせる
各段階で必要な情報が揃っていないと、その時点で他社へ移ります。情報量を絞ったサイトは、初回の印象は良くても、比較の段階で候補から外れやすくなります。
BtoBの検討過程についてはカスタマージャーニーマップは作るべきか|作って終わらせないための条件も参考になります。
検討期間が長いと、訪問のたびに求める情報が変わる。
情報を絞ると、比較の段階で候補から外れる。
減らすほど残した要素の質が問われる
要素が少ないほど、1つ1つが目立ちます。粗が隠れなくなります。
| 要素 | 少ない構成での影響 | 必要な水準 |
|---|---|---|
| 写真 | 画面の大半を占める | 撮影の質が直接影響する |
| 文章 | 1文が読まれる | 曖昧な表現が目立つ |
| 余白 | 配置の意図が見える | 基準値の統一が必要 |
| 書体 | 印象を決定づける | 選定の根拠が要る |
| 色 | 限られた色で伝える | 役割の設計が必要 |
素材の質が低い状態でミニマルにすると、質の低さが露呈します。要素が多ければ相対的に目立たなかったものが、減らすことで前面に出ます。写真の質についてはWeb用写真のディレクション|撮影前に決めるべきことと当日の進め方を参照してください。
要素を減らすと、残ったものの質が露呈する。
素材の質が低い状態では、かえって粗が目立つ。
余白は削減ではなく設計の結果
余白を広く取ることがミニマルだと理解されがちですが、余白は要素の関係を示すための道具です。
- 関係が近い要素は距離を近く、遠い要素は離す
- 距離の基準値を決め、その倍数で配置する
- 均等に空けるのではなく、意味に応じて変える
- 余白が多すぎると、スクロール量が増えて情報にたどり着けない
意味のない広い余白は、情報を探す手間を増やすだけです。余白の設計は余白のデザインが与える印象|詰め込みが読みにくさを生む理由を参照してください。
余白は要素の関係を示す道具であり、単なる空白ではない。
意味のない広い余白は、探す手間を増やす。
減らす代わりに必要になる工夫
情報を減らすのではなく、見せ方で整理する方法があります。
| 方法 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 階層で分ける | 最初は要点、詳細は下層へ | 下層への導線が必要 |
| 折りたたむ | 必要な人だけ開く | 開かれない前提で要点を外に出す |
| 段階的に見せる | スクロールで順に提示 | 順序の設計が必要 |
| ページを分ける | 目的ごとに独立させる | 回遊の設計が必要 |
情報を減らすのではなく、一度に見せる量を減らすという考え方です。判断に必要な情報は残したまま、初見の負荷を下げられます。
階層の設計は情報設計(IA)とは?わかりやすいサイト構成の作り方を参照してください。
情報を減らすのではなく、一度に見せる量を減らす。
判断材料を残したまま、初見の負荷を下げられる。
評価は印象ではなく行動で行う
デザインの評価は主観になりやすいため、行動のデータで確認してください。
| 見る指標 | 分かること | 注意 |
|---|---|---|
| 問い合わせ数 | 判断できているか | 最も重要 |
| ページの離脱率 | 情報が足りているか | 上昇は要注意 |
| 下層ページへの遷移 | 詳細を探しているか | 遷移が多いなら情報不足 |
| 滞在時間 | 読まれているか | 短いだけでは判断できない |
| 社内の評価 | 印象 | 成果とは別 |
洗練されたという社内評価と、問い合わせ数は別の指標です。リニューアル後に問い合わせが減った場合、削った情報を戻す判断が必要になります。
社内の印象評価と、問い合わせ数は別の指標。
減った場合は、削った情報を戻す判断をする。
他の要素との順序
デザインの各要素には依存関係があり、決める順序が結果を左右します。この要素が全体のどこに位置するかはWebデザインの構成要素はどの順で決めるかを参照してください。
よくある失敗
要素を減らすこと自体を目的にする
判断材料まで削ることになります。その要素がないと判断できないかを基準にしてください。
有名企業のサイトを参考にする
認知があるから説明が少なくて済んでいます。認知のない企業が真似ると判断できません。
素材の質を上げずにミニマルにする
要素が減ると、残ったものの質が露呈します。写真や文章の質が前面に出ます。
余白を均等に広く取る
余白は要素の関係を示す道具です。意味なく広げると、探す手間が増えます。
印象だけで評価する
洗練された印象と問い合わせ数は別です。行動のデータで確認してください。
よくある質問
BtoBサイトでミニマルは向きませんか
一律に向かないわけではありませんが、注意が必要です。検討期間が長く比較されるため、判断材料が不足すると候補から外れます。トップページを整理しつつ、下層で十分な情報を提供する構成が現実的です。
情報を減らしたら問い合わせが減りました。どうすべきですか
削った情報のうち、判断に使われていたものを戻してください。特に料金の目安、実績、進め方の説明は判断材料として使われます。どの情報が見られていたかは、リニューアル前のデータで確認できます。
トレンドとして追うべきですか
トレンドとして採用すると、目的との整合が取れなくなります。自社の商材で必要な情報量を確認し、それを満たしたうえで整理するという順序にしてください。
写真を大きく使えばミニマルになりますか
要素は減りますが、写真の質がそのまま印象になります。質の伴わない写真を大きく使うと、逆効果です。また写真だけでは伝わらない情報があることにも注意してください。
スマートフォンでも同じ考え方ですか
画面が小さいため、一度に見せる量はさらに絞る必要があります。ただし判断材料が必要な点は同じです。階層や折りたたみを使い、情報を残したまま初見の負荷を下げてください。
まとめ
ミニマルなデザインは洗練された印象を与えますが、要素を減らすこと自体を目的にすると、購入や問い合わせの判断に必要な情報まで削ることになります。見た目が整っているのに問い合わせが減ったという事態は、ここから生まれます。削るべきは情報を持たない装飾であり、判断材料ではありません。
この手法が成立するのは、判断に必要な情報量が少ない商材に限られます。単価が低くすぐ試せるもの、すでに広く知られているものでは機能します。逆に単価が高く比較される商材、説明が必要な新しい概念では不利になります。有名企業のミニマルなサイトを参考にする場合は注意が必要です。すでに認知があるため説明が少なくて済んでいるだけで、認知のない企業が同じ構成にすると判断できないサイトになります。
また要素を減らすと、残った1つ1つの質が露呈します。要素が多ければ相対的に目立たなかった写真の質や文章の曖昧さが、減らすことで前面に出ます。現実的な進め方は、情報そのものを減らすのではなく、階層や折りたたみを使って一度に見せる量を減らすことです。判断材料を残したまま、初見の負荷を下げられます。
当社ではデザイン制作において、目的に応じた情報量の設計をご相談いただけます。サイト全体の構成はホームページ制作とあわせてご検討ください。