Webサイトの印象は、デザインより写真で決まります。同じレイアウトでも、写真が変わればまったく別のサイトに見えます。
それにもかかわらず、撮影は「制作会社に任せる工程」として扱われがちです。結果として、使いたい場面で使える写真がないという状態が起こります。撮影後に気づいても、再撮影には費用と日程が必要です。
この記事では、撮影を発注する側が事前に決めておくべきことと、当日の進め方を解説します。
この記事でわかること
・撮影前に決める4つの項目
・カットリストの作り方
・撮影当日の準備と進め方
・素材写真(ストックフォト)を使う基準
・権利関係で確認すべきこと
撮影前に決める4項目
| # | 項目 | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 1 | どのページのどこに使うか | 必要な構図・比率の写真がない |
| 2 | 伝えたい印象 | 雰囲気が事業と合わない |
| 3 | 人物を写すか | 後から必要になり再撮影 |
| 4 | 使用範囲 | Webで撮った写真を印刷物に使えない |
1番目が最も重要です。「良い写真を撮る」ではなく、「このページのこの位置に入る写真を撮る」という発注にしてください。
掲載位置が決まっていれば、必要な比率(横長・正方形・縦長)と、文字を載せる余白の有無が決まります。ワイヤーフレームができていれば、この整理は容易です。作り方はワイヤーフレームとは?作る目的と作成時に押さえるべきポイントを参照してください。
撮影発注の前に、ワイヤーフレームを確定させてください。
掲載位置が決まっていない状態での撮影は、使えない写真を量産します。
カットリストの作り方
カットリストとは、撮影する写真を一覧にしたものです。当日の進行表であり、抜け漏れの防止策でもあります。
| 列 | 記入内容 | 例 |
|---|---|---|
| 掲載位置 | どのページのどこ | トップのファーストビュー |
| 被写体 | 何を撮るか | 店舗外観 |
| 構図 | 横長/正方形/縦長 | 横長(文字を載せるため左側に余白) |
| 人物 | 写すか、何名か | なし |
| 優先度 | 必須/できれば | 必須 |
| 備考 | 時間帯、天候など | 午前中、晴天時 |
「構図」の列を必ず埋めてください。文字を載せる予定がある写真は、その部分に余白(被写体のない領域)が必要です。撮影後に気づいても、切り抜きでは対応できないことがあります。
撮り漏らしやすいカット
- 各ページの見出し背景用:下層ページ分の点数が必要
- SNS・広告用の縦型:Web用の横長だけでは使えない
- 引きの写真:寄りばかりで全体像が分からない
- 細部・手元:作業の質を伝える写真
- 季節が分かる写真:後から撮れない
- 予備カット:同じ場所を複数の構図で
2番目は特に見落とされます。Webサイトの撮影で横長ばかり撮ると、SNSや広告で使う縦型がありません。同じ被写体を複数の比率で撮っておいてください。
人物を写すかどうか
| 写す | 写さない | |
|---|---|---|
| 伝わるもの | 雰囲気、規模感、人柄 | 商品・空間そのもの |
| 信頼への影響 | 高まりやすい | 中立 |
| 採用への効果 | 大きい | 小さい |
| 退職時の扱い | 差し替えが必要になる | 影響なし |
| 準備の負荷 | 日程調整、服装、同意の取得 | 低い |
4行目を事前に検討してください。特定の社員が大きく写っている写真は、その人が退職すると使いにくくなります。後ろ姿、手元、複数人の写真を混ぜておくと、差し替えの負担が減ります。
また、写る本人から掲載の同意を取得してください。使用範囲(Web、印刷物、SNS、広告)と、退職後の扱いについても事前に確認しておくことが望まれます。
撮影当日の準備
- 撮影場所を片付ける:写り込む範囲の不要物、私物、他社名の入った箱など
- 服装を統一する:バラバラだと後から揃えられない
- 時間帯を確認する:自然光の入り方は時間で変わる
- 撮影中にその場で確認する:帰った後に気づいても遅い
- 予定より多く撮る:追加撮影は費用と日程が必要
- 撮影許可を確認する:他社施設、公共の場所など
4番目を必ず行ってください。撮影中にモニターで確認し、掲載位置に当てはめたときの見え方を判断します。「あとで選べばよい」と考えると、必要な構図がないまま撮影が終わります。
片付けで見落とされるもの
- 他社のロゴが入った備品:段ボール、什器、機材
- 個人情報が写る書類:机上の資料、モニターの表示内容
- 掲示物:古い日付のポスター、社内向けの張り紙
- 配線:床のケーブル類
- 季節外れのもの:撮影時期と掲載時期のずれ
2番目は撮影後の確認でも必ずチェックしてください。モニターに顧客情報が表示された状態の写真を公開すると、情報漏えいになります。
素材写真を使う基準
ストックフォトの使用は、コストと時間を抑えられます。ただし、使うべき場所と使うべきでない場所があります。
| 用途 | 素材写真 | 実写 |
|---|---|---|
| トップのファーストビュー | 推奨しない | 実写 |
| 自社の店舗・施設 | 使えない | 実写 |
| スタッフ紹介 | 使えない | 実写 |
| 施工事例・実績 | 絶対に使わない | 実写のみ |
| サービス説明の補助 | 使える | どちらでも |
| 記事・コラムの挿絵 | 使える | どちらでも |
| 抽象的な概念の表現 | 使える | — |
施工事例に素材写真を使うことは、実績の偽装にあたります。掲載できる実績写真がない場合は、点数を減らすか、写真なしで内容を記述してください。
また、トップのファーストビューに素材写真を使うと、他社と同じ写真が使われるリスクがあります。地域ビジネスでは、実際の店舗・スタッフの写真のほうが信頼につながります。ファーストビューの設計はファーストビュー設計の重要性|離脱を防ぐ最初の3秒の作り方を参照してください。
権利関係の確認事項
| 対象 | 確認すること |
|---|---|
| 撮影データ | 納品されるか。加工前のデータを含むか |
| 使用範囲 | Web、印刷物、SNS、広告での使用可否 |
| 使用期間 | 期限があるか |
| 二次利用 | 別媒体・別事業での使用可否 |
| 写り込んだ人物 | 本人の同意。退職後の扱い |
| 素材写真のライセンス | 商用利用可否、加工可否、クレジット表記の要否 |
| 他社の製品・ロゴ | 写り込みの可否 |
2番目と4番目が後から問題になります。「Web用」として撮影した写真を、後日パンフレットや広告で使えないケースがあります。撮影を依頼する時点で、想定される使用範囲をすべて伝えてください。
素材写真のライセンス条件は提供元によって異なり、変更されることもあります。使用前に各サービスの最新の規約を確認してください。
撮影後にやること
- 納品データを確認する:カットリストと突き合わせ、不足を確認
- Web用に書き出す:表示サイズに合わせて圧縮する
- ファイル名を整理する:後から探せる状態に
- 保管場所を決める:担当者が変わっても見つかる場所へ
- 使用範囲の記録を残す:どの写真がどこまで使えるか
2番目を省くと、表示速度が大きく低下します。撮影データをそのまま掲載しているサイトは珍しくありません。書き出しの基準はサイトの表示速度を改善する優先順位|何から手をつけるかで解説しています。
よくある失敗
失敗1:掲載位置を決めずに撮影する
必要な比率・余白の写真がなく、使えないカットが増えます。
失敗2:横長ばかり撮る
SNSや広告で使う縦型がありません。同じ被写体を複数の比率で撮ってください。
失敗3:写り込みを確認せず公開する
他社ロゴ、顧客情報の写り込みは、公開後に大きな問題になります。
失敗4:使用範囲を確認せずに依頼する
後日、印刷物や広告で使えないことが判明します。
失敗5:施工事例に素材写真を使う
実績の偽装にあたります。掲載できる実績がなければ、点数を減らしてください。
よくある質問
Q. スマートフォンでの撮影でも十分ですか?
用途によります。SNSの日常投稿や、簡易な記録であれば十分な場合があります。一方、トップのファーストビューや印刷物に使う写真では、光の扱いと構図の設計が結果を左右するため、専門の撮影が有利です。
Q. 撮影は何時間くらいかかりますか?
カット数と場所の移動によって変わります。カットリストを作れば、撮影者が必要な時間を見積もれます。リストがない状態では見積が出せず、当日に足りなくなります。
Q. 費用はどのくらいですか?
撮影時間、カット数、レタッチの範囲、出張の有無で変わります。見積を比較する際は、納品データの範囲(加工前データを含むか)と使用範囲の条件を揃えてください。条件が違えば金額は比較できません。
Q. 社員が写るのを嫌がる場合はどうしますか?
強制はできません。後ろ姿、手元、シルエット、複数人での撮影といった方法があります。写らない選択をした社員がいても、サイト全体で人の気配が伝わればよいと考えてください。
Q. 古い写真をそのまま使い続けてよいですか?
現状と乖離していないかを確認してください。改装した店舗、退職した社員、変更した制服などが写っている写真は、来店時の印象との差につながります。定期的な見直しが必要です。
まとめ
Webサイトの印象は、デザインより写真で決まります。そして撮影は、発注する側の準備で結果が大きく変わる工程です。
撮影前に決めるのは、掲載位置・伝えたい印象・人物の有無・使用範囲の4つです。特に掲載位置が決まっていない状態での撮影は、使えない写真を量産します。ワイヤーフレームを確定させてから発注してください。
カットリストには構図の列を必ず入れてください。文字を載せる写真には余白が必要で、撮影後には作れません。SNS・広告用の縦型も忘れずに含めてください。
そして、使用範囲と権利関係は撮影前に確認してください。「Web用」として撮った写真が印刷物で使えない、という事態は事前の確認で防げます。
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