「サイトに情報はあるのに、問い合わせが来ない」「よく問い合わせで聞かれることは、サイトに書いてある」。この状態は、コンテンツ不足ではなく情報設計(IA:インフォメーションアーキテクチャ)の問題です。
情報設計とは、訪問者が探している情報にたどり着ける構造を作ることです。ページを作る前の工程であり、ここが崩れていると、デザインを整えても原稿を書き足しても成果は変わりません。
この記事では、情報設計の成果を測る指標を定義したうえで、サイト構成を「事業の都合」ではなく「探し方」から作る手順、階層とナビゲーションの設計原則、SEOとの接続、そしてリニューアル時の落とし穴までを解説します。
この記事でわかること
・情報設計の良し悪しを数字で判断する方法
・サイト構成の材料を、検索語句と問い合わせ内容から集める手順
・階層の深さとナビゲーション項目数の考え方
・社内用語をラベルに使ってはいけない理由
・URL構造・パンくず・カテゴリ設計とSEOの関係
・リニューアルで順位と流入を落とさないための確認事項
結論:情報設計の成果は「探せたか」で測る
情報設計は感覚的な作業に見えますが、結果は数字に出ます。
| 指標 | 取得方法 | 情報設計が悪いときの兆候 |
|---|---|---|
| サイト内検索の利用率と検索語句 | GA4のサイト内検索レポート | 検索利用率が高い=ナビで見つけられていない |
| 1セッションあたりの閲覧ページ数と滞在時間 | GA4 | ページを回遊しているのではなく、迷っている可能性がある |
| 主要ページへの到達率 | GA4の経路データ | 料金・事例・問い合わせに到達できていない |
| 問い合わせ時の質問内容 | 営業・受付の記録 | サイトに書いてある内容を聞かれる=見つけられていない |
| 直帰率(エンゲージメント率) | GA4 | 入口ページから次に進む導線がない |
特に4番目は、費用をかけずに今日から取れる情報です。問い合わせで繰り返し聞かれる質問を1か月記録するだけで、情報設計の欠陥は具体的に見えてきます。「駐車場はありますか」「対応エリアはどこまでですか」といった質問が続くなら、その情報が探せる場所にありません。
情報設計の目的は、整った構造を作ることではなく、訪問者が目的の情報にたどり着けるようにすることです。
評価は見た目ではなく、到達率と「聞かれる質問」で行ってください。
サイト構成は「事業の都合」ではなく「探し方」から作る
よくある失敗:組織図がそのままナビになる
多くのサイトは、事業部や商品カテゴリの区分がそのままグローバルナビになっています。しかし訪問者は、その会社の組織構造を知りません。訪問者が持っているのは「解決したい課題」と「知りたい条件」だけです。
たとえばリフォーム会社で、社内では「新築事業部/リフォーム事業部/メンテナンス部」と分かれていても、訪問者は「お風呂を替えたい」「補助金が使えるか知りたい」と考えています。前者の区分でナビを作ると、訪問者は自分の目的がどこに属するか判断できません。
構成の材料は3つの実データから集める
| 材料 | 取得方法 | 分かること |
|---|---|---|
| 検索語句 | Search Console、Google広告の検索語句レポート、キーワードプランナー | 訪問者が実際に使う言葉と、探している内容 |
| サイト内検索 | GA4のサイト内検索レポート | ナビで見つけられなかったもの |
| 問い合わせ・電話の質問 | 受付・営業の記録、フォームの自由記述 | サイトを見た後でも解消できなかった疑問 |
この3つを1か月分集めると、構成案は自然に決まります。推測でペルソナを作るより、実際の言葉を集めるほうが早く、精度も高いのが実務です。
社内でできる簡易カードソーティング
集めた項目をどうグループ化するかは、社内の議論で決めず、外部の人に並べてもらうのが確実です。専用ツールがなくても実施できます。
- 掲載したい情報を1項目ずつ付箋やカードに書き出す(30〜50枚程度)
- 業界に詳しくない人(他部署、家族、取引先など)5人程度に、「関係が近いと思うもの」でグループ分けしてもらう
- 各グループに名前を付けてもらう(この名前がナビのラベル候補になる)
- 5人の結果を重ねて、共通して同じグループになった項目を確定させる
4番目で意見が割れる項目は、どこに置いても迷われる情報です。その場合は複数の場所からたどれるようにする(関連リンクを両方に置く)ことで解決します。階層は1つでも、導線は複数あって構いません。
階層とナビゲーションの設計
「3クリック以内」は目的ではない
「どのページも3クリック以内に」という指針が知られていますが、クリック数そのものは本質ではありません。重要なのは各段階で「次にどれを選べばよいか」が判断できることです。
5クリックでも、各段階の選択肢が明確なら迷いません。逆に2クリックでも、選択肢の意味が分からなければ離脱します。深さを減らすためにナビ項目を増やすと、かえって選べなくなります。
グローバルナビは5〜7項目に収める
項目が多いほど選択の負荷が上がります。多くのサイトでは、次の構成に収まります。
- サービス/商品(訪問者の目的別に分ける)
- 料金・費用
- 実績・事例
- 会社情報
- よくある質問
- お問い合わせ(CTA。他とは見た目を変える)
「採用情報」「ブログ」など、対象者が違うものはグローバルナビの優先度を下げるか、フッターに置きます。ナビは全訪問者の共通導線であり、一部の人向けの項目で枠を消費しないことが原則です。
ラベルに社内用語を使わない
| 社内用語(使わない) | 訪問者の言葉(使う) |
|---|---|
| ソリューション | できること/サービス一覧 |
| プロダクト | 商品/製品 |
| トータルサポート | 対応の流れ/サポート内容 |
| アセスメント | 無料診断/現地調査 |
| ワークス | 施工事例/制作実績 |
判断基準は単純です。その言葉で検索されているかどうか。Search Consoleやキーワードプランナーで検索ボリュームがほぼゼロの言葉は、ナビのラベルに向きません。
「今どこにいるか」を常に示す
訪問者の多くは、トップページからではなく検索結果から下層ページに直接入ります。そのため、どのページに着地しても現在地と全体像が分かる必要があります。
| 要素 | 役割 | 設計のポイント |
|---|---|---|
| パンくずリスト | 階層内の現在地を示す | 全下層ページに設置。構造化データも併せて実装する |
| ページタイトル(H1) | このページが何かを示す | ナビのラベルと一致させる |
| サイドまたは下部の関連リンク | 同階層・関連情報への移動 | 「戻る」ではなく「次に見たいもの」を置く |
| グローバルナビの現在地表示 | どのカテゴリにいるか | 現在のカテゴリを視覚的に区別する |
| フッターのサイトマップ | 全体像の提示 | 下層ページからの回遊を支える |
SEOとの接続
情報設計は、検索エンジンからの評価にも直結します。
URL構造をカテゴリと一致させる
ナビの階層とURLの階層を揃えると、構造が検索エンジンにも人にも伝わります。日本語URLは共有時に文字化けするため、英数字のスラッグを使ってください。
1ページ1テーマにする
複数のサービスを1ページにまとめると、どの検索語句にも中途半端に対応するページになります。検索されている語句の単位でページを分けるのが原則です。分けたページ同士は関連リンクでつなぎます。
似たページを作りすぎない
逆に、検索意図がほぼ同じページを複数作ると、検索エンジンがどちらを評価すべきか判断できず、双方の順位が伸びません。「地域名だけ変えたページを大量に作る」といった設計は、この問題を起こします。分けるかどうかは、検索意図が違うかで判断してください。
リニューアル時に流入を落とさないために
情報設計を見直すとき、最も多い事故がURL変更に伴う流入減です。
- 現行の全URLと流入数・順位を一覧化する:Search Consoleとサイトマップから抽出する
- 新旧URLの対応表を作る:統合・削除するページも、どこへ寄せるかを決める
- 301リダイレクトを設定する:トップページに一括で飛ばさず、対応するページへ個別に転送する
- 内部リンクを新URLに書き換える:リダイレクト任せにしない
- 公開後1〜2か月、Search Consoleで流入とエラーを監視する:404の急増がないか確認する
3番目の「トップページに一括転送」は、実務で頻繁に見られる誤りです。内容が対応しない転送は、リダイレクトとして評価されにくく、順位が引き継がれません。統合先が決まらないページは、削除ではなく残す判断も検討してください。
情報設計を見直すべきサイン
| サイン | 示していること |
|---|---|
| サイトに書いてある内容を電話で聞かれる | 情報が探せる場所にない |
| サイト内検索の利用率が高い | ナビゲーションが機能していない |
| ページを追加するたびに「どこに置くか」で迷う | 分類の基準が定まっていない |
| グローバルナビが8項目以上ある | 分類の粒度が揃っていない |
| 同じような内容のページが複数ある | ページ追加が場当たりになっている |
| 主要ページ(料金・事例)への到達率が低い | 導線が設計されていない |
3つ以上当てはまるなら、ページを足す前に構造を見直したほうが、投資効率が高くなります。
よくある質問
Q. 情報設計は誰がやるべきですか?
材料集め(検索語句、問い合わせ内容)は自社が最も適しています。構造化とラベリングは、業界内の常識に染まっていない外部の視点があると精度が上がります。制作会社に依頼する場合も、材料は自社で用意すると成果物の質が変わります。
Q. ワイヤーフレームとは何が違いますか?
情報設計はサイト全体の構造(どんなページがあり、どう関係するか)を決める工程、ワイヤーフレームは各ページ内の要素配置を決める工程です。順序としては情報設計が先で、これが決まらないままワイヤーフレームに入ると、後戻りが発生します。
Q. ページ数はどのくらいが適切ですか?
数に正解はありません。基準は「検索されている語句の単位で分けられているか」と「各ページに固有の内容があるか」です。数を減らすことが目的ではなく、1ページに複数テーマが混在していないかを見てください。
Q. リニューアルなしで改善できますか?
できます。ナビのラベル変更、パンくずの追加、関連リンクの設置、よくある質問ページの新設は、構造を大きく変えずに実施できます。まずこれらで到達率が改善するかを見てから、全面的な再設計を判断してください。
まとめ
情報設計の目的は、訪問者が探している情報にたどり着ける状態を作ることです。成果は見た目ではなく、主要ページへの到達率、サイト内検索の利用率、そして「電話で聞かれる質問」で測れます。
構成の材料は推測ではなく、検索語句・サイト内検索・問い合わせ内容という実データから集めてください。グループ化は社内議論ではなく、業界に詳しくない人に並べてもらうほうが精度が上がります。
ナビゲーションは5〜7項目に収め、ラベルには社内用語ではなく実際に検索されている言葉を使ってください。そして、リニューアル時はURL対応表と個別の301リダイレクトを必ず用意してください。トップページへの一括転送は順位を引き継げません。
「情報はあるのに問い合わせが来ない」「ページを追加するたびにどこへ置くか迷う」「サイトに書いてある内容を電話で聞かれる」といった状態にある場合は、ページの追加ではなく構造の見直しが先です。
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