Webサイト制作で「ワイヤーフレームの確認をお願いします」と言われても、線と四角だけの資料を前に、何を見ればよいか分からないという声は少なくありません。結果として「見た目はデザインが上がってから判断します」となり、デザイン完成後に構成の作り直しが発生します。
ワイヤーフレームの目的は、デザインに入る前に「何を、どの順番で伝えるか」を確定させることです。ここで合意できていれば、以降の修正は表現の調整で済みます。逆にここを流すと、色や写真の議論をしながら構成を直すことになり、費用も期間も膨らみます。
この記事では、ワイヤーフレームの役割と作る目的を整理したうえで、発注者が確認すべき項目、作成の手順、そしてよくある失敗までを解説します。
この記事でわかること
・ワイヤーフレームで決めること・決めないことの線引き
・発注者がレビュー時に見るべき7項目
・情報設計・デザインカンプとの違いと工程上の位置づけ
・自社で作る場合の手順と、用意すべき材料
・確認を飛ばしたときに起きる手戻りの構造
結論:ワイヤーフレームは「合意の記録」
ワイヤーフレームは設計図であると同時に、発注者と制作者の合意を残す文書です。ここで決めるものと決めないものを分けておくと、レビューの論点がぶれません。
| ワイヤーフレームで決めること | この段階では決めないこと |
|---|---|
| 掲載する情報の項目と、その優先順位 | 色・フォント・写真の選定 |
| ブロックの順序(何を先に見せるか) | 余白やあしらいの精度 |
| 各ブロックで伝えるメッセージの主旨 | コピーの最終的な言い回し |
| CTAの位置と数 | ボタンの形状やアニメーション |
| スマートフォンでの並び順 | 細かなレスポンシブ挙動 |
レビュー時に「この青は好みではない」といった指摘が出るのは、ワイヤーフレームの役割が共有されていないためです。冒頭で「この段階では並び順と情報の過不足を見てください」と明示するだけで、確認の質が変わります。
ワイヤーフレームは見た目の下書きではなく、「何をどの順で伝えるか」の合意です。
ここを飛ばすと、デザイン工程で構成の議論が再発します。
工程上の位置づけ
| 工程 | 決めること | 成果物 |
|---|---|---|
| 要件定義 | 目的、ターゲット、CV地点、流入経路 | 要件シート |
| 情報設計(IA) | サイト全体の構造。どんなページがあり、どう関係するか | サイトマップ |
| ワイヤーフレーム | 各ページ内の情報と並び順 | ページごとの構成図 |
| デザインカンプ | 配色、書体、写真、余白 | デザインデータ |
| 実装 | HTML/CSS、動作、表示速度 | 公開可能なページ |
順序を飛ばすと必ず戻ります。情報設計が決まらないままワイヤーフレームに入ると、「このページはそもそも必要か」という議論が途中で起きます。サイト全体の構造については情報設計(IA)とは?わかりやすいサイト構成の作り方で解説しています。
発注者がレビューで見る7項目
デザインの好みではなく、次の観点で確認してください。
| # | 確認項目 | 具体的な問い |
|---|---|---|
| 1 | 誰向けかが最初に分かるか | ファーストビューを見て、対象者と提供内容が3秒で伝わるか |
| 2 | 情報の順序が判断の順序と合っているか | 訪問者が知りたい順(条件→内容→根拠→料金→申込)になっているか |
| 3 | 必要な情報が抜けていないか | 問い合わせで頻繁に聞かれる質問が、どこかに入っているか |
| 4 | 不要な情報が入っていないか | 社内都合の情報(沿革、理念)が上部を占めていないか |
| 5 | CTAが1つに絞られているか | 主となる行動が明確か。同列のボタンが並んでいないか |
| 6 | スマートフォンでの並びが確認できるか | PC版だけでなく、スマホ版のワイヤーがあるか |
| 7 | 各ブロックの目的が言語化されているか | 「このブロックは何のためにあるか」が説明できるか |
3番目は、発注者にしか判断できない項目です。制作会社は、あなたの会社に寄せられる質問を知りません。直近の問い合わせで繰り返し聞かれた内容を一覧にして渡すと、ワイヤーフレームの精度が上がります。
スマートフォン版を必ず確認する
PC版で横並びに配置された要素は、スマートフォンでは縦に積み上がります。PC版では1画面に収まっていた「見出し+画像+CTA」が、スマートフォンでは画像だけで画面が埋まり、CTAが画面外に出ることがあります。
流入の多くがスマートフォンである以上、スマートフォン版のワイヤーフレームがない状態で承認しないことを原則にしてください。ファーストビューの設計についてはファーストビュー設計の重要性|離脱を防ぐ最初の3秒の作り方で解説しています。
自社で作る場合の手順
専用ツールがなくても、紙やスプレッドシートで作れます。重要なのはツールではなく順序です。
- 目的とCV地点を1行で書く:「このページは誰に何をしてもらうページか」
- 載せたい情報を全部書き出す:この時点では順番を考えない
- 訪問者の判断順に並べ替える:条件 → 内容 → 根拠 → 料金 → 不安解消 → 申込
- 各ブロックに目的を1行添える:目的が書けないブロックは削る候補
- スマートフォンの縦1列で並べ直す:1画面ごとに何が見えるかを確認する
- CTAの位置を決める:主CTAを1つ決め、ページ内の複数箇所に同じものを置く
4番目が効きます。「実績紹介」というブロックに対して「取引の規模感を示し、自社と近い事例があることを伝える」と書けるなら残す。「なんとなく載せている」なら削る。目的が書けないブロックは、訪問者にとっても意味がありません。
用意しておく材料
- サービス内容の説明(箇条書きで可)
- 料金または費用の目安と、その条件
- 実績・事例(数字が出せるもの)
- よく聞かれる質問と、その回答
- 使用できる写真(現場、スタッフ、商品)
- 対応エリア、営業時間、連絡先
これらが揃っていないと、ワイヤーフレームは「ここに実績が入ります」という空箱の並びになります。空箱で承認すると、中身が入った段階で構成の問題が発覚します。仮の文章でよいので、実際の分量に近いテキストを入れて確認してください。
よくある失敗
失敗1:デザインの話をしてしまう
色や書体の議論が始まると、構成の確認が疎かになります。レビュー冒頭で「今回は並び順と情報の過不足を見る回」と明示してください。
失敗2:ダミーテキストのまま承認する
「テキストが入ります」で埋まったワイヤーフレームは、実際の文章量が反映されていません。想定より長い原稿が入ると、画面の見え方が変わります。分量の近い仮テキストを入れてください。
失敗3:スマートフォン版を確認しない
PC版だけ承認すると、実装後に「スマホだとCTAが下すぎる」という指摘が出ます。この修正はデザイン・実装の両方に波及します。
失敗4:社内の承認者がレビューに参加していない
担当者だけで進め、デザイン完成後に決裁者が構成を覆すケースは頻繁に起こります。最終承認者はワイヤーフレームの段階で1度は確認に入れてください。この1回が、後工程の数週間を節約します。
失敗5:全ページ分を作ろうとする
下層ページまで全て作ると、期間も費用も膨らみます。トップページ、主要なサービスページ、問い合わせページなど、成果に直結するページに絞り、他はパターン化した共通レイアウトで進めるほうが効率的です。
よくある質問
Q. ワイヤーフレームは必ず必要ですか?
1〜2ページの小規模な制作で、掲載内容が確定している場合は省略できることもあります。ただし、複数人で承認する場合や、掲載内容が未確定な場合は、作ったほうが結果的に早くなります。省略の判断は、ページ数ではなく「関係者の人数と内容の確定度」で行ってください。
Q. 誰が作るのですか?
通常は制作会社のディレクターが作成します。ただし、載せる情報とその優先順位は発注者にしか判断できません。材料(サービス内容、料金、よくある質問、実績)を渡し、並び順の意図を確認する形が現実的です。
Q. どのくらいの期間がかかりますか?
ページ数と確認回数によりますが、主要ページ数点で1〜2週間が目安です。材料が揃っていれば短縮できます。逆に、材料集めから始めると、この工程が最も時間のかかる部分になります。
Q. デザインカンプとは何が違いますか?
ワイヤーフレームは情報と並び順を決める工程、デザインカンプは色・書体・写真・余白を含む完成イメージです。ワイヤーフレームで構成を確定させてからデザインに進むことで、デザイン段階の修正が表現の調整だけで済みます。
まとめ
ワイヤーフレームの目的は、デザインに入る前に「何を、どの順番で伝えるか」を確定させ、それを合意の記録として残すことです。この段階で見るのは色や書体ではなく、情報の過不足と並び順です。
レビューでは、誰向けか3秒で伝わるか、情報の順序が判断の順序と合っているか、問い合わせで聞かれる内容が入っているか、CTAが1つに絞られているか、そしてスマートフォン版が用意されているかを確認してください。
作成時は、各ブロックに目的を1行添えてください。目的が書けないブロックは削る候補です。そして、ダミーテキストのまま承認せず、分量の近い仮テキストで確認してください。
「デザインが上がってから構成の修正が発生した」「スマホで見たら想定と違った」「決裁者が後から構成を覆した」といった経験がある場合は、ワイヤーフレームの確認体制を見直す価値があります。
当社ではホームページ制作において、要件定義から情報設計、ワイヤーフレーム、公開後の改善までを一貫して支援しています。資料では構成設計の進め方をまとめていますので、自社の課題を整理したい方はぜひダウンロードしてご活用ください。