店舗ビジネスでは、問い合わせの多くが電話で発生します。しかし電話は、フォーム送信のように「送信完了」という明確な終点がないため、計測してもそのまま鵜呑みにできません。
タップしただけで発信していない人、同じ人が複数回タップした分、PCからのタップ、そして広告の電話番号アセット経由の通話。これらが混ざった数字を「電話コンバージョン数」として扱うと、CPAは実態より良く見えます。
この記事では、電話コンバージョンの計測方法を整理したうえで、計測値と実際の着信数がずれる原因、着信データとの突き合わせ方、そしてコールトラッキングを導入すべき判断基準までを解説します。
この記事でわかること
・電話コンバージョンの3つの計測経路と、それぞれが測っているもの
・計測値が実際の着信数とずれる5つの原因
・タップ数を着信数・来店数と突き合わせる方法
・二重計上を防ぐ設定
・コールトラッキングを導入すべき判断基準
電話コンバージョンには3つの経路がある
まず、何を計測しているのかを整理してください。混同すると二重計上が起きます。
| 経路 | 測っているもの | 計測方法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| サイト上の電話番号タップ | タップした回数 | GTMのクリックトリガー+GA4イベント | 発信したかは分からない |
| 広告の電話番号アセット経由の通話 | 実際の通話とその秒数 | Google広告側の通話コンバージョン | 一定秒数以上を成果として設定できる |
| 電話専用広告からの通話 | 実際の通話 | 同上 | 広告自体が発信ボタン |
| コールトラッキング番号への着信 | 実際の着信と通話内容 | 専用サービス | 媒体別・キャンペーン別に分けられる |
このうち、1番目だけが「タップ」を測っており、他は「通話」を測っています。この違いが、数字のずれの出発点です。
サイト上のタップ数は、発信数でも着信数でもありません。
実際の着信数と並べて記録し、その比率を把握して初めて、CPAの評価に使えます。
サイト上の電話タップを計測する
GA4の拡張計測機能では計測できません。離脱クリックの対象が外部ドメインへのリンクに限られ、tel: リンクは含まれないためです。GTMでクリックトリガーを作ります。
- GTMの「変数」→「組み込み変数」でクリック関連(Click URL など)を有効にする
- トリガーのタイプ「クリック – リンクのみ」を選び、条件を Click URL / 先頭が一致 / tel: に設定する
- 「タグの配信を待つ」をオンにする(電話アプリへ遷移する前に送信するため)
- GA4イベントタグを作成し、イベント名(例:tel_tap)を設定する
- GTMのプレビューで発火を確認してから公開する
詳細な設定手順は店舗ビジネスのためのGA4×GTM計測設定ガイドで解説しています。この記事では、実装後に数字をどう読むかに絞ります。
計測値が実際の着信数とずれる5つの原因
| 原因 | 影響の方向 | 対処 |
|---|---|---|
| タップしたが発信しなかった | 計測値が実際より多くなる | 着信数との比率を把握する |
| 同じ人が複数回タップした | 同上 | セッション単位で見る、または比率で補正する |
| PCからのタップ | 同上(PCでは発信されない) | デバイス別に分ける、またはモバイルのみ計測する |
| 営業時間外のタップ | 同上(つながらない) | 時間帯別に確認する |
| 番号を手打ちで発信した | 計測値が実際より少なくなる | タップ以外の発信は捕捉できないと理解する |
3番目は設定で対処できます。PCでは電話番号をタップしても発信されないため、デバイス別にキーイベント数を分けて見るか、トリガーの条件でモバイルに絞ってください。PCのタップを含めたままだと、CV数が過大になります。
実務での扱い方
完璧な計測を目指すより、比率を把握して補正するほうが現実的です。
- 月次で「タップ数」と「実際の着信数」を並べて記録する
- 比率(着信数 ÷ タップ数)を算出する
- この比率を使って、CPAを実態に近づけて評価する
- 比率は季節や広告の出し方で変動するため、四半期ごとに見直す
たとえば比率が0.6であれば、タップ50件は実質30件の着信です。CPA5,000円は、実質8,333円として評価する。この補正をするかしないかで、予算判断が変わります。
着信データとの突き合わせ
比率を出すには、実際の着信数を記録する必要があります。専用ツールがなくても始められます。
| 方法 | 分かること | 手間 |
|---|---|---|
| 着信履歴を日次で記録する | 総着信数 | 低い。電話機の履歴を転記するだけ |
| 受付時に流入経路を聞く | どこ経由の電話か | 中。「何をご覧になってお電話いただきましたか」の一言 |
| 広告用の電話番号を分ける | 媒体別の着信数 | 中。番号の追加費用が発生する |
| コールトラッキングを導入する | 媒体別・キャンペーン別の着信と通話内容 | 高。月額費用が発生する |
まず1番目と2番目から始めてください。「着信が月何件で、そのうち何件がWeb経由か」が分かるだけで、タップ数の意味づけができます。
来店・成約まで追う
着信数が分かったら、次はその先です。
タップ数 → 着信数 → 来店数 → 成約数 → 粗利
この連鎖を月次で記録すると、「タップ1件がいくらの粗利につながるか」が算出できます。この数字があって初めて、許容CPAを粗利から逆算できます。計算方法は店舗集客のGoogle広告費用相場は?月額予算の決め方を計算式で解説で解説しています。
二重計上を防ぐ
電話コンバージョンは、複数の経路で計測されるため二重計上が起きやすい項目です。
| 状況 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| サイトのタップと広告の通話CVを両方インポート | 同じ電話が2件として計上される可能性 | どちらを成果とするか決め、片方は観測用にする |
| GA4経由とGoogle広告タグ直接の両方が有効 | CV数が約2倍になる | どちらか一方に統一する |
| GA4タグがサイト直書きとGTM経由の両方にある | セッションもCVも二重 | 直書きのタグを削除する |
| 複数のGTMコンテナが設置されている | 同じイベントが複数回送信される | コンテナを1つに統合する |
CV数が実感より多い場合は、まずこの4つを確認してください。「CPAが良すぎる」ときこそ、計測を疑う場面です。
広告の通話コンバージョンを使う
Google広告には、電話番号アセット経由の通話を計測する仕組みがあります。サイト上のタップと違い、実際に通話が発生したかどうかを測れます。
- 一定の通話時間以上をコンバージョンとして設定できる(短い誤発信を除外できる)
- 広告から直接発信されるため、サイトを経由しない
- サイト上のタップとは別の経路のため、両方を有効にすると重複の可能性がある
通話時間の条件を設定できる点が有効です。数秒で切れた通話を除外すれば、実質的な問い合わせに近い数字になります。
コールトラッキングを導入すべきか
媒体別・キャンペーン別に専用の電話番号を割り当て、着信を計測するサービスです。
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 電話が問い合わせの過半を占める | 導入を検討 | 最も重要な経路が可視化されていない状態 |
| 複数媒体に出稿している | 導入を検討 | 媒体別の貢献が分からないと配分を決められない |
| 広告費が月30万円以上 | 導入を検討 | 費用対効果が合いやすい |
| 問い合わせがフォーム中心 | 不要 | 電話の比率が低ければ効果は限定的 |
| 広告費が月10万円未満 | 不要 | 月額費用が広告費に対して重い |
| そもそも着信数を記録していない | まず記録から | ツール導入より先に、手作業での記録を始める |
最後の項目が重要です。着信数の記録すらしていない状態でツールを導入しても、運用に乗りません。まず手作業で1〜2か月記録し、必要性を確認してから検討してください。
よくある失敗
失敗1:タップ数をそのままCV数として扱う
発信していない人、重複タップ、PCタップが含まれます。着信数との比率を把握してください。
失敗2:PCのタップを含めたまま評価する
PCでは発信されません。デバイス別に分けるか、モバイルに絞ってください。
失敗3:複数経路を同時に有効にする
サイトのタップと広告の通話CVを両方成果として扱うと、二重計上になります。
失敗4:着信数を記録していない
比較対象がないと、タップ数の意味づけができません。電話機の履歴を転記するだけでも始められます。
失敗5:営業時間外のタップを考慮しない
つながらない時間帯のタップは、機会損失として別に把握してください。深夜のタップが多いなら、Web予約やLINEの導線を用意する価値があります。
よくある質問
Q. GA4だけで電話タップは計測できませんか?
拡張計測機能では計測できません。離脱クリックの対象が外部ドメインへのリンクに限られ、tel: リンクは含まれないためです。GTMでクリックトリガーを作る必要があります。
Q. タップ数と着信数の比率はどのくらいが普通ですか?
業種、時間帯、デバイス構成によって変わるため、一般的な数値は目安になりません。自社で1〜2か月記録して、自社の比率を出してください。それが唯一の基準になります。
Q. 電話番号が画像になっていて計測できません
まず <a href="tel:..."> のリンクに変更してください。計測を工夫するより、実装を直すほうが速く確実です。あわせて、リンクにすることでスマートフォンからの発信もしやすくなります。
Q. 電話コンバージョンを自動入札の目標にしてよいですか?
使えますが、数字の精度に注意してください。タップ数をそのまま目標にすると、発信に至らないタップも最適化の対象になります。可能であれば、広告の通話コンバージョン(通話時間の条件付き)を使うほうが精度が上がります。
Q. 営業時間外の対応はどうすべきですか?
時間帯別のタップ数を確認し、営業時間外が多いようなら、Web予約フォームやLINEの導線を用意してください。あわせて、広告の配信時間帯を営業時間に寄せる調整も検討できます。
まとめ
電話コンバージョンには、サイト上のタップ、広告の通話アセット、コールトラッキングという複数の経路があり、それぞれ測っているものが違います。サイト上のタップ数は、発信数でも着信数でもありません。
実務では、タップ数と実際の着信数を月次で並べて記録し、その比率を把握してください。比率が分かれば、CPAを実態に近づけて評価できます。この補正をするかしないかで、予算の判断が変わります。
そして、複数の経路を同時に成果として扱うと二重計上になります。どれを成果とするかを決め、他は観測用にしてください。CPAが良すぎるときこそ、計測を疑う場面です。
「電話問い合わせが多いのに広告の成果として見えていない」「CV数はあるが実感と合わない」といった状態にある場合は、実装だけでなく、着信数との突合と二重計上の確認を合わせて行う必要があります。
当社の資料では、店舗ビジネスにおける計測環境の整え方、成果定義の設計、広告と組み合わせた改善の進め方をまとめています。自社の課題を整理したい方は、ぜひ資料をダウンロードしてご活用ください。