複数の媒体に広告を出していると、GA4のレポートで「どこからの流入か分からない」という状態が起こります。同じ媒体が複数の名称で記録される、広告経由なのに自然検索として計上される、といった現象です。
原因は、UTMパラメータの設計にあります。そして厄介なのは、後から直しても過去のデータは修正できないことです。命名規則は、出稿を始める前に決めておく必要があります。
この記事では、パラメータの構造と、実務で破綻しない命名規則の作り方を解説します。
この記事でわかること
・UTMパラメータの5つの項目と役割
・自動タグ設定がある媒体・ない媒体の扱い
・破綻しない命名規則の作り方
・付けてはいけない場所
・確認方法
UTMパラメータの構造
リンク先URLの末尾に付ける情報で、GA4側で流入元を識別するために使います。
| 項目 | 意味 | 記入例 |
|---|---|---|
| utm_source | どこから | yahoo / google / meta / line |
| utm_medium | どの種類 | cpc / display / email / social |
| utm_campaign | どのキャンペーン | 2026spring_gaiheki |
| utm_content | どのクリエイティブ・広告 | bannerA / textB |
| utm_term | どのキーワード | gaiheki_chiba |
必須なのは source と medium の2つです。この2つがないと、GA4側で流入元を分類できません。
campaign 以降は、分析の粒度に応じて使います。ただし細かくしすぎると管理できなくなります。
命名規則は、出稿を始める前に決めてください。
後から統一しても、過去のデータは遡って修正できません。
自動タグ設定がある場合
媒体によっては、パラメータを手動で付けなくても流入元を判別できる仕組みがあります。
| 状況 | 対応 | 注意 |
|---|---|---|
| 自動タグ設定が有効 | 手動パラメータは原則不要 | 両方付けると競合することがある |
| 自動タグ設定がない媒体 | 手動で付ける | 付けないと判別できない |
| 自動タグ設定の可否が不明 | 媒体の設定画面を確認 | — |
| メール・SNS投稿・QRコード | 手動で付ける | 自動では判別できない |
自動タグ設定と手動パラメータを両方付けると、意図しない挙動になることがあります。どちらを使うかを媒体ごとに決めてください。仕様は変更されるため、各媒体および解析ツールの公式ドキュメントで最新の情報を確認してください。
4行目を忘れないでください。メールのリンク、SNSの投稿、名刺やチラシのQRコード——これらは手動でパラメータを付けなければ、流入元が判別できません。
破綻しない命名規則
実務で最も起きる問題は、表記のゆれです。
| 同じ媒体なのに別々に記録される例 |
|---|
| yahoo / Yahoo / YAHOO / yahoo! |
| meta / facebook / fb / Facebook |
| cpc / CPC / paid / ppc |
| 2026spring / 2026_spring / spring2026 |
GA4は大文字と小文字を区別します。「Yahoo」と「yahoo」は別の流入元として集計されます。
決めるべきルール
- すべて小文字にする:例外を作らない
- 単語の区切りはアンダースコアに統一:ハイフンと混在させない
- 日本語・全角文字は使わない:文字化けの原因
- スペースを入れない:URLとして壊れる
- source と medium の値を一覧で決めておく:新しく作らせない
- campaign の命名形式を決める:例「年月_商材_施策」
5番目が最も重要です。source と medium は自由記述にせず、使ってよい値のリストを作ってください。担当者や代理店が増えたときに、勝手な値が入るのを防げます。
一覧の例
| utm_source(決めた値のみ使う) | utm_medium(決めた値のみ使う) |
|---|---|
| cpc(検索広告) | |
| yahoo | display(ディスプレイ広告) |
| meta | social(SNS投稿) |
| tiktok | email(メール) |
| line | qr(印刷物のQRコード) |
| newsletter | referral(紹介・掲載) |
※例です。自社で使う媒体に合わせて作成してください。
付けてはいけない場所
| 場所 | 理由 |
|---|---|
| 自社サイト内のリンク | セッションが分断され、流入元が上書きされる |
| 個人情報を含む値 | URLに氏名・メールアドレスなどを入れない |
| サイトマップに載せるURL | 検索エンジンにパラメータ付きURLが登録される |
| 広告の表示URL | パラメータは最終URL側に付ける |
| canonical タグの指定先 | 正規URLはパラメータなしにする |
1番目が最も影響の大きい誤りです。自社サイト内のリンクにパラメータを付けると、そこで新しいセッションが始まり、本来の流入元(広告・検索)が失われます。広告経由の訪問者が、途中から「自社サイトからの流入」として記録されることになります。
サイト内の遷移を追いたい場合は、パラメータではなくGA4のイベントで計測してください。
2番目は個人情報の取り扱いに関わります。URLは各種ログに残るため、個人を特定できる情報を含めないでください。
実務での運用
- 命名規則を1枚のドキュメントにまとめる:使ってよい値の一覧を含む
- URL生成用のシートを作る:入力すればURLができる形
- 代理店・外注先にも共有する:勝手な値を使わせない
- 新しい媒体を追加するときはルールに追記する
- 月1回、GA4で流入元の一覧を確認する:想定外の値がないか
5番目を習慣にすると、ゆれを早期に発見できます。GA4の「トラフィック獲得」レポートで、参照元/メディアの一覧を見てください。見覚えのない値があれば、誰かがルール外のパラメータを使っています。
レポートの見方はGA4レポートの見方|最初に見るべき3画面を参照してください。
確認方法
- パラメータ付きURLを実際に開く:ページが正常に表示されるか
- GA4のリアルタイムレポートで確認する:想定した参照元/メディアで記録されるか
- 広告の入稿後にリンク先を確認する:パラメータが正しく付いているか
- リダイレクトがないか確認する:転送でパラメータが落ちることがある
- スマートフォンでも確認する
4番目は見落とされやすい問題です。httpからhttpsへの転送、wwwの有無の転送などが設定されている場合、転送の設定によってはパラメータが失われます。実際に開いて、URLにパラメータが残っているか確認してください。
ずれが起きたときの見方
| 症状 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 広告経由が「自然検索」に計上される | パラメータ未設定/自動タグ設定が無効 |
| 同じ媒体が複数の名称で出る | 表記のゆれ |
| 流入元が「(direct)」ばかり | パラメータ未設定/リダイレクトで消失 |
| 自社サイトが参照元に出る | サイト内リンクにパラメータを付けている |
| 広告のクリック数とGA4のセッション数が合わない | 計測の性質上、完全一致はしない |
最後の行について補足します。広告管理画面のクリック数とGA4のセッション数は、計測の仕組みが異なるため一致しません。読み込み前の離脱、計測のブロック、集計基準の違いなどが要因です。一致させようとせず、傾向を見てください。
よくある失敗
失敗1:命名規則を決めずに出稿を始める
過去のデータは遡って修正できません。最初に決めてください。
失敗2:大文字と小文字が混在する
別の流入元として集計されます。すべて小文字に統一してください。
失敗3:自社サイト内のリンクにパラメータを付ける
本来の流入元が失われます。最も影響の大きい誤りです。
失敗4:自動タグ設定と手動パラメータを両方付ける
意図しない挙動になることがあります。媒体ごとにどちらを使うか決めてください。
失敗5:メール・QRコードに付け忘れる
自動では判別できません。手動で付けてください。
よくある質問
Q. utm_term と utm_content は必要ですか?
分析の粒度によります。まず source と medium と campaign から始めてください。細かくしすぎると、管理が破綻して表記のゆれが増えます。
Q. 途中から命名規則を変えてもよいですか?
変更自体は可能ですが、変更前後で別の値として集計されるため、期間をまたいだ比較ができなくなります。変更する場合は、切り替え日を記録してください。
Q. パラメータ付きURLはSEOに影響しますか?
広告のリンク先として使う分には通常問題になりません。ただし、パラメータ付きURLがサイトマップに含まれる、内部リンクとして多数存在する、といった状態は避けてください。正規URLの指定を確認してください。
Q. 短縮URLを使ってもパラメータは機能しますか?
転送先にパラメータが含まれていれば機能します。ただし転送の設定によっては失われることがあるため、実際に開いて確認してください。
Q. 印刷物のQRコードにも付けるべきですか?
付けてください。チラシ、名刺、パンフレット、看板など、媒体ごとに値を変えれば、どの制作物から流入したかが分かります。制作物の効果測定に使えます。
まとめ
UTMパラメータの設計で最も重要なのは、出稿を始める前に命名規則を決めることです。後から統一しても、過去のデータは遡って修正できません。
必須は source と medium の2つです。そして、この2つは自由記述にせず、使ってよい値の一覧を作ってください。担当者や代理店が増えたときに、表記のゆれを防げます。
ルールはシンプルにしてください。すべて小文字、区切りはアンダースコア、日本語と全角は使わない。GA4は大文字と小文字を区別するため、この統一だけで多くの問題が防げます。
そして、自社サイト内のリンクには付けないでください。本来の流入元が失われます。メール・SNS・QRコードには、逆に必ず付けてください。
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