広告費の削減を求められたとき、最も避けるべき対応は「一律で◯%減らす」です。成果の出ている配信まで縮小することになり、削減率以上に成果が落ちます。
削減には順序があります。無駄が確実に存在する箇所から削れば、成果をほとんど落とさずに費用を下げられます。
この記事では、削る順序と、削ってはいけない箇所を整理します。
この記事でわかること
・一律削減が最も損をする理由
・削る順序(無駄が確実な箇所から)
・削ってはいけない箇所
・費用をかけずに成果を上げる打ち手
・削減後に確認する指標
一律削減が損をする理由
| 配信の状態 | 一律20%削減した場合 | 本来の対応 |
|---|---|---|
| CPA良好・CV多数 | CV数が減る(損失) | 維持または増額 |
| CPA普通 | やや減る | 維持 |
| CPA悪い・CV少数 | わずかに改善 | 停止 |
| 対象外への配信 | わずかに改善 | 除外 |
削るべきは3行目と4行目だけです。1行目を削ると、最も効率の良い配信を縮小することになります。
削減は「全体を薄く」ではなく「悪い順に止める」です。
これだけで、削減率以上に効率が改善することがあります。
削る順序
上から順に実施してください。1〜3で目標の削減額に達すれば、それ以上削る必要はありません。
1. 対象外への配信を止める(成果への影響なし)
- 検索語句レポートを確認し、対象外の語を除外する:求人、DIY、他地域など
- 配信地域を見直す:対応していないエリアへの配信
- 配信時間を見直す:対応できない時間帯
- デバイスを確認する:極端にCPAの悪いデバイス
- CV済みユーザーを除外する:リターゲティング配信での無駄
ここは成果を落とさずに削れる部分です。除外の判断基準は検索語句レポートの見方と除外キーワードの決め方を参照してください。
2. 成果の出ていない配信を止める
| 対象 | 判断基準 | 注意 |
|---|---|---|
| CPAの悪いキーワード | 十分なクリック数で判断 | 少数クリックで判断しない |
| CVのないキーワード | 自社CV率から必要クリック数を逆算 | 偶然の可能性を排除 |
| 成果の出ていない媒体 | 全体への貢献も確認 | 認知への寄与を無視しない |
| 反応の落ちたクリエイティブ | 摩耗の可能性 | 差し替えも選択肢 |
| 成果の出ていないキャンペーン | — | — |
「CVがないから止める」は、クリック数を確認してから判断してください。自社のCV率が5%なら、20クリックで1件の計算です。5クリックでCVがなくても、判断材料としては不足しています。
3. 増分のない配信を検証する
CPAが良く見えても、広告がなくてもCVしていた可能性があります。
| 対象 | 検証方法 |
|---|---|
| リターゲティング | 2〜4週間停止し、全体のCV数を比較 |
| 指名検索(自社名) | 同上。自然検索で拾えている可能性 |
| サイト訪問者全体への配信 | リストを分けて成果を確認 |
止めても全体のCV数が変わらなければ、その予算は増分を生んでいません。削減対象として最適です。検証方法はリターゲティング広告の設定手順と、効果を正しく見極める方法を参照してください。
4. 配信量を絞る(ここから成果に影響)
1〜3で足りない場合に初めて検討します。
- 目標CPAを引き下げる:配信量が絞られる
- キーワードを主要なものに絞る
- 配信地域を商圏の中心に絞る
- 閑散期の予算を下げる:年間で配分し直す
ここからはCV数が減ります。削減額とCV減少のトレードオフを、社内で合意してから実施してください。
削ってはいけない箇所
| 対象 | 削ると起きること |
|---|---|
| CPA良好で配信量に余地があるキャンペーン | 最も効率の良い獲得を失う |
| 計測タグ・計測ツール | 判断材料を失う |
| 自動入札の学習中のキャンペーン | 学習がやり直しになる |
| 繁忙期直前の配信 | 需要のある時期を逃す |
| クリエイティブの制作費 | 摩耗した広告を出し続けることになる |
2番目を削るケースが実際にあります。計測ツールの月額費用は目立ちますが、これを止めると何が効いているか分からなくなります。削減の判断そのものができなくなります。
3番目も注意が必要です。学習期間中に予算を大きく変えると、それまでの配信が無駄になります。詳細は自動入札の選び方と切り替えるタイミング|機能しない条件も解説を参照してください。
費用をかけずに成果を上げる
削減と並行して、費用のかからない改善を実施してください。同じ予算でCV数を増やせば、実質的な削減になります。
| 施策 | 費用 | 効果までの期間 |
|---|---|---|
| Googleビジネスプロフィールの整備 | ゼロ | 数週間 |
| 既存ページのタイトル見直し | ゼロ | 数週間〜 |
| フォームの項目削減 | 小 | 即時 |
| CTAの文言変更 | 小 | 即時 |
| CTAの直前に不安を消す一文を追加 | 小 | 即時 |
| 広告文の見直し | ゼロ | 数日 |
| 遷移先を検索意図に合わせる | 小 | 即時 |
3〜5番目は、その日のうちに実施できてCVRに直接効きます。詳細はマイクロコピーとは?CVRを動かす短い文章の書き方と入力フォームの離脱率を改善するデザインの工夫を参照してください。
CVRが2割改善すれば、広告費を2割削っても同じCV数を維持できます。削減の議論では、この方向が見落とされがちです。
獲得後の歩留まりも確認する
広告費を削る前に、いま獲得している問い合わせを取りこぼしていないかを確認してください。
- 初回連絡までの時間:遅ければ成約率が落ちている
- 失注理由:「連絡がつかなかった」が多くないか
- 見積提示までの期間
- 問い合わせの質:対象外の人を集めていないか
成約率が上がれば、同じ広告費でも売上は増えます。これは広告費の削減と同じ効果です。詳細は問い合わせ後の歩留まりを改善する|リード管理の始め方を参照してください。
削減後に確認する指標
- CV数の変化:削減率と比べてどうか
- CPAの変化:改善しているか
- 成約数の変化:最終的な判断材料
- 問い合わせの質:成約率が落ちていないか
- 2〜4週間のデータで見る:単日・数日では判断しない
理想は「広告費20%削減、CV数の減少は5%以内」といった状態です。削減率よりCV数の減少が小さければ、無駄が削れています。逆に削減率以上にCV数が減っていれば、削る場所を誤っています。
よくある失敗
失敗1:一律で◯%削減する
成果の出ている配信まで縮小し、削減率以上に成果が落ちます。
失敗2:CPAの悪い順ではなく金額の大きい順に削る
金額が大きいのは、成果が出ていて予算を投じている配信であることが多くあります。
失敗3:計測ツールを止める
判断材料を失い、削減の判断そのものができなくなります。
失敗4:少ないクリック数でキーワードを止める
自社のCV率から必要クリック数を逆算してください。
失敗5:削減だけ考え、CVR改善を検討しない
CVRが上がれば、同じCV数をより少ない費用で得られます。
よくある質問
Q. どのくらいまで削れますか?
アカウントの状態によります。無駄な配信が多いアカウントでは、成果を落とさずに2〜3割削れることがあります。逆にすでに絞り込まれているアカウントでは、削減がそのままCV減少につながります。まず検索語句レポートを確認してください。
Q. 広告を一時的に全部止めてもよいですか?
止めれば流入は即座に止まります。また、再開時に自動入札の学習がやり直しになります。繁忙期を避ける、配信量を絞るといった段階的な対応を先に検討してください。
Q. 代理店手数料も削減対象になりますか?
契約内容によります。ただし運用の工数が減れば、無駄な配信の発見も遅れます。手数料を削る場合、どの作業が減るのかを確認してください。
Q. 削減後、いつ元に戻すべきですか?
資金繰りが回復し、かつ対応体制がある場合です。ただし戻す際は一気に増やさず、段階的にしてください。急激な増額は配信を不安定にします。
Q. どの媒体から削るべきですか?
媒体単位ではなく、キャンペーン・キーワード単位で見てください。同じ媒体でも、成果の出ている配信と出ていない配信が混在しています。ただし、認知に寄与している媒体を媒体別CPAだけで判断しないでください。
まとめ
広告費の削減で最も避けるべきは、一律で◯%減らすことです。成果の出ている配信まで縮小し、削減率以上に成果が落ちます。
削る順序は、①対象外への配信を止める(成果への影響なし)→ ②成果の出ていない配信を止める → ③増分のない配信を検証する → ④配信量を絞る、です。①〜③で目標額に達すれば、成果をほとんど落とさずに削減できます。
一方、計測タグと計測ツールは削らないでください。これを止めると、何が効いているか分からなくなり、削減の判断そのものができなくなります。
そして、削減と並行してCVRの改善を進めてください。フォームの項目削減、CTAの文言変更、不安を消す一文の追加——いずれもその日に実施でき、費用もほとんどかかりません。CVRが2割改善すれば、広告費を2割削っても同じCV数を維持できます。
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