「使いやすいサイトにしてください」という要望は、制作の現場で最も多く、そして最も伝わらない指示です。使いやすさは感覚ではなく、確認できる項目の積み重ねだからです。
この記事では、使いやすさを自社で判定できるチェック項目に分解します。制作会社への依頼時にも、既存サイトの点検にも使える形で整理しました。
「なんとなく使いにくい」を、具体的な指摘に変えることが目的です。
この記事でわかること
・使いやすさを構成する5つの観点
・観点別のチェック項目
・自社で確認する手順(15分)
・優先して直すべき項目の見分け方
・制作会社への伝え方
使いやすさを構成する5つの観点
| # | 観点 | 問い | 影響 |
|---|---|---|---|
| 1 | 見つけられるか | 探している情報にたどり着けるか | 離脱 |
| 2 | 読めるか | 文字が読める。内容が理解できるか | 離脱 |
| 3 | 操作できるか | 押せる。入力できる。戻れるか | CV |
| 4 | 迷わないか | 今どこにいるか分かるか | 離脱 |
| 5 | 待たされないか | 表示が速いか | 離脱 |
順序に意味があります。1が満たされなければ、2以降は評価されません。上から順に確認してください。
「使いやすい」は感覚ではなく、確認できる項目の集合です。
指摘を具体化できれば、修正の見積も精度が上がります。
観点1:見つけられるか
- トップページを見て、何の会社か3秒で分かるか
- 主要なページがメニューから2クリック以内に到達できるか
- 料金・費用の情報にたどり着けるか:載せない判断でも、その旨が分かるか
- 対応エリア・営業時間が分かるか
- 問い合わせ手段が常に見えるか:どのページからでも
- メニューのラベルが社内用語になっていないか
3番目が離脱の主因になりやすい項目です。料金を載せない方針であっても、「見積もりは無料」「事例から費用感を確認できる」といった導線がなければ、探し続けた末に離脱されます。
メニューの設計はグローバルナビの設計|項目の決め方と並べ方を参照してください。
観点2:読めるか
| 項目 | 確認方法 | よくある問題 |
|---|---|---|
| 本文サイズ | 実機で腕を伸ばして読む | 小さすぎる |
| 行間 | 1行が窮屈でないか | 詰まりすぎ |
| 1行の文字数 | 横に長すぎないか | PCで幅いっぱい |
| コントラスト | 屋外で見る | 薄いグレーの本文 |
| 段落の長さ | 5行以上続いていないか | 塊で読めない |
| 専門用語 | 説明なしに使っていないか | 業界内の言葉 |
| 画像内の文字 | 拡大しないと読めないか | 画像で作った表 |
最後の項目は見落とされます。表や図を画像で作ると、スマートフォンでは読めません。拡大操作を求めた時点で、多くの人は読むのをやめます。
可読性の詳細はWebアクセシビリティ対応はどこまでやるべきか|優先順位の決め方、余白の考え方はWebデザインにおける余白の効果を参照してください。
観点3:操作できるか
- ボタンが押せる大きさか:スマートフォンで指の腹で押せるか
- 押せるものと押せないものが見分けられるか
- 電話番号がタップで発信できるか
- フォームの入力項目が多すぎないか
- エラー時に入力内容が消えないか
- 戻るボタンで正しく戻れるか
- 誤タップしやすい配置になっていないか:リンクが密集していないか
5番目は必ず実際に試してください。エラーで入力が消えるフォームは、そこで大半の人が離脱します。フォームの改善は入力フォームの離脱率を改善するデザインの工夫を参照してください。
観点4:迷わないか
| 項目 | 確認 |
|---|---|
| 現在地 | 今どのページを見ているか分かるか(メニューの状態、パンくず) |
| ページタイトル | 各ページの見出しが内容と一致しているか |
| リンク先 | クリックする前に行き先が分かるか(「こちら」になっていないか) |
| 外部リンク | 別サイトに移動することが分かるか |
| 次の行動 | ページを読み終えた後、何をすればよいか示されているか |
| ロゴ | クリックでトップに戻れるか |
5番目が抜けているページが多くあります。読み終えた後に何もなければ、そこで終わります。関連ページか問い合わせへの導線を必ず置いてください。
観点5:待たされないか
- 一般的な回線・端末で確認したか:社内の高速回線で判断しない
- 画像の多いページを確認したか:施工事例、商品一覧
- 広告のランディングページを確認したか:費用をかけて送客しているページ
- 読み込み中に何も表示されない時間が長くないか
改善の優先順位はサイトの表示速度を改善する優先順位|何から手をつけるかを参照してください。原因の大半は画像です。
15分でできる自己点検
スマートフォンを1台用意し、以下を順に実行してください。PCではなくスマートフォンで行うことが重要です。
- 自社サイトを検索して開く:ブックマークからではなく検索経由で
- 3秒で何の会社か分かるか判断する
- 料金の情報を探す:何秒かかったか、たどり着けたか
- 対応エリアを探す
- 問い合わせフォームまで到達し、実際に送信する:入力の手間、エラー時の挙動
- 電話番号をタップしてみる:発信画面が出るか
- 屋外に出て、同じ画面を見る:文字が読めるか
- 親や年上の家族に同じ操作をしてもらう:どこで止まるか観察する
8番目が最も多くの発見をもたらします。自社のサイトを毎日見ている人間は、迷う場所に気づけません。初見の人が止まる場所が、実際の離脱ポイントです。
より体系的に行う場合はユーザビリティテストのやり方|低コストで始める実践手順を参照してください。
優先して直す項目の見分け方
すべてを一度に直す必要はありません。次の基準で優先順位をつけてください。
| 優先度 | 条件 | 例 |
|---|---|---|
| 最優先 | CVに直結し、費用が小さい | フォームのエラー挙動、電話タップ、CTAの文言 |
| 高 | 流入の多いページの問題 | 広告LP、トップページの可読性 |
| 中 | 構造に関わるが影響が大きい | メニューの項目、料金導線 |
| 低 | 影響範囲が限定的 | 個別ページの細部 |
| 次回リニューアル時 | 設計から変える必要がある | 全体のレイアウト、色設計 |
「費用が小さくCVに直結するもの」から着手してください。文言の修正やボタンの位置変更は、多くの場合その日のうちに実施できます。
制作会社への伝え方
| 伝わらない | 伝わる |
|---|---|
| 使いにくい | スマートフォンで料金ページに3クリック必要。2クリック以内にしたい |
| 見づらい | 本文が薄いグレーで、屋外だと読めない。濃さを上げたい |
| 分かりにくい | メニューの「ソリューション」が何のページか分からない。一般名詞にしたい |
| スマホ対応して | スマホで表が横にはみ出す。スクロールできる形にしたい |
| 遅い | 施工事例の一覧ページの読み込みが遅い。画像の最適化をしたい |
「どこで、何が、どうなっているか」を書けば、見積の精度が上がります。抽象的な指摘では、範囲が読めないため見積が膨らむか、対応が形だけになります。
よくある失敗
失敗1:PCだけで確認する
流入の多くはスマートフォンです。必ず実機で確認してください。
失敗2:社内の人間だけで判断する
毎日見ている人は、迷う場所に気づけません。初見の人に操作してもらってください。
失敗3:表や図を画像で作る
スマートフォンでは読めません。拡大を求めた時点で読まれなくなります。
失敗4:ページの最後に次の行動がない
読み終えた人がそこで離脱します。関連ページか問い合わせへの導線を置いてください。
失敗5:「使いにくい」とだけ伝える
範囲が読めず、見積が膨らむか対応が形だけになります。
よくある質問
Q. デザインを変えれば使いやすくなりますか?
原因がデザインにある場合のみです。料金情報がない、フォームの項目が多い、表示が遅いといった問題は、デザインを変えても解決しません。まず原因を特定してください。
Q. どのくらいの頻度で点検すべきですか?
半年に一度を目安に、本記事のチェックを行ってください。また、コンテンツを大きく追加したとき、CMSやプラグインを更新したときにも確認が必要です。
Q. 競合サイトを参考にしてよいですか?
操作性や情報の網羅範囲は参考になります。ただしデザインの見た目をそのまま真似ることは避けてください。判断の観点は競合サイト分析のやり方|何を見て、どう自社の判断に変えるかを参照してください。
Q. すべての項目を満たす必要がありますか?
必要ありません。CVに直結し、費用の小さい項目から着手してください。すべてを一度に直そうとすると、着手されないまま終わります。
Q. 使いやすさとデザイン性は両立しますか?
両立します。ただし、可読性や操作性を犠牲にした「上品さ」は、成果を落とします。薄いグレーの本文、フォーカス表示の削除などが典型です。
まとめ
「使いやすいサイト」は感覚ではなく、確認できる項目の集合です。見つけられるか、読めるか、操作できるか、迷わないか、待たされないか——この5つの観点に分解できます。
順序に意味があります。情報が見つけられなければ、その先は評価されません。上から順に確認してください。
点検はスマートフォンで、検索経由で自社サイトを開くところから始めてください。そして、初見の人に同じ操作をしてもらってください。自社サイトを毎日見ている人間は、迷う場所に気づけません。
直す順序は「CVに直結し、費用が小さいもの」からです。フォームのエラー挙動、電話タップ、CTAの文言——これらはその日のうちに直せることが多くあります。
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