「自社で更新できるサイトにしてください」——この要望は制作の依頼で最も多いものの1つです。そして公開後に最も高い確率で守られなくなる要望でもあります。
更新できないサイトになる原因は、CMSの機能不足ではありません。多くの場合、「誰が、どのページの、どこを更新するか」を決めないまま作ったことにあります。
この記事では、更新しやすいサイトを作るために発注前に決めるべきことと、CMS選定の判断基準を解説します。
この記事でわかること
・更新されなくなる本当の原因
・発注前に決める「更新範囲」の整理方法
・CMSの選択肢と向き不向き
・更新しやすさを左右する設計上の要素
・契約前に確認すべき項目
更新されなくなる原因
| 原因 | 実態 |
|---|---|
| 更新できる箇所が限られている | お知らせしか変更できず、実績や料金は依頼が必要 |
| 操作が難しい | レイアウトが崩れるため触りたくない |
| 担当者が決まっていない | 誰の仕事か曖昧なまま止まる |
| 更新する内容がない | 何を書けばよいか分からない |
| 更新した結果が分からない | 見られているか不明でモチベーションが続かない |
| 担当者が変わって引き継がれていない | ログイン情報も手順も残っていない |
3番目と6番目は、CMSを変えても解決しません。運用の設計の問題です。高機能なCMSを導入しても、担当者が決まっていなければ更新されません。
「更新しやすいCMS」を探す前に、「誰が、何を、どの頻度で更新するか」を決めてください。
ここが決まっていないと、どのCMSを選んでも止まります。
発注前に決める更新範囲
次の表を埋めてから、制作会社に渡してください。この表があるだけで、見積の精度と完成後の運用が変わります。
| 更新対象 | 頻度 | 担当 | 更新方法 |
|---|---|---|---|
| お知らせ | 月2回 | 総務 | CMSで自社更新 |
| 施工事例 | 月4回 | 営業 | CMSで自社更新(写真+テキスト) |
| 料金 | 年1回 | 経営 | 制作会社へ依頼 |
| スタッフ紹介 | 入退社時 | 総務 | CMSで自社更新 |
| トップページの主要文言 | 年1回 | 経営 | 制作会社へ依頼 |
| 営業時間・定休日 | 随時 | 店舗 | CMSで自社更新 |
※記入例です。自社の実態で作成してください。
すべてを自社更新にする必要はありません。頻度の低いものは依頼したほうが、レイアウトの崩れを防げます。自社更新にするのは、頻度が高く、内容が定型的なものです。
自社更新に向くもの・向かないもの
| 向く | 向かない |
|---|---|
| お知らせ・ブログ | トップページのレイアウト |
| 実績・事例(定型フォーマット) | デザイン要素の変更 |
| スタッフ紹介 | ページの新規追加(構造に関わる) |
| 営業時間・臨時休業 | 料金表の構造変更 |
| よくある質問の追加 | フォームの項目変更 |
CMSの選択肢
| 種類 | 特徴 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 汎用CMS(WordPress等) | 情報が多く、対応できる会社も多い | 一般的な企業サイト・店舗サイト |
| 制作会社の独自CMS | その会社の設計に最適化 | その会社と長く付き合う前提 |
| サイト作成サービス | 初期費用が低く、すぐ始められる | 小規模、更新頻度が高い |
| ヘッドレスCMS | 複数媒体への配信に強い | アプリ等と連携する場合 |
| 静的サイト(CMSなし) | 速く、セキュリティ面の懸念が少ない | 更新がほぼ発生しない場合 |
2番目には注意が必要です。独自CMSは使いやすく作られていることが多い一方、他社へ移管できないという制約があります。契約を終了する際に、サイトを作り直すことになる可能性があります。
判断基準は「そのCMSでしか動かない状態になるか」です。契約前に、データの移行可否を必ず確認してください。
更新しやすさを左右する設計
同じCMSでも、作り方によって更新のしやすさは大きく変わります。
| 設計 | 更新しやすい | 更新しにくい |
|---|---|---|
| 入力欄 | 項目ごとに分かれている | 1つの大きな自由入力欄 |
| レイアウト | 入力すれば自動で整う | 手動でHTMLを調整する必要がある |
| 画像 | アップロードすれば自動でリサイズ | サイズを合わせて用意する必要がある |
| 文字数 | 超過しても崩れない | 超えるとレイアウトが壊れる |
| プレビュー | 公開前に確認できる | 公開しないと分からない |
| 権限 | 担当者ごとに範囲を限定できる | 全員が全部を触れる |
1番目と4番目が決定的です。自由入力欄に本文をまとめて入れる形式だと、書式の設定が担当者ごとにばらつき、数か月でページの見た目が揃わなくなります。
項目を分けて入力する形式にしてください。「タイトル」「概要」「施工前の写真」「施工後の写真」「工期」「費用帯」のように分かれていれば、誰が入力しても同じ見た目になります。
文字数超過の扱い
「見出しは20文字まで」という前提で作られたデザインに、30文字を入れると崩れます。制作時に、想定文字数と超過時の挙動を確認してください。
- 想定文字数を聞く:各項目の上限
- 超過時にどうなるか確認する:折り返す/省略される/崩れる
- 実際の文章量でテストする:ダミーテキストのままで承認しない
- 入力欄に注意書きを入れてもらう:「30文字以内推奨」など
4番目が有効です。管理画面に注意書きがあれば、担当者が変わっても伝わります。
権限の設計
全員が全部を触れる状態は、事故のもとです。
| 役割 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| 管理者 | すべて | — |
| 編集者 | 記事・事例の投稿と編集 | 設定変更、プラグイン操作 |
| 投稿者 | 自分の記事の投稿 | 他人の記事の編集、公開設定 |
| 閲覧のみ | 確認 | 編集 |
実務上は「編集者」までで足ります。管理者権限を全員に付与すると、意図しない設定変更やプラグインの操作が起こり得ます。
また、退職者のアカウントを残さないでください。定期的な棚卸しが必要です。運用面の確認項目はホームページの保守運用とは?何を、どの頻度でやるのかを参照してください。
更新を続けるための運用設計
- 担当者と代理を決める:1人だけだと繁忙期に止まる
- 更新の頻度を決める:「随時」ではなく「月2回、第1・第3月曜」
- 手順書を作る:画面キャプチャ付き。担当者交代時に必要
- ログイン情報の管理場所を決める:個人のメモに残さない
- 結果を見る仕組みを作る:更新したページが見られているか
5番目が継続の鍵です。更新した内容が読まれているかが分からないと、作業だけが積み上がってモチベーションが続きません。月に一度、GA4で更新したページの閲覧数を確認してください。見方はGA4レポートの見方|最初に見るべき3画面を参照してください。
契約前に確認すべき項目
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| CMSの種類 | 汎用か独自か。移管できるか |
| 自社更新できる範囲 | どのページのどの部分か |
| 管理画面の操作説明 | 公開時に説明・手順書があるか |
| 更新代行の費用 | 自社で対応できない部分の依頼費 |
| ライセンス費用 | CMSやテーマ・機能の年額費用があるか |
| サーバー・ドメインの名義 | 自社名義になっているか |
| データのエクスポート | 契約終了時に持ち出せるか |
| 更新後の表示確認 | 崩れた場合の対応範囲 |
6番目と7番目が、長期的に最も影響します。ドメインが制作会社名義だったり、コンテンツを持ち出せない仕組みだと、契約を見直す選択肢自体がなくなります。
制作会社の選定基準はデザイン制作会社の選び方|見積り比較で確認すべきポイントを参照してください。
よくある失敗
失敗1:更新範囲を決めずに「自社更新できるように」と依頼する
範囲が曖昧なため、完成後に「これは更新できない」が判明します。
失敗2:自由入力欄で作ってもらう
担当者ごとに書式がばらつき、数か月で見た目が揃わなくなります。
失敗3:担当者を1人だけにする
繁忙期・退職時に止まります。代理を決めてください。
失敗4:ダミーテキストのまま承認する
実際の文章量でレイアウトが崩れることに、公開後に気づきます。
失敗5:ドメイン名義とデータ移行の可否を確認しない
契約を見直す選択肢がなくなります。
よくある質問
Q. WordPressを選べば間違いないですか?
情報が多く、対応できる会社も多いという利点があります。一方で、更新作業やセキュリティ対策が必要です。運用に手をかけられない場合は、保守を依頼するか、より管理の少ない選択肢を検討してください。
Q. 制作会社の独自CMSは避けるべきですか?
一律に避ける必要はありません。使いやすく作られていることも多くあります。ただし、契約終了時にデータを持ち出せるか、他社で運用を引き継げるかを必ず確認してください。
Q. 全ページを自社で更新できるようにすべきですか?
推奨しません。頻度の低いページまで編集可能にすると、操作ミスによる崩れのリスクが増えます。頻度が高く、内容が定型的なものだけを自社更新にしてください。
Q. 更新の担当者は誰が適任ですか?
更新する情報を持っている人です。施工事例なら現場を知る営業、お知らせなら総務、というように分けてください。「パソコンに詳しい人」を基準にすると、内容が薄くなります。
Q. 更新が止まってしまった場合はどうしますか?
まず原因を確認してください。操作が難しいのか、担当が決まっていないのか、書く内容がないのかで対処が違います。操作が原因なら手順書、内容が原因なら更新項目の見直しが必要です。
まとめ
更新されないサイトになる原因は、CMSの機能不足ではありません。「誰が、どのページの、どこを、どの頻度で更新するか」を決めないまま作ったことにあります。
発注前に、更新対象・頻度・担当・更新方法の4列の表を作ってください。この表があるだけで、見積の精度と完成後の運用が変わります。すべてを自社更新にする必要はありません。
設計面では、自由入力欄ではなく項目ごとに分かれた入力形式にしてください。担当者ごとの書式のばらつきを防げます。また、想定文字数と超過時の挙動を制作時に確認してください。
そして、ドメインの名義とデータの移行可否は契約前に必ず確認してください。ここを確認しないと、契約を見直す選択肢自体がなくなります。
当社ではホームページ制作において、制作時だけでなく公開後の更新運用まで含めて設計しています。資料では運用設計の考え方をまとめていますので、自社の体制を整理したい方はぜひダウンロードしてご活用ください。