「うちのCPAは高いのか、低いのか」——この判断を、業種別の平均値で行うと必ず誤ります。
CPAは、単価・粗利率・成約率・検討期間によって適正値がまったく変わります。同じ業種でも、単価が3倍違えば許容できるCPAも3倍違います。他社の平均は、自社の判断材料になりません。
この記事では、自社の適正CPAを算出する手順と、CPAだけで判断してはいけない理由を解説します。
この記事でわかること
・業種別平均が使えない理由
・自社の許容CPAを算出する手順
・CPAだけで判断すると起きること
・CVの種類ごとにCPAを分ける必要性
・CPAが悪化したときの切り分け
業種別平均が使えない理由
同じ「リフォーム業」でも、次の違いがあります。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 主力商材 | 外壁塗装 | 水回りの部分工事 |
| 平均受注単価 | 120万円 | 15万円 |
| 粗利率 | 35% | 40% |
| 1件の粗利 | 42万円 | 6万円 |
| 問い合わせからの成約率 | 20% | 40% |
| CV1件の粗利 | 8.4万円 | 2.4万円 |
| 許容CPA(粗利の30%) | 2.5万円 | 7,200円 |
※説明のための例です。
同じ業種でも、許容できるCPAは3倍以上違います。業種別の平均値を持ち込むと、A社は必要以上に絞り込み、B社は赤字の水準まで許容することになります。
比較すべきは他社の平均ではなく、自社の粗利と、自社の過去の数字です。
この2つ以外に、判断の根拠はありません。
許容CPAを算出する
- 平均受注単価を出す:直近1年程度の実績
- 粗利率を掛ける:売上ではなく粗利で考える
- 問い合わせからの成約率を掛ける:CV1件あたりの粗利
- 広告に使ってよい割合を決める:粗利の何%まで
- これが許容CPAの上限
3番目のデータは広告管理画面の外にあります。営業や店舗側の記録と突き合わせる必要があります。この作業を省くと、算出できません。
広告に使ってよい割合
| 割合 | 状況 | 注意 |
|---|---|---|
| 粗利の20〜30% | 安定期。固定費と利益を確保 | 標準的な水準 |
| 粗利の40〜50% | 成長期。シェア拡大 | 利益は薄い |
| 粗利の50%超 | リピート・継続がある商材のみ | 単発商材では赤字 |
| 粗利の10〜20% | 利益率を優先 | 獲得件数は減る |
3番目を選べるのは、リピートや継続契約がある事業だけです。単発の取引で終わる商材で初回赤字を出すと、売るほど損をします。
予算全体の設計は広告予算はいくらが適正?売上比率ではなく粗利から決める方法を参照してください。
CPAだけで判断すると起きること
| 判断 | 起きること |
|---|---|
| CPAの高いキーワードを止める | CVを生んでいた語まで止める |
| CPAの低い指名検索に予算を寄せる | 新規獲得が減り、成長が止まる |
| CPAの低い中間CVを増やす | 成約しない問い合わせが増える |
| CPAを下げるため予算を絞る | CV数が減り、売上も減る |
| 媒体別CPAで認知施策を評価する | 認知施策は必ず負ける |
2番目が実務で最も損失の大きい判断です。指名検索(自社名での検索)はCPAが低く出ますが、それは放っておいてもCVした人を買っている可能性があります。増分を生んでいるかは別の話です。
この構造はリターゲティング広告の設定手順と、効果を正しく見極める方法で解説している内容と共通します。
CPAと合わせて見る指標
- CV数:CPAが良くても件数が少なければ事業は伸びない
- 成約数:問い合わせではなく受注の件数
- 粗利額:最終的な事業への貢献
- 問い合わせの質:成約率が落ちていないか
- 全体の数字:媒体別ではなく合計で
1番目が最も見落とされます。CPAを改善するだけなら、予算を絞れば実現できます。しかしCV数が半分になれば、事業への貢献も半分です。
CVの種類ごとにCPAを分ける
すべてのCVを1つのCPAで見ると、判断を誤ります。
| CV種別 | 取りやすさ | 成約率の傾向 | 許容CPA |
|---|---|---|---|
| 資料ダウンロード | 高い | 低い | 低く設定 |
| メール問い合わせ | 中 | 中 | 中程度 |
| 電話問い合わせ | 低い | 高い | 高く設定してよい |
| 来店予約 | 低い | 高い | 同上 |
種別ごとに許容CPAが違います。すべてを同じ目標値で運用すると、最も取りやすく最も成約しないCVに配信が寄ります。
設定方法はコンバージョン値の設定方法|CV数ではなく金額で広告を運用するを参照してください。
CPAが悪化したときの切り分け
CPAの悪化には複数の原因があります。順に切り分けてください。
- 計測が正しいか確認する:CVが計測されていないだけの可能性
- CV数とクリック数のどちらが変化したか見る:分子か分母か
- クリック単価が上がっていないか確認する:競合の増加、季節要因
- CVRが下がっていないか確認する:サイト側の問題
- 検索語句を確認する:意図しない語が増えていないか
- 配信先を確認する:想定と違う面に出ていないか
1番目を飛ばさないでください。サイトの改修やタグの更新でCVが計測されなくなると、CPAは無限大に見えます。実際にはCVが発生しているのに配信を止めてしまう、という損失が起こります。
2番目の切り分け
| 変化 | 原因の方向 | 打ち手 |
|---|---|---|
| クリック単価が上昇 | 競合の増加、品質の低下 | 入札、広告文、遷移先 |
| CVRが低下 | サイト側、流入の質 | LP改善、ターゲティング |
| 両方 | 複合的 | 上から順に |
| CV数のみ減少(クリックは同じ) | 計測か、サイトの不具合 | まず確認 |
最終行は緊急性が高い状態です。フォームが動かなくなっている可能性があります。実際にテスト送信して確認してください。
季節変動をどう扱うか
多くの業種でCPAは季節変動します。前月比だけで判断しないでください。
- 前年同月と比較する:季節要因を除いて見る
- 繁忙期・閑散期を把握する:自社の需要の波
- 競合の出稿が増える時期を知る:単価が上がる
- 年間で予算を配分する:需要のある時期に寄せる
- 閑散期の目標値を分けて設定する:同じ目標では達成できない
5番目が実務的です。閑散期に繁忙期と同じCPA目標を設定すると、配信が止まります。時期によって目標値を変えてください。
よくある失敗
失敗1:業種別の平均値を目標にする
単価も粗利率も成約率も違います。自社の数字で算出してください。
失敗2:売上ベースで許容CPAを決める
粗利率が低い商材では、赤字の水準になります。
失敗3:CPAだけで判断する
予算を絞ればCPAは改善しますが、CV数も減ります。両方を見てください。
失敗4:指名検索のCPAが良いから予算を寄せる
放っておいてもCVした人を買っている可能性があります。新規獲得が減ります。
失敗5:計測を確認せずに配信を止める
実際にはCVが発生しているのに止めてしまう損失が起こります。
よくある質問
Q. 他社の平均値はまったく参考になりませんか?
桁が大きく違う場合の気づきにはなります。ただし目標値としては使えません。単価・粗利率・成約率・検討期間が違えば、適正値も違います。
Q. 成約率が分からない場合はどうしますか?
まず記録を始めてください。問い合わせ件数と成約件数を数えるだけで算出できます。正確な数字がなくても、概算で構いません。売上比率で考えるよりはるかに実態に近づきます。
Q. CPAはどのくらいの期間で判断すべきですか?
単月では変動が大きすぎます。3か月程度の推移で見てください。ただしCV数が少ない事業では、より長い期間が必要です。
Q. 目標CPAを設定すれば自動入札が達成してくれますか?
実績から大きく離れた値を設定すると、配信がほとんど出ません。直近の実績を出発点として、段階的に調整してください。詳細は自動入札の選び方と切り替えるタイミング|機能しない条件も解説を参照してください。
Q. CPAが目標内なのに売上が伸びません。
CV数が足りないか、成約率が落ちているか、受注単価が下がっているかのいずれかです。CPA以外の数字を確認してください。獲得後の歩留まりは問い合わせ後の歩留まりを改善する|リード管理の始め方を参照してください。
まとめ
CPAの適正値は、業種別の平均では決まりません。同じ業種でも、単価が3倍違えば許容できるCPAも3倍違います。
算出は、平均受注単価 × 粗利率 × 成約率 で「CV1件あたりの粗利」を出し、そのうち広告に使ってよい割合を掛けます。成約率のデータは広告管理画面の外にあるため、営業・店舗側の記録との突き合わせが必要です。
そして、CPAだけで判断しないでください。予算を絞ればCPAは改善しますが、CV数も減ります。特に指名検索のCPAが良いからと予算を寄せると、新規獲得が減って成長が止まります。
CPAが悪化したときは、まず計測が正しいかを確認してください。実際にはCVが発生しているのに、計測が止まっているだけという状態は珍しくありません。
当社では広告運用代行として、他社平均ではなく自社の粗利から逆算した目標設定を行っています。資料では評価設計の考え方をまとめていますので、自社の数字を見直したい方はぜひダウンロードしてご活用ください。