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ホームページの制作会社を変更する手順|引き継げるものと、作り直しになるもの

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制作会社を変えたいという相談で、最初に聞かれるのはたいてい「データはもらえますか」です。しかし、実際に工程が止まる原因はデータではありません。ファイルは受け取れたのに、公開されているサイトを自社で動かせない、という状態が残ります。

理由は、サイトが「一式のデータ」ではなく、複数の契約の上に成り立っているからです。ドメインの登録者、サーバーの契約者、CMSの管理者権限、有料テーマのライセンス、計測アカウントのオーナー。このどれか一つでも制作会社の名義になっていると、その部分は自社の判断だけでは動きません。

そして厄介なのは順序です。これらの名義を自社へ戻す手続きの窓口が、これから契約を切る相手になっています。解約を伝えてから引き継ぎを依頼すると、相手にとっては協力する理由が無くなった状態で頼むことになります。

この記事では、乗り換えで引き継げるもの、作り直しになるもの、相手が動かないと進まないものを分けたうえで、解約を伝える前に済ませておく確認と、逆算すべき日数を整理します。権利そのものの扱いはホームページの著作権は誰のものか|譲渡しても直せない場合と、ドメインで手が止まる理由で扱っています。

この記事でわかること

・止まるのはデータの受け渡しではなく、ドメイン・サーバー・CMS・ライセンス・計測アカウントの名義

・サーバーは契約単位ではなくアカウント単位でしか譲渡できない場合があり、制作会社が他社と同居させていると譲渡は選べない

・WordPress本体は移設できるが、制作会社名義で契約された有料テーマのライセンスは移らない。更新が止まる

・Googleビジネスプロフィールは、新しいオーナーが主オーナー権限を受け取れるまで7日かかる

・GA4のプロパティ移行には、移行元と移行先の両方で管理者ロールが要る

・順序は「名義の確認と移管」が先、「解約の通知」が後。逆にすると交渉材料を相手に渡す

乗り換えで何が引き継げるか
乗り換えで何が引き継げるか

止まるのはデータではなく、名義である

乗り換えの相談で受け取るファイル一式は、たいてい問題なく渡されます。制作会社が意図的に隠すという事例は、実際にはそれほど多くありません。渡す気があるかどうかとは別の次元で、手続き上そこに時間がかかるという構造の問題です。

サイトを公開し続けるために必要なものを分解すると、次のようになります。デザインとコードという「作られたもの」、ドメインとサーバーという「契約されているもの」、管理画面とアカウントという「権限が発行されているもの」。データとして渡せるのは最初の一つだけです。残りの二つは、契約の当事者を変えるか、権限を発行し直すかしないと移りません。

この違いが実務でどう表れるかというと、次の制作会社に見積りを依頼した段階で「サーバーの契約者はどちらですか」と聞かれて答えられない、という形になります。答えが出るまで、移設の工数も切り替え日も確定できません。

サイトを構成するもの 移し方 自社だけで進められるか
デザイン・コード・画像 ファイルの受け渡し 受け取れば進められる
原稿・掲載写真 ファイルの受け渡し 自社で用意したものは自由
ドメイン 移管、または登録者の変更 現在の事業者を経由する
サーバー 契約の譲渡、またはデータの移設 譲渡は相手の申請が要る
CMSの管理者権限 アカウントの発行 発行した側しか作れない
有料テーマ・プラグイン 移せない。取り直す 自社名義で買い直す
GA4・Googleビジネスプロフィール 権限の移譲 相手の操作と待機日数が要る

右の列に「相手を経由する」と書かれた4行が、日程を決めます。ファイルの受け渡しは即日でも終わりますが、この4行はいずれも相手の操作を挟みます。乗り換えの計画は、上の2行ではなく下の4行から引いてください。

順序を間違えると、交渉材料を相手に渡すことになる

実務で最も多い失敗は、内容ではなく順序です。解約の意思を先に伝えてから、引き継ぎの依頼を始めてしまうことです。

伝えた時点から、相手にとってその案件は終わった案件になります。悪意の話ではありません。継続する顧客の作業と、終了した顧客の事務手続きのどちらを先に処理するかという、優先順位の問題です。返信が翌週になるだけで、切り替え日は1週間動きます。

さらに、保守契約に解約予告の期間が定められている場合があります。前月末までの通知、あるいは3か月前の通知といった条件です。予告期間の起算日を過ぎていると、使わない月の保守費を払い続けることになります。保守契約で何がどこまで含まれるかはホームページの保守運用とは?何を、どの頻度でやるのかで整理しています。

推奨する順序は次のとおりです。

  1. 契約書・請求書を集め、ドメイン・サーバー・保守の契約者名義と解約予告期間を確認する
  2. 管理画面に自社アカウントで入れるかを試す。入れないなら管理者権限の発行を依頼する
  3. 使用中の有料テーマ・プラグイン・フォント・素材の一覧を受け取る
  4. GA4とGoogleビジネスプロフィールの権限を自社アカウントへ移す。ここで7日を見込む
  5. 次の制作会社に、確認できた事実を渡して移設の見積りを取る
  6. ドメインの移管、またはサーバー契約の譲渡に着手する
  7. 切り替え日を決めたうえで、解約を通知する
  8. 切り替え後、旧環境を一定期間残したまま表示と問い合わせの着信を確認する

2から4は「管理体制の整備」として依頼できる内容です。乗り換えを検討していることを伝えなくても進められます。棚卸しの依頼として出せば、関係を悪くせずに事実だけが揃います。広告代理店を乗り換える場合の判断基準は広告代理店を乗り換えるべきタイミング|見直しのサインと引き継ぎで失うものにまとめています。

引き継ぎで受け取るものを、具体的に指定する

「引き継ぎをお願いします」という依頼では、何が返ってくるかが相手の解釈に委ねられます。ファイル一式だけが送られてきて、環境情報が入っていない、という結果になりがちです。依頼の時点で、受け取る対象を項目で指定してください。

次の内容を書面かメールで依頼すると、抜けが起きにくくなります。乗り換えを前提とした文面にする必要はありません。管理体制の整備として出せば足ります。

サイトの管理体制を社内で整理しています。つきましては、下記についてご教示ください。(1)ドメインの登録者名義と、現在の指定事業者(2)サーバーの契約者名義と、弊社サイトが専用契約か貴社アカウント内の一つか(3)CMSの種類とバージョン、弊社名義の管理者アカウントの発行可否(4)使用中の有料テーマ・プラグイン・Webフォント・購入素材の名称と、ライセンスの契約名義(5)GA4・Googleビジネスプロフィール・広告アカウントの主権限の所在(6)外部サービスとの連携先(フォーム、予約、決済、メール配信など)

この6項目が揃うと、次の制作会社が見積りを作れる状態になります。逆に、これが無いまま相見積りを取ると、各社が異なる前提で金額を出すため比較になりません。移設で済む前提の見積りと、作り直しを前提とした見積りが並ぶことになります。

受け取る資料 何のために必要か 無いとどうなるか
ドメインとサーバーの契約情報 移管か移設かの判断 工期と費用が確定しない
CMSの管理者アカウント 自社で更新できる状態にする 軽微な修正も依頼になる
テーマ・プラグインの一覧 ライセンスの取り直しの判断 更新が止まった状態に気づけない
サーバーの環境情報 移設先の環境を合わせる 移設後に画面が崩れる
外部連携の一覧 切り替え時の停止を防ぐ 問い合わせや予約が届かなくなる
素材のライセンス情報 契約終了後の使用可否 写真やフォントが使えなくなる

4行目と5行目は、依頼しないと出てきません。成果物ではなく環境の情報であるため、引き継ぎ資料の標準には含まれていないことが多い項目です。特に外部連携は、フォームの送信先や予約システムの接続が制作会社のアカウントを経由している場合があり、切り替え当日に着信が止まる原因になります。

サーバーは、契約単位ではなくアカウント単位でしか譲渡できないことがある

ドメインについては、登録者の名義と、その登録を取り次いでいる指定事業者の2つを確認します。認証コードを発行できるのは現在の指定事業者だけであるため、ここも相手を経由します。詳細は権利の記事に譲ります。

見落とされやすいのはサーバーです。サーバーの契約を「そのまま譲り受ける」という選択肢は、常に使えるわけではありません。

エックスサーバーの場合、第三者への譲渡は書面による「ご利用権限譲渡を伴う名義変更」の申請で行い、XServerアカウントに紐づくすべての契約が譲渡の対象になります。社名変更にともなう名義変更は別の手続きで、こちらは現在の契約者以外へは変更できません。

書面による「ご利用権限譲渡を伴う名義変更」申請により、XServerアカウントに紐づくすべてのご契約を第三者に譲渡することができます。(エックスサーバー サポート)

ここから何が言えるかというと、制作会社が自社の一つのアカウントの中に複数の顧客のサイトを収容している場合、自社ぶんだけを譲り受けることはできないということです。アカウントごと譲渡すれば他社のサイトまで付いてきてしまうため、現実には選べません。

つまり、譲渡ではなくデータの移設になります。移設は費用と工数が発生する作業であり、見積りの前提が変わります。「サーバーはそのまま引き継げます」と言われた場合、それがアカウントの譲渡なのか、新しい契約への移設なのかを確認してください。金額も日程も別物になります。

移設を選ぶ場合、切り替えの当日に確認する項目は次のとおりです。

移設で確認する項目 見落とすと起きること 確認の方法
独自ドメインのSSL証明書 警告が出て閲覧されなくなる 切替後にhttpsで表示する
メールアカウント 問い合わせの受信が止まる 送受信を実際に試す
DNSの設定 旧サーバーを見続ける 切替前に反映時間を見込む
フォームの送信先 問い合わせが届かない テスト送信で着信を見る
PHPのバージョン 画面が崩れる、停止する 移設先の環境に合わせる
リダイレクトの設定 検索評価と既存の被リンクを失う 旧URLの一覧と対応表を作る

最下行は、URL構造を変える場合にだけ必要です。サーバーを移すだけでURLが変わらないなら、リダイレクトは不要です。逆に、乗り換えと同時にリニューアルしてURLを整理するなら、転送の設計を先に決めてください。手順はURLを変えるときのリダイレクト|評価を落とさない手順と、やってはいけない転送で解説しています。

WordPressは移設できても、有料テーマのライセンスは移らない

CMSがWordPressであれば、サイトそのものの移設は現実的な作業です。問題になるのは、テーマとプラグインのライセンスが誰の名義で契約されているかです。

有料テーマや有料プラグインは、購入者に対してライセンスが発行されます。制作会社が自社のアカウントで購入して顧客のサイトに導入している場合、ライセンスの契約者は制作会社であり、その契約は成果物の引き渡しでは移りません。

契約が終わると、更新の配信が止まります。サイトは動き続けるため、その日に何かが起きるわけではありません。影響が出るのは、テーマやプラグインにセキュリティ上の修正が出たときです。更新を受け取れないまま古いバージョンが残り、既知の脆弱性を抱えた状態が続きます。WordPressの更新運用そのものについては更新しやすい企業サイトの作り方|CMS選定と運用設計のポイントを参照してください。

もう一点、テーマ側の規約にも制限があります。有料テーマの多くは購入者自身のサイトのために販売されており、第三者のサイトを制作して納品する用途には、別のライセンスの購入を求めるものがあります。複数サイトでの利用を認めるものもあれば、1サイトにつき1ライセンスとするものもあり、規約はテーマごとに異なります。

導入されているもの 引き継ぎの扱い 乗り換え時にすること
有料テーマ 移らない 自社名義で購入し直す
有料プラグイン 移らない 必要なものだけ買い直す
Webフォント 移らない 自社でライセンス契約する
ストックフォト 許諾の範囲による 使用中の素材の一覧をもらう
制作会社の独自テーマ 利用許諾の内容による 改変の可否を契約書で確認する
制作会社の独自CMS 移せない 作り直しの費用を見込む

最下行が、乗り換えで最も費用が変わる項目です。制作会社が自社開発のCMSを使っている場合、そのCMSは他社のサーバーでは動きません。引き継げるのは公開されている画面の見た目と原稿だけで、更新の仕組みはゼロから作り直しになります。この場合、乗り換えの費用は移設ではなく新規制作に近づきます。

自社が使っているのが独自CMSかどうかは、管理画面にログインしたときのURLと画面で判断できます。ログイン先が自社ドメインの `/wp-admin/` であればWordPressです。制作会社の会社名が入ったドメインの管理画面に入っている場合、独自CMSか、共有の管理システムである可能性が高くなります。

GoogleのアカウントとGA4は、待機日数と権限で止まる

計測と地図の権限は、忘れられたまま乗り換えが進み、切り替え後に気づかれる項目です。どちらも相手の操作が必要で、しかも即日では終わりません。

Googleビジネスプロフィールには7日の待機期間がある

店舗や事業所を持つ会社では、Googleビジネスプロフィールが制作会社やMEO会社の管理下にある例があります。権限を自社へ移すには、主オーナーの権限そのものを移譲してもらう必要があります。

Googleのヘルプには、プロフィールのオーナーまたは管理者になった場合、一部の機能は管理できるようになるまで7日ほど待つ必要があると記載されています。この期間に制限されるのは、プロフィールの削除と復元、他のオーナーや管理者の削除、そして主オーナー権限の譲渡です。

加えて、主オーナーは、他のユーザーに主オーナー権限を譲渡するまで、自分自身を削除することができません。制作会社が主オーナーのまま「アカウントから抜けます」と言っても、その操作は成立しません。順序としては、自社を管理者として招待してもらい、7日を待ってから主オーナー権限を移譲してもらい、そのうえで制作会社を削除する、という3段階になります。

この7日は、切り替え日から逆算して確保してください。MEOの運用そのものはMEO対策とは?Googleビジネスプロフィールで来店数を増やす具体的手順で扱っています。

GA4は、移行元と移行先の両方で管理者ロールが要る

計測データが制作会社のGoogleアナリティクスアカウントの中にある場合、プロパティを自社のアカウントへ移行します。Googleのヘルプによれば、この移行には移行元のアカウントと移行先のアカウントの両方で、管理者のロールと編集者のロールが必要です。

つまり、制作会社に自社アカウントの管理者権限を一時的に付与するか、制作会社側で自社の担当者を管理者にしてもらうか、どちらかが必要になります。閲覧権限だけを渡されている状態では、移行は始められません。

移行しても測定IDは変わらないため、サイト側のタグを貼り替える必要はありません。過去のデータも失われません。ここが、権限を移す方式と、新しくプロパティを作り直す方式の決定的な違いです。作り直すと過去との比較ができなくなるため、可能な限り移行を選んでください。計測の実装は店舗ビジネスのためのGA4×GTM計測設定ガイドで解説しています。

広告アカウントを代理店が保有している場合も、考え方は同じです。アカウントを自社名義で開設し直すと、過去の学習データと運用実績が引き継がれません。権限の移譲で済むなら、そちらを選びます。

乗り換えで費用が発生する項目

乗り換えの費用は、次の制作会社に払う制作費だけではありません。移設そのものの作業費と、買い直しが必要になるライセンス費が別に発生します。金額は状況で大きく変わるため、相場ではなく「何によって決まるか」で見てください。

費用が発生する項目 金額を決めるもの 抑えられるか
サーバーの移設作業 ページ数、CMSの有無、外部連携の数 URLを変えなければ小さく収まる
有料テーマ・プラグイン 使用本数と、年額か買い切りか 使っていないものを外す
Webフォント 書体数と表示回数の契約形態 標準フォントへの置き換えを検討する
写真・イラストの取り直し 点数と、撮影が要るかどうか 自社提供分は費用が発生しない
独自CMSからの作り直し 更新が必要なページの範囲 更新頻度の低い部分は静的にする
並行稼働の期間 旧環境を残す月数 検証を終えたら速やかに解約する

金額の幅が最も大きいのは5行目です。独自CMSからの移行は、見た目を再現する作業ではなく、更新の仕組みを作り直す作業になります。ここで費用を抑える現実的な方法は、更新が必要なページと、そうでないページを分けることです。年に数回しか触らないページまでCMSに載せる必要はありません。

また、1行目はURL構造を変えるかどうかで大きく変わります。乗り換えと同時にリニューアルしたくなりますが、移設と設計変更を同時に行うと、問題が起きたときに原因が切り分けられなくなります。先に移設だけを済ませ、動作を確認してからリニューアルに着手する順序を推奨します。

見落とされやすいのが最下行です。旧環境と新環境を並行して動かす期間は、両方の費用が発生します。必要な期間ではありますが、検証が終わったあとも「念のため」で放置されている例が少なくありません。解約の判断日を最初に決めておいてください。

そもそも、乗り換えるべきかを先に判断する

ここまで手順を書いてきましたが、乗り換えが正解とは限りません。移設の費用、権限を移す手間、次の会社が状況を把握するまでの期間は、いずれも実際のコストです。判断の分かれ目は、不満の原因が制作会社にあるのかどうかです。

いま感じている不満 乗り換えで解決するか 先に確認すること
更新の依頼から反映まで遅い する場合が多い 契約に含まれる作業範囲と対応日数
問い合わせが増えない しないことが多い 流入と離脱のどこで止まっているか
提案が出てこない する 保守契約に提案が含まれているか
費用が高いと感じる 見積り次第 他社の見積りを同じ条件で取る
担当者と話が通じない する 会社を変えずに担当変更を頼めるか
デザインが古い しない 乗り換えではなくリニューアルの話

2行目が最も多い誤診です。問い合わせが来ない原因が集客の量にあるのか、サイトの説得力にあるのか、フォームの離脱にあるのかを切り分けないまま制作会社を変えても、同じ結果になります。切り分けの手順はホームページから問い合わせが来ない原因の切り分け方|5段階で診断するで段階別に整理しています。

また、最下行のように、目的がリニューアルであれば、乗り換えは手段の一つでしかありません。いまの制作会社に作り直しを依頼するほうが、名義の移動が発生しないぶん早く安く済む場合があります。リニューアルの進め方はコーポレートサイトのリニューアルを参照してください。

次の依頼先を選ぶ段階では、見積りの前提を揃えることが重要です。移設を含む見積りと、新規制作の見積りを並べても比較になりません。読み方はWeb制作の見積書の読み方|同じ金額が別の買い物になる理由、選定時の確認項目はデザイン制作会社の選び方|見積り比較で確認すべきポイントにまとめています。個人に依頼する場合の違いはフリーランスと制作会社、依頼するならどちらか|費用差の正体と発注側に生じる義務で扱っています。

次の発注では、同じ状態を作らない

乗り換えが終わったあと、同じ構造をもう一度作ってしまう会社があります。新しい制作会社の名義でドメインを取り直し、そのサーバーに置き、そのアカウントでテーマを買う。数年後に同じ問題が起きます。

次の契約では、次の5点を発注時に決めてください。いずれも、後から変更すると費用と停止時間が発生します。

  1. ドメインの登録者を自社名義にし、指定事業者も自社で直接契約する
  2. サーバーを自社名義で契約し、制作会社には管理権限を付与する形にする
  3. CMSの管理者アカウントを自社で保持し、制作会社には別アカウントを発行する
  4. 有料テーマ・プラグイン・フォントを自社名義のライセンスで購入する
  5. GA4・Googleビジネスプロフィール・広告アカウントの主権限を自社に置く

この5点は、制作会社にとって不利な条件ではありません。保守や更新の作業は権限を付与すれば問題なく行えますし、名義が発注者側にあることを前提に進めている制作会社も多くあります。難色を示される場合、その理由を聞いてください。合理的な説明があるなら受け入れる余地はありますが、説明が無いなら、それ自体が判断材料になります。

発注から公開までの工程と、発注者側が担当する作業の範囲はサイト制作の進め方|発注から公開までの工程と発注者側の作業で整理しています。

よくある失敗

解約を伝えてから、引き継ぎの依頼を始める

最も多い失敗です。名義の移動、権限の移譲、素材一覧の作成は、いずれも制作会社の作業を必要とします。解約を伝えた後は、その作業の優先順位が下がります。悪意ではなく、継続案件が優先されるだけです。名義と権限を先に自社へ戻し、切り替え日を決めてから通知してください。順序を変えるだけで、費用も日程も変わります。

「データ一式をください」で済むと考える

受け取ったファイルをそのまま別のサーバーに置いても、多くの場合そのままでは動きません。データベースの接続情報、PHPのバージョン、有料テーマのライセンス、SSLの再発行が絡むためです。依頼すべきは「データ一式」ではなく、使用中のテーマ・プラグインの名称とバージョン、サーバーの環境情報、外部サービスの連携先を含めた一覧です。

サーバーの契約を譲り受けられる前提で見積りを取る

譲渡がアカウント単位でしか行えない場合、制作会社が他社のサイトと同居させていれば譲渡は選べません。移設になると工数が変わり、見積りの前提が崩れます。譲渡と移設のどちらになるかは、制作会社に「弊社のサイトは専用の契約ですか、貴社アカウント内の1つですか」と聞けば確認できます。

Googleビジネスプロフィールを新規で作り直す

権限が移せないからと新しいプロフィールを作ると、同じ事業所の情報が2つ存在する状態になります。クチコミは古いほうに残り、地図上でも統合の処理が必要になります。7日の待機を見込んででも、既存のプロフィールの主オーナー権限を移譲してもらう方針を優先してください。

切り替え当日に旧環境をすぐ止める

メールの受信、フォームの着信、外部サービスからの連携が旧環境に残っていることがあります。切り替え後しばらくは旧サーバーを解約せずに残し、問い合わせが新環境に届いていることを実際の送信で確認してください。解約は、確認が終わってからで間に合います。

よくある質問

制作会社が引き継ぎに応じてくれません

まず、応じないのが「権利を渡さない」なのか「作業をしない」なのかを切り分けてください。前者であれば契約書の条項を確認する話になり、後者であれば有償での対応を打診する余地があります。実務では、引き継ぎ作業を有償の作業として発注すると進むことが少なくありません。それでも動かない場合、ドメインの登録者が自社であればサーバーは移設で、Googleの各アカウントは新規で、という形で相手を経由しない経路に切り替える判断になります。

ドメインが制作会社の名義でした。取り戻せますか

登録者の変更という手続きになり、現在の登録者である制作会社の協力が必要です。拒まれる場合、そのドメインを諦めて別のドメインへ移す選択肢もありますが、URLが変わるため検索評価の引き継ぎとリダイレクトの設計が必要になります。既存の被リンクや名刺・印刷物の表記にも影響するため、費用を払ってでも登録者変更を進めるほうが安く済む場合が多くあります。

乗り換えにはどのくらいの期間を見ればよいですか

名義と権限の確認に1週間から2週間、Googleビジネスプロフィールの主オーナー移譲に7日、サーバーの譲渡申請は書面のやり取りを含めて数営業日から2週間程度、移設作業と検証にさらに1週間から2週間が目安です。並行して進められる部分もあるため、全体では1か月から2か月を見込んでください。保守契約の解約予告期間が3か月なら、そちらが最も長い制約になります。

いまのサイトのデザインをそのまま使い続けたいのですが

契約に著作権の譲渡が定められていない場合、デザインの著作権は制作会社に残っています。そのまま別の会社で改修すると翻案にあたる可能性があるため、利用と改変の範囲を書面で確認しておくのが安全です。実務では、既存デザインを維持したい旨を伝えて確認書を交わす形が現実的です。詳しくは権利の記事を参照してください。

複数の会社に分散していて、何がどこにあるか分かりません

請求書から入るのが最も早い方法です。ドメイン、サーバー、CMS、有料ツール、広告費は、それぞれ別の請求として発生しています。過去1年分の支払いを一覧にすると、契約している相手と名義がほぼ揃います。管理画面の場所が分からないものは、更新案内メールの差出人を検索してください。

次の制作会社に、引き継ぎの調査から依頼できますか

依頼できますが、事実の確認そのものは自社でも進められます。Whoisの登録者名、請求書の宛名、管理画面に自社アカウントで入れるかどうかは、専門知識がなくても確認できる項目です。この3点を先に押さえてから相談すると、見積りの精度が上がり、調査の費用も抑えられます。

まとめ

制作会社の乗り換えで工程が止まるのは、データの受け渡しではありません。ドメインの登録者、サーバーの契約者、CMSの管理者権限、有料テーマのライセンス、計測アカウントのオーナー。これらの名義が制作会社側にあることが原因です。ファイルは受け取れても、公開中のサイトを自社の判断で動かせない状態が残ります。

そして、これらを移す手続きの窓口は、これから契約を切る相手です。順序は、名義の確認と移管が先、解約の通知が後です。先に解約を伝えると、協力する理由が無くなった相手に依頼することになります。名義の棚卸しは「管理体制の整備」として依頼でき、乗り換えを伝える必要はありません。

見積りの前提を左右するのは、サーバーとCMSです。サーバーの譲渡がアカウント単位でしか行えない場合、制作会社が他社と同居させていれば譲渡は選べず、データの移設になります。CMSが制作会社の独自開発であれば、引き継げるのは画面の見た目と原稿だけで、更新の仕組みは作り直しになります。この2点を先に確認してから見積りを取ってください。

日程を決めるのはGoogleの待機期間です。ビジネスプロフィールは、新しいオーナーが主オーナー権限を受け取れるまで7日を要し、主オーナーは移譲するまで自分を削除できません。GA4のプロパティ移行には移行元と移行先の双方で管理者ロールが必要で、移行できれば測定IDも過去データも維持されます。作り直しを選ぶと、比較の基準を失います。

最後に、乗り換えが常に正解とは限りません。問い合わせが増えないという不満は、制作会社を変えても解決しないことが多くあります。原因が集客の量なのか、サイトの説得力なのか、フォームの離脱なのかを切り分けてから判断してください。そして次の契約では、ドメイン・サーバー・管理者権限・ライセンス・計測アカウントの5つを自社名義に置いてください。この5行があるかどうかで、数年後の選択肢が決まります。

サイトの引き継ぎや移設についてのご相談はお問い合わせからご連絡ください。制作の内容はWEB制作、これまでに手がけたサイトは制作実績でご覧いただけます。

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