インフルエンサーに投稿を頼もうとして料金を調べると、「フォロワー数×2〜4円」という目安と、フォロワー数ごとの早見表が出てきます。フォロワー5万人なら10万〜20万円、という計算です。この目安は相手が金額を提示するときの出し方としては合っていますが、自社がいくらまで払えるかは、フォロワー数ではなく、そのフォロワーのうち商圏内にいて、投稿を見て、店に来る人数で決まります。店舗や地域のサービスでは、フォロワー20万人の全国区の相手より、3万人でも上位の都市が商圏と重なる相手のほうが、来店1件あたりの費用は安くなります。
もう1つ、費用の前に決めておくことがあります。依頼した時点でその投稿は「事業者の表示」になり、広告であることを示す責任は依頼した側にあります。2024年11月と2025年3月の措置命令は、どちらもインフルエンサーの投稿には「PR」があったのに、自社サイトへ転載したときに表示が抜けていた事例です。投稿を広告や自社媒体に転用する設計は費用対効果を上げますが、転載先の表示まで決めていないと、回収の手段がそのまま処分の理由になります。
この記事では、公開されている相場と依頼形態ごとの費用構造、商圏内に届く人数から払える上限を逆算する式、誰に頼むかを決める確認項目、契約に入れる項目、広告表示の責任と転載時の落とし穴、1件あたりの費用での判定、依頼して成立する会社としない会社、依頼する順序を整理します。インフルエンサーの探し方や会社の一覧ではなく、「依頼する前に自社で決めること」に重心を置きます。
この記事でわかること
・公開されている料金表と比較記事では、報酬は「フォロワー数×2〜4円」が目安とされ、プラットフォームやキャスティング会社を使うと月額や最低利用額が加わる。これは提示される金額の出し方であり、払える上限ではない
・払える上限は、許容できる1件あたりの費用×見込み件数。見込み件数は、フォロワー数×投稿を見る割合×商圏内の割合×店の情報を見る割合×来店率で置く。店舗では商圏内の割合が、フォロワー数より結果を動かす
・商圏内の割合は、Instagramのプロアカウントのインサイトにある「上位の都市」で確認できる。依頼前に、フォロワーの上位の都市の画面を見せてもらう
・依頼した時点で投稿は「事業者の表示」になる。広告であることを示す責任は依頼した側にあり、インフルエンサーは規制の対象外。無償提供でも、内容を指示すれば同じ扱いになる
・投稿には「PR」があっても、自社サイトや広告へ転載したときに表示が抜けると、そこが違反になる。2024年11月の消費者庁と2025年3月の東京都の措置命令は、どちらもこの形
・契約には、投稿の本数と形式、掲載を維持する期間、投稿前の確認、二次利用の範囲と費用、報酬と支払期日を入れる。個人に頼む場合はフリーランス法の取引条件の明示が義務になる
・費用対効果は、報酬と商品原価と自社の工数を、SNS経由の来店や予約の件数で割った1件あたりの金額で見る。単発の投稿費だけで回収しようとせず、二次利用まで含めて判定する

提示される費用と、払える上限は別の式で決まる
最初に結論を示します。インフルエンサーが提示する金額は、フォロワー数に単価を掛けて出されます。自社が払える上限は、来店や予約の1件にいくらまで払えるかに、その投稿で見込める件数を掛けて出します。2つの式は別のもので、前者が後者を上回ることは珍しくありません。上回った分を埋めるのが、商圏との一致と、投稿の二次利用です。
店舗や地域のサービスにとって、フォロワー数は「届く人数」ではありません。全国にフォロワーがいる相手の投稿を、商圏の外にいる人が何万人見ても、来店にはつながりません。見るべきなのは、フォロワーの上位の都市が商圏と重なっているかであり、これは依頼前に確認できます。
そして、依頼した時点で投稿は広告になります。SNSを自社で運用するか、続けるかどうかの判断は店舗のSNS運用は何から始めるか|媒体の選び方と、続けない判断で扱っています。この記事は、その判断とは別に「他人のアカウントで自社を紹介してもらう」施策を、費用と責任の両面から扱います。
公開されている相場と、依頼の形態ごとの費用構造
インフルエンサーへの依頼費用は、キャスティング会社やプラットフォームが公開している料金と、それらをまとめた比較記事から把握できます。ただし示されている数字は各社の料金表と観測値を並べたものであり、業界の統計ではありません。「定価は無い」と各社が書いているとおり、同じフォロワー数でも媒体、投稿の形式、ジャンル、拘束期間で変わります。
| 依頼の形態 | 費用の構造 | 自社に残る作業 |
|---|---|---|
| 直接依頼(DMやメールで交渉) | 報酬(フォロワー数×2〜4円が目安として使われる)+商品の原価+交通費など。仲介の費用は無い | 候補の選定、交渉、契約、広告表示の確認、投稿前の確認、支払い。全て自社 |
| ギフティング(商品を無償で提供) | 商品の原価と送料のみ。投稿は保証されない | 送付先の選定と、投稿の有無の確認。内容を指示すると有償の依頼と同じ扱いになる |
| マッチングプラットフォーム | 月額(5万〜25万円程度とされる)+成果報酬(インフルエンサーの報酬の10〜30%程度とされる)+報酬本体 | 候補の検索と連絡の手間が減る。表示の確認と投稿前の確認は自社に残る |
| キャスティング会社・代理店 | 最低利用額(20万円以上が目安とされる)+報酬本体+手数料 | 選定、契約、表示の管理まで任せられる。目的と件数の設定、表現の最終確認は自社 |
報酬の目安は媒体で変わり、Instagramで2〜4円、TikTokで1〜5円、YouTubeはフォロワー数ではなく直近の平均再生回数に単価を掛ける出し方が示されています。加えて、投稿を自社の広告やホームページに転用する「二次利用」には、報酬の2割から同額程度の追加費用がかかるとされています。この二次利用費は後で効いてくるため、見積りの段階で範囲と金額を確認します。
この表で見るべきなのは、左から2列目の金額ではなく、右の列です。どの形態を選んでも、広告であることの表示と、投稿前の表現の確認は自社に残ります。キャスティング会社に任せても、違反の責任を負うのは依頼した事業者です。この点は後の章で扱います。
払える上限を逆算する|商圏内に届く人数から件数を見積もる
提示された金額が妥当かどうかは、相場と比べても分かりません。自社が来店や予約の1件にいくらまで払えるかを先に決め、その投稿で見込める件数を掛けたものが、払える上限です。1件あたりに払える金額は、業種の平均ではなく粗利から決めます。その考え方は広告のCPA目安はどう決めるか|業種別平均が使えない理由で扱っており、インフルエンサーへの依頼でも同じ基準を使います。
見込める件数は、次の式で置きます。
- 見込み件数 = フォロワー数 × 投稿を見る割合 × 商圏内の割合 × 店の情報を見る割合 × 来店・予約率
- 払える上限 = 1件あたりに払える金額 × 見込み件数(報酬、商品の原価、自社の工数を合わせた金額がこれを超えないか)
各割合は、依頼前に正確には分かりません。ただし、桁が違う候補を比べるには十分です。仮の数字で、地域のインフルエンサーと全国区のインフルエンサーを比べます。割合はいずれも「仮に」置いたもので、業種や投稿の質で上下します。
| 項目 | A:地域のインフルエンサー(フォロワー3万人) | B:全国区のインフルエンサー(フォロワー20万人) |
|---|---|---|
| 投稿を見る割合(仮) | 30% → 9,000人 | 20% → 40,000人 |
| 商圏内の割合(仮) | 40% → 3,600人 | 3% → 1,200人 |
| 店の情報を見る割合(仮) | 3% → 108人 | 3% → 36人 |
| 来店・予約率(仮) | 10% → 約11件 | 10% → 約4件 |
| 1件あたりに払える金額を5,000円とした上限 | 約5万5,000円 | 約2万円 |
| フォロワー単価3円で提示される金額 | 9万円 | 60万円 |
この比較で分かることは2つあります。1つは、フォロワー数が7倍近く違っても、商圏内の割合が違えば見込み件数は逆転することです。Bは投稿を見る人数が4倍以上多いのに、商圏内に届く人数は3分の1です。フォロワー数で選ぶと、高い金額で少ない件数を買うことになります。
もう1つは、Aでも提示額が上限を上回ることです。単発の投稿1本で来店を回収しようとすると、店舗業種では多くの場合こうなります。この差を埋める手段は、報酬を値切ることではなく、投稿を広告やホームページに転用して制作物としての価値で回収すること、来店時の割引や無償の体験を報酬の一部にして現金の支出を下げること、複数回の投稿で単価を下げることの3つです。どれも契約の設計で決まります。
商圏内の割合は、推測しなくても確認できます。Instagramのプロアカウントには、フォロワーの上位の都市と上位の国を割合で表示するインサイトがあります。依頼前に、その画面を見せてもらいます。見せることを渋る相手や、上位の都市が商圏と重ならない相手は、フォロワー数に関係なく候補から外します。TikTokやYouTubeにも視聴者の地域を示す分析があり、同じ確認ができます。
誰に頼むか|フォロワー数より先に確認する4つ
候補を絞るときに、フォロワー数は最後に見ます。先に確認するのは次の4つです。
| 確認すること | 見る場所 | 外す基準 |
|---|---|---|
| 商圏との一致 | フォロワーの上位の都市(インサイトの画面)。来店型なら店から通える範囲に何割いるか | 上位の都市が商圏と重ならない。画面を見せない |
| フォロワーと自社の客層の一致 | フォロワーの年齢層と性別、普段の投稿の内容とコメントの中身 | 投稿の題材が自社の商品や客層と離れている。コメントが定型文や外国語ばかりで、フォロワーの実在が疑わしい |
| 過去のPR投稿の反応 | 「PR」や「タイアップ投稿」と表示された過去の投稿の保存数・コメント数と、通常の投稿との差 | PR投稿だけ反応が極端に落ちる。PR投稿の頻度が高すぎて、フォロワーが広告として読み飛ばしている |
| 表示のルールを守っているか | 過去のPR投稿に、本文の冒頭で分かる形の表示があるか。ハッシュタグの末尾に埋めていないか | 過去の投稿で表示が無い、または分かりにくい。この相手に頼むと、違反の責任を自社が負う |
4つ目は、費用対効果ではなく法令の話です。広告であることの表示義務は依頼した事業者にあり、インフルエンサーが表示を忘れても、処分を受けるのは自社です。過去の投稿で表示を省いている相手は、自社の投稿でも省く可能性が高く、確認の工程を増やすことになります。
フォロワー数が少ない相手(数千〜数万人)を複数使う設計は、比較記事でも地域密着の業種に向くとされています。理由は単価の安さだけではありません。1人あたりの商圏内の割合が高く、フォロワーとの距離が近いため、投稿が「知人の紹介」として読まれやすいことです。ただし複数に頼むと、契約、表示の確認、投稿前の確認が人数分になります。この工数を見込んで人数を決めます。
契約に入れる項目|掲載期間、確認、二次利用、支払い
口頭やDMのやり取りだけで進めると、投稿の削除、表現の誤り、転載の可否で揉めます。個人に業務を委託する場合、取引条件を書面か電磁的方法(メールやSNSのメッセージ)で明示することは、2024年11月1日施行のフリーランス法で発注する側の義務になっています。明示する項目は、双方の名称、委託した日、業務の内容、納期、報酬の額と支払期日など8項目で、従業員のいない会社が発注する場合も対象です。従業員を使用する会社には、納品を受けた日から60日以内の支払期日など、義務が加わります。
その上で、インフルエンサーへの依頼に固有の項目を入れます。
| 項目 | 決めること | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 投稿の本数と形式 | フィード、リール、ストーリーズのどれを何本か。投稿日の範囲。ストーリーズは24時間で消えるため、ハイライトに残すかどうか | 1本の想定が「ストーリーズ1枚」で終わる。逆に相手が本数を増やして追加費用を求める |
| 掲載を維持する期間 | 投稿を削除せずに残す期間(例:公開から6か月)。アーカイブへの移動も含めて禁止するか | 反応が悪いと相手が投稿を消し、費用だけ残る |
| 投稿前の確認 | 公開前に自社が原稿と画像を確認する工程と期限。確認する観点(価格、効果の言い方、他社との比較) | 効果の言い過ぎや価格の誤りがそのまま公開される。表現の責任は依頼した側にある |
| 広告であることの表示 | 本文の冒頭に「PR」「広告」などの表示を置くこと。媒体のタイアップ表示の機能を使うこと。ハッシュタグの末尾やリプライに置かないこと | 表示が分かりにくい投稿になり、依頼した側が違反を問われる |
| 二次利用の範囲 | 自社の広告、ホームページ、店頭、印刷物のどこまで使えるか。期間。追加費用。転載先にも広告である旨を表示すること | 投稿を広告に使えない。使えても、転載先の表示が抜けて違反になる |
| 報酬と現物 | 金額、支払期日、支払方法。商品や割引を報酬に含める場合はその内容 | 支払期日の義務に反する。現物の扱いが曖昧になり、税務でも困る |
| 成果の共有 | 投稿のインサイト(リーチ、保存、プロフィールへの移動)を公開後に共有してもらうこと | 自社で件数を数える以外に、投稿の反応が分からない |
表現の確認では、広告としての適法性を見ます。効果の断定、No.1の表示、他社との比較、医療や美容の効能に関する言い方は、インフルエンサーの投稿でも景品表示法や薬機法の対象です。問題になりやすい言い方の整理は広告表現で問題になりやすい言い方|景表法・薬機法と媒体ポリシーの整理で扱っています。「本人の感想」という形にしても、依頼した側が内容に関与していれば事業者の表示であり、表現の責任は消えません。
広告であることの表示は依頼した側の責任|投稿だけでなく転載先にも
2023年10月1日から、事業者の表示なのに一般消費者がそれと判別できない表示は、景品表示法の不当表示になりました。規制の対象は商品やサービスを供給する事業者、つまり依頼した側で、依頼を受けて投稿するインフルエンサーは対象外です。依頼が「広告」になる線引きと、利用者の投稿を自社で使うときの許諾はUGCを集客に活用する方法|二次利用の許諾と、依頼が「広告」になる線引きで扱っています。この記事では、インフルエンサーへの依頼で実際に処分の理由になった点に絞ります。
| 場面 | 消費者庁の運用基準・Q&Aでの扱い | 実務で決めること |
|---|---|---|
| 報酬を払って投稿を依頼する | 事業者の表示に当たる。表示が無ければ違反 | 本文の冒頭に「PR」「広告」など。語は限定されないが、一般消費者が分かる表現にする |
| 商品を無償で提供し、投稿は任せる | 内容を指示せず、それ以上の関係も無ければ、通常は事業者の表示に当たらない。ただし個別の事情で当たる場合がある | 「使った感想を投稿してほしい」までに留め、内容や表現を指定しない。指定するなら有償の依頼と同じ表示をする |
| 表示をリプライやツリーに置く | 本文ではなくツリーに「広告」と書く方法は、一般消費者が気付かないおそれがあり、明瞭とはいえない | 本文の冒頭に置く。ハッシュタグの末尾に埋めない |
| 動画で紹介する | 動画全体を通して事業者の表示であることが明瞭になるようにしておくことが望ましい | 冒頭のテロップと概要欄の両方に置く。途中から見る視聴者にも分かるようにする |
| 施行前の投稿が残っている | 施行後も表示され続けていれば、表示が明瞭でない場合は処分の対象になり得る | 過去に依頼した投稿を洗い出し、表示を追加するか削除を依頼する |
実際の措置命令で問題になったのは、投稿そのものではなく転載先でした。2024年11月13日、消費者庁はサプリメントの販売についてInstagramのインフルエンサー3人に報酬(約1万円と商品1箱)を払って投稿を依頼した事業者に措置命令を出しました。投稿には「PR」の表示がありました。問題になったのは、その投稿を自社のオンラインショップに転載したときに「PR」や「広告」の表示が無かったことです。2025年3月28日には東京都が、仲介事業者を通じてインフルエンサーに対価を払い、その投稿を広告である旨を示さずに自社サイトへ引用した事業者に、地方自治体として初めてこの告示に基づく措置命令を出しました。
2つの事例に共通するのは、二次利用そのものは契約で認められていたはずだという点です。投稿を転用する設計は費用対効果を上げますが、転載先でもそれが依頼した投稿だと分かる表示(「PR」「〇〇さんに依頼して投稿いただいた内容です」など)を付けなければ、回収の手段が処分の理由になります。ホームページの「お客様の声」や「メディア掲載」の欄に、依頼した投稿を体験談として載せる形が最も起きやすい失敗です。
媒体の機能も使います。Instagramには、投稿の上部に「〇〇とのタイアップ投稿」と表示するブランドコンテンツの機能があり、自社(広告主)側でクリエイターを承認して使います。この形にした投稿は、自社がその投稿のインサイトを見られ、自社の広告として配信することもできます。TikTokには商用コンテンツの開示設定があり、クリエイターが動画に有償のパートナーシップであることを示すラベルを付けます。媒体の表示に加えて本文冒頭の表示も置く形が、最も確実です。
費用対効果の判定|1件あたりの金額と、二次利用で回収する分
インフルエンサーへの依頼は、リーチや保存数で評価されがちですが、それらは途中の数字です。見るべきなのは、報酬と商品の原価と自社の工数を合わせた費用を、SNS経由の来店や予約の件数で割った1件あたりの金額です。広告の獲得単価と同じ基準で比べます。
| 指標 | 出し方 | 比べる相手 |
|---|---|---|
| 1件あたりの費用 | (報酬+商品の原価+二次利用費+自社の工数の時給換算)÷ 投稿経由の来店・予約・購入の件数 | 同じ目的で出している広告の獲得単価。広告のほうが安いなら、次回は同じ費用を広告に回す判断になる |
| 投稿経由の件数の取り方 | インフルエンサー専用のクーポンコードか予約時の合言葉。プロフィールや投稿のリンクに計測用のパラメータを付ける。予約や問い合わせのフォームに「何を見て知ったか」の項目を入れる。来店時に聞く | 件数が取れなければ判定できない。依頼前に取れる状態にする。パラメータの設計はUTMパラメータの設計と命名規則|流入元を正しく計測する方法で扱っている |
| 判定の時期 | 投稿から2〜4週間で来店・予約の件数。二次利用の広告を回す場合は、広告の期間を含めて判定する | 投稿の翌日の反応で判断しない。ストーリーズは24時間で消えるため、フィードやリールとは分けて見る |
| 二次利用の価値 | 同じ写真や動画を自社で制作した場合の費用(撮影、モデル、編集)と、広告に使ったときの成果 | 二次利用を含めた総額で、制作費と広告費の合計と比べる。単発の投稿費だけで比べない |
店舗業種では、単発の投稿1本の報酬を来店だけで回収するのは難しいことが多く、二次利用まで含めて判定するのが現実的です。依頼した投稿を自社のInstagram広告の素材にすれば、商圏だけに絞って配信でき、投稿の反応が良かった素材を選んで使えます。Instagram広告の費用と店舗での始め方はInstagram広告の費用相場と店舗集客での始め方で扱っています。ただし転載先の表示は、前の章のとおり必ず付けます。
なお、拡散を狙って全国区のインフルエンサーに頼む判断は、別の問題です。拡散が売上につながる条件と、店舗で効きにくい理由はSNS広告でバズを狙うべきか|拡散が売上につながる条件と、つながらない条件で扱っています。
依頼して成立する会社と、見送ったほうがよい会社
ここまでの条件を判断の形にまとめます。
依頼して成立する会社
- 目的が来店か予約か購入で、月に何件を目指すかが決まっている。件数が決まれば、1件あたりの費用で判定できる
- 候補のフォロワーの上位の都市が、商圏と重なっている。フォロワー数より、この割合が見込み件数を決める
- 1件あたりに払える金額が粗利から決まっている。提示額が妥当かどうかを、相場ではなく自社の上限で判断できる
- 投稿を広告やホームページに転用する予定があり、転載先の表示まで決めている。制作物として回収でき、処分の理由にもならない
- 投稿前の確認と、広告表示の確認を担う人が社内にいる。表現と表示の責任は依頼した側にある
- 投稿経由の件数を数える仕組み(クーポン、合言葉、フォームの項目)がある。判定ができる
今は見送ったほうがよい会社
- フォロワー数の多さで候補を選ぼうとしている。商圏外に届く人数を買うことになる
- 商圏内の割合を確認していない、または相手が画面を見せない。見込み件数が出せない
- 転載先に広告の表示を出すつもりがない。「お客様の声」として載せたい、という動機なら、依頼した投稿は使えない
- 内容や表現を指示した上で、無償提供だけで済ませたい。指示した時点で事業者の表示になり、表示が無ければ違反になる
- SNS経由の件数を数える仕組みが無い。リーチや保存数で評価するしかなくなり、続けるかやめるかを決められない
- Googleビジネスプロフィールと自社のSNSが整っていない。投稿を見た人が店を調べたときに、情報が無いか古い。先に整える。基本の設定はMEO対策とは?Googleビジネスプロフィールで来店数を増やす具体的手順で扱っている
自社のSNSの運用そのものを外部に出す場合の費用と契約は、SNS運用代行の費用は何で決まるか|月額の相場より先に、自社に残す作業と契約終了時に残るものを決めるで扱っています。運用代行とインフルエンサーへの依頼は別の施策で、前者は自社のアカウントを育てる費用、後者は他人のアカウントで紹介してもらう費用です。どちらも「終了時に何が残るか」を契約で決める点は共通します。
依頼する場合の順序|目的、上限、候補、契約、表示、計測、転用
依頼すると決めた場合の順序です。順序を守る理由は、候補探しと金額の交渉を後に回し、先に自社側の上限と条件を固めるためです。先に候補を探すと、フォロワー数と提示額に引きずられ、商圏内に届く人数を見ないまま決めることになります。
1. 目的と件数、1件あたりに払える金額を決める
来店か、予約か、購入か。月に何件を目指すか。1件にいくらまで払えるかを粗利から出します。この3つが無いと、提示額の妥当性も、事後の判定もできません。
2. 候補の商圏内の割合を確認し、上限と比べる
候補に、フォロワーの上位の都市の画面を見せてもらいます。商圏内の割合と投稿を見る割合から見込み件数を置き、払える上限を出します。提示額が上限を大きく超えるなら、二次利用を含めた設計か、現物を報酬の一部にする設計に変えるか、候補を変えます。
3. 契約の項目を先に渡してから、金額を詰める
本数と形式、掲載を維持する期間、投稿前の確認、広告であることの表示、二次利用の範囲と費用、報酬と支払期日を書いて渡します。個人に頼む場合は、フリーランス法の取引条件の明示をこの段階で済ませます。項目を渡さずに金額だけ聞くと、二次利用費や追加投稿の費用が後から出てきます。
4. 投稿前に、表現と表示を確認する
公開前に原稿と画像を受け取り、価格、効果の言い方、他社との比較を確認します。本文の冒頭に「PR」などの表示があるか、媒体のタイアップ表示が設定されているかを見ます。確認の期限を決め、期限までに返さなければ相手が公開できない形にはしません。遅れは自社の責任です。
5. 公開後に件数を取り、2〜4週間で判定する
クーポンや合言葉、フォームの項目で投稿経由の件数を取ります。公開後にインサイトを共有してもらい、リーチと保存数は投稿の改善に、件数は費用対効果の判定に使います。
6. 転用するなら、転載先にも表示を付ける
契約で二次利用を認めた投稿を、自社の広告やホームページに使います。転載先にも、依頼した投稿であることが分かる表示を必ず付けます。投稿に「PR」があっても、転載先に無ければそこが違反になります。
よくある失敗
フォロワー数で選び、商圏外に届く人数を買う
フォロワー20万人の相手の投稿を4万人が見ても、商圏内は千人余りという構造になります。フォロワーの上位の都市を先に見て、商圏内の割合で候補を比べます。
投稿には「PR」があるのに、自社サイトへの転載で表示が抜ける
2024年11月の消費者庁と2025年3月の東京都の措置命令は、どちらもこの形です。転載先にも、依頼した投稿であることが分かる表示を付けます。「お客様の声」の欄に体験談として載せる形が最も起きやすい失敗です。
無償提供だから表示は不要だと考え、内容を指示する
商品を無償で渡して投稿を任せる場合でも、内容や表現を指示すれば事業者の表示に当たり、表示が無ければ違反になります。任せるなら任せ切り、指示するなら表示を付けます。
表示をハッシュタグの末尾やリプライに置く
消費者庁のQ&Aは、本文ではなくツリーに「広告」と書く方法を、一般消費者が気付かないおそれがあり明瞭とはいえないとしています。本文の冒頭に置きます。
掲載期間を決めず、反応が悪いと投稿が消される
投稿を維持する期間を契約に入れていないと、相手の判断で削除やアーカイブされ、費用だけが残ります。期間と、アーカイブの扱いを決めます。
二次利用の範囲を決めず、広告に使えない
投稿の著作権はインフルエンサーにあり、転用は許諾の範囲で決まります。使う媒体、期間、追加費用を契約に入れないと、広告用に同じものをもう一度作ることになります。
リーチと保存数で成功と判断する
それらは途中の数字です。来店や予約の件数が取れていなければ、費用対効果は判定できません。クーポンや合言葉、フォームの項目を依頼前に用意します。
個人への依頼で、取引条件を口頭やDMの断片で済ませる
フリーランス法により、取引条件の明示は発注する側の義務です。DMでも構いませんが、8項目を1通にまとめて残します。支払期日を決めないまま納品を受けると、期日の義務にも反します。
よくある質問
インフルエンサーへの依頼費用の相場はいくらですか
公開されている料金表と比較記事では、報酬は「フォロワー数×2〜4円」を目安に、仲介のプラットフォームやキャスティング会社を使うと月額や最低利用額が別に加わる幅で示されています。ただし定価は無く、妥当かどうかは相場ではなく、自社が1件あたりに払える金額と、商圏内に届く人数から出した上限で判断します。
フォロワー数が少ない相手に頼む意味はありますか
店舗や地域のサービスでは、フォロワー数より商圏内の割合が見込み件数を決めます。数千〜数万人でも上位の都市が商圏と重なる相手は、全国区の相手より1件あたりの費用が安くなることが多く、複数人に頼む設計も取れます。ただし契約と確認の工数は人数分になります。
商品を無償で提供するだけなら「PR」の表示は不要ですか
投稿の内容を指示せず、それ以上の関係も無い場合は、通常は事業者の表示に当たらないとされています。ただし個別の事情で当たる場合があり、内容や表現を指示した時点で有償の依頼と同じ扱いになります。迷う場合は表示を付けます。
インフルエンサーが表示を忘れた場合、誰の責任になりますか
依頼した事業者の責任です。この規制の対象は商品やサービスを供給する事業者で、インフルエンサーは対象外です。契約に表示の方法を書き、投稿前に確認する工程を入れます。
投稿をホームページの「お客様の声」に載せてもよいですか
二次利用の許諾があれば載せられますが、依頼した投稿であることが分かる表示を転載先にも付けます。投稿に「PR」があっても転載先に無いと、そこが違反になります。2024年11月と2025年3月の措置命令はこの形でした。
キャスティング会社に任せれば、表示や表現の責任も任せられますか
選定、契約、表示の管理は任せられますが、違反があった場合に措置命令を受けるのは依頼した事業者です。表現の最終確認と、転載先の表示は自社で行います。
成果はどのくらいで判断すべきですか
投稿から2〜4週間で来店・予約の件数を見ます。二次利用で広告に使う場合は、広告の期間を含めて判定します。翌日の反応や、リーチと保存数だけで判断しません。
運用代行とインフルエンサーへの依頼はどちらを先にすべきですか
別の施策です。運用代行は自社のアカウントを育てる費用、インフルエンサーへの依頼は他人のアカウントで紹介してもらう費用です。店舗業種では、Googleビジネスプロフィールと自社のアカウントの基本情報を先に整え、投稿を見た人が店を調べたときに困らない状態にしてから依頼します。
まとめ
インフルエンサーへの依頼費用は、「フォロワー数×2〜4円」を目安に提示されますが、自社が払える上限は、来店や予約の1件に払える金額に、商圏内に届く人数から見積もった件数を掛けて決めます。店舗や地域のサービスでは、フォロワー数より商圏内の割合が結果を動かし、フォロワーの上位の都市は依頼前に確認できます。
依頼した時点で投稿は事業者の表示になり、広告であることを示す責任は依頼した側にあります。無償提供でも内容を指示すれば同じ扱いです。2024年11月と2025年3月の措置命令は、どちらも投稿には「PR」があったのに、自社サイトへの転載で表示が抜けていた事例でした。二次利用は費用対効果を上げますが、転載先の表示まで決めてから使います。
契約には、本数と形式、掲載を維持する期間、投稿前の確認、表示の方法、二次利用の範囲と費用、報酬と支払期日を入れます。個人に頼む場合は、フリーランス法の取引条件の明示が発注する側の義務です。
費用対効果は、報酬と原価と工数を投稿経由の件数で割った1件あたりの金額で見て、広告の獲得単価と比べます。単発の投稿費だけで回収しようとせず、二次利用まで含めて判定します。
依頼する場合は、目的と件数と1件あたりの上限、候補の商圏内の割合、契約の項目、投稿前の確認、公開後の計測、転載先の表示の順で進めます。
インフルエンサーへの依頼の設計、自社のSNS運用、投稿の広告への転用まではSNS運用・コンテンツマーケティングで承っています。依頼した投稿を商圏に絞った広告として配信する設計はWEBマーケティング・広告運用と合わせてご相談いただけます。会社紹介資料は資料ダウンロードから、ご相談はお問い合わせからご連絡ください。