コーポレートサイトのリニューアルで最も多い失敗は、デザインが気に入らないことでも、費用が膨らむことでもありません。公開後に検索からの流入が落ちることです。
そしてこれは、ほぼすべて事前の準備で防げます。URLの対応表を作り、個別にリダイレクトを設定する。この工程が見積に含まれているかどうかで、公開後の数字が変わります。
この記事では、リニューアルの目的設定から、依頼前の準備、進行の流れ、公開前後の確認事項までを、発注者の視点で解説します。
この記事でわかること
・リニューアルの目的を数字で定義する方法
・依頼前に自社でそろえる情報と、それがない場合の影響
・進行の全体像と、各工程で発注者が判断すること
・公開時に流入を落とさないための確認事項
・公開後に確認する指標と期間
まず目的を数字で定義する
「古くなったから」「見た目を新しくしたい」では、完成の判断ができません。次のいずれかに落としてください。
| 目的 | 完成の判断基準 | 必要な工程 |
|---|---|---|
| 問い合わせを増やす | CV数、CVR | 情報設計、導線設計、計測実装 |
| 採用応募を増やす | 応募数、内定承諾率 | 採用ページの拡充、構造化データ |
| 更新できる状態にする | 社内での更新頻度 | CMS導入、権限設計 |
| 信頼感を高める | 商談時の反応、指名検索数 | 実績・事例の整備、デザイン刷新 |
| スマートフォン対応 | モバイルのCVR、直帰率 | レスポンシブ実装、表示速度 |
複数を同時に狙うと、優先順位で判断が止まります。主目的を1つ決め、他は副次的な扱いにしてください。
リニューアルで最も損失が大きいのは、URL変更による検索流入の消失です。
見積の段階で「301リダイレクトの個別設定」が含まれているか確認してください。
依頼前にそろえる情報
これらがないまま依頼すると、制作会社は推測で設計することになります。
| 情報 | 取得元 | ないとどうなるか |
|---|---|---|
| 現行サイトの全URLと流入数 | Search Console、GA4 | リダイレクト漏れが起きる |
| 流入している検索語句 | Search Console | 需要のあるページを削ってしまう |
| 問い合わせで聞かれる質問 | 受付・営業の記録 | FAQに何を書くか決まらない |
| 既存顧客が選んだ理由 | 受注済み顧客への質問5〜10件 | 訴求の軸が推測になる |
| 掲載する実績・事例 | 社内資料 | 空箱の構成で承認することになる |
| 使用できる写真 | 既存素材の棚卸し | フリー素材だけのサイトになる |
1番目と2番目は必須です。これがないとリダイレクト設計ができず、公開後に流入が落ちます。Search Consoleを導入していない場合は、リニューアル前に入れて数か月データを貯めてください。
進行の流れと、発注者が判断すること
| 工程 | 制作会社がやること | 発注者が判断すること |
|---|---|---|
| 要件定義 | 目的・対象・CV地点の整理 | 主目的を1つに絞る |
| 情報設計 | サイトマップの作成 | 掲載する情報の過不足。削るページの判断 |
| ワイヤーフレーム | 各ページの構成図 | 情報の順序。載せる情報が実際にあるか |
| デザイン | 配色・書体・レイアウト | コンセプトを体現しているか(好みではなく) |
| 原稿 | コピーの作成または調整 | 事実関係の確認。社内用語の排除 |
| 実装 | コーディング、CMS構築 | 更新できる範囲の確認 |
| 計測実装 | GA4・GTM・CV設定 | 自社アカウントで作成されているか |
| 公開 | サーバー移行、リダイレクト設定 | URL対応表の確認 |
デザイン工程で「好き嫌い」の議論になると、判断が止まります。判断基準はコンセプトに戻してください。情報設計とワイヤーフレームについては情報設計(IA)とは?とワイヤーフレームとは?で解説しています。
公開時に流入を落とさない
ここが最も重要な工程です。見積に含まれているか、契約前に確認してください。
- 現行の全URLを一覧化する:Search Console、サイトマップ、GA4から抽出する
- 各URLの流入数と検索順位を記録する:優先度を判断するため
- 新旧URLの対応表を作る:統合・削除するページも、どこへ寄せるか決める
- 301リダイレクトを個別に設定する:トップページへの一括転送は避ける
- 内部リンクを新URLに書き換える:リダイレクト任せにしない
- 公開後、Search Consoleでエラーを監視する:404の急増がないか
4番目が要点です。内容が対応しないページへの転送は、リダイレクトとして評価されにくく、順位が引き継がれません。「該当ページがないからトップへ」という設定は、実質的に流入を捨てることになります。
公開直前のチェック
- テスト環境が検索エンジンにインデックスされていないか(noindexの解除漏れの逆も確認)
- 本番公開時にnoindexが外れているか
- 計測タグが本番に設置されているか
- 問い合わせフォームが実際に送信でき、通知が届くか
- スマートフォン実機で全ページを確認したか
- 表示速度が公開前より落ちていないか
4番目は必ず自分で送信テストしてください。フォームが動いていないまま数週間気づかないという事故は実際に起こります。
公開後に確認する指標
| 指標 | 確認時期 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 404エラー数 | 公開直後〜2週間 | Search Consoleでリダイレクト漏れを検知 |
| 検索流入数 | 公開後1〜3か月 | 一時的な変動はあるが、3か月で戻るか |
| 主要キーワードの順位 | 公開後1〜3か月 | 大きく落ちたページがないか |
| CV数・CVR | 公開後1〜2か月 | 目的が問い合わせ増なら最重要 |
| 表示速度 | 公開直後 | 公開前より遅くなっていないか |
| 問い合わせの内容 | 公開後1〜3か月 | サイトに書いてある質問が減ったか |
リニューアル直後は検索流入が一時的に変動します。1〜2週間で判断せず、3か月の推移で見てください。ただし404の急増だけは、即座に対処が必要です。
費用と期間の目安
| 規模 | 費用の目安 | 期間 | 含まれる範囲 |
|---|---|---|---|
| 小規模(10ページ程度) | 50万〜150万円 | 2〜3か月 | 情報設計、デザイン、実装、CMS |
| 中規模(20〜40ページ) | 150万〜400万円 | 3〜5か月 | 上記+撮影、原稿作成、計測実装 |
| 大規模(50ページ以上、多言語・システム連携) | 400万円〜 | 5か月〜 | 上記+調査、ブランド設計 |
金額の幅は、工程の範囲で決まります。原稿を自社で用意できるか、撮影が必要か、計測実装を含むかで数十万円単位で変わります。比較する際は、必ず範囲を揃えてください。制作会社の選び方はデザイン制作会社の選び方|見積り比較で確認すべきポイントで解説しています。
よくある失敗
失敗1:リダイレクト設計を見積に含めない
公開後に検索流入が落ちます。契約前に、URL対応表の作成と個別リダイレクトが含まれるか確認してください。
失敗2:目的を複数設定する
「問い合わせも採用も信頼感も」とすると、判断が止まります。主目的を1つに絞ってください。
失敗3:材料をそろえずに着手する
実績、写真、原稿がないと、空箱の構成で承認することになります。中身が入った段階で構成の問題が発覚します。
失敗4:決裁者が最後にしか出てこない
デザイン完成後に構成を覆されると、大幅な手戻りになります。ワイヤーフレームの段階で一度確認に入れてください。
失敗5:計測環境を制作会社のアカウントで作る
契約終了時にデータを失います。GA4・GTM・Search Consoleは自社のGoogleアカウントで作成してください。
よくある質問
Q. リニューアルすべきタイミングは?
周期ではなく状態で判断してください。スマートフォン対応が不十分、表示が遅い、更新できない、情報が古い、成果指標が落ちている。これらに該当するなら検討の価値があります。数字が出ているサイトを、見た目の理由だけで作り替える必要はありません。
Q. URLは変えないほうがよいですか?
変えないで済むなら、そのほうが安全です。ただし情報設計を見直す場合、URL構造も合わせて変えるほうが長期的には管理しやすくなります。変える場合は、対応表と個別リダイレクトを必ず用意してください。
Q. 公開後に流入が落ちました。どうすればよいですか?
まずSearch Consoleで404エラーを確認してください。リダイレクト漏れが最も多い原因です。次に、削除・統合したページのうち流入があったものを特定し、リダイレクト先が内容的に対応しているか確認します。
Q. 段階的にリニューアルできますか?
できます。トップページと主要なサービスページを先に刷新し、下層は既存を残す方法があります。費用を分散でき、効果の確認もしやすくなります。ただしデザインの一貫性を保つため、ルールを先に決めてください。
Q. 社内で更新できるようにしたいのですが。
CMSの導入だけでは不十分です。「どのページの、どの部分を、誰が更新するか」を要件定義の段階で決め、その範囲が編集画面で触れるように設計してもらってください。ここが曖昧だと、結局すべて依頼することになります。
まとめ
コーポレートサイトのリニューアルで最も損失が大きいのは、URL変更による検索流入の消失です。現行URLの一覧化、新旧の対応表、個別の301リダイレクト。この3点が見積に含まれているか、契約前に確認してください。
目的は1つに絞り、数字で定義してください。「古くなったから」では完成の判断ができません。そして依頼前に、現行の流入データ、問い合わせで聞かれる質問、掲載する実績と写真をそろえてください。材料がないまま着手すると、空箱の構成で承認することになります。
公開後は3か月の推移で判断します。ただし404の急増だけは即座に対処してください。計測環境は必ず自社のGoogleアカウントで作成し、契約が変わってもデータが残る状態にしてください。
「リニューアルを検討しているが、何から手を付ければよいか分からない」「前回のリニューアルで流入が落ちた」といった状態にある場合は、デザインの検討より先に、目的の定義と現行データの整理から着手してください。
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