会社案内パンフレットは、Webサイトがあれば不要と考えられがちです。しかし実際には、「渡す場面がある」企業では、いまも成果に直結する制作物です。
商談後に手元に残る、稟議で回覧される、展示会で持ち帰られる。これらはWebサイトでは代替しにくい役割です。一方で、渡す場面が明確でないまま作ると、在庫を抱えるだけになります。
この記事では、作るべきかどうかの判断から、掲載内容、費用の考え方、発注時の確認事項までを解説します。
この記事でわかること
・会社案内を作るべきケース・不要なケース
・用途別に変わる掲載内容と仕様
・費用の内訳と、金額差が生まれる要因
・部数の決め方と、増刷を前提にした設計
・発注前に確認すべき項目
作るべきか、不要か
判断基準は1つです。「誰に、どの場面で渡すか」が具体的に言えるかどうかです。
| 作るべきケース | 不要なケース |
|---|---|
| 商談・訪問で手渡す機会がある | 対面での接点がほとんどない |
| 稟議・社内検討で回覧される | 決裁者が1人で即決する取引 |
| 展示会・イベントに出展する | 出展予定がない |
| 採用説明会で配布する | 採用がWeb応募のみで完結する |
| 金融機関・取引先へ提出する | 提出を求められたことがない |
| 地域の紹介・営業で置いてもらう | 置く場所の当てがない |
「あったほうがいいから」という理由だけで作ると、ほぼ確実に在庫になります。用途が1つも当てはまらない場合は、その予算をWebサイトの改善や広告に回したほうが成果につながります。
会社案内は「作るもの」ではなく「渡す場面があるから作るもの」です。
渡す場面が言えなければ、まだ作る段階ではありません。
用途別に変わる内容
同じ「会社案内」でも、用途が違えば載せるべき内容が変わります。すべてを1冊に詰め込むと、どの用途でも中途半端になります。
| 用途 | 読む人 | 重点的に載せるもの |
|---|---|---|
| 営業・商談 | 担当者、決裁者 | 提供内容、実績、対応範囲、選ばれる理由 |
| 採用 | 求職者、その家族 | 働く人、職場の様子、キャリア、待遇の考え方 |
| 金融機関・取引先 | 審査担当 | 事業内容、沿革、体制、財務の安定性 |
| 展示会・不特定配布 | 初対面の人 | 何をしている会社か、連絡先、短時間で伝わる情報 |
営業用と採用用は、分けて作ることを推奨します。求職者が知りたい情報と、取引先が知りたい情報はほとんど重なりません。1冊にまとめると、どちらの読者にとっても不要なページが半分を占めます。
採用目的であれば、パンフレットより採用サイトのほうが有効な場合もあります。判断は中小企業が採用サイトを作るべき理由と制作のポイントを参照してください。
掲載内容の基本構成
- 表紙:社名と、何をしている会社かが1行で分かる状態
- 事業内容:何を提供しているか。専門用語を避ける
- 強み・選ばれる理由:他社との違いを具体的に
- 実績・事例:掲載許諾を得たもののみ
- 体制・拠点:規模感と対応範囲
- 沿革:継続性の証明
- 会社概要・連絡先:裏表紙に固定
1番目が最も手を抜かれる箇所です。表紙に社名とロゴだけが置かれているパンフレットは、受け取った人が中を開かなければ何の会社か分かりません。「千葉市の外壁塗装専門」のように、1行で業種と地域を入れてください。
実績の扱い
実績・事例を掲載する場合は、取引先から掲載許諾を得たもののみを使用してください。社名の掲載可否、写真の使用範囲、金額の記載可否は、それぞれ確認が必要です。
許諾が得られない場合は、業種と規模だけを匿名で記載する方法があります。存在しない実績を作ることは、絶対に行わないでください。
費用の内訳
パンフレット制作の見積は、Web制作以上に「何が含まれるか」が分かりにくい領域です。金額を比較する前に、内訳を揃えてください。
| 項目 | 内容 | 金額差が出る要因 |
|---|---|---|
| 企画・構成 | 掲載内容の設計、台割 | ヒアリングと提案の深さ |
| 原稿作成 | 文章の執筆 | 自社で用意するか、取材して書いてもらうか |
| 撮影 | 写真の新規撮影 | 撮影日数、カット数、モデル手配の有無 |
| デザイン | レイアウト、ページデザイン | ページ数、デザイン案の数、修正回数 |
| 印刷 | 用紙、部数、加工 | 用紙の種類、特殊加工、部数 |
| データ | 元データの納品 | 納品可否は契約による |
金額差の主因は「原稿と写真を誰が用意するか」です。自社で原稿を書き、既存の写真を使えば費用は下がります。取材と撮影を依頼すれば上がります。
見積を比較する際は、この2点が含まれているかを必ず揃えてください。含む・含まないで金額は大きく変わります。見積比較の考え方はデザイン制作会社の選び方|見積り比較で確認すべきポイントで解説しています。
印刷費は部数で単価が変わる
印刷は、部数が増えるほど1部あたりの単価が下がる構造です。初期の版を作る費用が部数で割られるためです。
ただし「単価が安いから多めに刷る」は、多くの場合で損をします。理由は次の項で説明します。
部数の決め方
会社案内の内容は、必ず古くなります。
| 変わる項目 | 変わる頻度 |
|---|---|
| 社員数、体制 | 年単位 |
| 拠点、住所 | 数年単位 |
| サービス内容、価格 | 年単位、またはそれ以下 |
| 実績、事例 | 継続的に増える |
| 写真に写る社員 | 退職により使えなくなる |
単価を下げるために3年分を一度に刷ると、2年目以降は情報が古いパンフレットを渡すことになります。訂正シールを貼る、口頭で補足する、といった運用は、受け取る側に印象を残しません。
推奨するのは、1年〜1年半で使い切る部数を刷り、更新時に内容を見直すことです。増刷しやすいよう、元データの納品と修正対応の条件を契約時に確認してください。
変わりやすい情報を分離する
もう1つの方法は、変わりにくい部分と変わりやすい部分を分けることです。
- 本体:事業内容、理念、沿革など変わりにくい情報。多めに刷る
- 差し込み:実績一覧、価格、体制など変わりやすい情報。少部数で都度更新
- QRコード:最新情報はWebサイトへ誘導する
3番目は必ず入れてください。紙面には載せきれない情報と、更新される情報の両方をWebで補えます。誘導先はトップページではなく、目的に応じたページを指定してください。
発注前に確認すべき項目
- 原稿は誰が用意するか:取材の有無、文字数の目安
- 写真は誰が用意するか:撮影の有無、既存写真の使用可否
- 修正回数:何回まで含まれるか、超過時の扱い
- 校正の回数と方法:色校正の有無
- 元データを納品してもらえるか:増刷・他社依頼時に必要
- 印刷の手配は誰が行うか:印刷費が見積に含まれるか
- 納期:印刷・製本の期間を含めた全体
- 使用素材の権利:写真・イラストの二次利用可否
5番目と8番目は、後から問題になりやすい項目です。元データがなければ増刷や部分修正のたびに同じ会社へ依頼するしかなく、写真の使用範囲が限定されていればWebサイトへの転用ができません。契約前に確認してください。
使用する場面が紙面だけとは限らないため、撮影した写真をWebサイトやSNSでも使えるかを必ず確認してください。
よくある失敗
失敗1:渡す場面を決めずに作る
在庫になります。用途が言えない場合は、まだ作る段階ではありません。
失敗2:営業用と採用用を1冊にまとめる
どちらの読者にとっても不要なページが半分を占めます。
失敗3:単価を下げるために大量に刷る
情報が古くなり、後半は使えなくなります。1年〜1年半で使い切る部数が現実的です。
失敗4:表紙に社名とロゴだけを置く
受け取った人が中を開かなければ、何の会社か分かりません。
失敗5:元データの納品条件を確認しない
増刷や部分修正のたびに、同じ会社へ依頼するしかなくなります。
よくある質問
Q. Webサイトがあれば会社案内は不要ですか?
用途によります。手渡す場面、稟議で回覧される場面、展示会で持ち帰られる場面があるなら、紙のほうが機能します。対面の接点がない事業であれば、優先度は下がります。
Q. 何ページくらいが適切ですか?
用途によりますが、渡す相手が最後まで読むかを基準にしてください。展示会での不特定配布なら短いほうが読まれます。商談用で説明を補う目的なら、必要な情報が揃っている厚みが必要です。ページ数を先に決めず、載せる内容から決めてください。
Q. PDFで配布すれば印刷は不要ですか?
PDFにも用途はありますが、紙とは役割が違います。紙は「手元に残る」「机に置かれる」「回覧される」という物理的な性質が価値です。PDFは検索性と即時性が価値です。両方用意し、場面で使い分けるのが現実的です。
Q. 制作期間はどのくらいかかりますか?
企画・原稿・撮影・デザイン・校正・印刷の各工程が必要で、印刷と製本にも日数がかかります。展示会など期日がある場合は、逆算して余裕を持った依頼が必要です。期日は最初に伝えてください。
Q. 自社で作ることはできますか?
可能ですが、印刷用のデータ作成には専用の知識が必要です。色の指定方法、塗り足し、解像度などを誤ると、意図した仕上がりになりません。原稿と写真を自社で用意し、デザインと入稿を依頼する分担が現実的です。
まとめ
会社案内パンフレットを作るかどうかの判断基準は、「誰に、どの場面で渡すか」が具体的に言えるかどうかです。用途が言えない場合は、その予算をWebサイトや広告に回したほうが成果につながります。
用途が明確な場合は、営業用と採用用を分けてください。読む人が求める情報がほとんど重ならないためです。
費用の差は、原稿と写真を誰が用意するかで大きく変わります。見積を比較する際は、この2点を揃えてから金額を見てください。
部数は、単価の安さではなく「1年〜1年半で使い切れるか」で決めてください。情報は必ず古くなります。変わりやすい情報は差し込みやQRコードでWebへ逃がす設計が有効です。
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