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ブランドガイドラインの作り方|どこまで決めれば運用が回るか

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名刺、チラシ、Webサイト、SNS、営業資料——制作物が増えるほど、少しずつ見え方がずれていきます。ロゴの余白が詰まっている、資料ごとに青の色味が違う、SNSだけ書体が別物になっている。担当者も制作会社も悪気なくやった結果です。

この状態を防ぐのがブランドガイドラインですが、作ったのに守られていないという相談も同じくらい多く寄せられます。原因の大半は、内容の不足ではなく、分量の多さと配布のされ方にあります。50ページの資料は、現場では開かれません。

この記事では、最小構成として決めるべき4項目、段階を追って拡張する範囲、そして「守られる状態」を作るための配布方法を整理します。ブランドの中身そのものを決める工程はブランドコンセプトの作り方、Web実装に特化したルールはデザインシステムとは?で解説しています。

この記事でわかること

・ブランドガイドラインの最小構成(まず決める4項目)

・段階別に拡張すべき範囲と、その必要になるタイミング

・決める項目ごとの粒度と記入例

・ガイドラインが守られない本当の原因

・デザインシステムとの違いと使い分け

・作ったガイドラインが機能しているかを判定する方法

結論:まず決めるのは4項目だけでよい

最初から網羅的なガイドラインを作ろうとすると、完成しないか、完成しても使われません。制作物のブレは、実際には限られた箇所から発生します。まず次の4つを決めれば、大半のブレは止まります。

項目 決める内容 記入例
ロゴ 正式データの種類、最小サイズ、周囲の余白、背景色ごとの使い分け 余白=ロゴの高さの1/2以上/最小幅=印刷20mm・Web120px
主要色・補助色のカラーコード(CMYK/RGB/HEX)と使用比率 メイン=#1B3A5C(70%)/アクセント=#C9A227(10%以内)
書体 和文・欧文それぞれの指定と、使用できない場合の代替 見出し=◯◯ Bold/本文=◯◯ Regular/代替=游ゴシック
禁止例 やってはいけない使い方を画像で示す ロゴの変形・色変更・影の追加・背景に重ねる

4項目の中で最も効果が大きいのが禁止例です。「こう使ってください」という指示より、「これはしないでください」という画像のほうが、確実に伝わります。ロゴの縦横比を変える、色を勝手に変える、影をつける——実際に起きた事故をそのまま掲載してください。

最小構成は、ロゴ・色・書体・禁止例の4つ。A4で4〜6ページに収まる。

この分量なら、外部の制作会社にそのまま渡せて、実際に読まれる。

ガイドラインがないと、どこがブレるか

ブレは全体に均等に起きるのではなく、特定の箇所に集中します。自社の状況を確認する際のチェック項目としても使えます。

ブレる箇所 起きやすい状況 影響
ロゴの余白・比率 パワーポイント資料に貼り付ける際に変形する 資料が増えるほど、崩れたロゴが社外に流通する
印刷物とWebで色指定が別々に決まる 同じブランドに見えなくなる
書体 担当者のPCにフォントがなく、別の書体で作られる 資料ごとに印象が変わる
写真のトーン 撮影・素材選定の基準がない サイトと会社案内で世界観が一致しない
社名・サービス名の表記 全角半角、英字の大文字小文字がばらつく 検索・引用時に統一されない
文章のトーン SNSだけくだけた表現になる 問い合わせ時の期待値と実際の対応がずれる

5つ目の表記ゆれは見落とされがちですが、実務への影響が大きい項目です。社名の表記が複数あると、資料・請求書・Webで統一されず、検索でも分散します。ガイドラインの冒頭に、正式表記を1行で書いてください。

段階別に拡張する範囲

最小構成のあとは、必要になったタイミングで足していきます。最初から全部作る必要はありません。

段階 追加する内容 必要になるタイミング 作成の手間
Lv1(最小) ロゴ/色/書体/禁止例 制作物を外部に依頼し始めたとき
Lv2(運用) 写真のトーン、図版・アイコンの方針、名刺・封筒などの定型物 制作物の種類が5つを超えたとき
Lv3(発信) 文章のトーン、SNSの投稿ルール、担当者が使えるテンプレート一式 複数人が発信するようになったとき
Lv4(組織) Web用のコンポーネント定義、共同ブランドの扱い、承認フロー 拠点・ブランドが複数になったとき

多くの中小企業はLv2までで十分に運用できます。Lv4はWeb実装の領域と重なるため、この段階ではデザインシステムとして別に管理するほうが実務的です。

守られない原因は、内容ではなく配布

ガイドラインが守られない理由を「周知不足」で片付けると、同じことが繰り返されます。実際の原因は、次のいずれかであることがほとんどです。

原因 現場で起きていること 対策
ファイルの置き場所が分からない 都度メールで探す。最新版か分からない 共有フォルダの固定URLを決め、常に同じ場所に置く
ロゴデータが揃っていない PDFからロゴを切り抜いて使う 背景別・形式別(AI/SVG/PNG)を1フォルダにまとめる
フォントが端末に入っていない 似た書体で代替される 代替書体を指定する。全社配布できるライセンスを検討する
ルールが読んでも分からない 抽象的な表現(誠実さを表現する等)で判断できない 数値と画像で示す。文章での説明は補足に留める
テンプレートがない 毎回ゼロから作られる 資料・チラシ・SNS用のテンプレートを配布する

この中で最も効果が高いのはテンプレートの配布です。ルールを読ませて守らせるより、守られた状態のファイルを渡すほうが確実です。プレゼン資料、SNS投稿、簡易チラシの3種類を用意しておけば、社内で作られる制作物の多くをカバーできます。

ガイドラインは「読ませる文書」ではなく「使える状態のファイル一式」として配る。

本体(PDF)+ロゴデータ+フォント指定+テンプレート、これで1セット。

デザインシステムとの違い

両者は混同されやすいものの、対象範囲も更新頻度も異なります。

ブランドガイドライン デザインシステム
対象 紙・Web・SNS・空間など全媒体 主にWeb/アプリの画面
決める粒度 ロゴ、色、書体、トーン ボタン、フォーム、余白の単位、コンポーネント
主な読者 制作会社、代理店、社内の非デザイナー デザイナー、エンジニア
更新頻度 低い(数年単位) 高い(実装に合わせて随時)
形式 PDF+データ一式 Figmaライブラリ、コードのコンポーネント

順序としては、ブランドガイドラインが先です。色や書体の判断がない状態でデザインシステムを作ると、実装の都合で決まった値が、そのままブランドの基準になってしまいます。

機能しているかを判定する3つの問い

完成したガイドラインが実際に役立っているかは、次の問いで確認できます。

  1. 初めて依頼する制作会社に、これだけ渡して制作を進められるか:追加の口頭説明が必要なら、必要な情報が抜けています
  2. 社名を伏せたとき、他社のガイドラインと区別がつくか:一般的な内容だけなら、ブランドの定義になっていません
  3. デザイナーでない社員が、資料を作るときに参照できるか:専門用語だけで書かれていると、社内では使われません

2つ目は、ブランドコンセプトの設計と同じ判定方法です。「誠実」「信頼」「革新」といった言葉だけが並んでいる場合、それは競合の名前に差し替えても成立します。判断の材料になっていません。

作成の進め方

外部に依頼する場合も、社内で作る場合も、順序は同じです。

  1. 現状の制作物を集める:名刺、封筒、チラシ、サイト、SNS、営業資料を並べる。ブレている箇所が可視化される
  2. 社内で「変えないもの」を決める:ロゴ、社名表記、主要色。ここを先に固定する
  3. 最小構成の4項目を文書化する:数値と画像で書く
  4. 禁止例を、実際の事故から作る:架空の例より、社内で起きた事例のほうが伝わる
  5. テンプレートとデータ一式を揃える:ここまでで1セット
  6. 配布と運用のルールを決める:置き場所、更新者、外部への渡し方

2つ目の「変えないものを先に決める」は、社内の合意形成を最短にする手順です。何を変えるかの議論は発散しますが、何を守るかの議論は収束します。既存のブランドを刷新する場合の進め方はリブランディングの進め方を参照してください。

よくある失敗

網羅性を目指してページ数が増える

50ページのガイドラインは、現場で開かれません。まず4項目・数ページで作り、運用しながら追加してください。使われない完璧な文書より、使われる不完全な文書のほうが効果があります。

抽象的な表現だけで書く

「上品で信頼感のある色使い」では判断できません。カラーコード、使用比率、使ってよい面積まで数値で書いてください。

ロゴデータを整備しないまま配布する

ルールだけあってデータがないと、PDFからの切り抜きや、資料からのコピーが発生します。背景別・形式別のデータを、ガイドラインと同じ場所に置いてください。

フォントのライセンスを確認していない

指定した書体を制作会社や社内で使用できるか、ライセンスの範囲を確認してください。使えない場合の代替書体を明記しておくと、勝手な代替が起きません。

更新の担当者を決めていない

サービス追加やサイト改修のたびに実態とずれていきます。年1回の見直し時期と担当者を、ガイドラインの中に明記してください。

よくある質問

ブランドガイドラインは何ページくらいが適切ですか

最小構成であればA4で4〜6ページ程度に収まります。ページ数は品質と関係ありません。判断すべきは、初見の制作会社がそれだけで制作を進められるかどうかです。

制作会社に作ってもらうべきですか、社内で作るべきですか

ロゴや色の規定は、制作したデザイナーが最も正確に定義できます。一方、社名表記や運用ルールは社内でしか決められません。実務上は、デザイン規定を外部、運用規定を社内で分担する形が現実的です。依頼先の選び方はデザイン制作会社の選び方を参照してください。

費用はどれくらいかかりますか

既存ロゴがあり、最小構成の規定のみであれば比較的小規模な費用で作成できます。写真トーン、テンプレート一式、複数媒体の適用例まで含めると規模は大きくなります。まずLv1の範囲で見積りを取り、必要に応じて拡張するのが無駄がありません。ロゴ制作から行う場合はロゴデザインの費用も参照してください。

小さい会社にもガイドラインは必要ですか

社内で制作物を作る人が1人だけなら、優先度は下がります。必要になるのは、外部に制作を依頼し始めたとき、または制作物を作る人が複数になったときです。判断の起点は、規模ではなく関わる人数です。

ガイドラインを作れば、デザインの質は上がりますか

上がるのは質ではなく一貫性です。一貫性は、制作物が増えるほど効いてきます。個別の制作物の質は、ガイドラインではなく、目的の設定と制作の進め方で決まります。

まとめ

ブランドガイドラインは、網羅性より運用性で価値が決まります。まず決めるべきはロゴ・色・書体・禁止例の4項目で、A4数ページに収まります。この分量であれば、初めて依頼する制作会社にそのまま渡せます。

守られない原因の多くは、周知不足ではなく配布のされ方です。ルールを読ませるのではなく、守られた状態のテンプレートとデータ一式を配ってください。プレゼン資料・SNS・簡易チラシの3種類があれば、社内で作られる制作物の多くをカバーできます。

そして、完成後は3つの問いで点検してください。初見の制作会社が制作を進められるか、社名を伏せても他社と区別がつくか、デザイナーでない社員が参照できるか。この3つを満たしていれば、ガイドラインは実務で機能します。

当社ではロゴ・ブランドガイドラインの策定から、Webサイト・販促物の制作までを一貫して支援しています。制作物のブレが気になっている場合や、ガイドラインの整備を検討されている場合は、資料をダウンロードのうえご活用ください。

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