生成AIで作れる範囲が広がったことで、デザインを内製に切り替えられないかという検討が増えています。結論としては、内製で足りる領域と、そうでない領域があります。
判断を誤りやすいのは、外注していたのが作業だけではないという点です。何を作るべきかの判断、規定との整合、権利の確認、そして結果に対する責任も含まれています。内製化すると、これらが社内に移ります。
この記事では、内製で足りる場面、外注が必要な場面、切り替えたときに移る責任、そして判断の順序を整理します。
この記事でわかること
・内製化で移るのは、工数ではなく判断と責任
・内製で足りるのは、判断基準が既にある場合
・外注が必要なのは、基準を作る段階
・使い分けという選択肢がある
・社内で必要になる体制
・評価は制作費ではなく成果で行う
内製化で移るのは判断と責任
外注していた内容を分解すると、作業以外の部分が見えてきます。
| 外注に含まれていたもの | 内製化した場合 | AIで代替できるか |
|---|---|---|
| 手を動かす作業 | 社内で行う | 一部できる |
| 何を作るかの判断 | 社内で行う | できない |
| 規定との整合の確認 | 社内で行う | できない |
| 権利と表現の確認 | 社内で行う | できない |
| 結果に対する責任 | 社内が負う | 該当しない |
| 専門的な提案 | 得られなくなる | 限定的 |
作業だけを見て内製化すると、判断と確認の負担が想定外に大きくなります。特に権利と表現の確認は、専門的な知識が必要な領域です。
外注に含まれていたのは作業だけではない。
判断、確認、責任が社内に移る。
内製で足りる場面
次の条件がそろっている場合、内製で対応できる可能性があります。
- デザインの規定が既に文書化されている
- その規定に沿って作ればよい定型的な制作物である
- 確認できる担当者が社内にいる
- 権利や表現の確認体制がある
- 失敗しても影響が限定的である
典型的なのは、規定が確立された後の日常的な制作物です。SNSの投稿画像、社内資料、既存の型に沿ったバナーなどが該当します。
規定の整備はブランドガイドラインの作り方|どこまで決めれば運用が回るかを参照してください。
規定が確立された後の、定型的な制作物では内製できる。
確認できる担当者がいることが前提。
外注が必要な場面
次の場合は、内製化しても成果につながりません。
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 規定そのものを作る段階 | 何を基準にするかの判断が必要 |
| ブランドの根幹に関わるもの | 長期間使い、変更が困難 |
| 独自性が購入理由になる | 一般的な形に寄ると差がなくなる |
| 法規制が関わる表現 | 確認に専門知識が必要 |
| 社内に確認できる人がいない | 誤りに気づけない |
特に規定を作る段階は、外注の価値が最も高い領域です。ここで作られた基準が、その後の内製の土台になります。順序としては、基準作りを依頼し、日常の制作を内製するという形が現実的です。
ロゴのように長期使用するものの判断はAIでロゴは作れるのか|生成でできる範囲と、依頼しないと埋まらない部分、広告文の扱いは生成AIで広告文を作成する方法|精度を上げる指示の出し方と、人が確認すべき箇所を参照してください。
規定を作る段階は、外注の価値が最も高い。
基準ができてから、日常の制作を内製に移す。
使い分けという選択肢
すべてを内製か外注かで決める必要はありません。制作物の性質で分けてください。
| 制作物 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| ロゴ、ブランドの基幹要素 | 外注 | 長期使用、権利の確認が必要 |
| Webサイトの主要ページ | 外注 | 成果に直結し、専門性が要る |
| 定型のバナー、投稿画像 | 内製 | 規定に沿えばよい |
| 社内資料 | 内製 | 外部への影響が小さい |
| 法規制が関わる広告 | 外注または確認を依頼 | 専門知識が必要 |
影響の範囲と、使用期間の長さが判断の軸になります。長く使い、外部への影響が大きいものほど、外注の価値が高くなります。
影響の範囲と使用期間の長さで分ける。
すべてを内製か外注かで決める必要はない。
社内で必要になる体制
内製に切り替える場合、次の体制が必要になります。
- 判断の基準を文書として持つ
- 作った人以外が確認する工程を置く
- 権利と表現を確認する担当を決める
- 使用してよいサービスを限定する
- 機密情報の扱いを決める
- 問題が起きた場合の対応を決める
作った人が自分で確認する体制は、機能しません。誤りに気づけないためです。少なくとも1名、別の目を通す工程を残してください。
権利と表現の確認は生成AIで広告バナーは作れるのか|使える工程と、人が引き受けるべき部分を参照してください。
作った人が自分で確認する体制は機能しない。
別の目を通す工程を必ず残す。
切り替えた後に起きやすいこと
内製化の後、次の問題が出ることがあります。
| 起きること | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 一貫性が崩れる | 規定が守られない | 確認の工程を置く |
| 制作物が増えすぎる | 作るのが簡単になる | 目的のないものを作らない |
| 質のばらつき | 担当者ごとの判断 | 基準を明文化する |
| 担当者に負荷が集中する | 本来業務との兼務 | 工数を見積もる |
| 外部視点が失われる | 社内の常識で判断する | 定期的に外部の確認を入れる |
作るのが簡単になると、目的のない制作物が増えます。数が増えても成果は増えません。作る前に目的を確認する工程を残してください。
作るのが簡単になると、目的のない制作物が増える。
外部視点が失われることにも注意が必要。
評価は制作費ではなく成果で行う
内製化の判断を費用だけで行うと、見落としが生じます。
| 見る項目 | 内製化で | 注意 |
|---|---|---|
| 制作費 | 下がる | 人件費は残る |
| 担当者の工数 | 増える | 本来業務への影響 |
| 確認の工数 | 増える | 見落とされやすい |
| 公開後の成果 | 変わる可能性 | 最も重要 |
| 問題が起きた際の対応 | 自社が負う | 費用と信用の両面 |
制作費が下がっても、成果が下がれば意味がありません。切り替えた後、問い合わせや購入がどう変化したかを確認してください。
定額での外注という選択肢もあります。判断はデザイン業務を定額で外注するメリットとは?損益分岐点と契約前の確認項目を参照してください。
制作費が下がっても、成果が下がれば意味がない。
担当者の工数と確認の工数も含めて判断する。
よくある失敗
作業だけを見て内製化を決める
判断、確認、責任も社内に移ります。負担が想定外に大きくなります。
規定がない状態で内製化する
何を基準にするか決まっていないと、一貫性が保てません。基準作りが先です。
作った人が自分で確認する
誤りに気づけません。別の目を通す工程を残してください。
すべてを内製か外注かで決める
制作物の性質で分けてください。影響の範囲と使用期間が判断の軸です。
制作費だけで評価する
担当者の工数と、公開後の成果を含めて判断してください。
よくある質問
どこから内製化を始めるべきですか
失敗しても影響が限定的で、規定に沿えばよい定型的な制作物からです。社内資料やSNSの投稿画像が該当します。いきなりWebサイトの主要ページや広告から始めると、確認体制が追いつきません。
デザイナーを採用すべきですか
制作量と、判断の頻度によります。定型的な制作が継続的に発生するなら採用の価値がありますが、月に数件であれば外注のほうが総額は下がります。採用すると固定費になる点も考慮してください。
外注先には何を依頼すべきですか
基準を作る仕事と、影響の大きい制作物です。日常的な制作を内製に移した後も、規定の更新や年に数回の重要な制作物では外部の視点が有効です。
品質はどう担保すればよいですか
基準を明文化し、作った人以外が確認する工程を置いてください。加えて、定期的に外部の目で点検する機会を作ると、社内の常識に偏るのを防げます。
生成AIで作ったことを開示すべきですか
状況によります。制作物の性質、業界の慣行、取引先との取り決めによって判断が変わります。少なくとも社内では、どの制作物にどう使ったかを記録しておくことを推奨します。
まとめ
生成AIで作れる範囲が広がったことで内製化の検討が増えていますが、判断を誤りやすいのは外注していたのが作業だけではないという点です。何を作るべきかの判断、規定との整合の確認、権利と表現の確認、そして結果に対する責任も含まれています。内製化すると、これらがすべて社内に移ります。
内製で足りるのは、デザインの規定が既に文書化されていて、それに沿って作ればよい定型的な制作物です。SNSの投稿画像や社内資料が該当します。逆に外注の価値が最も高いのは、規定そのものを作る段階です。ここで作られた基準が、その後の内製の土台になります。順序としては、基準作りを依頼し、日常の制作を内製に移す形が現実的です。
切り替える場合、作った人が自分で確認する体制は機能しません。誤りに気づけないためです。少なくとも1名、別の目を通す工程を残してください。また作るのが簡単になると目的のない制作物が増えますが、数が増えても成果は増えません。判断は制作費だけでなく、担当者の工数と公開後の成果を含めて行ってください。
当社ではデザイン制作において、基準づくりから内製化の支援までご相談いただけます。体制の整理はお問い合わせよりご連絡ください。