生成AI

KNOWLEDGE

AIによるWebサイト自動生成は実務で使えるのか|短縮できる工程と、できない工程

  • #生成AI

SHARE

AIに指示を出すと数分でWebサイトの形になる。この体験があるため、「制作を依頼する必要はもうないのでは」という問いが出てきます。答えは業種や規模では決まりません。自動生成で短くなるのは制作工程の一部であり、その一部が自社にとってのボトルネックかどうかで決まります。

実際に短くなるのは、デザインの初稿と実装です。一方で、誰に何を伝えるかを決める工程、原稿を書く工程、公開後に直し続ける工程は短くなりません。多くの企業サイトが成果を出せない原因は実装の遅さではなくこの3つにあるため、自動生成を入れても成果が変わらないという結果になりやすいのが実態です。

この記事では、工程を7つに分けて短縮できる範囲を確定させ、検索評価と著作権の扱い、ツールを離れるときに失うもの、そして自社で作るか依頼するかの判断基準を整理します。

この記事でわかること

・制作工程を7つに分けた、AIで短縮できる範囲とできない範囲

・AI生成のサイトが検索で不利になるのかどうか(Googleの公式方針)

・生成した画像やロゴを自社の資産として扱えるかの注意点

・ツールを離れるときに持ち出せるものと、失うもの

・自動生成が向いているケースと、向いていないケース

・自社で作る場合に必ず自分で決めなければならない7項目

短縮されるのは制作工程の一部にすぎない

Webサイトの制作を工程に分けると、次の7つになります。どこが短くなるかを見れば、自社にとって効果があるかが判断できます。

工程 内容 AIによる短縮 理由
1. 目的とKPIの決定 何のためのサイトか、何をもって成功とするか しない 事業側の判断
2. 情報設計 何を、どの順番で、どのページに置くか 部分的 一般的な構成は出るが、自社の強みの順序は出ない
3. 原稿 実際に読ませる文章 部分的 叩き台は出るが、事実と一次情報は自社しか持たない
4. デザイン 見た目の初稿 大きく短縮 最も効果が出る工程
5. 実装 実際に動くページにする 大きく短縮 ツール内で完結する
6. 計測設定 問い合わせや電話を成果として記録する しない 自社の定義に依存する
7. 公開後の改善 見て、直す しない 判断の工程

4と5は確かに劇的に短くなります。従来は数週間かかった初稿が、条件次第で当日中に形になります。しかし、問い合わせが来ないサイトの原因が4と5にあることはほとんどありません。原因の大半は1、2、3、6のいずれかです。

何をどの順番で置くかを決める工程の考え方は情報設計(IA)とは?わかりやすいサイト構成の作り方で解説しています。ここが決まっていない状態でツールに投げると、見た目は整っているのに何を伝えたいのか分からないサイトができます。

AIで短くなるのはデザインの初稿と実装。

成果を決めるのは、目的の設定、情報設計、原稿、計測。この4つは短くならない。

AI生成のサイトは検索で不利になるのか

生成AIで作ったページが検索評価で不利になる、という懸念があります。Googleのスパムポリシーを確認すると、禁止されているのは生成の手段ではなく、価値を付加しない大量生成という行為です。

同ポリシーでは「大量生成されたコンテンツの不正使用」として、ユーザーを助けることではなく検索順位の操作を主目的として大量のページを生成することが挙げられており、その例に生成AIツールによる、ユーザーにとっての価値を付加しない大量のページの生成が含まれています。逆に言えば、作成方法そのものを理由に評価が下がるという記述はありません(Google検索セントラル「スパムに関するポリシー」)。

したがって、実務上の注意点は次の2つに絞られます。

  • ページを増やすためにAIを使わない:地域名や業種名だけ差し替えたページの量産は、手段を問わず対象になる
  • 自社しか書けない情報を必ず入れる:料金の条件、対応範囲、実際の事例、担当者の見解

地域キーワードのページを増やす判断については地域キーワードのコンテンツ設計|量産せずに成果を出す方法で詳しく整理しています。生成AIの登場で作れる本数が増えた分、この判断の重要性はむしろ上がっています。

生成した画像やロゴを自社の資産として扱えるか

自動生成されたサイトには、AIが生成した画像やアイコン、場合によってはロゴが含まれます。これらを自社の識別標として使う場合、他社が似たものを使ったときに止められるかどうかが問題になります。

文化庁の文化審議会著作権分科会が令和6年3月に取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」では、AI生成物の著作物性は一律には判断されず、人がどのように関与したか、指示の内容などを踏まえて個別に判断されるという整理が示されています。つまり、生成しただけで自動的に自社の著作物になるとは限りません

実務上の対処は次のとおりです。

用途 自動生成の可否 理由
ページ内の装飾・背景 問題になりにくい 識別標としての機能を持たない
説明用の図版 使える 内容が正しいかの確認は必要
商品写真の代替 避ける 実物と異なる印象を与えると表示上の問題になりうる
ロゴ・シンボル 慎重に判断する 他社の使用を止められない可能性がある
人物写真の代替 用途を限る 実在の従業員や利用者と誤認させない

ロゴについては、商標として登録する予定があるか、長期に使う識別標として位置づけるかで判断が変わります。長く使う前提なら、生成物をそのまま採用せず、方向性の検討に留めるほうが安全です。名刺、看板、車両、封筒と展開先が増えるほど、後からの差し替えコストは上がります。

なお、この領域は制度と運用の整理が進行中です。判断が必要な場面では、文化庁が公表している資料を直接確認してください。

ツールを離れるときに何が残るか

自動生成のツールは、始めるコストが低い代わりに、離れるコストが見えにくいという特徴があります。契約前に、次の5点を確認してください。ここを確認せずに始めると、成長したときに作り直しが発生します。

確認項目 何を聞くか 確認できなかった場合の影響
データの持ち出し HTMLやCSS、記事データを書き出せるか 移行時にすべて作り直しになる
独自ドメイン 自社ドメインを設定できるか サイトの評価を引き継げない
計測タグの設置 任意のタグを埋め込めるか 問い合わせの計測ができない
ページ単位の設定 タイトルや説明文を個別に指定できるか 検索結果での見え方を制御できない
更新の担当 社内の誰が、どの頻度で更新するか 公開後に止まる

1行目と2行目は特に重要です。独自ドメインが設定できない環境で運用すると、後から移行したときに、それまでに得た評価を引き継げません。始める前に確認すれば数分で済み、後から気づくと数か月分の損失になります。

5行目は技術ではなく体制の話です。更新の担当が決まっていないサイトは、作り方にかかわらず1年で古くなります。更新を前提にした設計は更新しやすい企業サイトの作り方|CMS選定と運用設計のポイントにまとめています。

向いているケースと、向いていないケース

状況 自動生成の適性 理由
立ち上げ直後で、まず存在を示したい 向く 情報量が少なく、更新も少ない段階
キャンペーン用の単発ページ 向く 公開期間が短く、移行を考えなくてよい
社内向けの説明ページ 向く 検索評価も問い合わせも関係しない
問い合わせの獲得が目的 条件付き 原稿と計測を自前で用意できるなら成立する
採用サイト 向かない 他社と差がつくのは掲載する情報の中身
商品数が多い、条件検索が必要 向かない データ構造の設計が必要になる
業界特有の表示規制がある 向かない 必要な表記の欠落に気づけない

4行目は判断が分かれます。自動生成でも問い合わせは取れますが、それは原稿と計測を自前で用意した場合です。ツールが用意した一般的な文章のまま公開すると、業種名を入れ替えても通用する内容になり、他社と区別されません。

5行目の採用サイトは、デザインの新しさより掲載する情報の中身で差がつきます。給与の幅、1日の流れ、配属先の人数、入社後の教育。求職者が知りたいのはこうした具体で、生成では埋まりません。

自社で作る場合に、自分で決めなければならない7項目

ツールを使う場合でも、次の7つはAIが決められません。着手前に埋めてください。ここが空欄のまま生成を始めると、出来上がってから作り直すことになります。

  1. このサイトで何が起きたら成功か:問い合わせ件数か、採用の応募か、来店か(    )
  2. 誰に読ませるか:既存客か、比較検討中の人か、求職者か(    )
  3. 他社ではなく自社を選ぶ理由:条件で言えることを3つ(    )
  4. 最初の画面で伝えること:事業内容、対応エリア、実績のどれを先に出すか(    )
  5. 問い合わせまでの経路:フォーム、電話、LINEのどれを主にするか(    )
  6. 成果の記録方法:何をもって1件と数えるか(    )
  7. 更新の担当と頻度:誰が、いつ(    )

3番目を「丁寧な対応」「高い技術力」といった言葉で埋めていたら、まだ決まっていません。条件で言えることに置き換えてください。対応エリア、最短の納期、対応できる規模、保証の範囲。これらは他社と比較可能で、生成AIには書けません。

6番目を飛ばすと、公開後に改善の判断ができなくなります。フォームの送信と電話番号のタップを成果として記録する設定は、サイトの作り方にかかわらず必要です。ツール側で任意のタグを埋め込めるかどうかは、契約前に確認してください。

AIに決めさせてはいけないのは、目的、読み手、選ばれる理由、成果の定義。

この4つが埋まっていれば、制作の手段は自動生成でも依頼でもかまわない。

よくある失敗

生成された文章をそのまま公開する

業種名を入れ替えれば他社でも通用する文章になります。検索評価の前に、読んだ人が他社との違いを判断できません。料金の条件と対応範囲だけでも自社の言葉に置き換えてください。

独自ドメインを設定しないまま運用を続ける

後から移行するときに、それまでの評価を引き継げません。公開前に確認すれば数分で済みます。

ページ数を増やすことを目的にする

生成の速度が上がったため、地域名や業種名だけを差し替えたページを量産しやすくなっています。手段にかかわらず、価値を付加しない大量生成はスパムポリシーの対象です。

計測を後回しにする

公開してから設定すると、それ以前のデータが残りません。公開日から記録が始まるように、フォーム送信と電話タップの計測を先に済ませてください。

見積の比較にツールの費用だけを入れる

月額費用は安く見えても、原稿の作成、写真の手配、公開後の更新にかかる社内工数が乗ります。制作会社への依頼と比べるときは、この工数を金額に直して並べてください。比較の観点はWeb制作の見積書の読み方|同じ金額が別の買い物になる理由にまとめています。

よくある質問

AIで作ったサイトは検索順位が下がりますか

作成方法そのものを理由に順位が下がるという公式な記述はありません。対象になるのは、価値を付加しない大量生成です。1つのサイトを丁寧に作る限り、生成AIを使ったこと自体は問題になりません。

制作会社に依頼する意味はまだありますか

実装を代行してもらう意味は以前より小さくなっています。残るのは、目的から情報設計を決める工程、原稿の設計、計測、公開後の改善です。依頼する場合も、この4つが提案に含まれているかで判断してください。

途中まで自動生成で作って、あとから依頼できますか

できます。ただしツールによってはデータを書き出せず、実質的に作り直しになります。移行の可能性があるなら、最初にデータの持ち出し可否を確認してください。

原稿もAIに書かせてよいですか

叩き台としては有効です。ただし料金、対応範囲、実績、資格といった事実は自社しか持っておらず、ここを生成に任せると誤った内容が公開されます。事実の部分を先に箇条書きで用意し、それを渡して書かせる順序にしてください。

既存サイトのリニューアルに使えますか

見た目を新しくする用途では使えます。ただしリニューアルで成果が変わる要因は、構成の見直しと原稿の書き換えにあります。デザインだけ入れ替えると、公開後に問い合わせが変わらないという結果になりやすい点は、依頼する場合と同じです。加えて、既存ページのURLが変わる場合は転送の設定が必要になるため、移行の可否を先に確認してください。

まとめ

AIによるWebサイトの自動生成で短くなるのは、デザインの初稿と実装です。目的とKPIの決定、情報設計、原稿、計測設定、公開後の改善は短くなりません。問い合わせが来ないサイトの原因は後者にあることが多いため、自動生成を導入しても成果が変わらないという結果になりやすくなります。

検索評価については、作成方法そのものを理由に不利になるという公式の記述はありません。対象になるのは、価値を付加しない大量生成です。生成の速度が上がった分、ページを増やす判断には以前より慎重さが必要になります。

始める前に確認すべきなのは、データの持ち出し可否、独自ドメインの設定、計測タグの設置の3点です。ここを確認すれば数分で済み、後から気づくと作り直しになります。そのうえで、目的、読み手、選ばれる理由、成果の定義の4つを自分で埋めてください。この4つが決まっていれば、制作の手段は自動生成でも依頼でもかまいません。決まっていなければ、どちらの手段でも成果は変わりません。

当社ではホームページ制作において、情報設計と計測を含めた設計からご相談を承っています。自社サイトで何を変えるべきかを整理したい場合は、資料をダウンロードのうえご活用ください。

SHARE