「Cookieが使えなくなるので対策が必要です」という提案を受けたことがある担当者は少なくないと思います。ただし前提が変わっています。Googleは、Chromeでサードパーティ Cookieを廃止する計画を取りやめました。
一方で、広告の管理画面に表示されるコンバージョン数が実際の問い合わせ数より少ない、媒体とGA4の数字が合わない、リターゲティングの配信対象が想定より小さいといった現象は続いています。廃止が撤回されても、計測の精度が落ちる要因そのものは無くなっていないためです。
この記事では、何が撤回され何が残っているのか、いま必要な対応と不要になった対応、そして中小企業が現実的に取れる打ち手を整理します。
この記事でわかること
・Googleがサードパーティ Cookieの扱いをどう変えたか(公式発表の内容)
・Privacy Sandboxの主要な機能が提供終了に向かっていること
・廃止が撤回されても計測値が減り続ける4つの理由
・いま実際に必要な対応と、不要になった対応の切り分け
・改正電気通信事業法の外部送信規律で求められること
・媒体とGA4で数字が合わない場合の考え方
Chromeでのサードパーティ Cookie廃止は行われない
Googleは2025年4月22日、Chromeにおけるサードパーティ Cookieについて、「現在のアプローチを維持し、サードパーティ Cookieに関する新しい単独のプロンプトは導入しない」と発表しました。利用者はChromeのプライバシーとセキュリティの設定から制御する形が続きます。
あわせて、代替技術として開発されていたPrivacy Sandboxについても方針が変わりました。公式のステータス情報では、Topics、Protected Audience、Attribution Reportingといった主要なAPIについて提供終了の意向が示されています。一方で、CHIPS、FedCM、Storage Access APIなど、用途の限定された技術は引き続き提供されています。
「Cookieが使えなくなるから今のうちに乗り換えるべき」という前提の提案は、根拠を失っている。
ただし計測の精度が落ちる要因は別にあり、そちらは継続している。
それでも計測値が減り続ける4つの理由
廃止の撤回はChromeの話です。広告の計測値が実態より少なくなる要因は、Cookieの廃止とは別のところにあります。
| 要因 | 何が起きるか | 影響を受けやすい指標 |
|---|---|---|
| Safariなどのトラッキング防止機能 | サイト側で発行したCookieの保持期間が短く制限される | 再訪問の判定、長期のアトリビューション |
| 利用者による設定・拡張機能 | 計測タグそのものが読み込まれない | セッション数、CV数の全般 |
| アプリ内ブラウザや複数端末の利用 | スマートフォンで見てPCで申し込む行動が別人として扱われる | 広告の貢献度、CPA |
| 同意管理ツールの導入 | 同意が得られない場合は計測しない設計になる | 同意率に比例して全指標が減る |
重要なのは、これらは不具合ではなく仕様どおりの動作だという点です。したがって「計測されない分をゼロにする」ことはできません。目指すべきは、減っている前提で判断できる状態を作ることです。
いま必要な対応と、不要になった対応
提案を受けたときに、どちらに分類されるかを判断してください。
| 対応 | 必要か | 理由 |
|---|---|---|
| コンバージョン計測をサイト側のデータで補強する | 必要 | 同意を得た情報をもとに、計測できていない分を補える |
| 申し込みフォームで取得した情報を計測に活用する | 必要 | 端末をまたいだ行動の判定に効く |
| 電話・来店・成約など事業側のデータを結ぶ | 必要 | ブラウザに依存しない指標を持てる |
| 媒体とGA4の差を説明できる状態にする | 必要 | 差そのものは無くならないため |
| 同意管理と外部送信の告知を整える | 必要 | 法令上の要請。計測の是非とは別軸 |
| Privacy Sandbox前提の設計に移行する | 不要 | 主要APIが提供終了に向かっている |
| Cookie廃止を理由にツールを乗り換える | 不要 | 前提が撤回されている |
| リターゲティングを全面的に停止する | 不要 | 配信規模は縮むが機能はしている |
優先順位は「事業側のデータを持つこと」
ブラウザの仕様は今後も変わります。仕様変更のたびに設定を追いかけるより、ブラウザに依存しない指標を持つほうが安定します。問い合わせ件数、商談数、来店数、成約数。これらは計測ツールの状態に左右されません。
広告の評価も、最終的にはこの数字と突き合わせて行います。事業側の数字を広告に反映する方法はオフラインコンバージョンとは?来店・成約データを広告に反映する方法にまとめています。
サイト側のデータで補強する具体的な手段
「必要」に分類した対応を、実装の負荷が低い順に並べます。上から順に検討し、費用対効果が見合わなくなった時点で止めてください。すべてをやる必要はありません。
| 手段 | 何をするか | 負荷 | 検討すべき規模 |
|---|---|---|---|
| 拡張コンバージョン | 申し込みフォームで取得した情報を、ハッシュ化して媒体へ送る | 低(設定と同意設計) | 月間CV数20件以上 |
| 媒体のサーバー間連携 | サイトのサーバーから媒体へ成果を直接送る | 中(開発が必要) | 月間CV数50件以上 |
| 事業側データの取り込み | 商談・来店・成約の結果を広告へ戻す | 中(運用ルールが要る) | 商談型・高単価の商材 |
| サーバーサイドでのタグ管理 | 計測タグを自社側のサーバー経由で動かす | 高(構築と維持費) | 月間CV数が数百件規模 |
1行目は、フォームで既に取得している情報を使うため追加の入力項目が不要で、着手しやすい手段です。ただし、取得した個人情報を計測目的で外部へ送ることになるため、プライバシーポリシーの記載と同意の取り方を先に整えてください。各媒体で名称や要件が異なり、更新も入るため、実装前に公式ヘルプで最新の仕様を確認することをおすすめします。
4行目は、中小企業の規模では費用対効果が見合わないことがほとんどです。提案を受けた場合は、それによって何件のCVが追加で計測できるようになるのかを具体的に確認してください。
改正電気通信事業法の外部送信規律
計測の技術とは別に、日本の事業者が確認しておくべき法令があります。2023年6月16日に施行された改正電気通信事業法の外部送信規律です。ウェブサイトから利用者の情報を外部へ送信する場合に、その内容を通知するか、利用者が容易に知り得る状態に置くことなどが求められます。
解析ツールや広告の計測タグを設置している場合は関係します。対象となる事業者の範囲や求められる対応の具体的な内容は、総務省の公表資料およびガイドラインで確認してください。判断に迷う場合は専門家への確認をおすすめします。
- 自社サイトに設置しているタグを棚卸しする(何を、どこへ送っているか)
- 送信先と目的をまとめたページを用意し、参照できる場所に置く
- 使っていないタグを削除する(残置タグは説明できないうえ、表示速度にも影響する)
3つ目は実務上の効果が大きい項目です。過去の施策で入れたまま放置されているタグは、多くのサイトに残っています。表示速度への影響はサイトの表示速度を改善する優先順位でも触れています。
媒体とGA4で数字が合わないのは異常ではない
広告の管理画面のCV数とGA4のCV数は一致しません。計測の考え方が違うためです。この差を「どちらかが間違っている」と扱うと、判断が止まります。
| 観点 | 広告媒体の計測 | GA4の計測 |
|---|---|---|
| 成果の割り当て | 広告のクリックに対して割り当てる | セッションの流入元に割り当てる |
| 計測の期間 | クリックから一定期間内の成果を含む | セッション単位で判定する |
| 表示のタイミング | クリックが発生した日に遡って記録する | 成果が発生した日に記録する |
| 対象 | その媒体の広告経由のみ | すべての流入経路 |
実務では、どちらの数字で意思決定するかを先に決めておくことが解決策になります。媒体間の予算配分は媒体側の数字、サイト全体の評価はGA4、最終的な成果は事業側の台帳。この3層で見れば、差があっても判断はできます。
計測されない分を推定したい場合は、問い合わせ台帳の件数とGA4のCV数の比率を月次で記録してください。比率が安定していれば、その係数で補正して判断できます。GA4側の設定確認はGA4のコンバージョンが計測されない時に確認すべき5つのポイントを参照してください。
リターゲティングは今後も使えるのか
使えます。ただし配信対象として認識できる人数は、以前より少なくなっています。リストが想定より小さい場合、配信量が確保できず効果が読みにくくなります。
この状況で重要なのは、リターゲティングの成果を過大評価しないことです。もともと申し込む予定だった人に広告を当てているだけであれば、CPAは良く見えても新規の獲得は増えていません。効果の確かめ方はリターゲティング広告の設定手順と、効果を正しく見極める方法で解説しています。
計測全体の設定
個別の計測は、全体の実装が動いていることが前提になります。設定の全体像は店舗ビジネスのためのGA4×GTM計測設定ガイドを参照してください。
よくある失敗
Cookie廃止を理由にした提案をそのまま受ける
廃止の計画は撤回されています。提案を受けた場合は、根拠となる公式発表の日付を確認してください。前提が古いまま作られた提案は、対応の内容も的外れになります。
計測できていない分を「無かったこと」にする
管理画面のCV数だけで判断すると、実際には成果が出ている施策を止めることがあります。問い合わせ台帳と突き合わせ、比率を把握してください。
同意管理ツールを入れて計測が減り、原因が分からなくなる
同意率に比例して計測値は下がります。導入した月を記録し、前後の数字を分けて評価してください。導入前後の比較をしないと、施策の悪化と区別できません。
タグを増やし続けて棚卸しをしない
使っていないタグは、外部送信の説明を難しくし、表示速度も落とします。半年に一度は設置しているタグを一覧化してください。
計測の精度向上に工数をかけすぎる
計測は判断のための手段です。月間のCV数が数十件の規模であれば、1割の誤差で結論は変わりません。精度より、判断の頻度と打ち手の速さのほうが成果に効きます。
よくある質問
結局、Cookieは今後も使えるのですか
Chromeについては、廃止の計画が撤回され、利用者がブラウザの設定で制御する形が維持されています。ただしSafariなど他のブラウザには従来から制限があり、状況はブラウザごとに異なります。
何から手をつければよいですか
問い合わせ台帳の件数とGA4のCV数を月次で並べるところからです。差の大きさが分かれば、対応が必要な水準かどうかを判断できます。差が1割程度であれば、計測の改修より他の施策のほうが効果があります。
サーバーサイドでの計測に移行すべきですか
計測できる範囲は広がりますが、構築と維持の工数が増えます。月間のCV数が数十件の規模では、費用対効果が見合わないことが多くなります。まずは事業側のデータとの突き合わせで足ります。
同意を取らずに計測を続けても問題ありませんか
外部送信規律では、送信する情報の内容を通知するか容易に知り得る状態に置くことなどが求められます。対象範囲と必要な対応は総務省の公表資料で確認し、判断に迷う場合は専門家に相談してください。
計測が不安定な状態で広告を続けても意味がありますか
あります。計測は配分の判断に使うもので、成果そのものではありません。問い合わせ件数が増えているなら広告は機能しています。計測を理由に出稿を止める判断は、順序が逆です。
まとめ
Chromeにおけるサードパーティ Cookieの廃止は行われません。Privacy Sandboxの主要な機能も提供終了に向かっています。「Cookieが使えなくなるから」を理由にした対応は、前提が変わっています。
一方で、ブラウザ側の制限、利用者の設定、複数端末での行動、同意管理の導入により、計測値が実態より少なくなる状態は続きます。これは仕様どおりの動作であり、ゼロにはできません。
取るべき対応は、計測の精度を追いかけることではなく、ブラウザに依存しない指標を持つことです。問い合わせ台帳、商談数、来店数、成約数。これらと管理画面の数字を並べて、差の比率を把握しておけば、計測環境が変わっても判断は続けられます。
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