デザインツールにAIの機能が組み込まれ、下書きの生成や要素の整理を自動で行えるようになっています。これによって短縮されるのは作業であり、何を作るかという判断は残ります。
実務での影響は案を出すまでの時間が短くなることです。これまで1案作るのにかかっていた時間で複数案を用意でき、比較して選べるようになります。一方で、その案が目的に合っているかを判断する工程は変わりません。
この記事では、短縮できる工程、精度が出にくい領域、発注側への影響、そして機密情報の扱いを整理します。機能は頻繁に更新されるため、具体的な内容は公式の情報を確認してください。
この記事でわかること
・短縮されるのは作業であり、判断ではない
・下書きと整理の工程で効果が出やすい
・ブランドの一貫性は人が担保する
・発注側にとっては提案数が増える
・機密情報の扱いを先に確認する
・評価は提出物の量ではなく成果で行う
短縮されるのは作業であり判断ではない
工程を分けると、どこが短縮されるかが明確になります。
| 工程 | AI機能の影響 | 残る作業 |
|---|---|---|
| 何を作るか決める | 小さい | 目的と対象の定義 |
| 構成を考える | 中程度 | 情報の優先順位の判断 |
| 下書きを作る | 大きい | 選択と修正 |
| 要素を整える | 大きい | 規定との照合 |
| 文言を考える | 中程度 | 事実確認と表現の判断 |
| 最終確認 | なし | 責任を伴う判断 |
上と下の工程は変わりません。中間の作業が速くなることで、上下の工程に時間を使えるようになるという構造です。
短縮されるのは中間の作業工程。
目的の定義と最終確認は変わらない。
下書きと整理の工程で効果が出やすい
特に効果が出るのは、手を動かす量が多く、判断の余地が小さい作業です。
- 複数案のたたき台を短時間で用意する
- 要素の間隔や配置を規則に沿って整える
- 同じ構成で内容だけ違う画面を量産する
- 既存の画面から要素を抽出して整理する
- 文言の候補を複数出す
逆に、独自性が求められる表現では精度が出にくくなります。学習の元になった一般的な形に寄るためです。差別化が目的の場面では、たたき台としての利用にとどまります。
手を動かす量が多く、判断の余地が小さい作業で効く。
独自性が求められる表現では、一般的な形に寄る。
ブランドの一貫性は人が担保する
生成された案は、自社の規定に沿っているとは限りません。
| 確認項目 | 自動で担保されるか | 対応 |
|---|---|---|
| 配色 | されない | 規定の色に置き換える |
| 書体 | されない | 指定の書体に統一する |
| 余白の基準 | 部分的 | 基準値と照合する |
| 文言の表記 | されない | 表記ルールと照合する |
| 禁止表現 | されない | 確認の工程を残す |
規定が文書化されていないと、この照合ができません。生成の活用を進めるほど、判断の基準を明文化しておく必要が高まります。
規定の作り方はブランドガイドラインの作り方|どこまで決めれば運用が回るかを参照してください。
生成された案は、自社の規定に沿っているとは限らない。
活用を進めるほど、判断基準の明文化が必要になる。
発注側にとっては提案数が増える
制作会社側の作業が速くなると、発注側には提案の数として現れます。
| 変化 | 利点 | 注意 |
|---|---|---|
| 初回提案の案数が増える | 比較して選べる | 判断の負担が増える |
| 修正の反映が速い | 検討の回数を増やせる | 方向が定まらないと迷走する |
| 下書きの段階が早く見られる | 早期に軌道修正できる | 完成度の低さで判断しない |
案が増えるほど、選ぶ基準が必要になります。好みで選ぶと、目的から外れます。何を達成したいかを先に言語化しておいてください。
判断の軸はCVRを改善するデザイン要素とは?押さえるべき7つのポイントが参考になります。
案が増えるほど、選ぶ基準が必要になる。
好みで選ぶと、目的から外れる。
機密情報の扱いを先に確認する
生成の機能を使う際、入力した内容がどう扱われるかを確認してください。
- 使用するサービスの、データの取り扱いに関する規定を確認する
- 学習に使われるかどうか、設定で変更できるかを確認する
- 未公開の情報を入力してよいかを社内で決める
- 顧客から預かった情報の扱いを、契約と照らして確認する
- 使用してよいサービスを社内で限定する
制作会社に依頼する場合、先方がどのように使っているかも確認の対象です。未公開の商品情報や個人情報を扱う案件では、事前の取り決めが必要になります。
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入力した内容がどう扱われるかを先に確認する。
制作会社の使い方も、確認の対象になる。
権利の扱いを確認する
生成された成果物について、権利と利用条件を確認してください。
| 確認項目 | 確認しない場合のリスク |
|---|---|
| 商用利用の可否 | 使用できないことがある |
| 生成物の権利の帰属 | 独占的に使えないことがある |
| 既存の作品との類似 | 権利侵害を指摘されることがある |
| 利用規約の変更 | 後から条件が変わることがある |
ロゴのように長期間使用し、独占的な使用が前提となるものでは特に注意が必要です。判断はAIでロゴは作れるのか|生成でできる範囲と、依頼しないと埋まらない部分を参照してください。
商用利用の可否と権利の帰属を確認する。
長期間使用するものでは、特に慎重に判断する。
評価は提出物の量ではなく成果で行う
案が多いことは、それ自体が価値ではありません。
| 見る指標 | 分かること | 注意 |
|---|---|---|
| 提案の案数 | 作業量 | 成果とは無関係 |
| 修正の回数 | 方向の定まり具合 | 少ないほうがよいとは限らない |
| 公開後の問い合わせ数 | 実際の成果 | 最も重要 |
| 制作にかかった期間 | 効率 | 品質と併せて見る |
案が多くても、目的に合うものがなければ意味がありません。作業が速くなった分を、判断の質に使えているかを確認してください。
案が多いこと自体は価値ではない。
作業が速くなった分を、判断の質に使えているか。
よくある失敗
目的を定義せずに生成させる
何を作るかの判断は残ります。目的が曖昧なまま案を増やしても選べません。
規定と照合せずに採用する
配色や書体が自社の規定と合いません。照合の工程を残してください。
機密情報の扱いを確認せずに使う
未公開の情報や顧客から預かった情報は、事前の取り決めが必要です。
権利の確認をせずに長期使用する
ロゴのように独占的な使用が前提のものでは、特に注意が必要です。
案数の多さで評価する
目的に合うものがなければ意味がありません。成果で判断してください。
よくある質問
デザイナーへの依頼は不要になりますか
作業の一部は短縮されますが、目的の定義、規定との整合、最終的な判断は残ります。むしろ案が増えることで、判断する場面は増えます。詳しくはAIがあればデザインの外注は不要になるのか|依頼する側が判断すべきことを参照してください。
制作費は安くなりますか
作業時間が減る分の影響はありますが、判断や調整の工程は残ります。また案が増えることで確認の工数が増える面もあります。単純に安くなるとは限りません。
生成した内容をそのまま使えますか
規定との照合、事実確認、権利の確認が必要です。特に文言では、実際の商品やサービスの内容と一致しているかを確認してください。
社内で使う場合のルールはどう決めるべきですか
使用してよいサービス、入力してよい情報の範囲、確認する項目、承認する担当者を決めてください。特に顧客から預かった情報の扱いは、契約と照らして判断が必要です。
機能はどのくらいの頻度で変わりますか
更新の頻度は高く、できることも変わります。社内の手順書に細かい操作を書くと、すぐに古くなります。判断の基準を書き、操作は公式の情報を参照する形にしてください。
まとめ
デザインツールのAI機能によって短縮されるのは作業であり、何を作るかという判断は残ります。工程で見ると、目的と対象を定義する上流と、責任を伴う最終確認は変わりません。中間の下書きや整理の作業が速くなることで、上下の工程に時間を使えるようになるという構造です。
特に効果が出るのは、手を動かす量が多く判断の余地が小さい作業です。複数案のたたき台を短時間で用意する、規則に沿って要素を整えるといった場面では実用的に働きます。逆に独自性が求められる表現では、学習の元になった一般的な形に寄るため、たたき台としての利用にとどまります。
発注する立場では、制作会社側の作業が速くなることが提案数の増加として現れます。ただし案が増えるほど、選ぶ基準が必要になります。好みで選ぶと目的から外れるため、何を達成したいかを先に言語化しておいてください。また入力した内容がどう扱われるか、生成物の権利がどうなるかは、使用前に確認すべき事項です。制作会社に依頼する場合は、先方の使い方も確認の対象になります。