自社名や商品名で検索した人に、リスティング広告を出すべきか。広告代理店に聞けば「出すべきです」と返ってきます。理由は決まって3つで、他社に取られる、検索結果の面積が広がる、リンク先を選べる、です。どれも間違いではありません。ただし、どれも自社に当てはまるかどうかは、確認しなければ分かりません。
自社名で検索した人は、広告が無くても自然検索の1位から入ってきます。広告を出せば、その一部が広告経由に付け替わるだけです。問題は、付け替わるだけの分と、広告が無ければ失っていた分の比率です。この比率は会社によって大きく違い、eBayが行った実験では止めた広告のクリックのほぼ全て(99.5%)が自然検索に戻った一方、自動車情報サイトのEdmundsの実験では28%しか戻りませんでした。
この記事では、自社の「戻る分」を測る手順と、出すと決めた場合に一般キーワードの成果と混ぜない設定、他社が自社名で広告を出しているときに媒体のポリシーでできること、できないことを整理します。広告運用の全体の順序は広告運用は何から決めるか|媒体選定から評価までの順序と、飛ばすと起きることで扱っています。
この記事でわかること
・指名検索の広告は「出すべきか」ではなく「止めたときに自然検索で戻る分がいくらか」で決める
・戻る分は会社ごとに違う。eBayの実験では99.5%が戻り、Edmundsの実験では28%しか戻らなかった
・他社の広告が出ているかは、自分で検索せず「広告プレビューと診断ツール」で確認する
・戻る分は2週間の停止で測れる。広告と自然検索の合計クリックを、出した期間と比べる
・出すなら別キャンペーンにし、一般キーワードのキャンペーンから指名を除外する
・指名キャンペーンの指標はCPAではなく表示シェア。指名のCVを全体の成績に混ぜない
・Google広告もYahoo!広告も、他社が自社名をキーワードに使うことは止められない。止められるのは広告文の中の商標
・自社が競合名に出す側になるのは、キーワードでは可能でも広告文では使えず、地域の商売では得になりにくい

指名検索の広告は、出すか出さないかを一般論で決めない
最初に、この記事の結論を示します。自社名の検索に広告を出すかどうかは、「広告を止めたときに、そのクリックがどれだけ自然検索に戻るか」を測ってから決めます。戻る分が大きければ、広告費は自然検索で無料だったクリックに払っていることになります。戻る分が小さければ、広告は失っていた流入を取り戻していることになり、出す価値があります。
この比率を決めるのは、主に3つの条件です。他社が自社名で広告を出しているか、自然検索の1位を自社が取れているか、検索結果の上部に自社以外の何が表示されているかです。3つとも会社ごとに違うため、「指名検索には出すべき」という一般論は、自社に当てはまるかどうかを確認して初めて使えます。
確認せずに出した場合に起きるのは、広告費の無駄よりも判断の歪みです。指名検索のクリック単価は低く、コンバージョン率は高いため、指名のコンバージョンを全体に混ぜると、広告運用全体の成績が実際より良く見えます。この歪みは、予算配分と代理店の評価の両方を誤らせます。
「出すべき3つの理由」は、当てはまり方が会社ごとに違う
指名検索に広告を出す理由として挙げられるのは、次の3つです。それぞれ、成り立つ条件を添えると見え方が変わります。
| よく挙げられる理由 | 成り立つ条件 | 成り立たない場合 |
|---|---|---|
| 他社の広告に取られる | 実際に他社が自社名で広告を出している | 誰も出していなければ、取られる相手がいない |
| 検索結果の占有面積が広がる | 自然検索で1位でない、または1位の上にポータルや口コミサイトがある | 自然検索1位でサイトリンクも出ていれば、面積はすでに広い |
| リンク先や文言を自由に変えられる | 期間限定の告知や、特定ページへ直接送りたい事情がある | 送りたい先がトップページなら、自然検索と同じ |
3つの理由のうち、最も重いのは1つ目です。他社が自社名で広告を出していれば、検索結果の最上部に他社が表示され、自社の自然検索1位はその下になります。この状態は自然検索の順位では対抗できず、広告で上を取り返すしかありません。
一方で、他社が出していない場合、2つ目と3つ目の理由は「あれば良い」程度のものです。自然検索で1位を取れており、サイトリンクが表示されているなら、広告を足しても検索した人の行動はほとんど変わりません。この状態で広告を出すと、自然検索で無料だったクリックに、クリックごとの費用を払うことになります。
止めても戻る分は、会社によって0.5%から7割まで違う
「指名検索の広告を止めたら、流入はどれだけ減るか」を実際に測った例が公開されています。結果は会社によって大きく違い、一般論が使えないことを示しています。
| 実験 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| eBay(2015年、Econometrica誌) | 自社ブランド名を含む検索への広告を停止し、流入の変化を測定 | 自然検索がほぼ全て(99.5%)を代替。広告を止めてもサイトへの流入は実質的に変わらなかった |
| Edmunds(2017年) | 米国210の地域市場のうち105で広告を停止(2015年8〜11月) | 有料検索の流入の半分以上を失い、自然検索で戻ったのは28%。流入の多い地域では72%を失った |
| Google(2011年) | 400件超の広告停止実験から、広告クリックのうち増分の割合を推計 | 業種をまたいだ平均で89%が増分。ただし指名と一般の区別は無い |
eBayの実験は、広告を止めても流入が変わらなかった例です。eBayほど知られた名前であれば、検索した人は広告が無くても自然検索から同じサイトに入ります。この結果だけを見ると「指名検索の広告は無駄」という結論になります。
Edmundsの実験は逆の結果です。同じように大手のサイトでありながら、広告を止めると流入の半分以上を失いました。両者の差の理由は論文でも解明されておらず、競合の出稿状況や検索結果の構成の違いが影響していると考えられています。
Googleの2011年の研究は、広告クリックの89%が増分だとしていますが、これは一般キーワードを含む全体の数字で、指名検索だけを取り出したものではありません。指名検索の増分は、この数字よりも低くなるのが通常です。
3つの結果から言えるのは、自社の「戻る分」が0.5%なのか7割なのかは、測らなければ分からないということです。他社の事例を当てはめても、自社の答えにはなりません。
自社の「戻る分」を2週間で測る手順
戻る分は、広告を一定期間止めて、広告と自然検索の合計クリックを比べれば測れます。比べるのは広告のクリック数ではなく、指名検索からの流入の合計です。広告を止めれば広告のクリックは0になりますが、それは失った分ではありません。
手順
- 指名キャンペーンを分けておく。指名キーワードが一般キーワードと同じキャンペーンに入っていると、止めたときに一般の配信も止まる
- 広告を出した2週間の数字を取る。指名キャンペーンのクリック数と、Search Consoleで自社名を含むクエリに絞った自然検索のクリック数を足す
- 指名キャンペーンを2週間止める。同じ曜日構成になるように、月曜から始めて日曜で終える期間を2つ並べる
- 止めた2週間の自然検索クリック数を取る。広告は0なので、これが合計になる
- 差を出す。出した期間の合計から、止めた期間の合計を引いたものが、広告が無ければ失っていた分
計算の例
数字は仮のものです。広告を出した2週間に、指名キャンペーンのクリックが300、自社名を含む自然検索のクリックが700だったとします。合計は1,000です。広告を止めた2週間の自然検索のクリックが950なら、失った分は50です。
| 期間 | 広告のクリック | 自然検索のクリック(自社名を含む) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 広告あり(2週間) | 300 | 700 | 1,000 |
| 広告なし(2週間) | 0 | 950 | 950 |
| 差 | 50 |
この例では、広告の300クリックのうち、広告が無ければ失っていたのは50クリック、戻る分は250クリック(83%)です。広告費は300クリック分を払っていますが、買えているのは50クリック分です。クリック単価が50円なら広告費は15,000円で、失わずに済んだ1クリックあたり300円を払っている計算になります。この300円を、一般キーワードのクリック単価と比べて、出す価値があるかを判断します。
逆に、止めた期間の自然検索クリックが750にしか増えなかったなら、失った分は250で、広告の300クリックのうち83%が増分です。この場合は出す価値が明確にあり、止める理由はありません。
測るときの注意
- キャンペーンや告知の時期を避ける。片方の期間だけに検索数を動かす要因があると、差が広告の効果に見えてしまう
- 指名の検索数が少ない場合は判断しない。2週間の合計クリックが数十件程度では、週ごとの揺れのほうが差より大きい。その規模なら、広告費も小さいため、測ること自体に費用対効果が無い
- 自社名の表記ゆれをまとめて見る。Search Consoleのクエリは、漢字・かな・英字の表記ごとに分かれる。正規表現の絞り込みで全てを含める
- 他社の広告が出ている場合は、止めた期間に流入が減る前提で見る。減った分は、広告が取り返していた分であり、出す根拠になる
Search Consoleでクエリごとのクリック数と掲載順位を見る手順はSearch Consoleで最初に見る3つの画面|順位が分かっても打ち手にならない理由で扱っています。
他社の広告が出ているかは、自分で検索せずに確認する
「自社名で検索して、他社の広告が出るか見る」という確認方法には問題があります。自分で検索すると、自社の広告に表示回数が加算され、クリック率などの指標が歪みます。加えて、Google検索の結果は検索した人の場所や履歴で変わるため、自分の画面で見えたものが、顧客の画面と同じとは限りません。
Google広告には「広告プレビューと診断ツール」があります。Googleはヘルプで、検索結果に広告がどう表示されるかを確認するには、自分で検索するのではなくこのツールを使うよう推奨しており、ツールの使用では広告の表示回数が加算されないため、パフォーマンスのデータに影響しないと説明しています。地域や端末を指定して、自社名の検索結果に誰の広告が出ているかを確認できます。
もう一つの方法は、指名キャンペーンのオークション分析です。自社名のキーワードで、どのドメインがどの程度の表示シェアを持っているかが分かります。ここに他社のドメインが出ていれば、自社名で広告を出している相手がいるということです。オークション分析の5つの指標の読み方はオークション分析レポートの読み方|競合の動きから自社の打ち手を決めるで整理しています。
確認は一度で終わりません。他社の出稿は変わります。月に一度、同じ手順で確認し、出稿している相手が現れたら、指名広告の判断を見直します。
自然検索で1位でも、上に何があるかで判断が変わる
自社名の検索で自然検索の1位を取れているかどうかは、Search Consoleの掲載順位で分かります。ただし、1位であっても、その上に自社以外のものが表示されている場合があります。
| 検索結果の上部にあるもの | 起きること | 指名広告の位置づけ |
|---|---|---|
| 他社の広告 | 自社の1位が他社の下になる | 出す。取り返す手段は広告しかない |
| 口コミサイトや予約ポータルの自社ページ | 自社サイトの前に、外部のページで評価や価格を見られる | 出す価値がある。自社サイトに直接送れる |
| 同名・類似名の他社 | 検索した人が別の会社のサイトに入る | 出す。広告文で業種や地域を明示できる |
| 自社のサイトリンク付きの自然検索1位 | 検索した人はそのまま自社に入る | 出さなくても失うものは少ない |
口コミサイトや予約ポータルが自社名の検索で上に出ているのは、店舗ビジネスでは珍しくありません。この場合、検索した人は自社サイトに入る前に、ポータル側で他店と比較される可能性があります。指名広告は、この比較を経由せずに自社サイトへ送る手段になります。
同名・類似名の他社がある場合は、自然検索の順位では解決できません。検索した人がどちらを探しているかを、検索エンジンは判断できないためです。広告文に業種と地域を入れれば、探している側が自社を見分けられます。
自然検索で1位を取れていて、サイトリンクも表示され、上に何も無い状態であれば、指名広告を足しても得られるものは少なくなります。この状態は、戻る分が大きくなる典型です。
出すと決めた場合は、一般キーワードと分けて設定する
指名広告を出すなら、設定で守るべきことが4つあります。どれも「指名の成果を一般の成果に混ぜない」ためのものです。
別キャンペーンにする
指名キーワードは、一般キーワードとは別のキャンペーンにします。予算、入札戦略、評価指標が違うためです。同じキャンペーンに入れると、指名のコンバージョンが自動入札の学習に混ざり、一般キーワードの評価が指名に引きずられます。
キャンペーンを分ける基準の全体はGoogle広告のキャンペーン構成はどう分けるか|分ける基準と、分けすぎの弊害で扱っています。分けるほど良いわけではありませんが、指名は分ける理由が明確な数少ない例です。
一般キャンペーンから指名を除外する
一般キーワードのキャンペーンでは、自社名を除外キーワードに登録します。これをしないと、部分一致のキーワードが自社名の検索にも表示され、一般キャンペーンの成績に指名のコンバージョンが混ざります。P-MAXを使っている場合も同じで、ブランドの除外を設定しなければ指名検索を拾います。
Google広告には「ブランドのリスト」という機能があります。共有ライブラリで自社や他社のブランドを登録し、検索キャンペーンとP-MAXキャンペーンに適用できます。P-MAXや検索キャンペーンで指名検索を拾わせない「ブランドの除外」と、部分一致キーワードを使いながら指定したブランドに関連する検索にだけ表示する「ブランドの登録」の2つの使い方があります。
ライブラリに自社のブランドが無い場合は、管理画面からブランドの追加をリクエストします。Googleのヘルプによると、審査結果は3〜6週間以内に通知され、審査中でもキャンペーンで使えますがリーチが制限される場合があります。知名度の低い社名は登録に時間がかかるため、指名広告を始める前にリクエストしておきます。
マッチタイプと除外語を決める
指名キーワードは、完全一致かフレーズ一致にします。部分一致にすると、社名に似た語や、業種名の検索にまで広がります。
一方で、自社名を含む検索の全てが見込み客ではありません。「社名 採用」「社名 求人」「社名 ログイン」「社名 解約」などは、検索した人が顧客ではないか、すでに顧客です。これらを除外語に入れないと、既存顧客の再訪や求職者のクリックに費用を払うことになります。除外キーワードの決め方は検索語句レポートの見方と除外キーワードの決め方で扱っています。
指標はCPAではなく表示シェアにする
指名キャンペーンをCPAで評価してはいけません。指名のCPAは必ず低く出ます。低いCPAを見て「指名は効率が良い」と予算を寄せても、指名検索の量は広告費では増えないため、予算は消化されずに終わるか、部分一致で無関係な検索に広がります。
指名キャンペーンの指標は、検索の表示シェアです。自社名の検索で自社の広告がどれだけの割合で表示されたかを見ます。他社が出稿していれば、表示シェアの低下で分かります。指名広告の目的は「取られないこと」なので、指標もそれに合わせます。
サイトリンクや電話番号などのアセットは、指名キャンペーンでは全て設定します。指名の検索では広告が上位に出やすく、アセットも表示されやすいためです。設定するアセットの選び方はGoogle広告のアセットはどれを設定すべきか|種類ごとの効果と、外す判断で整理しています。
他社が自社名で広告を出しているとき、できることとできないこと
他社が自社名をキーワードにして広告を出している場合、止めさせたいと考えるのは自然です。ただし、媒体のポリシーで止められるのは広告文の中の商標であって、キーワードとしての使用ではありません。GoogleとYahoo!で、この点は共通しています。
| Google広告 | Yahoo!広告(検索広告) | |
|---|---|---|
| キーワードとしての商標の使用 | 制限しない。他社が自社名をキーワードに使うことは止められない | 制限の対象外。キーワードは申請による制限の対象にならない |
| 広告文での商標の使用 | 直接競合する他社の商標、または誤解を与える使い方は制限。再販業者や情報サイトは例外 | 商標権者または代理人の申請で制限できる。自動挿入されたキーワードも対象 |
| 申し立ての範囲 | 商標権を申し立てた国と業種内の特定の広告主に限定。審査後は最終ページURLが同じセカンドレベルドメインの全広告に適用 | 特定の広告主のみを制限するか、自社を含む特定の広告主に許諾してその他を制限するかを選べる |
| 制限後の扱い | 該当広告主の広告文で商標が使えなくなる | 制限された広告主には、その旨のメッセージが表示される。制限解除の理由は説明されない |
Googleの商標ポリシーは、商標をキーワードとして使用する場合は制限しないと明記しています。制限されるのは、広告文の中で直接競合する他社の商標を使うことと、紛らわしい・虚偽的な・誤解を与える方法で使うことです。つまり、他社が自社名で広告を出すこと自体は、ポリシー上は問題になりません。問題になるのは、その広告の見出しや説明文に自社名が入っている場合です。
LINEヤフーの「検索広告における商標使用制限」も、制限の対象は広告文であり、キーワードは対象外と明記しています。Yahoo!の制度は、商標権者が制限の範囲を選べる点がGoogleと違います。自社を含む特定の広告主だけに使用を許諾し、それ以外を制限することができます。
どちらも、申請できるのは商標権者かその代理人です。商標登録していない社名や商品名では、この制度は使えません。広告文に自社名を使われて困るなら、商標登録が前提になります。
ポリシーでの申し立てとは別に、他社の広告文が自社の商品と誤認させる内容であれば、商標法や不正競争防止法の問題になる可能性があります。この判断は法律の専門家の領域なので、ここでは踏み込みません。広告表現の適法性を媒体ポリシーと分けて整理した記事として広告表現で問題になりやすい言い方|景表法・薬機法と媒体ポリシーの整理があります。
自社が競合名に出す側になるべきか
逆に、自社が競合の社名や商品名をキーワードにして広告を出すことも、ポリシー上は可能です。ただし、地域の商売では得になりにくいと考えています。理由は3つあります。
- 広告文に競合名は使えない。キーワードには使えても、広告文で競合の商標を使えば制限の対象になる。「〇〇をお探しの方へ」という書き方ができないため、広告文と検索語の関連性が低くなる
- 品質スコアが下がり、クリック単価が上がる。広告文にもランディングページにも競合名が無いため、関連性の評価が低くなる。競合の指名検索に表示させるには高い入札が要る
- 検索した人は、その競合を探している。指名検索は目的が決まっている検索であり、途中で別の会社に乗り換える人は少ない。クリックされても比較されて終わる割合が高い
加えて、地域の商売では、競合と同じ商工会や業界団体に属していることが多く、競合名での出稿が知られたときの関係への影響もあります。競合名への出稿を検討するより、自社名の検索結果を守り、一般キーワードで比較検討中の人を取るほうが、費用対効果は安定します。
品質スコアのうち、改善できる指標とできない指標の区別はGoogle広告の品質スコアとは?改善すべき指標と無視してよい指標で扱っています。
指名検索の成果を、全体の数字に混ぜない
指名広告で最も大きな損失は、広告費ではなく判断の歪みです。指名検索のコンバージョンは、広告が無くても自然検索から来ていたものが大半です。それを広告の成果として数えると、広告運用全体の成績が実際より良く見えます。
この歪みが影響する場面は3つあります。
- 予算配分。指名を含んだCPAで媒体を比べると、指名の多い媒体が良く見える。指名を除いた数字で比べなければ、配分を誤る
- 代理店の評価。指名のCVを含めた報告では、一般キーワードの運用が悪化しても全体の数字で隠れる。報告は指名と一般を分けて受け取る
- CPAの目標設定。指名を含んだ過去実績を基準にすると、一般キーワードには達成できない目標になる
代理店の報告で指名検索の分離を確認する方法は広告レポートの見方|代理店の報告で最低限確認すべき項目で、指名のCPAが良いからと予算を寄せる失敗は広告のCPA目安はどう決めるか|業種別平均が使えない理由で扱っています。
指名検索の量を増やすのは広告ではなく、広告以外の活動です。看板、チラシ、紹介、口コミ、SNSでの発信が、自社名で検索する人を増やします。指名広告は、その検索を取りこぼさないための施策であり、検索そのものを作る施策ではありません。
よくある失敗
自分で自社名を検索して、他社の広告が無いと判断する
自分で検索すると、自社の広告に表示回数が加算されて指標が歪みます。また、検索結果は場所と履歴で変わるため、自分の画面で他社の広告が見えなくても、顧客の画面では出ていることがあります。広告プレビューと診断ツールで、地域と端末を指定して確認してください。
指名のCPAが低いのを見て、指名に予算を寄せる
指名検索の量は広告費で増えません。予算を寄せても消化されないか、部分一致で無関係な検索に広がるだけです。指名のCPAは低くて当然であり、それを根拠に一般キーワードの予算を削ると、比較検討中の人への接点を失います。
一般キャンペーンから自社名を除外していない
部分一致のキーワードは自社名の検索にも表示されます。除外していないと、一般キャンペーンの成績に指名のコンバージョンが混ざり、一般キーワードの評価が実際より良く見えます。P-MAXも同じで、ブランドの除外を設定しなければ指名検索を拾います。
止めた期間の広告クリック0を「失った分」と読む
広告を止めれば広告のクリックは0になりますが、その多くは自然検索に移っています。失った分は、広告と自然検索の合計を、出した期間と止めた期間で比べて初めて分かります。広告のクリック数だけを見ると、常に「止めたら減った」という結論になります。
他社が自社名をキーワードに使っていることを、媒体に申し立てる
GoogleもYahoo!も、キーワードとしての商標の使用は制限していません。申し立てで止められるのは広告文の中の商標です。他社の広告の見出しや説明文に自社名が入っていなければ、ポリシー上の申し立ては通りません。
「社名 採用」「社名 ログイン」のクリックに費用を払っている
自社名を含む検索の全てが見込み客ではありません。求職者や既存顧客の検索に広告が出ると、成果につながらないクリックに費用を払います。検索語句レポートで自社名を含む語句を確認し、顧客でない意図の語を除外してください。
よくある質問
自社名で広告を出すと、自然検索の順位は下がりますか
下がりません。広告と自然検索は別の仕組みで、広告を出すことが自然検索の順位に影響することはありません。ただし、広告を出すと自然検索のクリックの一部が広告に移るため、Search Consoleの自然検索クリック数は減って見えます。これは順位の低下ではなく、クリックの付け替えです。
指名検索の広告費はどのくらいかかりますか
一般キーワードに比べて低く済むのが通常です。自社名の検索では広告文とランディングページの関連性が高く評価され、入札の競争も少ないためです。ただし、他社が自社名で出稿している場合はクリック単価が上がります。金額よりも、そのクリックのうち広告が無ければ失っていた分がどれだけあるかで判断してください。
2週間の停止テストで、売上が落ちるのが怖いのですが
他社の広告が出ておらず、自然検索で1位を取れているなら、止めても流入はほとんど変わりません。他社が出ている場合は流入が減りますが、その減った分こそが広告の価値であり、テストで確認する対象です。不安であれば、1週間ずつに短くするか、繁忙期を避けて実施してください。ただし期間を短くするほど、週ごとの揺れと区別がつきにくくなります。
競合が自社名で広告を出しています。すぐにできることは何ですか
まず、その広告の見出しと説明文に自社名や商品名が入っているかを確認してください。入っていて、その名称を商標登録しているなら、Google広告とYahoo!広告のそれぞれに商標権者として申し立てができます。入っていない場合、キーワードとしての使用は止められないため、自社も指名広告を出して最上部を取り返すのが現実的な対処です。
P-MAXを使っています。指名検索も拾っているようですが
P-MAXはキーワードを指定しないため、ブランドの除外を設定しなければ自社名の検索にも配信されます。共有ライブラリのブランドのリストに自社ブランドを登録し、P-MAXキャンペーンにブランドの除外として適用してください。自社ブランドがライブラリに無い場合は追加をリクエストします。審査には3〜6週間かかると案内されています。
Yahoo!広告でも指名広告は必要ですか
Google広告と同じ手順で判断します。Yahoo!検索で自社名を検索した結果に他社の広告が出ているか、自然検索の上に何があるかを確認し、必要なら出します。検索する人の年齢層や地域によってYahoo!の利用率は変わるため、Googleで出す判断をしたからといって、Yahoo!でも同じ答えになるとは限りません。
指名検索そのものを増やすには、何をすればよいですか
広告ではなく、社名を覚えてもらう活動です。店舗なら看板や店頭、チラシ、紹介、口コミが指名検索を作ります。BtoBなら展示会、セミナー、既存顧客からの紹介です。指名広告はその検索を取りこぼさない施策であり、検索を作る施策ではありません。Search Consoleで自社名を含むクエリの表示回数を月ごとに追うと、認知の活動が指名検索に反映されているかが分かります。
まとめ
自社名の指名検索に広告を出すべきかは、「出せば取れる」「出さなければ取られる」という一般論では決まりません。決めるのは、広告を止めたときに自然検索で戻る分がどれだけあるかです。eBayの実験では99.5%が戻り、Edmundsの実験では28%しか戻りませんでした。自社の数字は測らなければ分かりません。
測る前に確認するのは、他社の広告が出ているか、自然検索で1位か、1位の上に何があるかの3点です。他社の広告は、自分で検索せずに広告プレビューと診断ツールとオークション分析で確認します。他社が出していて、自然検索の上にポータルや同名他社がある会社ほど、指名広告の価値は大きくなります。
戻る分は、指名キャンペーンを2週間止め、広告と自然検索の合計クリックを出した期間と比べれば測れます。広告のクリック数ではなく、合計で比べることが要点です。
出すと決めたら、別キャンペーンにし、一般キャンペーンとP-MAXから自社名を除外し、完全一致かフレーズ一致にして、採用や解約などの語を除外します。指標はCPAではなく表示シェアです。指名のコンバージョンを全体の数字に混ぜると、予算配分と代理店の評価を誤ります。
他社が自社名で広告を出していても、キーワードとしての使用はGoogle広告でもYahoo!広告でも止められません。止められるのは広告文の中の商標で、商標登録が前提です。自社が競合名に出す側になるのは、広告文に使えず品質スコアも下がるため、地域の商売では得になりにくい選択です。
指名検索を増やすのは広告ではなく、社名を覚えてもらう活動です。指名広告はその検索を取りこぼさないための施策として、一般キーワードとは分けて評価してください。
指名と一般を分けた設計と評価を含む広告運用はWEBマーケティング・広告運用で承っています。会社紹介資料は資料ダウンロードから、ご相談はお問い合わせからご連絡ください。