広告運用がうまくいかないとき、原因は個別の設定より決める順序にあることが多くなります。配信範囲を決める前にクリエイティブを作る、計測を用意する前に予算を増やす。こうした前後の入れ替わりが、後から効いてきます。
順序が重要なのは、後の段階が前の段階に依存するためです。目的が決まらないと評価指標が決まらず、評価指標が決まらないと改善の方向も決まりません。順序を飛ばすと、数字は取れても判断ができない状態になります。
この記事では、決めるべき7段階の順序、各段階で判断を誤ったときに起きること、そして段階ごとの詳細への入口を整理します。
この記事でわかること
・決める順序は7段階で、後の段階が前に依存する
・目的が決まらないと評価指標が決まらない
・媒体は役割で選び、横並びで比較しない
・配信範囲はクリエイティブより先に決める
・計測がない状態で予算を増やさない
・評価は媒体別ではなく事業全体で行う
決める順序は7段階
着手する順番は、抽象度の高いものから具体的なものへ進みます。
| 順 | 決めること | 飛ばすと起きること |
|---|---|---|
| 1 | 目的と評価指標 | 良し悪しを判断できない |
| 2 | 予算の上限 | 回収できない金額を使う |
| 3 | 媒体と役割分担 | 同じ物差しで比較して誤判断する |
| 4 | 配信範囲 | 対象外に費用が流れる |
| 5 | クリエイティブと遷移先 | 反応しても獲得に至らない |
| 6 | 計測 | 何が効いたか分からない |
| 7 | 評価と改善 | 個別最適に陥る |
特に6番を後回しにする例が多くなります。計測がない状態で配信を始めると、止めるべきものと伸ばすべきものが区別できません。配信開始と同時に用意してください。
抽象度の高いものから順に決める。
計測は後回しにせず、配信開始と同時に用意する。
目的が決まらないと評価指標が決まらない
最初に決めるのは何をもって成功とするかです。これが曖昧だと、以降のすべてが判断できません。
| 目的 | 見るべき指標 | 誤って見がちな指標 |
|---|---|---|
| 問い合わせを増やす | 獲得数と獲得単価 | クリック率 |
| 来店を増やす | 来店数、経路案内 | 表示回数 |
| 売上を増やす | 獲得の金額、粗利 | 獲得数のみ |
| 認知を広げる | 到達、指名検索の推移 | 獲得単価 |
獲得数だけを追うと、単価の低い獲得ばかりが増えることがあります。金額で運用する方法はコンバージョン値の設定方法|CV数ではなく金額で広告を運用するを参照してください。
業種別の平均値を目標にしても機能しません。理由は広告のCPA目安はどう決めるか|業種別平均が使えない理由で整理しています。
何をもって成功とするかを最初に決める。
獲得数だけを追うと、単価の低い獲得が増える。
予算は粗利から逆算する
使ってよい金額は、売上比率ではなく粗利から決まります。1件の獲得がもたらす利益を超えて払えば、獲得するほど損失が出ます。
- 1件あたりの粗利を出す
- 再来店や継続がある業種は、生涯価値まで含める
- そこから許容できる獲得単価を決める
- テストに必要な件数を掛け、最低限の予算を出す
- その金額を確保できないなら、対象を絞って単価を下げる
決め方の詳細は広告予算はいくらが適正?売上比率ではなく粗利から決める方法、複数媒体への配分は複数媒体への広告予算配分の考え方|テスト予算と本予算の分け方を参照してください。
許容できる獲得単価は、粗利から逆算する。
判断できる件数から、最低限必要な予算を出す。
媒体は役割で選ぶ
媒体を横並びで比較すると、役割の違うものを同じ物差しで測ることになります。
| 役割 | 媒体の例 | 評価の軸 |
|---|---|---|
| すでに探している人を取る | 検索広告 | 獲得数と単価 |
| 一度訪れた人を戻す | リターゲティング | 再訪と獲得 |
| まだ探していない人に知らせる | ディスプレイ、動画 | 到達と指名検索 |
| 地図から来店させる | 地図表示 | 経路案内と電話 |
| 再来店を促す | メッセージ配信 | 来店率 |
媒体を追加すべきかの判断はYahoo!広告とGoogle広告は併用すべきか|追加して成果が出る条件と、出ない条件、ディスプレイの評価軸はYahoo!ディスプレイ広告の費用の考え方と設定の要点|検索広告との違いから理解するを参照してください。
動画媒体についてはYouTube広告で店舗集客はできるのか|向いているケースと評価の仕方、需要創出型の配信はデマンドジェネレーションキャンペーンは店舗集客に使えるか|向く条件と評価の仕方で整理しています。
拡散を狙うべきかの判断はSNS広告でバズを狙うべきか|拡散が売上につながる条件と、つながらない条件、ショッピング機能の要否はInstagramのショッピング機能は店舗ビジネスに必要か|縮小した機能と、今も使える範囲を参照してください。
役割が違う媒体を、同じ指標で比較しない。
需要を刈り取る媒体と、需要を作る媒体は評価軸が別。
配信範囲はクリエイティブより先に決める
誰に届けるかが決まらないと、何を伝えるべきかも決まりません。
| 決める項目 | 考え方 | 詳細 |
|---|---|---|
| 地域 | 実際の来店実績から割り出す | 商圏の把握 |
| 属性・興味関心 | 推定なので実績を見てから絞る | 絞りすぎの弊害 |
| 再訪者 | 行動履歴に基づくため確度が高い | 対象の作り方 |
| 類似の対象 | 元データの質で精度が決まる | 元データの整え方 |
商圏の割り出しは商圏分析から始める広告の出稿エリア設計|来店実績から配信範囲を決める、設定の手順はGoogle広告の地域ターゲティング設定方法|商圏に絞った集客のコツを参照してください。
絞りすぎると配信量が確保できません。境界の考え方はYahoo!広告のターゲティング設定|絞る順序と、絞りすぎで失うものとTikTok広告のターゲティング設定|絞るほど成果が下がる理由と、絞るべき条件で整理しています。
対象の質を上げる方法は類似オーディエンスの作り方と精度を上げるコツ|元データがすべてを参照してください。
誰に届けるかが決まらないと、何を伝えるかも決まらない。
属性は推定なので、実績を見てから絞る。
クリエイティブと遷移先はセットで考える
広告で反応があっても、遷移先が対応していなければ獲得に至りません。
- 広告で伝えた内容が、遷移先の冒頭にあること
- 遷移先を専用ページにするか、通常のサイトにするかを決めること
- 検索広告では、検索語と広告文と遷移先を一致させること
- 画像や動画では、目に入った瞬間に何の広告か分かること
遷移先の判断はLPと通常サイト、広告の遷移先はどちらにすべきか、広告文の作り方は検索広告の訴求文の作り方|見出しと説明文に入れるべき情報を参照してください。
画像クリエイティブは反応率が上がるMeta広告バナーの作り方|静止画クリエイティブの型と使い分け、縦型は縦型クリエイティブの作り方|動画がなくても成果を出す構成で解説しています。
電話が主要な問い合わせ手段なら電話番号アセットの使い方|スマホからの問い合わせを増やす設定と、外すべき条件も確認してください。
広告で伝えた内容が、遷移先の冒頭にあること。
反応しても遷移先が対応していなければ獲得に至らない。
計測がない状態で予算を増やさない
何が効いたか分からないまま金額を上げると、止めるべきものにも予算が流れます。
| 計測する対象 | 用意しないと | 参照 |
|---|---|---|
| フォーム送信 | 獲得数が分からない | 計測の基本設定 |
| 電話の発信 | 主要な獲得を取りこぼす | 電話の計測 |
| 流入元 | どの媒体の成果か分からない | パラメータの設計 |
| 来店や成約 | 獲得の質が分からない | 成約データの連携 |
実装の全体像は店舗ビジネスのためのGA4×GTM計測設定ガイド、電話の媒体別把握は電話の問い合わせを媒体別に把握する方法|コールトラッキング導入の判断基準を参照してください。
流入元の設計はUTMパラメータの設計と命名規則|流入元を正しく計測する方法、成約データの反映はオフラインコンバージョンとは?来店・成約データを広告に反映する方法で解説しています。
計測は配信開始と同時に用意する。
電話が主要な業種では、その計測がないと成果を見誤る。
運用中に見るものと、任せる範囲
配信を始めた後は、毎回すべてを見直す必要はありません。見る対象と頻度を決めてください。
| 見るもの | 頻度 | 参照 |
|---|---|---|
| 検索語句と除外 | 毎週 | 無駄クリックの排除 |
| 入札の方式 | 月次 | 自動入札の適性 |
| 予算の配分 | 月次 | キャンペーンか広告セットか |
| 競合の状況 | 月次 | オークション分析 |
| 品質の評価 | 四半期 | 改善余地の所在 |
| 費用の変動 | 都度 | 変動要因の切り分け |
除外の判断は検索語句レポートの見方と除外キーワードの決め方、入札は自動入札の選び方と切り替えるタイミング|機能しない条件も解説を参照してください。
予算の持ち方はMeta広告の予算はキャンペーンと広告セットのどちらで持つか|CBOとABOの使い分け、競合の把握はオークション分析レポートの読み方|競合の動きから自社の打ち手を決めるで整理しています。
品質の見方はYahoo!検索広告の品質インデックスとは|改善できる要素と、追わなくてよい数値、費用の変動要因はMeta広告のCPMはなぜ変動するのか|業種別の相場を探しても意味がない理由を参照してください。
自動化にどこまで任せるかはGoogle広告のAI自動化機能はどこまで任せるか|使う機能と、人が残す判断で判断できます。
見る対象と頻度を決め、毎回すべてを見直さない。
自動化に任せる範囲と、人が残す判断を分ける。
体制と権限を先に整える
運用を外部に委託する場合、アカウントの所有と権限を先に決めてください。
- アカウントは自社が所有し、委託先には権限だけを付与する
- 管理者権限は社内で複数名が持つ
- 蓄積したデータの扱いを契約時に明確にする
- 契約終了時の引き継ぎ手順を確認する
権限設計の考え方はTikTokのビジネスセンターは何のために使うのか|代理店との権限設計から考える、委託先の選び方は失敗しない広告代理店の選び方|店舗ビジネスが確認すべき5つのポイントを参照してください。
アカウントは自社が所有し、委託先には権限だけを渡す。
契約終了時の引き継ぎ手順を、開始前に確認する。
よくある失敗
計測を用意する前に予算を増やす
止めるべきものにも予算が流れます。配信開始と同時に用意してください。
媒体を横並びで比較する
役割が違うものを同じ指標で測ることになります。需要を作る媒体は不利に見えます。
配信範囲を決める前にクリエイティブを作る
誰に届けるかが決まらないと、何を伝えるかも決まりません。
業種別の平均値を目標にする
条件が違うため参考になりません。自社の粗利から逆算してください。
アカウントを委託先に開設してもらう
契約終了時にデータごと失うことがあります。自社が所有してください。
よくある質問
どの媒体から始めるべきですか
すでに探している層がいるなら検索広告からです。需要そのものが少ない商材では、認知を作る媒体が先になります。ただし受け皿となるページと計測が整っていることが前提です。
複数媒体を同時に始めてよいですか
予算が分散すると、それぞれのデータ量が不足して判断できなくなります。1媒体で獲得が安定してから追加するほうが、結果的に速くなります。
代理店に任せる場合も順序は同じですか
同じです。目的と予算の上限は事業側でしか決められません。この2つを決めずに依頼すると、提案の妥当性を判断できなくなります。
成果が出ない場合、どこから見直すべきですか
上の段階から順に確認してください。計測が正しいか、配信範囲が適切か、遷移先が対応しているか。入札や単価の調整は、この確認の後になります。
業種によって順序は変わりますか
順序自体は変わりません。ただし各段階での判断は業種で変わります。自社の業種での具体的な設計は自社の業種に合う集客チャネルの決め方|業種名ではなく4つの軸で選ぶから確認してください。
まとめ
広告運用がうまくいかないとき、原因は個別の設定より決める順序にあることが多くなります。目的、予算、媒体、配信範囲、クリエイティブ、計測、評価という7段階は、後の段階が前の段階に依存します。目的が決まらなければ評価指標が決まらず、評価指標が決まらなければ改善の方向も決まりません。
特に多いのが、計測を後回しにして配信を始める例です。何が効いたか分からない状態で予算を増やすと、止めるべきものにも費用が流れます。計測は配信開始と同時に用意してください。電話が主要な問い合わせ手段である業種では、その計測がないと成果を大きく見誤ります。
また媒体を横並びで比較しないでください。すでに探している人を取る媒体と、まだ探していない人に知らせる媒体では、評価すべき指標が違います。同じ獲得単価で並べれば、需要を作る側は必ず不利に見えます。役割を決めたうえで、それぞれに合った指標で判断してください。成果が出ない場合も、上の段階から順に確認するのが最も速い進め方です。
当社では広告代行において、目的の整理から評価設計までご相談いただけます。体制を含めた検討はお問い合わせよりご連絡ください。