デザインの打ち合わせが好みの言い合いになる原因は、決める順序が定まっていないことにあります。色の話をしているつもりが、実はレイアウトの問題だった。文字の大きさを議論していたが、情報の優先順位が決まっていなかった。こうした食い違いが繰り返されます。
要素には依存関係があります。レイアウトが決まらないと文字の大きさは決まらず、文字が決まらないと余白も決まりません。順序に沿って進めれば、各段階で判断の根拠が持てます。
この記事では、6つの要素を決める順序、各要素で判断の軸になるもの、そして後戻りが起きる典型的な原因を整理します。
この記事でわかること
・要素には依存関係があり、順序が決まっている
・レイアウトは情報の優先順位から決まる
・文字は読みやすさから決め、印象は後にする
・色は役割を割り当ててから選ぶ
・余白は要素の関係を示す道具
・評価は好みではなく行動で行う
要素には依存関係がある
決める順序は、後の要素が前の要素に依存する形で並びます。
| 順 | 決めること | 根拠になるもの |
|---|---|---|
| 1 | 情報の優先順位 | そのページの目的 |
| 2 | レイアウト(配置と構造) | 優先順位と画面幅 |
| 3 | 文字(大きさ、書体、階層) | 読む距離と情報量 |
| 4 | 色(役割と配色) | 業種の慣例と認知の段階 |
| 5 | 余白(間隔の基準) | 要素の関係 |
| 6 | 写真と操作の細部 | 上5つが決まった後 |
1番が決まっていない状態で2番以降を議論すると、必ず好みの話になります。何を最も見てほしいかが決まれば、大きさも配置も色も、その基準で判断できます。
優先順位そのものの決め方は情報設計(IA)とは?わかりやすいサイト構成の作り方、構成を固める工程はワイヤーフレームの作り方|構成を固めてからデザインに進むを参照してください。
情報の優先順位が決まらないと、以降はすべて好みの話になる。
後の要素は前の要素に依存する。
レイアウトは優先順位から決まる
配置は見てほしい順序をそのまま反映します。
| 伝えたいこと | 適した構造 | 参照 |
|---|---|---|
| 最初に印象づける | 上部に大きく1つ | 冒頭の設計 |
| 並列の選択肢を見せる | 同じ形を並べる | カード型の適性 |
| 整った印象にする | 基準線に沿わせる | グリッドの考え方 |
| 読ませる | 1列で流れを作る | 視線の傾向 |
冒頭の作り方はファーストビュー設計の重要性|離脱を防ぐ最初の3秒の作り方、並列表示の判断はカード型レイアウトが向く場面と、向かない場面|並べると比較されなくなる理由を参照してください。
整った印象を作る基準はグリッドレイアウトの作り方|整って見えるサイトが揃えている3つの数値、視線の傾向はFの法則・Zの法則とは?ユーザーの視線誘導を意識したレイアウト設計で整理しています。
画面幅による変化はモバイルファーストデザインとは?重要視される理由と設計のコツを先に確認してください。
配置は、見てほしい順序をそのまま反映する。
画面幅による変化は、レイアウトの段階で織り込む。
文字は読みやすさから決める
書体の印象から入ると、読みにくい状態が固定されます。先に読みやすさの条件を満たしてください。
- 本文の大きさ、行間、1行の文字数を決める
- 見出しとの差を決め、階層を3段階程度に収める
- そのうえで、条件を満たす書体から選ぶ
- 英数字が多い場合、和文と欧文の組み合わせを調整する
数値の決め方は読みやすい文字サイズの決め方|サイズ・行間・1行の文字数を数値で揃える、階層の差はデザインのジャンプ率とは|差をつける幅で印象と伝わり方が変わるを参照してください。
書体の選定はWebフォントの選び方|与える印象の違いと業種別の選定基準、和欧の組み合わせは和文と欧文フォントの組み合わせ方|そろわない原因と、調整すべき箇所で解説しています。
読みやすさの条件を満たしてから、印象で選ぶ。
階層は3段階程度に収める。
色は役割を割り当ててから選ぶ
印象から色を選ぶと、ページが増えるたびに新しい色が加わります。先に役割を決めてください。
| 役割 | 決めること | 注意 |
|---|---|---|
| 基調 | 広い面積で使う色 | 全体の印象を決める |
| 文字 | 背景との明度差 | 読みやすさが最優先 |
| 強調 | 行動を促す1色 | 他の箇所で使わない |
| 状態 | 成功、警告、エラー | 色だけで区別しない |
配色の展開はWebサイトの配色の決め方|ブランドカラーから展開する方法、色と印象の関係は色彩心理をデザインに使うときの前提|色だけで印象は決まらないを参照してください。
業種の慣例に従うかの判断は業種で配色は変えるべきか|慣例に従う判断と、外す判断、明度差の基準は配色のコントラスト比の基準|WCAGの数値と、実務での使い方で整理しています。
色だけに頼らない設計は色覚多様性に配慮した配色の考え方|色だけで情報を分けない設計を確認してください。
印象からではなく、役割から色を決める。
強調色は他の箇所で使わない。
余白は要素の関係を示す
余白は空きではなく、どれとどれが関係しているかを示す道具です。
- 関係が近い要素は距離を近く、遠い要素は離す
- 距離の基準値を決め、その倍数で配置する
- 見出しは、上を広く下を狭くする(次の本文と結びつける)
- 均等に空けるのではなく、意味に応じて変える
基準値を決めずに感覚で空けると、ページごとにばらつきます。詰め込みが読みにくさを生む仕組みはWebデザインにおける余白の効果|情報を伝わりやすくする使い方、情報量を減らす判断はミニマルなWebデザインが成立する条件|情報を減らして成果が上がる場合と、下がる場合を参照してください。
余白は要素の関係を示す。均等に空けるものではない。
基準値を決めないと、ページごとにばらつく。
写真と操作の細部は最後に決める
上の5つが決まってから、素材と操作性を詰めます。
| 項目 | 判断の軸 | 参照 |
|---|---|---|
| 写真 | 実態が伝わるか | 撮影の準備 |
| アイコンとイラスト | 文字の代わりになるか | 使う基準 |
| 代替テキスト | 画像が見えない場合に伝わるか | 書き方の判断 |
| 押せる領域 | 指で操作できるか | 間隔の確保 |
| 操作の反応 | 押したことが伝わるか | 3つの状態 |
撮影の進め方はWeb用写真のディレクション|撮影前に決めるべきことと当日の進め方、アイコンの扱いはアイコンとイラストの使い方|使う基準と使わない基準を参照してください。
代替テキストは画像のalt属性の書き方|入れるべき画像と、空にすべき画像の判断、操作性はスマホで押しやすいボタンの設計|大きさより間隔が誤タップを決めるとUIのフィードバック設計|操作が伝わらないと、利用者は同じ操作を繰り返すで解説しています。
配色の切り替えに対応するかの判断は企業サイトにダークモード対応は必要か|対応する前に確認すべきことを参照してください。
素材と操作性は、上の5つが決まってから詰める。
写真の質は、要素を減らすほど前面に出る。
決めたことを維持する仕組み
決めても、運用の中で崩れます。維持する仕組みを併せて用意してください。
| 崩れる箇所 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| ボタンの形がページごとに違う | 追加時に既存を見ない | 参照する既存ページを決める |
| 色が増えていく | 役割が決まっていない | 役割ごとの色を文書化する |
| 余白がばらつく | 基準値がない | 基準値を決めて共有する |
| 書式が編集者ごとに変わる | 自由に装飾できる | 使える書式を制限する |
一貫性が崩れる仕組みはUIの一貫性はなぜ成果に効くのか|崩れる原因と、揃えるべき範囲、仕組み化の判断はデザインシステムとは?導入するメリットと作り方の基本を参照してください。
アクセシビリティの優先順位はWebアクセシビリティ対応はどこまでやるべきか|優先順位の決め方で整理しています。
決めたことは運用の中で崩れる。維持の仕組みが要る。
追加時に参照する既存ページを決めるだけでも効果がある。
評価は好みではなく行動で行う
社内の印象評価と、成果は別の指標です。
| 見る指標 | 分かること | 注意 |
|---|---|---|
| 問い合わせ数 | 最終的な成果 | 最も重要 |
| フォームの完了率 | 操作の障害 | 改善箇所が特定できる |
| 離脱の位置 | 情報の不足 | 読まれていない箇所 |
| 社内の好み | 印象 | 成果とは別に扱う |
離脱箇所の把握はヒートマップ分析のやり方|何を見て、どこを直すのか、改善要素の整理はCVRを改善するデザイン要素とは?押さえるべき7つのポイントを参照してください。
社内の印象評価と成果は、別の指標として扱う。
離脱の位置が分かれば、直す箇所が特定できる。
よくある失敗
情報の優先順位を決めずにデザインを議論する
必ず好みの話になります。何を最も見てほしいかを先に決めてください。
書体を印象から選ぶ
読みにくい状態が固定されます。読みやすさの条件を満たしてから選んでください。
色を印象から選ぶ
ページが増えるたびに色が加わります。役割を決めてから選んでください。
余白を感覚で空ける
ページごとにばらつきます。基準値を決めて、その倍数で配置してください。
決めた後の維持を考えない
運用の中で崩れます。追加時に参照する既存ページを決めてください。
よくある質問
順序を守ると時間がかかりませんか
初回は手順が増えますが、手戻りが減ります。優先順位が決まっていない状態でデザインを進めると、後から根本的な作り直しが発生します。結果としては、順序を守るほうが速くなります。
既存サイトの改善でも同じ順序ですか
同じです。ただし全要素を見直す必要はありません。成果に直結する箇所から、上の順序で確認してください。多くの場合、情報の優先順位とレイアウトの段階に原因があります。
制作会社に任せる場合、発注側は何を決めますか
1番目の情報の優先順位です。誰に何を最も伝えたいかは事業の判断であり、制作会社が代わりに決められません。2番目以降は提案を受けて判断する形になります。
デザインの良し悪しはどう判断すればよいですか
好みではなく、決めた優先順位が反映されているかで判断してください。最も見てほしい要素が最も目立っているか。この基準があれば、議論が空回りしません。
トレンドは取り入れるべきですか
表現の様式は数年で入れ替わるため、長く使うサイトでは慎重に判断してください。一方、画面幅への対応や表示速度の改善は流行ではなく改善です。判断は最新Webデザイントレンドの取り入れ方|採用する基準と見送る基準を参照してください。
まとめ
デザインの打ち合わせが好みの言い合いになる原因は、決める順序が定まっていないことにあります。要素には依存関係があり、情報の優先順位、レイアウト、文字、色、余白、素材と操作という順で決まります。1番目が決まっていない状態で2番目以降を議論すれば、判断の根拠がないまま意見を交換することになります。
特に間違えやすいのが、文字と色を印象から選ぶことです。書体は読みやすさの条件を満たしてから印象で選び、色は役割を割り当ててから決めてください。役割が決まっていないと、ページが増えるたびに新しい色が加わり、どこが重要か分からなくなります。
そして決めたことは、運用の中で必ず崩れます。ページを追加するときに既存を確認しない、基準値が共有されていない、編集者が自由に装飾できる。こうした要因で一貫性は失われていきます。決める作業と同時に、維持する仕組みを用意してください。評価は社内の好みではなく、問い合わせ数や離脱の位置といった行動のデータで行います。
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