卸売業からWeb施策の相談を受けるとき、依頼の形はほぼ「新規の取引先を増やしたい」で共通しています。ところが実際にサイトを作り直したあと最初に起きる問題は、問い合わせが来ないことではありません。取引にならない問い合わせが来ることです。
個人から「1個だけ買えますか」。同業から価格だけ聞いて消えるもの。最低ロットに遠く届かない相手。いずれも返信の手間は同じだけかかります。卸売業は1件あたりの粗利が薄い事業なので、この対応コストは粗利を直接削ります。問い合わせ数をKPIに置くと、営業の時間が埋まるほうへ最適化されていきます。
「卸売業 集客」「BtoB 問い合わせ 増やす」で出てくる記事は、BtoBサイトのCVRは1〜3%、フォームを目立たせる、ペルソナを作る、という構成でほぼ一致します。書いているのはWeb制作会社かマーケティングツールの提供会社です。これらに共通して抜けているのは、卸売業には他の業種に無い制約が3つあるという点です。価格を出せないこと、与信と最低ロットという取引の前提があること、そして買い手が小売店とは限らないことです。
この記事では、卸売業の販売先の構造、サイトに来る4者の分け方、取引条件の開示が問い合わせの質を決めること、取扱商品ページをどこまで作るか、仕入れ側の開拓、そして追うべきKPIを整理します。業種を問わないチャネルの選び方は自社の業種に合う集客チャネルの決め方|業種名ではなく4つの軸で選ぶで扱っています。
この記事でわかること
・卸売業の販売先は小売店だけではない。他の卸売業者と産業用使用者を含む
・2025年の卸売業販売額477兆4630億円は、小売業販売額157兆5120億円の約3.0倍
・サイトに来る4者を入口で分ける。分けないと営業の時間が取引にならない対応で埋まる
・取引条件を先に出すと問い合わせは減る。減ったうえで口座になる率が上がる
・価格は出せない。代わりに出すのは掛率が動く要因という「価格の決まり方」
・KPIは問い合わせ数ではなく、新規口座開設数と、開設後12か月の累計粗利

卸売業の買い手は、小売店だけではない
サイトの設計を始める前に確認することがあります。自社の売上が、どの種類の買い手から立っているかです。ここを確認せずに「小売バイヤーに見つけてもらうサイト」を作ってしまう例が実際にあります。
総務省の日本標準産業分類では、卸売業は次の業務を行う事業所と定義されています。
| 卸売業に含まれるもの | 買い手は誰か |
|---|---|
| 小売業又は他の卸売業に商品を販売するもの | 小売店、二次卸・三次卸 |
| 建設業、製造業、運輸業、飲食店、宿泊業、病院、学校、官公庁等の産業用使用者に商品を大量又は多額に販売するもの | 事業者・施設・官公庁 |
| 主として業務用に使用される商品を販売するもの | 業務用の設備・機械・建設材料などの需要家 |
| 製造業の会社が別の場所に経営している自己製品の卸売事業所 | メーカーの販売拠点としての取引先 |
| 他の事業所のために商品の売買の代理行為を行い、又は仲立人として商品の売買のあっせんをするもの | 代理商・仲立業としての委託元と販売先 |
この定義が示しているのは、卸売業の売上のうち小売店向けは一部にすぎないということです。飲食店、病院、学校、官公庁、建設現場、そして次の卸売業者。それぞれ探し方も、決裁の仕方も、必要な情報も違います。
規模でも同じことが確認できます。経済産業省の商業動態統計によれば、2025年(暦年)の商業販売額は634兆9740億円で、うち卸売業が477兆4630億円、小売業が157兆5120億円でした。卸売業の販売額は小売業の約3.0倍あります。最終消費者に届く金額より卸売の取引額のほうがはるかに大きいのは、同じ商品が卸から卸へと渡ること、そして小売を経由しない産業用・業務用の需要が大きいことによります。
つまり、卸売業のサイトが相手にすべき買い手は、必ずしも店頭を持つ小売店ではありません。自社の販売先構成を業態別に出して、どこが伸ばしたい先かを決めることが最初の作業になります。全体像から施策を選ぶ考え方はWeb集客の全体像|施策の選び方と着手する順序で扱っています。
卸売業の販売先には、他の卸売業者と、飲食店・病院・学校・官公庁などの産業用使用者が含まれる。
2025年の卸売業販売額477兆4630億円は小売業157兆5120億円の約3.0倍。小売経由でない需要が大きい。
サイトに来る4者を、入口で分ける
卸売業のサイトには、目的の異なる4種類の相手が同時に来ます。この4者を1つの問い合わせフォームで受けると、営業の時間が取引にならない対応で埋まります。
| 誰が来るか | 探していること | 置くべき情報 |
|---|---|---|
| 開業予定・仕入先を変える店 | 自社と取引できる相手かどうか | 取引条件、最低発注ロット、初回取引の流れ |
| 既存の取引先 | 商品情報と、担当者への連絡手段 | 取扱商品の一覧、受注窓口、担当外の連絡先 |
| メーカー・生産者 | 扱ってくれる卸を探している | 取扱商材の募集、販路と物流の条件 |
| 個人の消費者 | 小売より安く買えないか | 個人向け販売の可否を明記する |
分けるといっても、サイト自体を分ける必要は通常ありません。グローバルナビゲーションの項目と、問い合わせの入口を分ければ足ります。サイトを分けるとドメインの評価も運用も二重になり、更新されないほうが放置されます。ナビゲーションの項目の決め方はグローバルナビの設計|項目の決め方と並べ方を参照してください。
4者のうち、対応を明示するだけで最も工数が減るのは個人の消費者です。「個人のお客様への販売は行っておりません」と1行書くだけで、問い合わせは目に見えて減ります。逆に個人にも販売しているなら、特定商取引法に基づく表記が必要になります。表記の要否判定は企業サイトに必要な表記の整理|プライバシーポリシーと、特商法表記が要る条件で整理しています。
どの段階で止まっているかを切り分ける考え方そのものはホームページから問い合わせが来ない原因の切り分け方|5段階で診断すると同じです。卸売業の場合は、この診断を「取引にならない問い合わせが混ざっている」という前提のもとで行うことになります。
サイトには目的の異なる4者が同時に来る。入口を分けないと対応コストだけが増える。
サイトを分ける必要はない。ナビゲーションの項目と問い合わせの入口を分ければ足りる。
取引条件を先に出すと、問い合わせは減って通過率が上がる
Webの改善というと、フォームの項目を減らす、ボタンを目立たせる、といった話になりがちです。卸売業では、その手前に置くフィルタのほうが効きます。取引の前提を満たさない相手の問い合わせを、問い合わせる前の段階で止める設計です。
これは一般的なCVR改善とは逆方向の判断です。数は減ります。ただし卸売業では、減ったうえで口座になる率が上がるほうが事業として正しい。1件あたりの粗利が薄いため、審査や条件確認で落ちる相手への対応コストが粗利を上回りやすいからです。
| 開示する項目 | 書き方の目安 |
|---|---|
| 取引できる相手 | 法人・個人事業主のみ、業態の指定(小売店・飲食店・施設など) |
| 最低発注ロット/最低発注金額 | 初回と2回目以降で分けて記載する |
| 初回取引の支払条件 | 前払いか掛けか。掛けに移行する条件 |
| 支払サイト | 締め日と支払日。手形の有無 |
| 対応エリアと配送 | 配送可能な範囲、送料の負担、リードタイム |
| 許認可が必要な商材 | 免許・許可の種類を明記する |
| 取引開始までの流れ | 問い合わせから初回納品までの段階と、おおよその日数 |
この一覧を見て「ここまで出すと問い合わせが来なくなる」と感じる場合、判断の基準を確認してください。問い合わせは目的ではなく、口座開設の手前の指標にすぎません。条件を伏せて集めた問い合わせは、与信審査か最低ロットの説明のどこかで落ちます。落ちる場所が問い合わせの前か後かの違いであって、口座になる件数はほとんど変わりません。
変わるのは営業の時間の使われ方です。条件を先に出せば、残った問い合わせは条件を読んだうえで送られてきます。「読んだうえで送ってきた」という事実そのものが、確度の情報になります。
なお、フォームの項目設計そのものにも改善余地はあります。取引条件で絞ったあとに取り組む順序になります。項目の考え方は入力フォームの離脱率を改善するデザインの工夫を参照してください。BtoBサイトで信頼につながる掲載情報の整理は会社案内サイトで信頼感を作る方法|見た目より先に埋めるべき情報で扱っています。
取引条件を先に出すと問い合わせは減るが、口座になる率は上がる。
条件を伏せても落ちる場所が後ろにずれるだけで、口座の数は増えない。
価格は出せない。出すのは「価格の決まり方」
卸売業のサイトで必ず論点になるのが価格です。掛率は取引先ごとに違うため、そのまま出すことはできません。既存の取引先が自社より有利な条件を見つければ、その場で交渉になります。出せない理由には正当性があります。
一方で「価格はお問い合わせください」だけを置くと、比較の土俵にすら乗りません。仕入先を探している側は、複数の候補を並べて絞り込んでから連絡します。金額の手がかりがゼロのページは、その絞り込みの段階で外れます。
解決策は、価格そのものではなく価格の決まり方を出すことです。掛率が何によって動くのかを説明すれば、読み手は自社がどのあたりに入るかを見積もれます。
- 発注量(1回あたりのロット、年間の取引額)
- 支払条件(前払い、掛けの期間、手形の有無)
- 配送の条件(回数、単位、指定納品先の数)
- 取引の継続年数と実績
- 商品カテゴリごとの掛率の幅
参考上代が公表されている商材であれば、上代を掲載したうえで「掛率は上記の条件で決まります」と書くだけでも、手がかりとしては十分に機能します。数字を1つも出さないことと、レンジを出すことの差は大きい。
価格で選ばれる形に寄せるべきではない、という点も併せて確認してください。価格を軸に獲得した取引は、次も価格で比較されます。卸売業の競争優位は、品揃え・小ロット対応・リードタイム・在庫の持ち方といった条件面にあります。その条件を言語化して出すことが、価格を出せない事業における実質的な価格開示になります。
掛率は出せないが、掛率が何で決まるかは出せる。
手がかりがゼロのページは、仕入先の絞り込みの段階で候補から外れる。
新規取引の入口は、「開業」と「切り替え」に集中している
検索から新規の取引先を獲得しようとするとき、対象になる相手は限られています。すでに営業している店舗や事業者は、ほぼ例外なく仕入先を持っているからです。問題なく回っている取引をわざわざ検索して変える動機はありません。
検索してくるのは主に2種類です。
- 開業を準備している事業者。まだ仕入先が決まっていない
- 既存の仕入先に不満がある事業者。欠品、値上げ、担当者の対応、最低ロットの引き上げなどが引き金になる
この2つに向けたページは、書く内容が違います。開業予定者には「取引開始までの流れ」と「開業時に必要な数量の目安」が要り、切り替え検討者には「他社から乗り換える場合の手順」と「並行して取引できるか」が要ります。後者は特に検索されにくいものの、成約すれば取引額が最初から大きくなります。
検索クエリの型もこの2つに対応します。「(商材名) 卸」「(商材名) 仕入れ」「業務用 (商材名)」「(商材名) 小ロット」「(商材名) 卸 個人事業主」。いずれも検索数は多くありません。月間数十回という規模のことも珍しくない。それでも1件が口座になれば数年にわたる取引額になるため、検索数で判断すると見誤ります。キーワードの選定基準はSEOキーワードの選び方|検索数で選ぶと問い合わせにつながらない理由で扱っています。
開業には季節性があることも押さえておいてください。業種によって開業が集中する時期があり、その2〜3か月前から情報収集が始まります。記事や取引条件のページは、その時期に間に合うよう先に用意しておく必要があります。公開してから検索で拾われるまでには時間がかかるためです。
検索してくるのは、開業準備中の事業者と、仕入先の切り替えを検討している事業者。
検索数は少ない。1件あたりの取引額と継続年数で判断する。
取扱商品のページは、どこまで作るか
卸売業は扱う商品数が多く、ここでほぼ必ず判断を求められます。先に決めておくべきことは3つあります。カタログをどう扱うか、どの粒度でページを作るか、取扱終了後にどうするかです。
カタログPDFに閉じ込めない
取扱商品をPDFのカタログ1つにまとめ、ダウンロードのリンクだけを置いている例が多くあります。PDF自体は検索エンジンに読まれることもありますが、閲覧に会員登録や問い合わせを要する形にしていれば読まれません。加えてPDFの中では内部リンクを設計できず、問い合わせへの導線も作れません。更新のたびにファイルごと差し替えになるため、鮮度も保ちにくい。
カタログは既存の取引先向けの資料として残しつつ、新規に向けた取扱商品の情報はHTMLのページとして別に持つのが基本形です。
SKU単位では作らない
商品1点ごとにページを作ると、内容の薄いページが大量に並びます。型番と価格だけが違うページが数千あっても、検索側からは区別されません。用途、課題、カテゴリ、対象業態のいずれかを単位にして、その中で複数の商品を比較できる形にしてください。「飲食店の開業時にそろえる(商材)」「小ロットで仕入れられる(商材)」といった括りです。
似た内容のページが増えてしまった場合の整理は似た内容のページが複数あるときの整理|正規URLの指定と、統合の判断、商品ページで見せる情報の順序は商品ページのデザインで購入率は変わるのか|見せる順序と、離脱を生む要素を参照してください。
取扱終了後の扱いを、作る前に決める
商品は必ず入れ替わります。取扱いが終わったページをどうするかを、ページを作る前に規則として決めておいてください。数千ページを作ってから一括で直すことはできません。
| 終了後の扱い | 選ぶ条件 |
|---|---|
| 削除して410を返す | 単発の商材。再度取り扱う見込みがない |
| 同じカテゴリの一覧へ301で転送 | 後継品があり、同じ用途の商品を継続して扱っている |
| 残して終了を明示し、noindexにする | 型番で検索されており、既存の取引先が参照する |
転送の設計を誤ると評価を落とします。やってよい転送とやってはいけない転送はURLを変えるときのリダイレクト|評価を落とさない手順と、やってはいけない転送で整理しています。
カタログPDFだけでは新規には届かない。HTMLの取扱商品ページを別に持つ。
SKU単位ではなく用途・課題・業態の単位で作り、取扱終了後の扱いを先に決める。
展示会とWebの役割を分ける
卸売業の新規取引は、いまも展示会で始まることが多い領域です。Webはその代替ではなく、前後の導線として設計するほうが成果に近くなります。
| 段階 | Webの役割 |
|---|---|
| 展示会の前 | 出展情報の告知、商談予約の受付、来場前に条件を確認できるページ |
| 会期中 | その場で見せる取扱商品のページ、名刺交換後に送るURLの用意 |
| 展示会の後 | フォローの導線、資料の提供、取引条件と初回の流れの確認 |
特に効くのは会期前の商談予約です。当日ブースで初めて会う相手と、事前に時間を押さえてある相手では、会話の深さが違います。予約フォームに取引条件のページへのリンクを添えておけば、来場時点で前提が共有されています。
会期後のフォローは、名刺の枚数ではなく追う基準を決めることが要点になります。手順は展示会で集めた名刺を商談につなげる方法|フォローの順序と、追わない基準で扱っています。BtoBのリード獲得手段全体の選び方はBtoBのリード獲得手段はどう選ぶか|獲得単価ではなく商談化率から逆算するを参照してください。
Webは展示会の代替ではなく、前後の導線として設計する。
会期前の商談予約が最も効く。予約時点で取引条件を共有できる。
売り先だけでなく、仕入れ側も開拓の対象になる
卸売業の集客の記事は、ほぼすべてが売り先の開拓だけを扱います。実務では、扱える商材を増やすことも同じくらい売上に近い場所にあります。卸売業の競争優位は品揃えと物流にあり、扱える商材が増えれば、既存の取引先への提案の幅もそのまま広がるからです。
そしてメーカーや生産者の側は、「どの卸に扱ってもらうか」を選んでいます。選ぶ側は、必ず相手のサイトを見ます。それにもかかわらず、取扱商材の募集ページを持っている卸売業者は多くありません。ここは競合が少ないまま空いています。
| メーカー側が見ていること | サイトに置く情報 |
|---|---|
| どこに売ってくれるのか | 販路。業態別の取引先数、対応エリア |
| どう届けてくれるのか | 物流の条件。倉庫、温度帯、配送頻度、小分けの可否 |
| 取引開始までに何をするのか | 商談から取扱開始までの段階と期間 |
| 条件はどうなるのか | 取引形態(買取/委託)、支払条件 |
| 実際に扱っている商材の傾向 | 取扱カテゴリと、伸ばしている領域 |
メーカー側がWebで販路を探すときの考え方は製造業のWebマーケティングは何を増やすべきか|問い合わせ数より先に決める、取りたい引き合いの条件で扱っています。相手が何を見ているかは、相手側の記事を読むほうが早い。
扱える商材が増えれば、既存取引先への提案の幅も広がる。
取扱商材の募集ページを持つ卸売業者は少なく、競合が少ないまま空いている。
KPIは、問い合わせ数ではなく口座と粗利で置く
卸売業でWeb施策を評価するとき、問い合わせ数とCPAだけを見ると必ず判断を誤ります。初回取引の粗利では、獲得コストはまず回収できないからです。初回は小ロットの試験的な発注になることが多く、そこだけを見れば赤字になります。
| 追う指標 | 追わなくてよい指標 |
|---|---|
| 新規の口座開設数 | 問い合わせ件数の絶対値 |
| 問い合わせから口座開設までの通過率 | サイトのセッション数 |
| 口座開設後12か月の累計粗利 | 初回取引の金額 |
| 口座あたりの継続月数と、休眠率 | 資料ダウンロード数の絶対値 |
| 取扱商材の新規獲得件数 | PV数 |
広告に使える上限は、口座あたりの累計粗利から逆算します。仮に1口座の年間取引額が300万円、粗利率が15%であれば年間の粗利は45万円です。平均の継続年数を3年と置けば、口座あたりの粗利は135万円になります。問い合わせ10件に1件が口座になるなら、問い合わせ1件あたりに使える金額の上限は、営業対応の人件費を差し引いた残りを10で割った額です。数値は例であり、自社の実績値に置き換えてください。この逆算をせずに問い合わせ単価を他社と比べても、高いか安いかは判断できません。基準の決め方は広告のCPA目安はどう決めるか|業種別平均が使えない理由で扱っています。
測定の設計は、着手する時点で決めておいてください。口座の開設と受注は自社の基幹システムの中で進むため、広告やGA4の管理画面とは接続されていません。問い合わせを受けた時点で流入元を記録しておかなければ、後から遡ることはできません。獲得後の歩留まりを管理する考え方は問い合わせ後の歩留まりを改善する|リード管理の始め方で扱っています。
初回取引の粗利では獲得コストは回収できない。12か月以上の累計粗利で見る。
口座開設は基幹システム側で起きる。問い合わせ時に流入元を記録しないと遡れない。
よくある失敗
問い合わせ数を目標にする
取引にならない問い合わせが増えても、営業の時間が減るだけです。目標は新規の口座開設数に置き、問い合わせ数はその手前の参考値として見てください。
取引条件を伏せたまま集める
与信、最低ロット、支払条件で落ちる相手は、条件を伏せても後工程で落ちます。落ちる場所が後ろにずれるだけで、口座の数は増えません。増えるのは対応コストです。
個人向け販売の可否を書いていない
卸売業のサイトには個人の消費者が一定数来ます。1行明記するだけで問い合わせが減ります。逆に個人にも売っているなら、特定商取引法に基づく表記が必要になります。
小売バイヤーだけを想定してサイトを作る
販売先には飲食店、施設、官公庁、他の卸売業者が含まれます。自社の販売先構成を業態別に確認せずに設計すると、売上の大きい相手に向けた情報が抜けます。
取扱商品をSKU単位でページ化する
型番と価格だけが違うページが数千あっても、検索側からは区別されません。用途・課題・カテゴリ・対象業態のいずれかを単位にしてください。
取扱終了後の扱いを決めずに商品ページを作る
商品は必ず入れ替わります。410・301・noindexのどれで扱うかを、作る前に規則として決めてください。数千ページを作ってから一括では直せません。
仕入れ側の開拓をサイトの対象に入れていない
メーカーや生産者は、扱ってもらう卸を選ぶときにサイトを見ます。販路と物流の条件を書いたページを持っている卸売業者は少なく、そのまま差になります。
よくある質問
最低ロットを公開すると、小さい取引先を取り逃しませんか
最低ロットを満たさない相手は、公開していなくても取引にはなりません。取り逃すのではなく、対応する前に分かるだけです。むしろ小ロット対応を強みにしているなら、その数値こそ前面に出す材料になります。「小ロット可」とだけ書くより、具体的な数量を書いたほうが問い合わせは増えます。
掛率をまったく出さないと問い合わせが来ないのではないですか
掛率そのものを出す必要はありません。掛率が何によって動くのか(発注量、支払条件、配送条件、継続年数)を説明してください。参考上代が公表されている商材なら上代を載せるだけでも手がかりになります。数字を1つも出さないページは、仕入先の絞り込み段階で候補から外れます。
BtoB向けのECサイトは作るべきですか
集客の観点から言えば、ECを作っても新規の取引先は増えません。ECは既存の取引先の受注業務を効率化するための投資であり、新規開拓とは目的が違います。順序としては、取引条件の開示と取扱商品のページで新規の入口を作るほうが先です。受注業務の改善は、取引先の数と受注の頻度が一定を超えてから検討する話になります。
既存の取引先向けの情報と、新規向けの情報は同じページに置いてよいですか
分けてください。既存の取引先が探しているのは商品情報と担当者への連絡手段で、新規が探しているのは取引できる相手かどうかです。同じページに混ぜると、どちらにとっても読みにくくなります。ナビゲーションで入口を分ければ足り、サイトを分ける必要はありません。
展示会に出ているので、Webは不要ではないですか
展示会で会った相手は、その後ほぼ確実に社名を検索します。そこで取引条件も販路も分からないサイトが出てくると、ブースでの会話が続きません。Webは展示会の代替ではなく、会期前の商談予約と会期後のフォローを支える導線として意味を持ちます。
SEOと広告のどちらから始めるべきですか
まず取引条件と取扱商品のページを整えてください。ここが無い状態で流入を増やしても、取引にならない問い合わせが増えるだけです。整えたあとであれば、指名検索と「(商材名) 卸」系のクエリでの露出を先に押さえ、そのうえで検索広告を足す順序になります。開業の季節性がある業種では、その時期に合わせて広告を寄せる形が取りやすくなります。
扱っている商材が多すぎて、どこから記事にすればよいか分かりません
粗利率が高く、継続して発注される商材から着手してください。卸売業では商材ごとに粗利率も継続性も違います。単価が高くても単発で終わる商材より、金額は小さくても毎月発注される商材のほうが、口座あたりの累計粗利は大きくなります。
まとめ
卸売業のWeb施策で最初に決めるのは、チャネルでも予算でもありません。誰に向けて設計するかです。総務省の日本標準産業分類が定義するとおり、卸売業の販売先には小売店だけでなく、他の卸売業者と、建設業・製造業・飲食店・病院・学校・官公庁といった産業用使用者が含まれます。自社の販売先構成を業態別に出さないまま「小売バイヤー向けのサイト」を作ると、売上の大きい相手に向けた情報が抜けます。
規模の面からも同じことが確認できます。2025年の卸売業販売額は477兆4630億円で、小売業の157兆5120億円の約3.0倍でした(商業動態統計)。小売を経由しない需要が、それだけ大きいということです。
サイトには目的の異なる4者が同時に来ます。開業予定または仕入先を変える店、既存の取引先、扱ってくれる卸を探しているメーカー、そして個人の消費者です。この4者を1つのフォームで受けると、営業の時間が取引にならない対応で埋まります。入口を分けてください。サイトを分ける必要はなく、ナビゲーションの項目と問い合わせの入口を分ければ足ります。
そのうえで、取引条件を先に出します。取引できる相手、最低発注ロット、初回の支払条件、支払サイト、対応エリアと配送、許認可、取引開始までの流れ。これらを出すと問い合わせは減りますが、口座になる率は上がります。条件を伏せても、与信や最低ロットで落ちる場所が後ろにずれるだけです。落ちる件数は変わらず、対応コストだけが増えます。
価格については、掛率そのものは出せなくても掛率が何によって決まるかは出せます。発注量、支払条件、配送の条件、継続年数。この説明があれば、読み手は自社がどのあたりに入るかを見積もれます。数字の手がかりがまったく無いページは、仕入先の絞り込みの段階で候補から外れます。
取扱商品のページは、カタログPDFに閉じ込めず、SKU単位ではなく用途・課題・業態の単位で作ります。そして取扱いが終わったときの扱いを、作る前に規則として決めてください。410で消すのか、同じカテゴリの一覧へ301で転送するのか、終了を明示してnoindexにするのか。数千ページを作ってから一括では直せません。
そして見落とされやすいのが、仕入れ側の開拓です。卸売業の競争優位は品揃えと物流にあり、扱える商材が増えれば既存の取引先への提案の幅もそのまま広がります。メーカーや生産者は、扱ってもらう卸を選ぶときに必ずサイトを見ます。販路と物流の条件を書いたページを持っている卸売業者は多くありません。
最後にKPIです。問い合わせ数ではなく、新規の口座開設数と、開設後12か月の累計粗利で置いてください。初回取引は小ロットの試験的な発注になることが多く、そこだけを見れば必ず赤字になります。そしてこの数字は広告の管理画面には現れず、基幹システムの側にあります。問い合わせを受けた時点で流入元を記録していなければ、後から遡ることはできません。着手する時点で残す形にしておいてください。これまでに手がけたサイトは制作実績、会社の紹介資料は資料ダウンロードからご覧いただけます。