クリニックや歯科医院からWeb集客の相談を受けるとき、他業種と決定的に違う点が1つあります。集客の打ち手を考える前に、何を言ってよいかが法令で決まっていることです。
他業種であれば標準的に使われる施策が、医療機関では使えません。患者の声を載せる。施術前後の写真を並べる。「地域No.1」と書く。「今なら初回半額」と出す。これらはいずれも、医療機関のサイトや広告では原則として認められていません。真実かどうかは関係なく、表示そのものが規制の対象になります。
「歯科医院 集客」「クリニック 集客」で検索して出てくる記事の多くは、この前提を後半の注意書きに回しています。MEO、SNS、リスティング広告、ホームページ改善といった施策を先に並べ、最後に「医療広告ガイドラインに注意しましょう」と付け足す構成です。順序が逆になっています。使える表現が決まってから施策の効き方が決まるのであって、施策を選んでから表現を調整するのでは、作り直しになります。
そのうえで、規制を理由に打ち手が無くなるわけではありません。規制が縛っているのは訴求の言い方であり、集客手段そのものではないからです。この記事では、2026年4月に施行された改正の内容、広告できることの決まり方、保険診療と自由診療で変わる規制の重さ、体験談と口コミの線引き、そして制約の下で配分を寄せるべき打ち手とKPIを整理します。業種を問わないチャネルの選び方は自社の業種に合う集客チャネルの決め方|業種名ではなく4つの軸で選ぶで扱っています。
この記事でわかること
・医療機関の広告は限定列挙。書いてよいことが法令で決められている
・ウェブサイトは限定解除の要件を満たせば範囲が広がるが、禁止広告は解除されない
・体験談は限定解除しても不可。ビフォーアフターは詳細な説明を付せば可
・2026年4月1日施行の改正でオンライン診療受診施設の広告規制が新設された
・保険診療と自由診療で規制の重さが違う。同じ院内でも設計を分ける
・厚生労働省の委託事業として、第三者が通報できる監視の経路が常設されている
・保険診療は単価が公定価格。広告費の上限は制度側で決まっている

集客手段は減らない。減るのは訴求の言い方
最初に、規制の効き方を正しく捉えておく必要があります。医療広告の規制は、集客チャネルを禁止しているのではありません。検索広告を出してはいけない、SNSを使ってはいけない、といった規定はありません。規制しているのは、そこに載せる表示の内容です。
この区別が付いていないと、判断を2方向に誤ります。一方は「医療は規制が厳しいから広告はやめておく」と過度に萎縮する誤りで、もう一方は「他院もやっているから大丈夫」と表示の内容を確認しないまま進める誤りです。正しくは、チャネルは他業種と同じように選び、表示の内容だけを別の基準で作ります。
そのため実務上は、次の順序になります。
- 自院の診療内容を、保険診療と自由診療に分ける
- それぞれについて、広告可能な事項と、限定解除で書けるようになる範囲を確認する
- 使える表現の範囲が決まってから、ページとクリエイティブを作る
- そのうえで、チャネルごとの配分を決める
順序を守る理由は、作り直しのコストが大きいからです。広告のクリエイティブもランディングページも、表現を前提に構成が決まります。体験談を軸にした構成を作ったあとで削ると、残るのは骨組みだけになります。
なお、整体院・接骨院・鍼灸院は医療広告等ガイドラインの直接の対象ではありません。医業または歯科医業に当たらないためです。ただし規制が無いわけではなく、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師等については、それぞれの法律で別に広告の制限が定められています。この領域の集客設計は整体院・治療院の集客戦略|地域名検索と地図表示を軸にした設計で扱っています。医科・歯科と同じ基準で考えないでください。
また、医療広告の規制と、景品表示法や薬機法は別の軸で働きます。医療広告等ガイドラインを満たしていても、景品表示法上の不当表示になることはあります。表現そのものの適法性は広告表現で問題になりやすい言い方|景表法・薬機法と媒体ポリシーの整理で整理しています。
規制されているのは表示の内容であって、チャネルではない。
使える表現を決めてからページと広告を作る。逆にすると作り直しになる。
2026年4月に何が変わったか
医療広告の指針は、2026年3月30日に改正されました。厚生労働省医政局長通知(医政発0330第4号)によるもので、2026年4月1日から施行されています。改正されたのはガイドライン本体、Q&A、そして「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」の3点で、事例解説書は第6版になりました。
実務上まず押さえるべきは、通称が変わったことです。これまで「医療広告ガイドライン」と呼ばれていたものが、「医療広告等ガイドライン」になりました。正式名称である「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」は変わっていません。制作会社や代理店の提案書、あるいは検索して出てくる解説記事が旧称のままであれば、それは2026年3月以前の内容を参照している可能性があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改正日 | 2026年3月30日(令和8年3月30日) |
| 通知 | 医政発0330第4号 |
| 施行日 | 2026年4月1日 |
| 通称の変更 | 医療広告ガイドライン から 医療広告等ガイドライン へ |
| 改正された文書 | ガイドライン本体、Q&A、事例解説書(第6版) |
| 新設された章 | オンライン診療受診施設に関する広告について |
内容面で新設されたのが、オンライン診療受診施設に関する規定です。医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)によってオンライン診療が法令上に位置づけられ、患者がオンライン診療を受ける場所として「オンライン診療受診施設」が制度化されました。これに伴い、その施設に関する広告を制限する規定が置かれました。
この施設については、医療の内容を含まない広告であっても患者を誘引する性質を持つと整理されており、オンライン診療受診施設である旨を、医療を受ける者が理解できる方法で明示したうえでなければ広告できません。広告できる事項も、施設の名称、所在地、設備、営業時間、予約の要否といった範囲に限られます。
自院の外に受診場所を設ける形でオンライン診療を提供している場合、あるいは今後その形を検討している場合は、告知の作り方がこの規定の対象になります。該当しない一般の診療所であっても、事例解説書が第6版に更新された点は確認しておく価値があります。第6版では、InstagramやYouTube、TikTokといったSNSでの発信について、何が違反に当たるかが事例として具体化されました。院長個人のアカウントで発信している場合も、誘引性が認められれば広告として扱われます。SNS運用そのものを始めるかどうかの判断は店舗のSNS運用は何から始めるか|媒体の選び方と、続けない判断で扱っています。
2026年3月30日改正、4月1日施行。通称は「医療広告等ガイドライン」に変わった。
オンライン診療受診施設の広告規制が新設され、事例解説書は第6版でSNSの事例が具体化された。
書いてよいことは、あらかじめ決められている
医療機関の広告が他業種と根本的に違うのは、規制の方向です。一般の広告規制は「これをやってはいけない」という禁止の形を取りますが、医療広告は「これは書いてよい」という限定列挙の形を取ります。列挙されていない事項は、原則として広告できません。
広告可能な事項として定められているのは、医師や歯科医師である旨、診療科名、名称と所在地と連絡先、診療日時、そして法令で定められた資格や施設の基準に関する事項などです。共通しているのは、客観的な評価が可能で、事後の検証ができる事項に限られていることです。治療の効果や技術の優劣といった、検証しにくい事項は入りません。
この限定列挙のままでは、患者が診療内容を比較して選ぶための情報が足りません。そこで用意されているのが限定解除です。患者が自ら求めて入手する情報、つまりウェブサイトのような媒体については、一定の要件を満たせば限定列挙の枠を外せます。
| 限定解除の要件 | 適用範囲 |
|---|---|
| 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること | すべて |
| 表示される情報について患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること | すべて |
| 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること | 自由診療のみ |
| 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること | 自由診療のみ |
1つ目の要件が意味しているのは、媒体の性質です。患者が自分で検索してたどり着くウェブサイトは限定解除の対象になりますが、こちらから一方的に届けるものは対象になりません。看板、チラシ、ダイレクトメール、そして不特定多数に配信されるバナー広告は、限定解除の枠外に置かれると考えて設計してください。検索広告のリンク先ページは自ら求めて入手する情報に当たり得ますが、広告文そのものは別に判断されます。
ここで最も見落とされるのが、次の点です。限定解除は、広告できる事項の範囲を広げるだけであって、禁止されている広告を許すものではありません。虚偽広告、比較優良広告、誇大広告、そして体験談は、要件を満たしても認められません。「ウェブサイトなら限定解除で書ける」という理解のまま体験談を載せている例が実際に多く、ここが最初につまずく場所です。
広告できる事項は限定列挙。ウェブサイトは4要件を満たせば限定を解除できる。
3つ目と4つ目の要件は自由診療のみ。限定解除しても禁止広告は認められない。
保険診療と自由診療では、規制の重さが違う
同じ「クリニック」でも、扱う診療の種類によって設計は大きく変わります。限定解除の要件のうち2つが自由診療にだけかかるためです。この差を意識せずに1つのサイトを作ると、保険診療のページは要件を満たしているのに、自由診療のページだけが要件を欠くという状態になります。
| 保険診療(内科・小児科・一般歯科など) | 自由診療(矯正・インプラント・美容など) | |
|---|---|---|
| 価格 | 公定価格。院ごとの差はほぼ無い | 院ごとに設定。比較の対象になる |
| 限定解除の要件 | 2つ | 4つ(内容・費用とリスク・副作用の記載が加わる) |
| 費用の表示 | 自己負担の目安を示す程度 | 通常必要とされる費用を具体的に示す |
| リスクの表示 | 求められる場面は限られる | 主なリスク・副作用の記載が必須 |
| 競合の相手 | 同一商圏の他院 | 商圏を越えた他院。遠方からも来院する |
| 集客の主戦場 | MEO・指名検索・地域名検索 | 診療内容の検索・比較検討 |
保険診療の集客は、実質的に商圏の勝負になります。価格が制度で決まっているため差別化の余地が乏しく、選ばれる理由は近さ、予約の取りやすさ、診療時間、そして評判に集約されます。ここで効くのはGoogleビジネスプロフィールと指名検索であり、費用対効果の面でも最初に整えるべき場所になります。地図表示での上位化についてはMEO対策とは?Googleビジネスプロフィールで来店数を増やす具体的手順を参照してください。
自由診療は構造が異なります。価格を自院で決められる以上、患者は複数の院を比較します。商圏も広がり、電車で1時間かけて通う患者が現実に存在します。そのぶん、費用とリスクを具体的に書く義務が発生します。矯正歯科で「〇〇万円から」とだけ書き、総額の目安も治療期間も抜歯の可能性も書いていないページは、要件を満たしていません。
実務としては、同じサイトの中で自由診療のページ群だけを別のテンプレートにするのが扱いやすい形です。治療内容、標準的な費用の総額、治療期間と回数、主なリスクと副作用、この4点を必ず同じページ内に置く枠を作ります。ページごとに書いたり書かなかったりする状態が、最も指摘を受けやすくなります。
限定解除の4要件のうち2つは自由診療にのみ適用される。
保険診療は商圏と指名検索の勝負。自由診療は費用とリスクの記載が前提になる。
体験談と口コミは、どこで線が引かれるか
医療機関の集客で最も判断を誤りやすいのが、この論点です。結果から書くと、自院が載せる体験談は不可、患者が自発的に書いた口コミは広告に当たらない、という線引きになります。
禁止されているのは、患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談の広告です。内容が事実であっても認められません。個々の患者の状態は異なるため、体験談が他の患者に誤認を与えるおそれがあるという考え方によります。他業種で信頼要素として機能する「お客様の声」が、医療機関ではそのまま使えないということです。掲載の一般的な考え方は「お客様の声」の効果的な掲載方法|信頼につながる集め方と見せ方で扱っていますが、医科・歯科ではこの方法を採れません。
一方で、Googleマップなどに患者が自発的に書き込んだ口コミは、医療機関の広告ではありません。広告に当たるかどうかは誘引性と特定性で判断され、医療機関が費用を負担したり便宜を図ったりして書かせたものでなければ、そもそも広告として扱われないためです。
| やり方 | 扱い |
|---|---|
| 自院サイトに患者の体験談を掲載する | 不可 |
| 体験談を引用してSNSに固定表示する | 不可 |
| 謝礼や割引と引き換えに口コミを依頼する | 誘引性が生じる。避ける |
| 来院した患者に口コミの投稿をお願いする | 可。便宜供与を伴わないこと |
| 投稿された口コミに院として返信する | 可。返信の中で効果をうたわないこと |
つまり医療機関では、信頼の材料を自院サイトの内側ではなく、外側に置くことになります。これは制約であると同時に、口コミの重要度が他業種より相対的に高いという意味でもあります。依頼の仕方と返信の作法はGoogleマップの口コミを増やす方法|依頼の仕方と返信のコツ、低評価が付いたときの対応は悪い口コミへの対応方法|返信の型と、削除依頼が通る条件で整理しています。
患者が投稿したコンテンツを自院で二次利用する場合は、さらに注意が要ります。許諾を得て転載した時点で、それは自院が掲載した表示になります。治療の内容や効果に触れていれば体験談の禁止に当たり得ますし、依頼して書かせたものであれば景品表示法上のステルスマーケティング規制の問題にもなります。二次利用の考え方はUGCを集客に活用する方法|二次利用の許諾と、依頼が「広告」になる線引きを参照してください。
では自院サイトには何を置くのか。体験談の代わりに置けるのは、客観的に検証できる事実です。症例数、在籍する医師の経歴と保有資格のうち広告可能なもの、導入している設備、対応できる診療内容、診療実績の件数。いずれも数えられるか、確認できるものです。「患者様に喜ばれています」ではなく「年間の症例数は〇件です」に置き換える作業になります。
自院が載せる体験談は事実であっても不可。患者が自発的に書いた口コミは広告ではない。
信頼の材料は自院サイトの外側に置く。サイト内には検証できる事実を並べる。
ビフォーアフター写真は、条件を満たせば掲載できる
術前術後の写真は、体験談とは扱いが違います。体験談が一律で不可であるのに対し、ビフォーアフター写真は条件付きで認められます。ここを混同して「写真も全部だめ」と理解している例が多くあります。
原則としては広告できません。加工した写真や、効果の著しい例だけを選んで並べた写真は、誇大広告として扱われます。ただし、その写真に、通常必要とされる治療内容や費用等に関する事項と、治療等の主なリスクや副作用等に関する事項について詳細な説明を付した場合は、禁止される表示に当たらないとされています。
実装するときの要点は、説明を写真と同じ画面に置くことです。
- 治療内容。どの術式で、何回の通院が必要か
- 費用。その症例に実際にかかった総額と、標準的な費用の範囲
- 治療期間。撮影の間隔が分かるように示す
- 主なリスクと副作用。起こり得る症状と、その頻度の目安
- 撮影条件。加工していないこと、照明や角度をそろえていること
別ページへのリンクで済ませたり、ページ下部の注記にまとめたりする形は避けてください。スクロールしなければ説明に到達しない構成は、写真だけを見て判断される余地を残します。症例ごとに写真と説明を1つの塊として組み、テンプレート化しておくのが確実です。
運用上は、テンプレートを先に作ることが効きます。院内で撮影した写真をあとから掲載する流れになるため、説明の枠が空欄のまま公開できてしまう作りにしないことが実質的な対策になります。入力必須の項目としてCMS側で縛っておけば、担当者が変わっても抜けません。
ビフォーアフターは原則不可だが、詳細な説明を付せば掲載できる。
説明は写真と同じ画面に置く。CMS側で必須項目にして抜けを防ぐ。
制約の下で、配分を寄せる先
使える表現が限られると、施策ごとの費用対効果の順番が他業種と変わります。訴求の強さで差を付けられないぶん、見つけられる状態を作ることの比重が上がるためです。
| 打ち手 | 規制の影響 | 優先度 |
|---|---|---|
| Googleビジネスプロフィールの整備 | 小さい。事実の記載が中心 | 最優先 |
| 自院サイトの診療内容ページ | 限定解除の要件を満たせば広く書ける | 高い |
| 指名検索の受け皿 | ほぼ影響なし | 高い |
| 地域名と診療内容の検索対策 | 影響なし。表現に注意する程度 | 高い |
| 検索広告 | 広告文が限定解除の枠外。書ける内容が狭い | 中程度 |
| SNSでの情報発信 | 誘引性があれば広告として扱われる | 中程度 |
| ディスプレイ・SNS広告のクリエイティブ | 限定解除が及ばず、作れる幅が最も狭い | 低い |
最初に手を付けるべきはGoogleビジネスプロフィールです。診療時間、休診日、駐車場の有無、対応する診療科目、予約手段といった情報は、そのほとんどが事実の記載であり、規制の制約をほとんど受けません。にもかかわらず未整備の医療機関が多く、投じる費用に対する効果が最も大きい領域として残っています。
次に自院サイトの診療内容ページです。限定解除の要件を満たしたウェブサイトは、医療機関が最も自由に書ける媒体になります。広告のクリエイティブでは書けないことも、ここでなら書けます。したがって、広告費を増やす前に、このページ群の情報量を先に埋めるのが順序として正しくなります。地域名を含むページの作り方は地域キーワードのコンテンツ設計|量産せずに成果を出す方法、対策する語の選び方はSEOキーワードの選び方|検索数で選ぶと問い合わせにつながらない理由で扱っています。
逆に、優先度を下げるべきはバナー広告のクリエイティブです。限定解除が及ばず、体験談もビフォーアフターも使えない条件下で作れる訴求は、名称と診療科目と所在地の提示にほぼ限られます。他業種であれば表現で差を付けられる領域が、医療では最も差の付きにくい領域になります。ここに制作費を投じるより、診療内容ページとGoogleビジネスプロフィールに回すほうが回収は早くなります。
表現で差が付けられないぶん、見つけられる状態を作る施策の比重が上がる。
限定解除が及ぶ自院サイトが最も自由に書ける媒体。バナーが最も狭い。
見張っているのは、行政だけではない
医療広告の規制が他業種と違うもう1つの点は、第三者が通報できる経路が制度として常設されていることです。
厚生労働省は「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」を委託事業として実施しており、医療機関ネットパトロールという窓口が置かれています。誰でも、違反の疑いがあるウェブサイトを通報フォームから報告できます。受け付けている類型には、内容が虚偽であること、他機関との不当な比較、誇大な表現、治療内容の説明不足、費用の記載不足、リスクや副作用の記載不足、口コミや体験談の掲載、ビフォーアフター写真の掲載が含まれます。窓口は医療機関ネットパトロールで公開されています。
つまり、患者からの苦情がなくても、競合する医療機関や第三者の通報によって指摘が始まり得ます。「他院もやっているから大丈夫」という判断が成立しにくい構造です。
指摘を受けた場合、直ちに罰則が科されるわけではありません。通常は行政指導から始まり、応じない場合に中止命令や是正命令へ進みます。命令に従わないときに罰則が適用される流れです。
罰則の内容は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(医療法第87条第1号)。ここは記述が古くなっている資料が多い箇所です。2025年6月1日に施行された刑法の改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたため、それ以前に書かれた解説は「懲役」と表記しています。悪質な場合は開設許可の取消しに至ることもあります。
実務的に重い負担は、罰則そのものよりも対応の工数です。指摘を受けた時点でページの公開を止め、内容を精査し、修正して再公開するまで、その診療科の集客が止まります。自由診療の主力ページで起きれば、機会損失は罰金の額を容易に上回ります。事前に整えておく理由はここにあります。
なお、個別の表示が違反に当たるかどうかの最終的な判断は、所管する保健所や自治体の医療広告相談窓口が行います。判断に迷う表現は、公開前に照会してください。厚生労働省が相談窓口の一覧を公開しています。サイトに必要な法定表記の整理は企業サイトに必要な表記の整理|プライバシーポリシーと、特商法表記が要る条件で扱っています。
厚生労働省の委託事業として、第三者が通報できる窓口が常設されている。
行政指導から中止命令へ進み、従わない場合に罰則。重い負担は公開停止による機会損失。
KPIは新患数ではなく、単価と再来率まで見る
医療機関の集客を新患数だけで評価すると、ほぼ確実に判断を誤ります。保険診療は単価が公定価格で決まっているためです。広告に使える金額の上限が、自院の努力ではなく制度側で決まっているということです。
この点は他業種と構造が違います。一般の事業であれば、単価を上げることでCPAの許容値も上げられます。保険診療ではそれができません。したがって、保険診療の集客でCPAを他業種の相場と比べても意味がありません。比較すべきは、自院の1患者あたりの診療報酬と再来回数から逆算した上限値です。基準の決め方は広告のCPA目安はどう決めるか|業種別平均が使えない理由で扱っています。
| 追う指標 | 追わなくてよい指標 |
|---|---|
| 新患数と、そのうち予約が成立した数 | サイトのセッション数 |
| 初診から再来につながった割合 | 問い合わせ件数の絶対値 |
| 1患者あたりの累計診療単価 | 初診時の単価 |
| 予約の無断キャンセル率 | SNSのフォロワー数 |
| 自由診療の相談件数と成約率 | PV数 |
| 紹介と指名検索の比率 | 順位そのもの |
仮に再来を含めた1患者あたりの累計診療報酬が3万円、そのうち利益として残る割合を3割と置けば、1人あたり9000円が上限の目安になります。予約の10件に3件が来院に至らないなら、予約1件あたりに使える金額はさらに下がります。数値は例であり、自院の実績値に置き換えてください。この逆算をせずに広告費を決めると、新患は増えたのに収支が悪化するという結果になります。
自由診療がある場合は、必ず分けて計算してください。自由診療は単価が桁で違うため、同じ広告アカウントで一括評価すると、保険診療の集客が過大に評価されます。逆に、自由診療の相談は成約までの検討期間が長く、初回接触から数か月かかることも珍しくありません。その期間を織り込まずに広告を止めると、成果が出る直前で撤退することになります。
測定の設計も、着手する時点で決めておく必要があります。来院と再来は電子カルテや予約システムの側で起きるため、広告の管理画面やGA4とは接続されていません。予約の受付時点で流入経路を記録する仕組みが無ければ、後から遡ることはできません。獲得後の歩留まりを管理する考え方は問い合わせ後の歩留まりを改善する|リード管理の始め方、どの段階で止まっているかの切り分けはホームページから問い合わせが来ない原因の切り分け方|5段階で診断するを参照してください。
保険診療は単価が公定価格。広告費の上限は制度側で決まっている。
保険診療と自由診療は分けて計算する。混ぜると保険側が過大に評価される。
よくある失敗
限定解除すれば体験談も書けると理解している
限定解除は広告できる事項の範囲を広げるだけで、禁止広告を許すものではありません。体験談は要件を満たしても掲載できません。最初につまずく場所であり、指摘も受けやすい箇所です。
ビフォーアフター写真の説明を別ページに置いている
治療内容、費用、期間、リスクの説明は、写真と同じ画面に置いてください。リンク先や下部の注記にまとめると、写真だけで判断される余地が残ります。CMSで必須項目にしておくのが確実です。
自由診療のページで費用を「〇〇万円から」とだけ書いている
下限だけの表示は、通常必要とされる費用を提供したことになりません。標準的な総額の範囲、治療期間と回数、主なリスクを併せて示してください。自由診療にだけ課される要件です。
口コミの投稿を割引や謝礼と引き換えに依頼している
依頼そのものは問題ありませんが、費用の負担や便宜の供与を伴うと誘引性が生じます。医療広告の問題であると同時に、景品表示法上のステルスマーケティング規制にも触れます。
保険診療と自由診療を同じ基準で評価している
単価が桁で違うため、同じアカウントで一括評価すると保険診療の集客が過大に評価されます。自由診療は検討期間も長く、途中で止めると成果が出る直前での撤退になります。
院長個人のSNSアカウントだから規制の対象外と考えている
媒体や名義ではなく、誘引性と特定性で判断されます。自院への来院を促す内容であれば広告として扱われます。事例解説書の第6版では、この点が事例として具体化されました。
旧称のまま書かれた資料を基準にしている
2026年3月30日の改正で通称が「医療広告等ガイドライン」に変わりました。提案書や解説記事が旧称のままであれば、それ以前の内容を参照している可能性があります。事例解説書が第6版かどうかで確認できます。
バナー広告のクリエイティブに制作費を集中させている
限定解除が及ばないため、作れる訴求の幅が最も狭い領域です。同じ金額を診療内容ページとGoogleビジネスプロフィールに回すほうが、回収は早くなります。
よくある質問
医療広告等ガイドラインは、ホームページにも適用されますか
適用されます。かつてウェブサイトは広告の規制対象外とされていましたが、現在は対象に含まれています。そのうえで、患者が自ら求めて入手する情報を表示する媒体として、限定解除の要件を満たせば広告できる事項の範囲を広げられる、という構造になっています。適用されないのではなく、条件付きで範囲が広がるという理解が正確です。
患者さんに書いてもらった感想を、名前を伏せれば載せられますか
匿名化しても掲載できません。禁止されているのは患者その他の者の主観または伝聞に基づく治療内容や効果に関する体験談であり、氏名の有無は要件に関係しません。内容が事実であっても同じです。代わりに置くのは、症例数や設備といった客観的に検証できる事実になります。
Googleの口コミに院として返信してもよいですか
返信できます。投稿された口コミ自体は医療機関の広告ではなく、返信も通常は問題になりません。ただし返信の中で治療の効果をうたったり、他の患者にも同じ結果が出ると読める書き方をしたりすると、そこは医療機関自身の表示になります。返信は事実の確認と謝意にとどめてください。
矯正歯科の症例写真を載せたいのですが、何を書けば足りますか
治療内容、通常必要とされる費用の総額、治療期間と通院回数、主なリスクと副作用の4点を、写真と同じ画面に置いてください。抜歯の可能性や、保定期間の必要性も含みます。加工していないこと、撮影条件をそろえていることも前提になります。症例ごとに1つの塊として組む形が確実です。
検索広告は出してよいのですか
出せます。チャネルとして禁止されてはいません。ただし広告文そのものは限定解除の枠外に置いて設計してください。誘導先のランディングページは患者が自ら求めて入手する情報に当たり得ますが、配信される広告文は自ら求めたものとは言えないためです。広告文は名称、診療科目、所在地、診療時間といった範囲で組み立て、詳細はページ側に持たせる形になります。
整体院を併設していますが、同じサイトでよいですか
医科・歯科の診療と、整体や接骨の施術では、適用される法律が違います。医療広告等ガイドラインの対象は医業と歯科医業であり、柔道整復やあん摩マッサージ指圧は別の法律で広告が制限されています。同一のサイトに置くこと自体は可能ですが、ページ単位で基準を分け、どちらの規制が及ぶかを明示してください。混在した表現が最も判断を誤ります。
競合の医院がビフォーアフターを載せています。同じことをしてよいですか
他院の状態は基準になりません。医療機関ネットパトロールとして第三者が通報できる窓口が常設されており、指摘が始まる契機は患者からの苦情に限られません。加えて、その医院が要件を満たす説明を付している可能性もあります。判断に迷う場合は、所管の保健所や医療広告相談窓口へ公開前に照会してください。
集客をどこから始めればよいか分かりません
Googleビジネスプロフィールの整備から始めてください。診療時間、休診日、駐車場、診療科目、予約手段といった事実の記載が中心で、規制の制約をほとんど受けないにもかかわらず、未整備のまま残っている医療機関が多い領域です。そのうえで自院サイトの診療内容ページの情報量を埋め、広告はその後になります。順序を逆にすると、流入を増やしても受け皿が無い状態になります。
まとめ
クリニックや歯科医院の集客で最初に決めるのは、チャネルでも予算でもありません。何を言えるかです。医療機関の広告は限定列挙であり、書いてよいことがあらかじめ定められています。他業種で標準的に使われる体験談、比較優良の訴求、期間限定の価格表示は、真実であっても使えません。
そのうえで、規制されているのは表示の内容であって、集客手段そのものではありません。チャネルは他業種と同じように選び、そこに載せる表現だけを別の基準で作ります。順序としては、自院の診療を保険診療と自由診療に分け、使える表現の範囲を確定させてから、ページとクリエイティブを作ります。逆にすると、体験談を軸に組んだ構成から体験談を抜くことになり、骨組みだけが残ります。
ウェブサイトには限定解除があります。患者が自ら求めて入手する媒体であること、問い合わせ先を明示すること。自由診療についてはこれに加えて、通常必要とされる治療内容と費用、そして主なリスクと副作用を示すこと。この4つを満たせば、医療機関にとって自院サイトが最も自由に書ける媒体になります。だからこそ、広告費を増やす前に診療内容ページの情報量を埋めるほうが順序として正しくなります。ただし限定解除は範囲を広げるだけで、体験談をはじめとする禁止広告は解除されません。
ビフォーアフター写真は、体験談とは扱いが違います。治療内容、費用、期間、主なリスクと副作用について詳細な説明を付せば掲載できます。要点は、その説明を写真と同じ画面に置くことです。別ページへのリンクや下部の注記では、写真だけで判断される余地が残ります。CMS側で必須項目にしておけば、担当者が変わっても抜けません。
2026年3月30日の改正(医政発0330第4号)は同年4月1日に施行され、通称が「医療広告等ガイドライン」に変わりました。オンライン診療受診施設に関する広告の規定が新設され、事例解説書は第6版でSNSでの発信に関する事例が具体化されています。手元の資料が旧称のままであれば、参照している内容が古い可能性があります。
見落とされやすいのが監視の経路です。厚生労働省の委託事業として医療機関ネットパトロールが常設されており、第三者が違反の疑いを通報できます。患者からの苦情がなくても指摘は始まり得るため、他院の状態を基準にする判断は成立しません。指摘を受けた場合の実質的な負担は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という罰則そのものよりも、修正が終わるまでその診療科の集客が止まることにあります。
最後にKPIです。新患数だけで評価しないでください。保険診療は単価が公定価格で決まっているため、広告に使える金額の上限も制度側で決まっています。他業種のCPA相場と比べても意味がありません。見るべきは、再来を含めた1患者あたりの累計診療単価と、初診から再来につながった割合です。そして自由診療は必ず分けて計算してください。単価が桁で違うため、混ぜると保険診療の集客が過大に評価されます。
これらの数字は広告の管理画面には現れず、予約システムや電子カルテの側にあります。予約を受け付けた時点で流入経路を記録する仕組みが無ければ、後から遡ることはできません。着手する時点で残す形にしておいてください。医療機関のサイト設計や広告運用でお困りの場合はお問い合わせからご相談いただけます。これまでに手がけたサイトは制作実績、会社の紹介資料は資料ダウンロードからご覧いただけます。