WEB制作

KNOWLEDGE

導入事例の作り方|本数は相場ではなく買い手が自分を見つけられる組み合わせで決め、社名が出せなくても業種・規模・数字の前提を書けば稟議の材料になる

  • #WEB制作

SHARE

導入事例の作り方を調べると、「課題、導入の決め手、活用方法、成果、今後の展望の6要素で構成する」「取材の依頼から公開までの5ステップ」「質問のテンプレート」という助言が並びます。構成もステップも、どれも間違っていません。ただ、その通りに作った事例が並んでいても、問い合わせや商談が増えないサイトは珍しくありません。事例が「誰に、どの段階で、何のために読まれるか」から設計されていないためです。

本数についても、答えが割れています。「3〜5本が目安」と書く記事もあれば、「最低12件、30件を目指す」と書く記事もあります。どちらも出所があり、どちらもそのまま自社に当てはめることはできません。

この記事では、導入事例で動く段と試算、誰が何を確認するために読むか、本数の決め方、公開範囲の5段階と許諾の取り方、取材で聞くこと、数字の書き方、一覧と詳細ページの作り、更新と取り下げ、作らなくてよい会社、決める順序を整理します。数値の例は、出典を示した調査を除き、すべて仮のものです。自社の数字に置き換えて使ってください。

この記事でわかること

・導入事例は、営業が会う前に、比較の段階にいる担当者が読む資料として設計する。公表されている調査(2025年、600名)では、買い手の85%が営業との初回面談の前に候補を絞り込んでいる

・事例で動くのは、問い合わせ率と、商談が次へ進む割合。仮の数字では、月3,000人が訪れるサイトで受注は月約1.1件から約1.6件に増えるが、月500人のサイトでは差が年に約1件にとどまる

・本数は相場ではなく、買い手が「自社と同じ業種・規模」の事例を見つけられる組み合わせの数で決める。主な業種が3つ、規模帯が2つなら6本で格子が埋まる

・「最低12件」の出所は、SaaSを扱うBtoB企業23社の事例ページを測った2019年公表の研究レポート。前提が違う事業に、そのまま当てはめない

・社名が出せなくても、業種、規模、課題、期間、結果の前提が書いてあれば、上長が「自社と同じ規模か」を判断する材料になる。公開範囲は5段階に分け、取れる範囲で公開して後から広げる

・依頼は受注の前に行う。公表されている調査(2021年、110名)では、依頼のタイミングは「受注前」が62.7%で最多、承諾率は「30〜49%」が最多。10社に頼んで3〜5社と見込む

・成果の数字は、何を、何と比べて、どの期間で、という前提とセットで書く。「◯%削減」だけの数字は、担当者が社内で説明できない

導入事例は、誰が何を確認するために読むか
導入事例は、誰が何を確認するために読むか

導入事例は、営業が会う前に読まれる|有名企業の成功談ではなく、比較の材料

最初に全体の答えを示します。導入事例の設計で先に決めるのは、構成でも本数でもなく、この事例を誰が、どの段階で、何を確認するために読むかです。本数と構成は、そこから決まります。

理由は、BtoBの買い手が、営業に会う前に候補を絞っているためです。ワンマーケティングが、企業の経営者、役員、購買・契約担当者600名に行った調査(2025年9月30日〜10月1日)では、営業との初回面談の時点で購買先が「ほぼ決まっている」が29%、「いくつかの候補に絞り込まれている」が56%で、合わせて85%でした。営業が説明する機会が来る前に、買い手はサイトの情報で候補を絞っています。普段利用する情報源の上位は、購買先企業のWebサイト38.5%、検索エンジン32.2%です。

同じ調査では、取引金額が300万円未満の場合でも購買に関与する人数は平均5.6人、中価格帯では14.4人、高価格帯では18.3人でした。高価格帯の取引では54%が検討に半年以上かけています。事例を読むのは担当者1人ではなく、担当者が社内で説明する相手も含まれます。

サイト上でどの情報が参考にされたかについては、ITコミュニケーションズの調査(2018年10月、445名、設問の回答者157名)に内訳があります。時間が経っていますが、項目別の公表資料が少ないため順位の参考として挙げると、製品・サービス情報87.9%、価格・料金表65.0%に続いて、実績・事例が61.1%でした。事例は、製品情報と価格の次に見られる情報です。BtoBサイト全体で誰が何を確認しに来るかはBtoBサイトの制作は何から決めるか|ページ一覧より先に、誰が何を確認しに来るかを決め、出口は温度で分けるで扱っています。

事例は「成功談」ではなく「同じ条件の会社が、何と比べて、どう決めたか」

比較の段階にいる担当者が事例で確認したいのは、その会社がどれだけ成功したかではありません。自社と同じ課題を持つ、同じくらいの規模の会社が、何と比べて、なぜこの会社に決め、導入で何に困り、何がどれだけ変わったかです。担当者はそれを、上長と決裁者に説明する材料にします。

有名企業の事例は、「あの会社が使っている」という安心にはなりますが、従業員50名の会社の担当者が上長に説明する材料にはなりにくいものです。上長が聞くのは「うちと同じ規模の会社で使えているのか」だからです。

導入事例で動くのは、問い合わせ率と、商談が次へ進む割合|訪問数は動かない

事例を作る前に、事例で動く数字と動かない数字を分けます。事例で動くのは、サイトに来た人が問い合わせや資料請求に進む割合と、問い合わせが商談へ、商談が提案へ進む割合です。サイトの訪問数そのものは、事例では動きません。

ferret Oneが、BtoBマーケティングの担当者330名に行った調査(2025年)では、導入事例の成果として挙げられたのは「商談化率の向上」58.0%、「リードの質向上」56.9%で、「リード獲得数の増加」は36.3%でした。指標として設定されているのも「商談化率」「受注率」が各57.3%です。事例は、件数より先に、進む割合に効く施策として捉えられています。

月3,000人が訪れるサイトと、月500人のサイトで、事例の効果を仮の数字で比べます。問い合わせ率を0.5%、問い合わせが商談になる割合を30%、商談が受注になる割合を25%と置き、事例を整えたことで問い合わせ率が0.6%、商談になる割合が35%になったとします。

項目 月3,000人のサイト 月500人のサイト
問い合わせ(0.5%) 15件 2.5件
商談(30%) 4.5件 0.75件
受注(25%) 約1.1件 約0.19件
改善後の問い合わせ(0.6%) 18件 3件
改善後の商談(35%) 6.3件 1.05件
改善後の受注(25%) 約1.6件 約0.26件
受注の差 月約0.45件(年に約5件) 月約0.07件(年に約1件)

月3,000人のサイトでは、受注は月約1.1件から約1.6件に増えます。1件あたりの粗利が120万円なら、月約54万円の差です。事例の制作を外部に依頼しても、数か月で回収できる計算になります。

一方で、月500人のサイトでは、差は年に約1件です。この会社が先に取り組むのは、サイトの事例ではなく訪問数か、営業資料に入れる事例です。商談の後に社内で読まれる資料に同じ規模の事例を入れる方法は営業資料の作り方|商談で映す前提ではなく、営業がいない稟議の場で読まれる前提で、費用対効果と比較のページから作る、リードの獲得手段の選び方はBtoBのリード獲得手段はどう選ぶか|獲得単価ではなく商談化率から逆算するで扱っています。

この試算をするには、問い合わせの件数、商談になった件数、受注の件数が記録されている必要があります。記録が無い会社は、事例を作っても良くなったかを判定できません。残す項目は問い合わせ後の歩留まりを改善する|リード管理の始め方、段を掛け算で並べて動かす段を選ぶ考え方はKPIツリーの作り方|掛け算の段はどこを動かしても効き方は同じで、選ぶ基準は動かす費用と上限、月30件を切る段より下は分解しないで扱っています。

誰が何を確認するために読むかから、事例に要るものを決める

事例に入れる要素は、「よくある6要素」からではなく、買い手の社内で誰が何を確認するかから決めます。冒頭の図と同じ内容です。

誰が読むか 確認すること 事例に要るもの 欠けると起きること
比較中の担当者 自社と同じ課題か。他に何を比べて、なぜこの会社にしたか 導入前の状態、比較した選択肢と見送った理由、決めた理由 「良さそう」で終わり、社内に説明する言葉が無い
上長・部門長 自社と同じ規模・業種の会社で使えているか 業種、従業員数か売上規模、部門、利用人数 「うちとは違う会社の話」で止まる
決裁者 費用に見合う結果が出たか。どのくらいの期間で 変わった数字とその前提、導入から結果までの期間、費用の帯 「効果が不明」で差し戻される
情報システム・法務 導入の体制と、データの扱いに問題が無いか 導入の流れ、買い手の側の作業、連携したもの、データの置き場所 稟議の最後で確認が入り、1か月止まる
自社の営業 商談の後に「同じ規模の会社の事例です」と送れるか 1本で完結する固有のURL、PDF、要約の表 営業が口頭で説明し、社内に伝わらない

この表は、競合の記事に並ぶ「課題、決め手、活用、成果、展望」を否定するものではありません。同じ要素が「誰のために要るか」を付けて並んでいるだけです。違いは、比較した選択肢と見送った理由、導入で困ったこと、数字の前提、買い手の側の作業が入っている点にあります。これらは成功談には書かれませんが、稟議で聞かれることです。

本数は相場ではなく、買い手が「自社と同じ」を見つけられる組み合わせで決める

「何本作ればよいか」には、出所の違う2つの答えが出回っています。

よく引かれる目安 出所 前提
最低12件、30件を目指す WACULの研究レポート(2019年3月公表) SaaSを扱うBtoB企業23社の事例ページ。2017年12月〜2018年11月のアクセス解析。CVRは資料請求や無料トライアル
年間4〜6本 ferret Oneの調査(2025年、330名) 年間の制作本数で最も多い帯が33.0%。7〜9本が23.9%、10本以上が11.8%。実施したことがない企業も20.6%
3〜5本が目安 制作会社や広告媒体のブログ 根拠の記載なし

WACULのレポートは、事例ページを経由した訪問のCVRを、経由しない訪問のCVRで割った倍率で見ています。事例が12件を超えると経由した訪問のCVRが経由しない訪問を上回り、30件を超えると1件追加あたりの改善が小さくなる、という結果です。これは、業種も規模も多様な買い手が来るSaaSの事例ページの観測であり、目標値ではありません。同じレポートは、資料請求の導線を事例の近くに置くこと、業界別やニーズ別に事例を探せる機能を置くことも挙げており、本数だけを切り出すと読み方がずれます。

自社の本数は、次の順で決めます。買い手が事例を探すときの軸は、業種、規模、課題の3つです。主な業種の数と規模帯の数を掛けた格子を作り、各マスに1本ずつ埋まれば、買い手は「自社と同じ」を見つけられます。

自社の状況 格子 必要な本数 考え方
買い手が製造業、卸売業、建設業に集中し、従業員50名前後と200名前後に分かれる 3業種×2規模帯 6本 各マスに1本。同じマスに2本目を足すより、空いたマスを先に埋める
買い手の業種が幅広く、規模も10名から1,000名まで 業種5×規模帯3 15本 全部を埋める前に、問い合わせが多い業種と規模のマスから埋める
買い手が1業種で、課題が3種類に分かれる 課題3×規模帯2 6本 業種が同じなら、探す軸は課題になる。課題ごとに1本
取引先が全部で10社ほどの会社 業種と規模で2〜3マス 2〜3本 格子が小さいので本数も少なくてよい。1本目を社名なしで出す

格子の例は仮のものです。本数の目安は、格子のマスの数です。マスが埋まったあとに増やす本数は、同じマスに来る問い合わせが増えるかで判断します。100本の一覧より、業種と規模で絞り込んで自社と同じ1本が見つかる6本のほうが、担当者の役に立ちます。

ferret Oneの調査で最も多かった「年間4〜6本」は、6本の格子を1年で埋める速さと一致します。1本あたりの制作コストは「31〜50万円」が35.1%で最も多く、「51〜100万円」が24.0%、「10〜30万円」が19.5%、「〜9万円」が9.2%でした。同じ調査では、事例の投資対効果を「非常に高い」と答えた企業では制作コスト30万円以上が67.4%で、「商談化率」を指標に設定している割合が71.7%でした。投資対効果が「低い」と答えた企業では、商談化率を指標にしている割合は37.8%です。費用をかけた企業ほど、件数ではなく商談化率で判定しています。

社名が出せなくても稟議の材料になる|公開範囲は5段階に分け、取れる範囲で出す

事例が作れない理由として最も多いのは、「お客様が社名を出してくれない」です。社名が出せることと、事例が稟議の材料になることは別です。上長が確認したいのは「同じ規模か」であり、決裁者が確認したいのは「数字の前提」です。どちらも、社名が無くても書けます。

公開の範囲 書ける例 買い手側で承認する人 稟議の材料になるか
1. 社名なし。業種、規模、課題、期間、結果 「従業員50名の食品卸で、受注の入力が1件15分から3分に」 担当者(書面で範囲を確認する) なる。上長が同じ規模かを判断でき、決裁者が数字の前提を確認できる
2. 社名のみ。数字なし 「株式会社◯◯に導入」 広報か経営 弱い。「知っている会社か」しか分からない
3. 社名と数字 「株式会社◯◯で、月の作業時間が40時間減少」 広報と、担当部門の上長 強い。上長と決裁者の両方に答えられる
4. 社名、担当者名、写真、コメント インタビュー形式の記事 広報、本人、本人の上長 強い。ただし担当者の退職や異動で見直しが要る
5. ロゴを一覧に並べる 導入企業ロゴの一覧 広報(ロゴの使用許諾) ならない。どういう関係かを1行添えないと、提携や推奨に見える

勧めるのは、受注時に1段階目の許諾を書面で取り、成果が数字になった時点で3段階目か4段階目を依頼する順序です。1段階目は、買い手の担当者が広報や法務に回さなくても判断できることが多く、断られにくい範囲です。最初から4段階目を頼むと、担当者は社内の承認を取る手間を想像して断ります。

5段階目のロゴ一覧については、取引の事実があっても、並べるだけでは「支援や提携を受けている」印象を作ることがあります。会社案内サイトでの扱いは会社案内サイトで信頼感を作る方法|見た目より先に埋めるべき情報で扱っています。

依頼は受注の前に。承諾率は10社に3〜5社と見込む

才流が、BtoB企業で導入事例の制作を担当した経験のある110名に行った調査(2021年1月29日)では、取材の依頼のタイミングは「受注前」が62.7%で最多でした。承諾率は「30〜49%」が最多です。受注の前、契約の条件を詰める段階で「事例へのご協力」を伝えておくと、受注後に改めて頼むより通りやすくなります。10社に頼んで3〜5社と見込み、格子のマスに対して余裕を持って依頼します。

契約書か発注書に、事例協力の条項を入れる会社もあります。その場合も、公開範囲は5段階のどこまでかを明記し、公開前の原稿確認と、取り下げの申し出にいつでも応じることを書いておきます。取り下げに応じる一文があるかどうかで、承諾のしやすさが変わります。

許諾で決める項目

項目 決めること
公開の範囲 5段階のどこまでか。社名、数字、担当者名、写真、ロゴのそれぞれ
掲載する媒体 自社サイトのみか、営業資料、展示会のパネル、広告、SNSにも使うか。後から広げるには再確認が要る
掲載の期間と見直し 無期限か。年1回の確認の連絡を入れるか
原稿の確認 公開前に買い手が確認する。修正の回数と期日を決める
取り下げ 申し出があればいつでも応じる。担当者の退職、契約の終了、社名変更のときの扱い
数字の出し方 実数か、割合か、幅か。「40時間減」と「約3割減」では買い手側の承認のしやすさが違う
写真と著作権 撮影した写真の権利と使える範囲。買い手から提供された写真の扱い

掲載する媒体は最初に確認します。「サイト掲載」で許諾を得た事例を、後日営業資料や広告に使うことはできません。想定される用途をすべて伝えておきます。撮影を伴う場合の権利の確認はWeb用写真のディレクション|撮影前に決めるべきことと当日の進め方、店舗や個人の顧客の声を集めるときの許諾の項目は「お客様の声」の効果的な掲載方法|信頼につながる集め方と見せ方で扱っています。

取材で聞くのは「決め手」ではなく「比べたもの」と「困ったこと」

取材の質問は、稟議で聞かれることに対応させます。「当社を選んだ決め手は何ですか」だけを聞くと、「担当者の対応が良かった」という答えしか返ってきません。これは、買い手の担当者が上長に説明する材料になりません。

聞くこと 引き出せるもの 稟議で使われる場面
導入前は、どの作業に、誰が、どれだけ時間をかけていましたか 導入前の状態の数字 「何がどれだけ変わったか」の比較の起点
他にどの選択肢を比べましたか。見送った理由は何でしたか 比較した選択肢と、選ぶ基準 上長が「他は検討したのか」と聞いたときの答え
社内で反対や懸念はありましたか。どう解消しましたか 稟議で止まった箇所と、通した理由 同じ懸念を持つ決裁者への答え
導入で困ったことと、かかった期間は 買い手の側の作業と、現実的な期間 現場の負担を心配する担当者への答え
どの数字が、いつからどう変わりましたか 結果と、その前提と期間 決裁者が確認する費用対効果
これから何に使う予定ですか 拡張の余地 「今後も使い続けられるか」への答え

2番目と3番目が、見込み客にとって最も価値のある情報です。比較した選択肢と、社内で出た懸念は、これから稟議を書く担当者が直面することそのものです。売り手が書きたいことではなく、買い手が聞かれることを先に埋めます。

取材は、成果が数字になった時期に行います。導入直後の取材では、印象は聞けても数字は取れません。目安として導入から3〜6か月後、契約の更新や次の提案の前に設定すると、買い手の担当者にとっても振り返りの機会になります。

数字は前提とセットで書く|「◯%削減」だけの数字は稟議で説明できない

事例の見出しに「作業時間80%削減」と書かれていても、担当者は上長に「何の作業が、何時間から何時間に、どのくらいの期間で」と聞かれます。答えられない数字は、稟議書に転記できません。

数字に添えるもの 内容 欠けると起きること
何を測ったか 受注の入力にかかる時間、月の残業時間、問い合わせの返信までの日数など 「何が減ったのか」を担当者が説明できない
何と比べたか 導入前の同じ期間か、前年の同じ月か 季節や他の要因と区別できず、数字の信用が落ちる
期間 導入から何か月後の数字か 初年度の予算で承認してよいかを判断できない
規模 対象の人数、件数、拠点数 「うちの規模でも同じか」に答えられない
買い手の側でやったこと 運用の変更、担当の配置 「ツールを入れただけで変わった」と誤解され、導入後に落胆される

数字が出せない事例もあります。ブランディング、デザイン、研修などです。その場合は、何が変わったかを、変わった時期と、それを確認した方法とともに書きます。「問い合わせの内容が、価格の質問から、進め方の相談に変わった」のような変化も、前提と時期があれば材料になります。

成果の数字を広告や一覧の見出しに使う場合は、景品表示法の優良誤認と打消し表示の考え方が関わります。「個人の感想です」と添えて済ませられるものではありません。表現の線引きは広告表現で問題になりやすい言い方|景表法・薬機法と媒体ポリシーの整理で扱っています。

一覧と詳細ページの作り|絞り込める一覧と、1本で完結する詳細

一覧ページは、業種と規模で絞り込め、1本ごとに規模と結果が読める

  • 業種、規模、課題で絞り込める。格子の軸がそのまま絞り込みの軸になる。事例が6本なら、絞り込みの機能ではなく、一覧の並びを業種ごとに分けるだけでよい
  • 一覧の1件ごとに、業種、規模、課題、結果の要約が読める。タイトルが「株式会社◯◯様」だけだと、開くまで自社に近いか分からない
  • 絞り込んだ結果に固有のURLがある。担当者が上長に「この事例を見てください」と送れる。タブの切り替えで中身が変わるだけの作りだと、URLで共有できない
  • 資料請求と問い合わせの導線を、一覧と詳細の近くに置く。WACULのレポートも、事例の近くに資料請求の導線を置くことを挙げている

詳細ページは、見出しが結論の文で、1ページだけ送られても意味が通じる

  • 冒頭に要約の表を置く。業種、規模、課題、導入したもの、導入から結果までの期間、結果。担当者はここだけを稟議書に転記する
  • 見出しは「導入の背景」ではなく結論の文にする。「受注の入力を1件15分から3分にした」のように、見出しだけを読んで話が通じる形にする
  • 比較した選択肢と見送った理由、社内で出た懸念、導入で困ったことを、省かずに入れる。成功談に見えるほど、担当者の説明材料は減る
  • 1ページで完結させる。前後の事例を読んでいない人が見ても意味が通じる。PDFでも配れる形にしておくと、稟議に添付できる
  • 関係する製品やサービスのページへ、同じ業種の事例から戻れるようにする。サービスページの側にも、その業種の事例を1本置く

事例を1本足す手順と担当は、サイトの制作の段階で決めておきます。公開時点の本数より、公開後に足し続けられるかで差がつくためです。見出しの書き方は見出しデザインで目を引くには?装飾のパターンと使い分け、更新を続けられるサイトの作りは更新しやすい企業サイトの作り方|CMS選定と運用設計のポイントで扱っています。

事例をまとめた「事例集」を資料請求の出口に置く方法もあります。ただし、検討を始める前の人との接点を作るための資料と、比較の段階にいる人が社内で回すための資料は役割が別です。前者の設計は資料ダウンロードでリードを獲得する設計|記事の要約を配っても取れない理由で扱っています。

更新と取り下げ|担当者の退職、契約の終了、社名変更で見直す

事例で実際に起きる事故は、書き方の問題よりも、古い事例が残り続けることです。掲載した担当者が退職している、契約が終了しているのに事例が残っている、社名が変わっている、サービスの内容が変わっていて今は提供していない機能の事例になっている。いずれも、買い手が問い合わせたときに分かります。

  • 取得日と許諾の範囲を記録する。いつ、誰が、どの範囲で承諾したか。担当者が代わっても分かる場所に置く
  • 年1回、掲載先に確認の連絡を入れる。担当者の在籍、社名、掲載継続の可否。この連絡は、次の提案の機会にもなる
  • 契約が終了した顧客の事例は、掲載を続けてよいかを改めて確認する。許諾があっても、終了後に残すと関係を損ねることがある
  • 数字の鮮度を見る。3年前の数字は、前提が変わっている。更新できないなら、取材した時期を明記する
  • 取り下げの申し出には、期日を切らずに応じる。応じる姿勢が、次の事例の許諾のしやすさにつながる

作らなくてよい会社と、作ったほうがよい会社

作らなくてよい会社

  • サイトの訪問数が少ない会社。月数百人なら、問い合わせ率が上がっても受注の差は年に1件ほど。先に訪問数か、営業資料に入れる事例に取り組む
  • 稟議が無い取引が中心の会社。担当者がその場で決める単発の取引では、事例が社内で回覧される場面が無い。お客様の声で足りる
  • 格子が2〜3マスの会社。取引先が10社ほどなら、本数を目標にしない。社名なしの1本目を出し、マスが埋まったら止める
  • 商談の記録が無い会社。作っても、良くなったかを判定できない。先に問い合わせから受注までの件数を記録する

作ったほうがよい会社

  • 商談で「他社の事例はありますか」と毎回聞かれる会社。担当者が社内で説明する材料を求めている
  • 検討期間が長く、関与する人が多い商材の会社。営業が会えない人に、事例が代わりに説明する
  • 比較の途中で候補から外れることが多い会社。「同じ規模の実績が見えない」が理由なら、格子を埋めると変わる
  • お客様の声はあるが、業種と規模で探せない会社。賛辞の一覧を、比較の材料に作り直す
  • 営業ごとに口頭で事例を話している会社。1本ずつ固有のURLにすれば、営業の説明が揃う

決める順序|動く段、格子、許諾、取材と書き方、一覧と更新

1. 事例で動く段と、訪問数を確認する

サイトの訪問数、問い合わせ率、商談になる割合、受注の割合を出します。訪問が月数百人なら、サイトの事例より先に、訪問数か営業資料に取り組みます。

2. 買い手の業種と規模の格子を作り、本数を決める

直近の受注先を業種と規模で並べ、マスの数を数えます。マスの数が本数の目安です。問い合わせが多いマスから埋めます。

3. 公開範囲の段階を決め、受注時の許諾を仕組みにする

契約の条件を詰める段階で、社名なしの範囲の許諾を書面で取ります。成果が数字になった時点で、社名と数字、担当者名の範囲を依頼します。承諾率は10社に3〜5社と見込みます。

4. 稟議で聞かれることに対応した質問で取材し、数字は前提とセットで書く

比較した選択肢、社内で出た懸念、困ったこと、変わった数字の前提を聞きます。見出しは結論の文にし、1ページだけ送られても意味が通じる形にします。

5. 一覧の絞り込み、配置、更新の担当を決める

業種と規模で絞り込める一覧を作り、サービスページに同じ業種の事例を1本置きます。取得日と許諾の範囲を記録し、年1回の確認の担当を決めます。判定は商談になる割合で行います。

よくある失敗

有名企業の事例から集める

安心にはなりますが、従業員50名の会社の担当者が上長に説明する材料にはなりません。上長が聞くのは「うちと同じ規模で使えているか」です。

本数を目標にする

「12件」は前提の違う観測値です。買い手が自社と同じ業種と規模の1本を見つけられるかで決めます。同じマスの2本目より、空いたマスの1本目が先です。

社名が出せないから作らない

業種、規模、課題、期間、結果の前提があれば、社名が無くても稟議の材料になります。最初から担当者名と写真まで頼むと、断られます。

成功談だけを書く

比較した選択肢、社内の懸念、困ったことを省くと、担当者が社内で聞かれることに答えられません。

数字だけを大きく載せる

何を、何と比べて、どの期間で、という前提が無い数字は、稟議書に転記できません。広告に使う場合は表示の規制も関わります。

受注の後に頼む

調査では依頼のタイミングは「受注前」が最多です。契約の条件を詰める段階で伝えておくほうが通りやすくなります。

古い事例を残し続ける

担当者の退職、契約の終了、社名変更、数字の鮮度。年1回の確認と、取得日と許諾の範囲の記録で防ぎます。

よくある質問

お客様の声と導入事例は、何が違うのですか

お客様の声は、個人や店舗の顧客の感想を短く載せるもので、信頼の補強に使います。導入事例は、法人の買い手が社内で説明するための資料で、業種、規模、比較した選択肢、数字の前提まで書きます。読まれる場面が違うため、書き方も許諾の取り方も違います。

1本目は、どの顧客に頼めばよいですか

問い合わせが最も多い業種と規模のマスにいる顧客で、成果が数字になっている先です。有名かどうかは基準にしません。社名なしの範囲から頼むと、1本目が出やすくなります。

インタビュー形式と、テンプレート形式のどちらがよいですか

形式より、要約の表と結論の見出しがあるかで決まります。件数が増えたら、同じ項目で並ぶテンプレート形式のほうが、買い手が比べやすくなります。インタビュー形式は担当者の退職で見直しが要る点に注意します。

数字が出せない場合は、事例にならないのですか

何が、いつ、どう変わったかを、確認した方法とともに書けば材料になります。「問い合わせの内容が変わった」「営業の説明が揃った」のような変化も、時期と前提があれば使えます。

動画の事例は必要ですか

必須ではありません。稟議書に転記されるのは文字と数字です。動画を作る場合も、要約の表と本文のページを先に用意し、動画はそのページに置きます。

生成AIで事例の原稿を書いてもよいですか

取材の書き起こしの整理や、構成の下書きには使えます。一方で、数字、社名、発言の内容は、取材の記録に基づいて人が確認します。買い手の確認を経ずに公開することはできません。

事例をサイトからダウンロードできる資料にしてもよいですか

比較の段階にいる買い手には役立ちます。個別の条件や社外に出せない事例を除いた版を用意し、サービスや料金のページのそばに置きます。件数は問い合わせとは別に数え、商談になった割合も分けて記録します。

まとめ

導入事例は、有名企業の成功談ではなく、比較の段階にいる担当者が「自社と同じ条件の会社が、何と比べて、どう決めて、何が起きたか」を社内に説明するための資料として設計します。買い手の85%は営業との初回面談の前に候補を絞り込んでおり、事例は営業が会う前に読まれます。

事例で動くのは、問い合わせ率と、商談が次へ進む割合です。仮の数字では、月3,000人が訪れるサイトで受注は月約1.1件から約1.6件に増えますが、月500人のサイトでは差は年に約1件です。本数は相場ではなく、買い手が自社と同じ業種と規模の事例を見つけられる格子のマスの数で決めます。「最低12件」はSaaS23社の観測値であり、目標値ではありません。

社名が出せなくても、業種、規模、課題、期間、結果の前提があれば稟議の材料になります。公開範囲を5段階に分け、受注の前に社名なしの範囲の許諾を取り、成果が数字になった時点で範囲を広げます。取材では比較した選択肢と困ったことを聞き、数字は前提とセットで書き、一覧は業種と規模で絞り込め、年1回の確認と取り下げの規定で更新します。

買い手が誰で何を確認しに来るかの整理から、事例の格子の設計、一覧と詳細ページの構成、絞り込みと固有URLの実装、事例を1本ずつ足せる更新の仕組みまではWEB制作・ホームページ制作で承っています。これまでの制作物は制作実績、会社紹介資料は資料ダウンロードから、ご相談はお問い合わせからご連絡ください。

SHARE