企業のSNSの炎上対策というと、投稿前の確認を厳しくする話になりがちです。確認は必要ですが、確認をどれだけ重ねても、批判が集まる投稿をゼロにはできません。受け取り方は見る人によって違い、社内では誰も気づかない言い方が、外では問題になることがあるからです。
被害の大きさを左右するのは、批判が集まった後の動き方です。担当者が一人で反論する、問題の投稿を黙って消す、何事もなかったように予約投稿が流れる。こうした対応が、最初の投稿より大きな批判を呼ぶことは少なくありません。
この記事では、少人数で運用している中小企業や店舗を前提に、A4一枚で足りる運用ルール、投稿前の確認項目、批判が集まったときの順序、削除の判断、ステマ規制との関係、運用代行に任せている場合の取り決めを整理します。
この記事でわかること
・炎上対策は「投稿前の確認」と「批判が集まったときの手順」の2つで考える。後者を決めていない会社が多い
・最初に決めるのは、投稿と広告を止める権限を持つ人と、その人に連絡が届く経路
・批判が集まったら、予約投稿と広告を止める → 事実を確かめる → 謝罪・説明・静観を選ぶ → 一度で出す → 記録するの順に進める
・問題の投稿を黙って消すのは避ける。画面の保存で残っており、隠したと受け取られやすい
・2023年10月1日から、広告であることを隠した表示は景品表示法の規制対象。依頼した投稿は広告と分かるように示す

炎上対策は「投稿前の確認」と「止める手順」の2つで考える
結論として、炎上対策は、批判を受けにくい投稿を出すための確認と、批判が集まったときに被害を広げないための手順の2つに分けて考えます。
前者だけを整えている会社は多く見られます。チェックリストを作り、上司が確認してから投稿する。それ自体は正しいのですが、批判が集まったときに誰が何をするかが決まっていないと、担当者がその場の判断で動くことになります。夜や休日であれば、なおさらです。
| 投稿前の確認 | 批判が集まったときの手順 | |
|---|---|---|
| 目的 | 批判を受けにくい投稿にする | 批判が集まっても、被害を広げない |
| 防げること | 明らかな誤り、配慮に欠ける表現、情報の漏れ | 反論・黙った削除・予約投稿による二度目の批判 |
| 防げないこと | 受け取り方の違いによる批判、社員や来店客の投稿 | 最初の批判そのもの |
| 決めておくこと | 確認する項目と、確認する人 | 止める人、連絡の経路、判断の基準、出す文の型 |
批判は、企業の公式アカウントの投稿だけから起きるわけではありません。社員の私的な投稿、来店客が撮った店内の写真、悪い口コミへの返信など、自社が投稿していないものがきっかけになることもあります。投稿前の確認では、この種の批判は防げません。だから止める手順が要ります。
最初に決めること|投稿と広告を止める人と、連絡の経路
最初に決めるのは、批判が集まったときに投稿と広告を止める権限を持つ人です。担当者が一人で運用している会社では、担当者が止めるのか、上司に連絡してから止めるのかが決まっていないことが多く、迷っている間に予約投稿が流れます。
| 決めること | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 止める人 | 投稿と広告を止める判断ができる人。担当者本人と、その上の1人 | 担当者と、マーケティング責任者(または社長) |
| 止めてよい条件 | 誰の判断を待たずに止めてよいか | 批判の返信が続いているときは、担当者の判断で止めてよい |
| 連絡の経路 | 夜や休日に、誰にどの手段で連絡するか | 社用の電話に連絡。つながらなければ次の人へ |
| 公の発言を決める人 | 謝罪や説明の文を出してよいと決める人 | 社長。社長が不在なら役員 |
| 管理画面に入れる人 | アカウントと広告の管理画面に入れる人を2人以上 | 担当者と責任者。パスワードは個人に持たせない |
「止める」と「謝る」は分けて決めます。止めるのは早いほどよく、担当者の判断でできるようにしておきます。一方で、謝罪や説明の文を出すかどうかは会社としての判断で、事実を確かめてからでないと決められません。
管理画面に入れる人が担当者だけだと、担当者が休みの日や退職した後に止められなくなります。アカウントの名義と権限の持たせ方はSNS運用代行の費用は何で決まるか|月額の相場より先に、自社に残す作業と契約終了時に残るものを決めるでも扱っています。
運用ルールはA4一枚で足りる
少人数で運用する会社のルールは、A4一枚に収まる量で十分です。厚い運用規程を作っても、担当者が開かなければ役に立ちません。批判が集まったときに一枚を見れば動ける内容にします。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 目的 | このアカウントで何をするか(例:来店前に店の様子を知ってもらう)。目的から外れる投稿はしない |
| 扱わない話題 | 政治・宗教・事件や災害への言及、他社や個人への批判、真偽の分からない情報 |
| 投稿前の確認 | 確認する人と、確認する項目(下の表) |
| コメント・返信 | 返信する範囲と、返信しないもの。言い争いには加わらない |
| 止める手順 | 止める人、止めてよい条件、連絡の経路 |
| 公の発言 | 謝罪や説明の文を出してよいと決める人 |
| 社員の私的な投稿 | 会社の情報、顧客の情報、店内や職場の写真の扱い |
対外的に方針を示す「ソーシャルメディアポリシー」を公開する会社もあります。大きな会社では役に立ちますが、少人数の会社では、公開する方針より、社内で動ける手順を先に作るほうが効きます。公開するかどうかは、その後で決めれば足ります。
投稿前の確認|確認する人を変え、項目を絞る
投稿前の確認は、書いた本人以外が、決まった項目だけを見る形にします。書いた本人は、自分の文の受け取られ方に気づきにくいからです。確認の項目が多すぎると、毎回の確認が形だけになります。
| 確認する項目 | 見るところ |
|---|---|
| 事実 | 日付・価格・営業時間・数値が正しいか。出典があるか |
| 写り込み | 写真や動画に、お客さまの顔、書類、画面、住所、車のナンバーが写っていないか |
| 言い方 | 特定の性別・年齢・地域・職業を下に見る表現、からかいになっていないか |
| 時期 | 災害や事件の直後に、ふさわしくない内容になっていないか |
| 広告の表示 | 依頼した投稿や、謝礼を払った投稿であることが分かるか |
| 表現の規制 | 効果を言い切る表現、根拠のない「No.1」などが入っていないか |
時期の確認は見落とされやすい項目です。予約投稿は、作った日には問題がなくても、流れる日には問題になることがあります。大きな災害や事件があった日は、予約投稿を一度止めて内容を見直します。
広告や販促の表現で問題になりやすい言い方は広告表現で問題になりやすい言い方|景表法・薬機法と媒体ポリシーの整理で、社内の確認体制は広告出稿の社内ルールブックの作り方|審査落ちと表現トラブルを未然に防ぐ体制で扱っています。SNSの投稿も、同じ確認の仕組みに乗せると管理しやすくなります。
批判が集まったときの順序
批判が集まったときは、予約投稿と広告を止める、事実を確かめる、謝罪・説明・静観を選ぶ、一度で出す、記録する、の順に進めます。順序を入れ替えると、被害が広がりやすくなります。
1. 予約投稿と広告を止める
最初にやるのは、自社から新しい情報を出さないことです。批判が集まっている最中に、明るい内容の予約投稿やキャンペーンの広告が流れると、批判を無視していると受け取られます。SNSの予約投稿だけでなく、SNS広告、メールマガジン、LINEの配信の予約も確認します。
2. 事実を確かめる
何が、いつ、誰によって起きたのかを社内で確かめます。批判の内容が事実なのか、誤解なのか、一部だけが切り取られているのかで、次の判断が変わるためです。確かめる前に反論や説明を出すと、後で内容を変えることになり、さらに信用を失います。
問題の投稿や、批判の投稿は画面を保存しておきます。後で経緯を説明するときや、悪質な投稿への対応を相談するときに必要になります。
3. 謝罪・説明・静観を選ぶ
事実が確かめられたら、どう応じるかを選びます。基準は、自社に非があるかどうかです。
| 状況 | 選ぶ対応 | 書くこと |
|---|---|---|
| 自社に非がある(誤った情報、配慮に欠ける表現、情報の漏れ) | 謝罪 | 何が誤っていたか、誰に迷惑をかけたか、何をするか |
| 誤解や、一部の切り取りで批判されている | 説明 | 事実と、誤解された点。相手を責める書き方はしない |
| 批判が少数で、広がっていない。事実の誤りもない | 静観 | 出さない。ただし広がり方は見続ける |
| 事実がまだ確かめられない | 経過の報告 | 確認していること、いつまでに知らせるか |
非が無いのに謝罪すると、何を認めたのかが分からなくなります。反対に、非があるのに説明だけで済ませると、言い訳と受け取られます。どちらか迷うときは、事実の誤りがあったかどうかに立ち戻ります。
4. 一度で出す
謝罪や説明の文は、決まったことと、まだ分からないことを分けて書き、一度で出します。少しずつ小出しにすると、そのたびに批判が繰り返されます。出す場所は、問題が起きたアカウントと、必要に応じて自社サイトのお知らせです。
個々の批判の投稿に一件ずつ返信するのは避けます。返信のたびに言い争いが続き、担当者の負担も大きくなります。
5. 記録して、通常の投稿をいつ戻すかを決める
経緯、出した文、かかった時間を記録します。記録は、次に同じことを起こさないための確認項目の見直しに使います。通常の投稿は、批判が落ち着いたのを確かめてから戻します。いつ戻すかは、止める判断をした人と一緒に決めます。
問題の投稿は消すべきか
問題の投稿を黙って消すのは避けます。批判が集まった投稿は、すでに画面の保存で広まっていることが多く、消しても残ります。黙って消すと、隠したと受け取られ、批判が大きくなりやすくなります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 誤った情報や、配慮に欠ける表現があった | 消してよい。消したことと理由を、謝罪や訂正の文で示す |
| お客さまの顔や個人の情報が写っていた | すぐに消す。本人への連絡を優先する |
| 内容に問題は無いが、批判の返信が続いている | 消さない。コメントの制限や非表示の機能で、言い争いを止める |
多くのSNSには、コメントを制限したり、特定の言葉を含むコメントを非表示にしたりする機能があります。機能の名前や場所は媒体ごとに変わるため、運用を始めるときに一度確かめておきます。
悪い口コミへの返信の考え方は、SNSのコメントにも当てはまります。返信の型は悪い口コミへの対応方法|返信の型と、削除依頼が通る条件で扱っています。
ステマ規制|依頼した投稿は、広告と分かるように示す
2023年10月1日から、広告であることを隠した表示は、景品表示法の不当表示として規制されています。インフルエンサーや来店客に依頼した投稿、謝礼や割引と引き換えの投稿が対象になり、処分を受けるのは投稿した人ではなく、依頼した事業者です。
2024年6月7日には、割引と引き換えにGoogleマップの口コミで高い評価を付けさせたとして、医療機関を運営する法人に対し、この規制で初めての措置命令が出ています。「高評価を付けたら割引」のような企画は、SNSでも口コミでも行いません。
ステマが発覚した場合の批判は、投稿の内容ではなく、隠していたこと自体に向かいます。言い方を直せば済む話ではないため、投稿前の確認の項目に入れておきます。依頼が広告になる線引きはUGCを集客に活用する方法|二次利用の許諾と、依頼が「広告」になる線引きで、インフルエンサーへの依頼はインフルエンサーに依頼する費用はいくらか|フォロワー単価ではなく、商圏内に届く人数から払える上限を決めるで扱っています。
社員の私的な投稿|禁止より、書かないことを決める
社員の私的なSNSは、使うこと自体を禁止するより、会社に関わることで書かないことを決めるほうが守られます。私的な時間の発信を広く制限するルールは、守られにくく、反発も招きます。
- お客さまの名前、顔、来店や取引の事実
- 店内・職場・書類・画面が写った写真や動画
- 発表前の商品、価格、取引先の情報
- 会社の代表のように見える形での、他社や個人への批判
飲食店や小売店では、従業員が職場で撮った動画が批判を集める例が繰り返し起きています。ルールを作るだけでなく、入社時と年に一度、具体例を使って説明する時間を取ります。
運用代行に任せている場合の取り決め
SNSの運用を外部に任せている場合も、止める権限と公の発言を決める権限は自社に残します。代行会社が謝罪や説明の文を自社の名前で出すことは避けるべきで、出す判断は自社が行います。
| 取り決めること | 内容 |
|---|---|
| 批判を見つけたときの連絡 | 代行会社が気づいたら、誰に、どの手段で、何時間以内に知らせるか |
| 止める権限 | 代行会社が自社の判断を待たずに予約投稿と広告を止めてよいか |
| 夜・休日 | 代行会社の対応時間外に誰が見るか |
| 文の作成と判断 | 文案は代行会社が作ってよいが、出す判断は自社が行う |
| 記録 | 経緯と対応の記録を、自社に残る形で受け取る |
代行会社の対応時間は平日の日中に限られることが多く、批判は夜や休日にも起きます。契約の前に、時間外に誰が見るかを決めておきます。
地図表示の基本設定
個別の施策は、基本の情報が整っていることが前提になります。設定の全体像はMEO対策とは?Googleビジネスプロフィールで来店を増やす方法を参照してください。
よくある失敗
担当者が一人で反論する
批判に対して、担当者がその場で反論や言い訳を書くと、批判がその返信に集まります。返信は止め、事実を確かめてから、会社として一度で出します。
予約投稿を止め忘れる
批判への対応を考えている間に、キャンペーンの告知が流れる失敗はよく見られます。止める手順の最初に、SNS、広告、メール、LINEの予約を確かめる項目を入れておきます。
確認項目を増やし続ける
批判が起きるたびに確認項目を足していくと、毎回の確認が形だけになり、投稿の手間も増えて運用が続かなくなります。項目は、実際に起きたことから優先して見直し、増やすときは使わなくなった項目を外します。
批判を怖がって投稿をやめる
一度の批判で投稿をやめると、アカウントは古い投稿のまま残り、来店前に確かめに来た人に不安を与えます。原因を確かめ、確認の仕組みを直してから再開します。
よくある質問
どのくらいの数の批判が来たら「炎上」と考えればよいですか
数で決めるより、広がり方で決めます。自社のフォロワー以外からの批判が続いている、引用や共有で広がっている、ニュースや他のアカウントが取り上げ始めた、のいずれかに当てはまれば、止める手順に入ります。
フォロワーが少ないアカウントでも対策は必要ですか
必要です。批判はフォロワーの数と関係なく、引用や画面の保存で広がります。むしろ少人数で運用している会社ほど、止める人が決まっておらず、対応が遅れやすくなります。
謝罪文はどのくらい早く出すべきですか
早さより、事実を確かめてから出すことを優先します。確かめるのに時間がかかる場合は、確認していることと、いつまでに知らせるかを先に出します。止めることは早く、謝ることは確かめてから、と分けて考えます。
悪質な書き込みには、どう対応すればよいですか
事実と異なる書き込みや、脅しのような書き込みは、画面を保存したうえで、媒体の報告の機能を使います。名誉を傷つけるような内容が続く場合は、弁護士に相談します。自社から相手に直接言い返すことは避けます。
ソーシャルメディアポリシーは公開すべきですか
大きな会社や、社員の発信が多い会社では役に立ちます。少人数の会社では、まず社内で動ける手順を作り、そのうえで必要なら公開を考えれば足ります。
まとめ
企業のSNSの炎上対策は、投稿前の確認と、批判が集まったときに止める手順の2つで考えます。確認を重ねても批判をゼロにはできないため、被害の大きさは後者で決まります。
最初に決めるのは、投稿と広告を止める人と、その人への連絡の経路です。批判が集まったら、予約投稿と広告を止める、事実を確かめる、謝罪・説明・静観を選ぶ、一度で出す、記録するの順に進めます。問題の投稿を黙って消すことと、担当者が一人で反論することは避けます。依頼した投稿は、2023年10月からのステマ規制に沿って、広告と分かるように示します。
SNSを何の目的で運用するかは店舗のSNS運用は何から始めるか|媒体の選び方と、続けない判断で扱っています。運用ルールづくりを含むSNSの運用設計はSNS運用・コンテンツマーケティングで承っています。会社紹介資料は資料ダウンロードから、ご相談はお問い合わせからご連絡ください。